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2016-09-26 [ケーブル・プラグ]

RCAケーブル線材比較(MOGAMI 2534 / 同2549 / CANARE GS4 / BELDEN 8412)

旧サイトでもギター用シールドの音質比較をやりまして、今回はオーディオシステムの、CDプレイヤーとアンプの間につなぐRCAケーブルです。20cmそこそこの短さで、さほど影響があるはずもな...ければ幸せだったんですが、残念ながら多少なりともあるように思います。

海外の楽器関係のフォーラムなどで、メーカーや型式によるケーブルの音質の良し悪しの話が出ると、BELDEN至上主義的な言説はほぼ見かけたことがなく、聞いたこともないヨーロッパのメーカーなどに混じって日本のMOGAMI、更には日本国内じゃ「入門者が通過する」的な扱いを受けているCANAREあたりまで、おすすめリストに現れたりします。BELDENは現地だと逆に「ちゃんと作ってあればBELDENでも何でも充分」くらいの言われ方だったりすることも。

ということもあって近頃は国内メーカーを見直しているところでして、しばらく前にRCAケーブルはBELDEN 8412からMOGAMI 2534に交代させていました。CANARE GS4は4mmという細さが魅力で楽器用に使い始めて(パッチケーブルや、機材の多いログメン用)、RCAケーブルとしても一部導入。で今回は、2534と双璧をなすとされる(?)MOGAMI 2549も試してみて、見事に四者四様という感じだったので、それぞれについてプレゼンを試みたいと思います。

ちなみに、

  • ケーブルを経ることで音は多かれ少なかれ劣化する
  • 劣化のしかたは芯線の種類や径、シールド構造などに依存する

という科学を支持しているだけであって、「床に置くだけで音場が整えられて驚くほど音がよくなる天然木の四角錐」みたいなのはまた別の世界のお話です。(そちらは関心なし)

リファレンス用音源

聴き比べには、DAVE WECKL BAND「SYNERGY」(99年)を使ってます。ドラマーがリーダーのフュージョン作品。楽器単体でもトータルでもコンプ感が極めて薄く、装置の再生能力が高ければ高いだけ、記録された情報が細部まで露わになるような録音なのです。演奏内容や曲も良いので普通におすすめです。ちなみに勝手に師と仰ぐバジー・フェイトン大先生(G.)全面参加。

1. BELDEN 8412

使っていた順でご紹介していきます。まずは楽器界ならベース用としてお馴染みの、「海外のレコーディングスタジオや放送局でのスタンダード」と言われているがきょうび別にそんなことない説もあるこちら。

何にも阻まれずにドボッと出てくる低音域はやはり群を抜いて強力。タム類・キックの破裂感や、ドヨドヨ~っと低音にあふれた音源を再生したときの迫力は一番あります。一方、中高域も鳴るには鳴ってますが、低音が勝ってマスキングされてしまうのか、または可聴域以上の超高音が切れ気味なのか、分離にすぐれているとは言いがたいという私感。低音をできるだけ削ぎたくない楽器単体か、ホームシアターなんかに良いのではと思います。

プラグの中は黒→HOT、白→COLD、シールド→片側のみCOLD。

2. MOGAMI 2534

オーディオに、楽器に、PAにと広く重宝されている、国内メーカーの定番品。傾向としては、歌やスネアが抜けてくる中~中高域に特に焦点が合っている印象を受けます。声の存在感で楽曲を楽しみたい向きにはおすすめ。こんもりと丸まっているわけではなく、品よくスッキリといった感じで、分解能は良好。低域の重量感はちょっとだけ遠慮気味。

そういうバランスなので、8412みたいなパワー感のあるケーブルの後で聴くと、音量小さくなったか?という気がするかも知れません。これはそう悪いことではなく、音量以上のやかましさがない分、再生側で大音量にしても不快になりにくいともいえます。リマスター盤か旧盤かでいったら旧盤に近いというか。

スピーカーが小さい、またはあまり大音量を出せないような再生環境の場合は、「レンジ感に欠ける」という印象に転ぶ可能性もあります。万能というよりは、一芸に秀ですぎているタイプとして認識するのがよいかと。

青2本→HOT、白2本+シールド→COLDで製作。

3. CANARE GS4

細くて安い、CANAREの1芯ケーブルです。シールドが編み銅線+導電被膜の2層構造になっていて、タッチノイズに強いとのこと。楽器用途で、大量の機器やエフェクタを使う人なら、これに乗り換えると体積と重量が劇的に少なく済むので本当によいです。

RCAケーブルとして使うと、刺さるトレブルよりもう一層上のプレゼンスがよく伸びて、倍音成分や金物の空気感がキレイに出る感じがあります。低い方は今回の4種類の中で一番控えめながら、ばっさりロールオフされることなく残っていて、再生側のセッティングで上げればちゃんと出てきます。

押しの強さは無いが各楽器の質感を聴き分けやすいということで、小音量でBGM的に使う場所ではしみじみ良いはたらきをしてくれるかと。我が家でも居間ではこれがレギュラーです。

1芯なのでそのまま芯線→HOT、シールド(被膜はカット)→COLDで製作。

4. MOGAMI 2549

最近はじめて入手したこちら。同社の2534と比べてみると、エンハンサを入れた/切ったくらいの違いがあって面白い。こちらはトレブルの元気のよさに直結する部分と低音が結構出て、そのせいかアタックもやけに鋭く、整えたようなフルレンジ感が容易に出ます。

低域は出るといっても無駄に膨らまず、キックにしろベースにしろ低音の量感とハイミッドの音色成分がピンポイントで立ってくる感じ。タム類の破裂感はBELDEN 8412よりもアザヤカか。アンサンブルの奥に潜んでいた細かい動きがばばーっと照らされて、聴き慣れた音源でも新鮮に感じるのでは。人の声が若干背景にまわる印象すらあり、インストや、情報量の多いテクニカルな音楽にマッチしそうです。

全パート聴きやすいから作業用モニターに良いかもしれないと思いかけるも、中高域の解像度に特化して見通しを確保している「テンモニ」NS-10Mとの組み合わせでは、若干高音がピーキーになり過ぎるきらいもありました。2534とどちらを取るか、これから悩みます。(ちなみにGS4+テンモニもツンチンしすぎでイマイチ)

青→HOT、白+シールド→COLDで製作。

以上、「絶対的ベスト」は存在せず、用途や組み込むシステムの特性・設置条件などによって選択すべしという結論で、あいまいかつ当たり前にシメておきます。作れば安いのでいろいろやってみてください。