SCSIDNIKUFESIN

2 Feb, 2011

▼HR/HMを聴き始めて15年余り、つくづくいいバンドだなと思い続けているのがKING'S Xです。ドロップチューニングでのヘヴィで硬質なリフ(METALLICAやPANTERAがスローダウンするより前から)と、親しみやすくも意外性のある歌メロやコード進行が、乖離したままただ同居しているのではなくて必然性をもって混じりあっているスタイルで、初期は「『METALLICAミーツBEATLES』といわれるKING'S X」というのが定番の紹介文句になっていました。
くどくどしい個人的事情の説明は割愛するとして、とにかくいい加減BEATLESにちゃんと向き合うタイミングが来てるんじゃないかと思い始めたのがここ1~2年。要領よく網羅するにはリマスターBOXが一番賢いらしく、しかもモノラルミックス版のほうが作り手の意図した出来に近いとの情報も。ということでモノラルミックスのBOXセットと、そこから漏れている後期3枚のリマスター、円高に乗じてUSアマゾンからお取り寄せしてやりました。以上、人生で遂にこの一線を越えたという記録まで。
KING'S X「KING'S X」

本日のレビュー:KING'S X「KING'S X」

METALLICAがブラックアルバムを出してからしばらく流行った、「デビューから年数の経っているバンドが心機一転のタイミングで敢えて出してくるセルフタイトルアルバム」のパターンで、92年リリースのこれは4作目になります。例の「METALLICAミーツBEATLES」というカラーはデビュー当初から一貫しているのですが、初期にいけばいくほどただファンキーなだけ、もしくはソウルフルなだけの曲というのが多くて、この4thは初めてその部分がほとんど抜け落ちた内容になっています。
決してフラッシーではないが捻じれてるにも程があるリフの数々は、ギターを弾く人じゃないと伝わらないかもしれないシブさながら地味に孤高。歌メロはこれまでになく目鼻立ちのくっきりしたものが多くて、アクロバティックなコード展開と分厚い三声コーラスも健在。何より、今まであんなに似たような曲調のリサイクルばかりしてきたKING'S Xが、全曲こんなにはっきりと違うテーマを提示してくるとは。似たりよったりのユルさが持ち味のバンドでもあるんですが、この無駄のなさにはすげーなあと思ってしまいます。
これ以降、ソリッド路線を試したり、オルタナ色を強めたりという時期を経ながら、今ではあらゆる迷いが消えて質の高い量産体制がすっかり整ってしまって、ちょっと興味が薄れていたりもします。さておき、音像も含めてハードロック然としていた頃で初めての人に一番勧めやすいのはこれ。個性が端的に伝わるのは1枚前の「FAITH HOPE LOVE」でしょう。
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