SCSIDNIKUFESIN

9 Sep, 2010

▼マイク・ポートノイ(Ds.)がDREAM THEATERから脱退とは、これびっくり。だがデビューから5年以内に早くも誰も越えられない金字塔を打ち立ててしまって、そこからズルズルと通算20数年に至るまで、その余波の中で微妙な振れを続けてきたのなら、いっそバッサリと違うものに乗りかえてしまった方が自由で健康的かも知れないとも思います。と、前向きな再編・解散の類にはけっこうポジティブな私ですが、DREAM THEATERにポートノイがいないと思うと心情的に寂しいですね。後釜はデレク・ロディジョージ・コリアスでも入れたらいいんじゃないすか。マイク・マンジーニのパターン(ANNIHILATOR → EXTREME)で。
CHROMA KEY「GRAVEYARD MOUNTAIN HOME」

只今のBGM:CHROMA KEY「GRAVEYARD MOUNTAIN HOME」

日記からの流れで、同じくDREAM THEATER卒業生のケヴィン・ムーアによるユニットの3rd(04年リリース)をひさびさに聴いています。彼の在籍時最後となったアルバム「AWAKE」のラストを飾った"Space-Dye Vest"で、メランコリックを通り越してどこまでもズドーンと陰鬱なピアノと電子音・ナレーションの類コラージュ+ロウトーンヴォーカル、という彼の趣味の基盤をはじめて生々しく公開してくれたわけですが、そこにトリップホップやらポストロックの香りも足して始動させたこのCHROMA KEYのデビュー作は、そういう音に免疫のないメタラーにも「これは中身のある、聴き込める音楽だ」と思わせるところのある大名盤でした。次いで、チルアウト感に強めにフォーカスした2ndを作り、そっちは新鮮な驚きこそなかったが充分良いといえる出来に。そして世間がポストロック/エレクトロニカ全盛というタイミングで世に出たのがこのアルバムです。
レコーディングは当時の移住先トルコで敢行。参加ミュージシャンも現地の人のようです。このアルバムの前にソロ名義で映画のサウンドトラックを作っていて、その流れでこのアルバムも、著作権の消滅した50年代の映画に勝手につけたサウンドトラックという体で制作したそうです。そのせいか音響的な要素がよりくっきり表出しつつ、歌う曲ではアコギなんぞも導入してこれまで以上にガッツリ歌ものとして挑戦。TARWATERやらJESSAMINE、PAN AMERICANなんて名前もちょっと頭をよぎります。ポジティヴな場面もあるけど基本は鬱なため、脱バンド後のULVERを思い出す場面も。統一された色調なのに凄く多彩に聴かせてくるセンスはさすが。テクノロジー実践を目的としたり、「今聴くと新しく聴こえるもの」を結局そのままトレースしたりするのではなく、表現したい情緒があってそのためにすべての音が並んでいるというところにこのアルバムの聴きやすさの本質がある気がします。とてもいい職人なのに最近の活動が活発でないのが惜しいところ。
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