discs 2016-09-24
TIME
MERCIFUL FATE
1994 METAL BLADE
94年リリースの再結成第2弾。スラッシュメタルブームを経てのグランジムーヴメント真っ只中という制作時期はほぼ影響していないようでいて、基本のオカルト様式美テイストに心なしか時代なりのソリッドさとねっとり度を増した質感になっているような。
当時さほど騒がれた記憶はないのですが、時の試練を経た今では傑作扱いになってるらしく、これだけ曲が立っていればそれも納得です。
あくまで基本路線を突き詰めた頂点ということで、BLIND GUARDIANでいうところの「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」、MORBID ANGELなら「COVENANT」の感覚でしょうか(=バンドの名刺代わりたるインパクトは初期作に譲るが、金太郎飴的ダレ感が漂う手前で洗練の極致にある)。
御大キング・ダイヤモンドのインチキハイトーンはというと、別段逞しさを増すこともなく、堂々とあやしさ全開。コーラスワークに相当凝った場面も多くあり、大勢のキング先生に一度に責められる感覚はちょっと凄いです。
ソリッドだねっとりだという印象も、単にサウンドプロダクションによるところなのかも知れないのですが。像がぼやけるほどのリヴァーブは掛けず、ギターはムッチリ太いが異常なフルレンジではなく、トータルの圧縮感が今よりまだまだ抑え目の90年代メタルサウンドで録れてます。初期作は80年代特有のバシャア...と伸びてアタックにも欠ける例の音作りが味わいでもあり、聴きづらくもあって、自分の世代的にはこっちのほうが俄然ありがたい。
この頃はMORGANA LEFAYやTAD MOROSEなど、シンプルな興奮に解を求めないねっとりミステリアスメタルが、世のダーク/へヴィ礼賛ムードの恩恵を受けて健闘していた時期でもありました。こうして90年代サウンドに収まったMERCIFUL FATE節を聴くと、その手のスタイルの影響源として彼らの存在も大きかったんだなということがわかりやすく認識されます。
アートワークの面では、ファンタジックなイラストでいくスタイルを捨てた、黒地+頭蓋骨写真のみという潔さで、シンプルさの重みでどこまでいけるか的なこの頃の空気を、これまた反映していたのかなと思います。ということでリアルタイムでメタラーだった人には色々懐かしい要素も多い1枚。1曲目は「へヴィメタルシンジケート」で流れたなあ~と買って聴いて思い出しました。