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TWO TRAINS

ディスクレビュー

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TWO TRAINS

2004  DUPLICATE RECORDS

90年代のゴシックメタル黎明期からノルウェーにいた、トロンボーン入り超デカダンゴシックの名バンド・BEYOND DAWNの元メンバーが一瞬やっていたバンドです。これは2004年に唯一リリースしたフルアルバム。

BEYOND DAWNは、多くの初期ゴシックバンドが描こうとした「いわゆる退廃美」に近いようでいてそれらにツバを吐くような、反骨的なグッタリ感で最初から異彩を放っており、デスヴォイスからも早々に脱却。作品を経るごとにオルタナ的質感に磨きをかけ、最終的にはディストーションギターがほぼ完全に消えてRADIOHEAD的なエレクトロポップみたいになるという変遷を辿ったバンドでした。

そちらの停止後じきに制作されたこのアルバムでは、ゆるめに歪んだギターを再び中心に据え、アメリカのルーツミュージック風インディポップバンドくらいの軽さで、一番草食感があった頃のVOIVODがそのままピーター・ガブリエルの域まで突き抜けたような謎ポストロックに到達。隙間多めのトリオ演奏を土台としながら、人力/生音に必ずしもこだわらないアンサンブルの自由さが、楽曲の肝要な部分まで食い込んで幅を利かせている。注意深く聴くとサブリミナル的な電子音/エフェクト音の類もあちこちに。このあたりのハイブリッドぶりは、2000年代以降の北欧ジャズとリンクする部分もあったりなかったりするかも知れません(ほぼ知りませんが)。何にせよ闇が深すぎる。

ヴォーカルは低いトーンで終始声を張らず、コードワークや曲展開もおおよそはっきりせず、厭世的なまでの「何者でもなさ」が凄いですが、文脈戦争から出たリアクション的排泄物ではなく、「やることがあるからやったまで」という一人立ちしたシンプルさ、芸術作品としての強さがハッキリとある気がします。言いたいことがわかったあとも繰り返し楽しめる。

かと思えば「今本当にそう言った?」くらいのほんのり具合で、感動的なコード回しを一瞬だけ挟んでくるような作家スキルも有。こわい。

この後、ドラムのEinar氏は目下ブッちぎりで謎なアヴァンインディブラックトリオ・VIRUSを始めます。同じレーベルから買えますので、ぜひどちらもご入手を。

オルタナメタルゴシックメタルノルウェーブラック前衛派