SCSIDNIKUFESIN

21 Nov, 2011

▼公開メモ。これはちょっと欲しい。
見たまんま、とは言い難い奇特なルックスですがアナログプレイヤーです。CROSLEY REVOLUTION。現在の自室、床以外で自由になる安定した平面が極端に不足しているので困ってたのですが、これなら助かりそう。
今になって遂にアナログに手を出そうと決意したのも、古株以外の現役バンドでダントツに好きだったRIDDLE OF STEELの元ギター/ヴォーカルが現在やっているTILTS(ついでにTORCHEにも加入してたらしくびっくらした)が、自主制作してきたEP数作をきちんとマスタリングに出してアナログリリースするそうなので。
それにまつわるシステムがなかなか面白いものだったので、詳しくご紹介します。
▼LAMB OF GODなどを手掛けたエンジニアにマスタリングに出して、盤をプレスするまでの全体の経費が2,000USD以上かかるらしく、リリース元の零細レーベルは「金銭的には超厳しいが、どうしてもリリースしたい」という人情家。そこでKickstarter.comというWebサービスを利用しています。これ、初めて知りましたが、創作活動に資金が必要なアーティストが、特定のプロジェクトに対し目標金額と期日を定めて寄付を募るというシステムです。目標に達したところで初めて実際に課金されるので、寄付する側も安心。
TILTSのケースでは特典つきプレオーダーという形をとっていて、寄付額が5USDならmp3ダウンロードのみ、15USDだとそれプラスアナログ盤とステッカー、更にTシャツ、パーカー、オリジナルボトルクーラーなど寄付金額に応じて特典が雪だるま式に追加され、666USD以上なら「セントルイスから車で4時間以内のエリアでライブをやってもらえる権」までついてくる始末。寄付といっても額を上げた分だけ特典が返ってくるのと、何より「今送ったお金がそのまま制(製)作の役に立つ」という、これまでと逆順でダイレクトに貢献できる仕組みがなかなか面白いです。
▼私も迷わず即日寄付しました(ここにいます!)。こういう時だけ円高本当にありがとう。海外発送になるので送料は余分にかかりますが、アナログ・Tシャツ・小物(ボトルクーラー)がついて3,000円台なら全然リーズナブル。
決済システムがまたスマートで、普通にサインアップしてKickstarter.com上にアカウントを開くほか、Facebookアカウントから個人情報一式をインポートしてくれる機能、更にamazon.comの決済システムとリンクして、そっちに入力済みのカード情報でストッと入金を済ませられる機能もあり。両方使ったらほんとに瞬殺で手続き完了。
▼これはさすがに新しいなと、利用してみて感銘しきりです。音源が売れない→音源による収益を重視しない、ではなく、活動のリスクを減らすと同時に作り手と受け手のつながり方から一変させるという前向きな発想転換。違法アップロードファイルの誘惑も見事に回避している(出費を決める段階ではまだ対象物が存在すらしていない)。ネットは旧来の音楽にまつわる価値をいろいろと御破算にしてくれましたが、ネットならではの鮮やかさでその災難を相殺する可能性についても、もっと考える余地がありそうです。
ライブこそ唯一の動かぬ事実という考え方もある一方、所属するレーベルが大きかろうと小さかろうと、芸術史のタイムライン上に自分達の視点・スタンス・活動の痕跡を平等に刻み込んでいくことが許される「音源文化」、これは愛すべき、無くなってほしくないものだと思っています。私の応援する瀕死の優良アーティスト/レーベル達、困ったらこれをどんどん利用してください。
GONG「EXPRESSO II」

本日のレビュー:GONG「EXPRESSO II」

時期によって取り込む人を入れ替えては変態を繰り返すフレンチプログレ界のユルユル共同体・GONGの、しばらく前に捕獲してあった78年作です。前作「GAZEUSE!」から引き続き、狂ったツイン・ヴィブラフォン編成のインストアルバム。
両サイドからのパーカッシブな高音に、常にポチョポチョと小刻みに責められ続けるトランシーなジャズロック路線はばっちり据え置き。というか内容は↑にリンクをつけた前作のレビューでほぼ語りきってましたのでご参照あれ。アラン・ホールズワースは正式メンバーからゲスト扱いに降格したものの、手元・足元がまったく予測できない妙なエフェクトなどを使って、わずかな出番に猛烈に暴れています。何にも馴染んで自分色に持ち込む、それこそトムヤムペーストのような存在感。
奇数拍子、変なコード/モード、せめぎあうテクニックなどなどの充実ぶりは、プログレくずれのジャズロックの域を出て、00年以降のトンガリジャムバンドやストイックめのポストロックとしても全然聴けるんじゃないでしょうか。こういうスキルフルな音楽がもつ極度の整合感は、形だけ重いヘヴィロックよりもずっと質量と殺傷力がある時があります。