SCSIDNIKUFESIN

26 Sep, 2011

▼最近立て続けにすごくCDを買っていて、STIFF SLACK横ABSENTEEで超長居した挙句帰ってからフローリングで寝落ちしたり、そのあと実家で2泊して猛烈にCD裁判をしたりしてるのですが、今日のところはANTHRAXのレビューに専念します。
ANTHRAX「WORSHIP MUSIC」

本日のレビュー:ANTHRAX「WORSHIP MUSIC」

前作から8年。私の一番好きなバンドが帰ってきました。シンガーのジョン・ブッシュが古巣のARMORED SAINTでの活動のために離脱し、若手のダン・ネルソンを加入させて一度全部レコーディングを済ませたとも噂されたこのアルバム。リリース日がいつなんていう話までされだした頃に結局ダンは解雇され、80年代を支えたジョーイ・べラドナが戻って来たり、やっぱり抜けてまたジョン・ブッシュがヘルプしたり、ああだこうだと不安定な期間を経て最終的にはジョーイが正式復帰。腹を決めてMEGAFORCEからようやくリリースしてくれました。
ジョン・ブッシュがいてくれたほうがよかったとこの日記でも何べんも書いてますが、ジョーイはジョーイで参加しているアルバムは全部好きなので、90年代以降のANTHRAXとは別物と思って聴いています(おおかたのメタルファンからは「90年代以降はスラッシュ全盛時代のANTHRAXとは別物」と片付けられてるわけですが…)。肉体派メタルの美学をあくまで空気読めてる角度から大々的に凝縮してくれた前作「WE'VE COME FOR YOU ALL」のアティテュードを引き継ぎ、硬質でマッシブなリフとリズムの応酬。更に今回はエクストリームな部分をよりエクストリームに鍛え上げるとともに、シリアスなマイナーキーの空気を随所で前面に押し出していて、実はスティーブ・ペリーを尊敬する哀愁男・ジョーイの歌唱を活き活きとさせています。
前々作あたりで最も顕著だった、メタルの土俵にむりやり引っ張り揚げたオープンな汎アメリカンロックという感じが面白かったのにな…という思いもどうしても拭えないので、とりあえず今はこれを「BELLADONNAにANTHRAXのメンバーが全員加入した夢のアルバム」だと思うことにしました。昔はキンキン軽くて明るいハイトーンが持ち味だったジョーイ、随分ずっしり太い歌を歌うようになったじゃないか…。メタル然としたわずかな小っ恥ずかしさをソリッドで新鮮なリズムの上に再構築していて、彼のキャリア上の新境地という以上に、へヴィメタルがまたひとつ新しい扉を開けたといってもいい。先行公開されていた"Fight'em 'Til You Can't"のサビのアレンジがいかにも最近のAVENGED何々とかTRIVI何々を思わせる感じで実は超不安だったのだけど、アルバム全体を見ればちゃんとベテランのキャリアの深いところから出てくるセンスに支えられています。よし、やっぱり超よく出来たアルバムです。サウンド面のアプローチの妙が充実してる割に楽曲として耳に残るのが少ない気がしなくもないけど、それはこっちの耳のバイアスが排除できてから追々。
それにしてもチャーリー・ベナンテ(ドラマーだけど曲の土台をほとんど作っている)のエキセントリックかつ剛速球なアイディアリフは、デビューから四半世紀以上経っても尽きることがないんだな。心底リスペクト。激重なのにサクサクするというこの感覚は特に、普段メタラーやってない人にフィットしやすいと思っています。方向性の意外さはなかったけど、もう行き止まりと思われた先にまだ続きがあったの!?と驚きを与えた点では、充分にANTHRAXらしい役割を果たしたアルバムといえます。いつの時代も彼らは常にちょっと新しい。あっラストのREFUSEDのカバーはハマリまくってるけどほとんどコピーの域。