SCSIDNIKUFESIN

14 Oct, 2010

▼スピッツの新作からの数曲がオフィシャルサイトで試聴可能になっている。うーん、別段作風が変わったでもないのに特にぐっと来ないのは、これ以上新しく「スピッツらしい名曲」を記憶に登録できる(したいと思える)キャパがなくなっているからか。さながら「SLANG」から「EUPHORIA」で軌道修正したあとのDEF LEPPARDのような(メタル界のたとえしか知らない私です)。「何も変えなくてもやっていけるんだろうけど、求められる・求められないに関わらず、新しいからには"新しい"ものを出し続けてもらった方が楽しい」派は少ないのか?そんなことを考えたり考えなかったりしつつ明日はライブ。
DEF LEPPARD「SLANG」

本日のレビュー:DEF LEPPARD「SLANG」

昔にも書いた気がするけど見つからないのでとりあえず。80年代のゴージャスプロダクション&なよなよハイトーン・アリーナロックの代名詞DEF LEPPARDが、90年代に入ると「最近はSTONE TEMPLE PILOTSが大好きだ」とか不穏なことを言い始めて、96年に案の定放ってきたダーク&ダウナーな問題作。限りなく安値で中古市場に出回っています。が、これは意外といい盤です。
ただ流されてみただけではなく、時流にあやかるにもそれなりのセンスがあって、しかも10年以上のキャリアをかなぐり捨てて猛烈に「攻め」ているところが少なくともちゃんと対峙するに値すると思います。グランジ感化組のメタルバンドによくあったALICE IN CHAINSクローンタイプではなく、STONE ROSES、BECK、PRODIGY、KULA SHAKERなどなどを彷彿とさせるダウンビート感&コラージュ感+エスニックテイストを強くフィーチャー。ただしヴォーカルラインを軸として曲の筋をビシッと通すという親切な考え方は以前と変わらず、さらっと聴き流してしまいそうなちゃらい雰囲気の中にもしっかりと芯がある。シングルカットになった"Work It Out"なんか、王道デフレパ節とオルタナグルーヴが奇跡的なシナジーを生み出した名曲です。目の詰まった音圧と浮遊感の組み合わせはケン・アンドリュース・プロデュースの一連の作品に相通じなくもない瞬間が。リアリスティックながらもきれいに仕立てられたサウンドプロダクションも秀逸です。
車の中とかにポンと入れておくと、何も考えずに数周ブッ通しで聴けてしまうような適度な薄さ。300円とかで買ったら「あ~思ったよりいい買い物した」と思えるはずです。見送っていたメタラー諸氏は今こそ。
[amazon.com sampler]