物色日記−2006年11月

※頻出語句解説はこちら
  11月29−30日
収穫はなし。昨日の晩からよく冷えますね。その昨日の晩の帰り道で、はるばる片側2車線の大きい道路をはさんだ反対側から、ホームレスのおばちゃんに突然「オーイ!くそったれ!」と叫びかけられてビックリしました。状況を飲み込んだ直後はそりゃムムムッと来ましたけども、その時の私はといえば、動くのもしんどいくらいの度を越した大食いをしてきて、しかも用心して多めに着込んだ上着がちょっと暑かったかなーと持て余していたところで、逆の立場だったらそりゃクソッタレだわな。と納得してそのままスイ〜と帰ってきました。

▼それで今日はいい写真が撮れましたよ。

??

何やってんの!?
…以前からこの変わったお二犬、こうして高いところにのぼって大人しくしている異様な光景をチラッとなら見たことがあって、今日は遂にバッチリ写真に収めることができました。ウチの近所です。PC上だと伝わりづらいですが、自分の目線より上からヌッと立派なハスキーが二頭垂れてる図は相当な迫力ですよ。かっわいいなー。

【本日のレビュー:TYKETTO「STRENGTH IN NUMBERS」】


ハスキーがいっぱいいるジャケなので今日はこれです、ニュージャージーのハードR&Rグループ・TYKETTOの94年作。あんまり素性はよく知りませんけどもこれが2枚目みたいですね。91年にGEFFENからデビューしたのにすぐドロップされたそうです。この次の3枚目「SHINE」はTHE BLACK CROWSみたいなオールドロッキンテイストが入ってきててなかなか気に入ってたんですが、こちらはまだ全然旧世代HR然とした、WINGERとEXTREMEの中間のようなスタイル。これもまた良し。ヴォーカルは結構ゲイリー・シェローン似ですね。そんでバラードをやるとやけに大らかなアメリカンフォークになってしまうあたり、CINDERELLAの3rdとかRIVERDOGSみたいな流れも汲み入れてみてるんでしょうか。メタル雑誌に載る系のハードロックバンドが70年代のラフなブルーズロックに回帰するという、ガンズ以降しばらく(80年代末〜90年代頭)あったトレンドどおり。あっだんだんTHUNDERみたいにもなってきましたよ。歌はもっと暑苦しいけど…。やっぱりまっとうにそういうものを聴いて育った国の人達がやることですので、敢えてやってる感じはしても軽薄さがなく、素直に気持ちよい。このあたりは掘るといいものが出てきます。シブ好みのハードロッカーは是非どうぞ。土臭いWANDSとしても聴けるかも?

  11月28日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてAURA NOIR「DEEP TRACTS OF HELL」とFRANK GAMBALE「THINKING OUT LOUD」をともに525円にて。12月のバーゲンは23日(土・祝)スタートとのこと。

▼アンチスポーツを声高に叫ぶ私ですが意外に世界バレー男子を楽しみに見ています。昨日は試合なかったからつまんなかったですね。あの中継、アイドルがしゃしゃり出てきて歌うとかはもう100歩譲って諦めるとして、日本チームの応援を、場内アナウンスを利用して煽るのがどうなのかな〜、といつも思います。相手国がどんな妙技でもって得点しても、感嘆の声ひとつ上がらぬうちに間髪入れず「シャ、シャ、シャシャシャ、シャシャシャシャ、ニポン!」ドン、ドン、ドドド…とやられちゃ、フェアプレーを妨げられるほどにテンション落ちると思うんですが。どこの国で開催されてもああなんでしょうか?場内にいる客は99%日本側の応援者だとしても、その先導くらい、鳴り物をかついだ応援団に勝手にやらせときゃいいような気しませんか。

 しかも時々VTRで挿入される、外国チーム対外国チームの試合の映像、あれの客の少なさは凄いですね。かく言う私もレインボーホールまで足を運んでないわけですけども。別にバレー界の常勝国でもない日本までわざわざ試合をやりに来た外国選手たちにしてみりゃ、日本戦以外は全然客来ないし、試合前によくわからないクチパクショータイムはあるし(あれってしかも日本戦以外はやらないんでしょうね)、自国チームが出るときだけこぞって詰め掛けては風船をボンボンやって楽しむ大観衆に向かって「オマエら本っ当にバレーには興味ないんだな…こんな国で世界大会やんなよ…」とでも言いたくなってんじゃないでしょうか。サッカーのワールドカップみたいに、もっと大会全体の面白さを見せるやり方があると思うんですが、一般的な国民のバレーそのものへの関心の低さに尻込みして、文字通り現金な視聴率取りのためだけに不健全な局部肥大になってしまっているのは少し白けてしまいます。産業というやつはもう少し、その規模を活かして人々を啓蒙してやろうということを考えてくれてもいいのにな〜。どこの世界も、大多数に金を落とさせるためだけに最適化された化学薬品のような虚しいものばかりが大手を振って闊歩しがちなのは残念。

【本日のレビュー:AURA NOIR「DEEP TRACTS OF HELL】


DODHEIMSGARDやCADAVER INC.などで一緒にやっているアポリオン氏とアグレッサー氏による激烈プリミティブブラックユニットの2nd。アグレッサー氏はVED BUENS ENDESATYRICONULVERなども渡り歩いてる人みたいです。おおお。んで1stにはMAYHEMのブラスフェマーも参加してたそうで。98年に録られているこちらはHAMMERHEARTからのリリース。いやー内容の方、今までチラッとネット上で試聴した限りでは勝手にDARKTHRONEのようにオールドスクールブラックを真面目に継承してるという印象をもっていたのですが、よく聴きゃ全然冴えてます、もうビックリ。土台は確かにノルウェーブラックのトラディショナルなスタイルであるものの、そこにメンバー二人が関わってきたバンド/ユニットと共通する先鋭性がガンガン盛り込まれ、1349に勝るとも劣らぬ危なっかしさ。険悪な現代音楽ばりの格調高きギターリフ、病的な金切り声とブラスト!二人ともマルチプレイヤーであるので、曲によってドラムと弦を入れ替わってて、どっちがどっちを担当してもバカウマなのがもはや笑えます。いやはや、ブラックメタルは立派な前衛アートですな。ノルウェーのこういう人達の、王道を踏み外さないままにドンドン新しく代謝していく、持続的な進化の原動力はどこから来るんでしょうか。反骨を忘れた規格どおりのカオティックハードコアに飽き飽きしてたりするような向きなどは、是非ともこっち側まで足を踏み入れてみて頂きたいです。

  11月26−27日
本日の収穫、ヤフオクにて落札のO.S.T.「誰にも言えない / ずっとあなたが好きだった / ダブルキッチン」、PLASTIC HEADからDEATHのTシャツと共に到着のACHERON「LEX TALIONIS / SATANIC VICTORY」。他にも機材等多数落札しております。

▼散財が止まらない一方、0円DIYにも積極的な私です。今日はかねてからの懸案が解決されたのでまあ聞いて下さいよ。

 先月購入して以来重宝しまくっているT.C. ELECTRONICSのVPD-1(写真右、オーバードライブのペダルです)の左側にあるゲインブーストスイッチが、思ったより音量を稼げなかったため、レベルブースト用にMXRのMICRO AMPとの同時踏みが出来ないかここしばらく試しておりました。しかし命中率はあがらず。四苦八苦する様子を見たバンドメンバーからはやはり「(二つのスイッチの間に)板でも渡したらどうですか?」という提案が出るわけで、もっともなんですが、少々荒く踏んでも外れず安定していて、耐久性もある「板」ってどんな形のどんなんだったらいいのか…と頭を悩ませていたのです。

 そこで今日は自分がエセドラマーだったことを思い出すわけです。不要なスティックを適当な長さに切断し、スイッチがちょうどはまって安定するような穴をくりぬいて、乗せて踏んでみたところこれが完璧!多少偏った位置で踏んでもバッチリ両方踏み込めました。ここであまりにスンナリ上手くいくと、無駄に欲を張りたくなるのが人情。

 別に必要ではない右側のON/OFFスイッチの分まで同じようなのを作ってしまいました。これが意外と、今までより狙いやすくなって、ドライブをONあるいはOFFにしたいだけの時に誤って左のブーストスイッチまで踏んでしまうというハプニングが避けられそうです。積み木風のナチュラルなルックスも上々?

 とここまで、何の道具を使ってくり抜いたかについて言及してませんが、ひたすら彫刻刀です。刃先の違うのをこまかく使い分けて底面までクッキリ仕上げ!!

 そして本日の代償。ザックリ突いてしまったところを、動揺せず、高校時代の保健体育の教科書を思い出して的確に止血(血管の通る指の両脇を強く圧迫)、赤いのをジワリともさせずにスマートに処置完了。自己満足として晒しておきます。なお構図は当然確信犯ですので、どうぞ心の中でツッコミを。

 ということで小さくてかたいスイッチが踏みづらくてお困りのギタリスト諸氏は、ドラマーから折れたスティックの切れ端をもらってきて、コシュコシュと削りまくるといいっすよ。

【本日のレビュー:ACHERON「LEX TALIONIS / SATANIC VICTORY」】


CYBER MUSICの古いコンピに名を連ねていたり、のちに加入するメンバーがINCANTATIONに参加していたりもするアメリカの正統派デスメタラー。94年にオーストリアのLETHALからリリースになったフルアルバムと6曲入りのEPを雑にカップリングしてBLACKENDが再発したものです。雰囲気ゼロのジャケ、これはひどいなー。内容はまあ、もうちょっと遊べよと言いたくなるほど純な古式デスラッシュ。誰かが特別上手いとかいうのもなく、とにかくMORBID ANGELやENTOMBED、あるいはKREATORやPOSSESSEDのようなスタイルをど真ん中で行っています。貫禄はあるというか、この後どんどん増していったんだろうなあというポテンシャルが窺える感じ。ユルユルずるずるのプロダクションも相俟って、それこそINCANTATIONやIMMOLATIONのようないぶし銀系がお好みの御仁には結構いける素材なんじゃないでしょうか。後半収録のEP「SATANIC VICTORY」の方が、グッと抑えたドゥーミー路線になっててよりナイスですな。

  11月25日
収穫はなし。最近大丈夫かと思うことは、「お客様満足主義」を謳うauのテレビCMで、ストーンズの"Satisfaction"を使ってみたはいいが、言ってる歌詞が「I can't get no satisfactin」であることです。満足できないんじゃん!!

【本日のレビュー:NEMBRIONIC「BLOODCULT」】


オランダのグレイトな筋肉グラインダー・NEMBRIONICが96年にリリースしたEP。大名盤2nd「INCOMPLETE」に収録された曲のデモバージョン3曲と、NEMBRIONIC HAMMERDEATHと名乗っていた時代のEP音源を詰め込んだファン向けの全7曲。まずデモの方は、思いっきりドラム打ち込みの業務用バージョンといった感じ。多分曲作った人が録ってほかのメンバーに「新曲できたよ〜」といって渡していたようなやつなんでしょう。ということで注目すべきはやはりHAMMERDEATH時代の音源。93年と92年のものが収められておりますが、93年のほうは鋭角的なグルーヴでミッドテンポの展開もサクサクと身軽にキメる、こざっぱりして田舎臭くない出来にちょっとビックリ。軽く解散前末期のSUICIDAL TENDENCIESみたいなノリすら漂います。なおかつブラストもきちんと冴えるし、やっぱりもともと高いポテンシャルのある人達だったんですな。92年の1曲はBRUTAL TRUTH〜TERRORIZER路線まっしぐらの王道グラインド。ありきたりなところから始まって、寄り道もしながらオリジナルのストロングスタイルへと鍛えあがっていったという一連の軌跡がよく記録された盤であります。いやあ愛すべき隠れ名バンドです、心あるデスメタラー諸兄は是非とも買ってあげて下さい。

  11月24日
▼今日は、以前サポートで参加していたシロクマの初・自主企画イベントを見に鶴舞KDハポンへ。何人かの方に「今日は弾かないの?」と尋ねられましたが、今回はシロクマa.k.a.澤田君がふたたび生ドラム入りの編成を希望し、私は本職ではないドラムでこれ以上綱渡りなライブをするのにいい加減懲りてきたため、Piggyの山田君にバトンタッチしたという運びです。

▼で一番手Piggyは、変則拍子もナチュラルに乗りこなす非オサレ・ド変態妄想ポップ。女子供は全員引けと言わんばかりの暴れぶりが最高で、しかも曲としての奥行きもあるという。ごく最近のMODEST MOUSEみたいな素っ頓狂なファンクネスを我流に消化するセンスはかなりのハイレベルなんじゃないでしょうか?長くやってるだけあって演奏の息もバッチリ。普段は地道にブッキングをこなしているようですが、31 KNOTSあたりの前座に出ればメンバー一同大ウケしてもらえそうな逸材と思います。より広い活躍に期待。

▼続いて中村健太さん。児童唱歌に出てきそうないい言葉を、20代後半の重みで、臆面なく地のままに歌ってくれる、温かで純朴なSSW。「7586」第3弾にも収録されて絶好調であります。曲によっては結構おちゃらけたイメージもあったのですが、今日はふつうにグッと来る系のレパートリーが多くて良かったですなあ。いい声いい曲の日の丸弁当的なこういう歌い手って実は貴重な気がしますよ。

▼バンド間の転換時間にはそれぞれ、ちょっとした出し物(?)があったのですが、ここでその詳細を書いてしまうと、いずれあるかも知れない同企画第2弾に初めて来るという人にネタバレになってしまいそうなので、自主規制としておきます。澤田君は日頃から演劇・映像・お笑いなどと音楽との自由な複合といったものに関心が高いようで、今回はその様子見的な実践といった感じでした。

 で最後に主催のシロクマ。演奏云々に関して思うところは本人に直接メールでもするとして、「ビックリする意外なフック」と「普通に良い」の境界がどんどんなくなって「普通にビックリ良い」なる線を体現しつつある最近の作風に改めて感銘。非凡の才だと思うんですが、うまく伝わるような出方を考えたいっすな。

▼ということで最後は「27等分されたケーキ」の一片をもらって帰宅。「疲れない、『くだらない』ライブイベント」という狙いはおおむね成功していたように思います。格安で創意工夫に富んだこういう催しはどんどん増えていってもらえると楽しくなりますね。ということで次はこれ行こうと思ってます。
「ことごとくメンバーが遅刻するライブ」
日時:12/1(金)
場所:今池ハック
時間:19時開始ぐらい
出演:BOOKHOPE、サクラショック、ジョンのサン、中村ケンタ&チーパーズ、その他有名バンド
備考:サクラショックとのスプリットCD発売記念ライブ、出入り自由(途中ラーメン可)、DJ無し(皆さんのおしゃべりを大事にしております)
あー夏合宿で額にマジックで「犬」と書かせてブランキーのコピーをやっていたフジノさん。ようやくBOOKHOPE見ます。そしてこっちもよろしくお願いします!
日時:12月17日 (Sun.) 
場所:名古屋 新栄クラブロックンロール
時間:17:30開場 / 18:00開演
出演:PANICSMILE、nhhmbase、FLUID、CLISMS、DOIMOI、黒澤コリン、SU:
チケット:前売り 2,000円 / 当日 2,500円(別途1D 500円)
今回も新曲中心で6弦べろんべろんいわせて頑張ります。お取り置きご希望の方はこちらまでよろしくどうぞ。

【本日のレビュー:HUGH HOPPER / RICHARD SINCLAIR「SOMEWHERE IN FRANCE」】


SOFT MACHINEのヒュー・ホッパーとCARAVAN〜HATFIELD & THE NORTHのリチャード・シンクレアというカンタベリー二大巨頭が83年にフランスのどこぞでパパッと録りあげたコラボレーション作。ギターとベース、時にちょっとしたパーカッションやドラムも添えて、つつましい小唄がリチャード・シンクレアの極上ジェントルマン声で歌われていく全9曲です。きわどいテンションコードもあっさり挟んだりしつつもインストで主張することはあまりせず、おおむねHF&Nのサイズダウン版といった感じ。和みフュージョン化したジェフ・ファリナ(KARATE)のソロといった趣きも。とにかくインドア感たっぷりに間近で囁いてくれるリチャード・シンクレアの歌声がファンにはたまらんですね。何でこんなにいい声なんだ。と言いたくなるいい声です。録音がけっこうお粗末な上、VOICEPRINTによる風情ゼロの装丁もイマイチで、総じてやや雑な佇まいになってしまっているのが残念。もうちょっと宝物感が醸し出されてれば文句なく名盤の列に加われたものを。

  11月23日
▼朝の11時頃、名古屋市内を西から東へ移動する道中、南北にずっと通っている主要道路である環状線の一部がマラソンのため完全封鎖中。しかしこれを通過しないことにはどうやっても目的地に辿り着けないという状況。マラソンの方は小集団が断続的に通るといった感じではなく、道幅いっぱいに埋め尽くす走者の列が遥か視界の果てまで続いていて最後尾がまったく確認できず。

 まともに横断するのは不可能とみて、すぐ近くにあった歩道橋を渡ろうとすると、そこにいた警官曰く「見物客がたまるのを防ぐため歩道橋の通行はご遠慮願ってます、皆さんこの先の地下鉄の出口から一旦地下に入って、反対側から出てきてますよ」と。こっちは自転車であるので、こんなものかついで構内に立ち入っていいのかと、駅出口付近にいた別の警官に尋ねると「それはちょっと」。歩道橋のことを言うと依然、見物客がと返ってくる。じゃこの走者の列はいつ頃全部通過するのかと訊いたら「30分んん〜…くらいですかねえ」。あんたが回答に困る以上にこっちが困るよ。歩道橋もダメ、地下鉄もダメ、お急ぎでなければ30分待ってくださいの一点張りで終始譲らず。

 クソ、紋切り型のタライ回しと自動応答しかできない役人ならぬ役たたず人共。貴様等はウインドウズのエラーメッセージか。勤め先の西ドイツから家のある東ドイツにある日突然帰れなくなってしまった人の気分を思いながら、埒があかないので仕方なく封鎖区間の終わりである2駅先の陸上競技場まで骨の折れる迂回をする覚悟を決め、ランナーがゾロゾロ走る環状線沿いを南へ向かいかけると、ほどなくして別のノーマークの歩道橋を発見。そこからあっさり東側へと渡れました。あーあのバカ警官。

 なおこの間、猛烈な偶然で出くわしたジョンのサンの立石君と行動を共にしていたというのが今日のポイントでした。収穫はなし

【本日のレビュー:CLUSTER & ENO「CLUSTER & ENO」】


ローデリウス&メビウスのCLUSTER組と英国アンビエントの代名詞イーノが合流した77年盤。定番のコニー・プランク録音です。がらんとした草原にマイクが一本、空に向かって立つというジャケは、人間の感情を排した自然のタペストリーを音像化したのがここに入ってますよということか。宙ぶらりんに孤立した美の断片を淡々と聴かせるCLUSTERのホニャホニャと、酩酊的で色彩のあるイーノのモワモワとが、何らの違和感もなくゆったりと合体した、叙景的な半生系オーガニック・エレクトロニカの元祖といえる内容になっています。基本的には全編、WINDOWS95の起動音が無表情な電気トロッコに乗ったような感じで進行。豊穣な音楽性と自由な筆致を両立させるこのバランス具合は、ジャーマンエレクトロのパラダイムがおおよそ固まってきた70年代後半ならではでしょう。ちなみに1曲でCANのホルガー・シューカイが参加してますが、あんまり判りません。

  11月22日
収穫はなし。漫画「動物のお医者さん」の影響で、缶入りのしるこドリンクを発見するとフラ〜ッと買ってしまいます。今日は初めて見たキリン製のやつを試してみましたところ(王道はだいたいヤクルト)、餅が煮崩れたようなでんぷんの味や、そこはかとない塩味も効いた、心ある丁寧なつくりの一品に仕上がっておりました。雑な甘味マスキングでコカコーラ社製品ばりに消費者をバカにする「午後の紅茶」を作ってるのと同じメーカーとは思えない。コーンポタージュもの、ナタデココ、「ひんやり夏みかんゼリー」、「プリンシェイク」等のビザール系缶飲料をご愛飲の諸氏は是非一度。

【本日のレビュー:EBERHARD WEBER「FLUID RUSTLE」】


ECMのお膝元・ドイツ出身のベーシストの79年リーダー作。結構な看板プレイヤーらしくこれなんかにも参加してました。このアルバムではゲイリー・バートンがヴィブラフォンとマリンバ、若かりし頃のビル・フリーゼルがギターと何とバラライカ(ロシアの弦楽器)、エバーハルト氏本人はベースのほかタラングという打楽器のクレジットがあります。更に二人のシンガーも交え、ドラムはなく、ライヒ派ミニマリズムから民族楽器パワーに拠るエスノ・グルーヴ、ASHRA的なシーケンスつきフリーフォーム、ちょっとMAGMAっぽくもある現代音楽風クワイアなど、脱プログレ〜ニューエイジ到来という当時の流れにドンピシャな内容をECMらしく高尚にキメてくれてます。一応ジャズ然としたあそびのあるアンサンブル構成やリード演奏もほどほどに存在。変に緊張する清潔感もありつつ、和みの質はきわめて高いので、頑張って聴いてみる価値は充分あります。クラスター&イーノの世界ともそう遠くない。ポストロッカーがMICE PARADEあたりからもう一歩ディープに踏み込む1枚としてもおすすめ。

  11月20−21日
収穫はなし。住宅密集地の一角に佇む木造・築30ウン年の我が家ですので、寒くなってくると食べ物を求めて民家を狙うネズミに侵入されることもあります。ゴキブリと違ってボリューム感があるので、予期せず出くわすとかなりの衝撃です。夜、トイレのため階下におりて、ついでに何か飲むものでも…と台所に入って電気をつけたらちょうど、よりによってネズミ害を避けるために袋に入れて高いところに吊るしてあったジャガイモの、その袋の中から、えーっ!?とでも言いたげに目を丸くした小振りのネズミの首から上がひょっこりと。この間合いでは何をやっても逃げられるだけだな、と思ってこちらもジッと見返すしかなかったんですが、そうして無駄に見つめあうことおよそ2・3秒。しばらくして袋を跳び抜けてドダダーッと冷蔵庫の裏へ隠れていきました。ちょっとかわいかった…。

掲示板の始末に四苦八苦してるうちに時間が深くなってしまったので今日はレビューは省略します。収拾のつかない量の迷惑投稿に悩まされておりましたが、ひとまず管理者以外誰も書き込めないただの物色日記番外編になってます。移転先は追々考えようと思います。】

  11月19日
収穫はなし。近頃は先週くらいに宣言したとおり、完成した運指練習メニューをこのサイト上で公表すべく、各エクササイズの見本用音源を猛烈な勢いで録っております。改めてメトロノームに合わせて徹底的に均一に弾こうとすると、普通のバッキング程度ならば以前やったDOIMOIのアルバムの録音で慣れましたが、細かい単音弾きだとこれがもう全然ダメダメ。結局ほとんどただの自分の猛練習と化してます。やっぱりパッと聴きの上手い下手で最初に来るのはリズムですね。多少音色がまばらでもきっちりリズムに乗れてれば「ニュアンスの幅」で済ますことも可能だけど、乗れてないと途端にダサい。その運指練習は後半にいけばいくほど難易度が増すような構成になってるので、今まさにSM的苦痛に耐えながら奇跡のOKテイクを出そうと死闘してるところです。なかなかクレイグ・ゴールディ打倒出来そうにないっす。

【本日のレビュー:BEGGARS OPERA「WATERS OF CHANGE」】


71年VERTIGO。これが2枚目のアルバムのようです。冒頭曲イントロのダダッ、デデッ、ドゥドゥッ、ドドッ、ドベドドン…とドン臭く踏み外すフィルからいきなり「英国産のB級です、よろしく」と強烈な挨拶。プログレといえるほど捻じくれてはおらず、しかし明らかにプログレの末梢的な要素を拝借してきた、学生仕事的なアングラ・アート・ロックですな。オルガン大フィーチャーで変拍子やクラシカルなオーケストレーションもそれなりに導入。初期クリムゾンまだシンフォニックになりきらない頃のYES「NURSERY CRIME」くらいまでのGENESISの中間点的内容か。ちゃんと6分以上の長さがある曲を1〜3分台の小曲で挟んでいくアルバム構成などは見るからにYESの3・4作目の発想。総じてマニア仕様の雰囲気モノという気もしますが、何であれ風情は風情。しかもこういうB級さん達は偶然の踏み外しが却ってユニークで面白かったりするもので、オッこれは聞かない感じだな、オイシイな、という大胆な小ネタがマメに混入してます。3曲目の哀愁変拍子ユニゾンなんかは美旋律ポストロックバンドが今年やったっていいじゃないか。全員買いとは決して言いませんが、ちょっとプログレを踏まえてくるとなかなか楽しいんではないでしょうか。

  11月18日
▼今日はソフテロのレコ発を見に今池得三へ行きました。ソフテロa.k.a.石川さんは私の大学時代にいたバンドサークルの一年上の人で、全く知られざる事実ですが一度だけ私がサポートでベース弾いてライブやったこともあったりします。ANTHRAXのやMR. BIGのコピーもやったな…それはさておき。半年前に上京してスキマスイッチのアフロの人が新しく立ち上げたレーベルの第一弾アーティストとして先日CDがリリースになったばかりで、今回は(インストアなどを除けば)久々の凱旋ライブ。しかも私は2003年の鶴ロック以来まったく見てないので物凄くひさびさでした。

 今回は東京でゲットしたサポートメンバーを従えての4人編成。出音一発でひと皮ふた皮剥けたのを痛感する、充実のステージでしたな〜。後ろの3人はとにかく必要充分に上手く、俺のグルーヴが、私のテクが、といった表情を一切見せずにただソフテロの音楽に向かうナイス客演。その中で聴く石川さんの歌心は、インディバンドカルチャーにも商業ポップカルチャーにも毒されないで、自分たろうとするストレートさや実直さがびしっと感じられるものでした。それは昔からそうなんですが、より芯が据わったというか、いちアーティストとしてガッシリ立っている感じ。普段好きこのんで聴いているであろうソウルミュージックなどからの影響もとてもいい形で血肉に昇華されておりました。音楽への愛と畏敬と素のパーソナリティーがこれだけダイレクトに伝わるライブをやる人は日本であんまり見ません。歌もスケールアップして、スキル的に向上したというよりも「歌うことが上手くなった」といった雰囲気、この表現で伝わりますでしょうか。とにかくめっぽう感じ入った次第です。身内としての目は忘れて純粋にステージから降ってくるものを享受できたライブでした。

▼2番手はお馴染みGUIRO。スガシカオとSTEELY DANと70年代フュージョンを股にかける静かな熱血カルテット。ベースの人のカーリーな髪が伸びてて、画質悪そうな昔のフュージョンバンドのライブビデオにでも本当にひょっこり出てきそうな風貌だったのが個人的に激しくオイシかった!トリの東京ローカルホンクは、スワンプからウエストコーストAORまでソツなくフォローする、楽器の上手いおじさん達によるドメスティック・アンサンブル・バンド(?)。このへんまで来るともはや何かを訴えかけようという感じではなくなりますね、MCでも本当に「僕たち自分のために演奏してますから」と(いちおう冗談半分で)言っていたけど。とにかく全員上手かった。

▼そして会場でSCHOP最新号もゲットしてきました。私が寄稿しているレビューページ、当初「今号のテーマ(『ことば』)にちなんでもちなまなくてもよい」という話だったので一応ちなんでみたら、そうしたのは私だけであとの皆さん普通に新譜を勧めておられましたね。チョイスとかじゃないところで浮いてしまいました。まあ誰にも取り沙汰されずにホコリかぶりそうになってる音楽に光を当ててあげるのが使命だと思ってるので、新譜はそれだけで光を当ててもらえる特権があるようなものなので、次も(依頼もらえればの話ですが!)マイペースに旧譜でいきたいと思います。今回も装丁から何から秀逸な仕上がりのSCHOP、お近くの配布スポットでお早めに入手をば。

【本日のレビュー:AMERICAN MUSIC CLUB「UNITEDKINGDOM / CALIFORNIA」】


元祖和みフォーキースローコアとでも言われなきゃ今や誰も買わなそうなベテランバンドの88年のライブ盤と89年3rdのカップリング。ブルース・スプリングスティーン+R.E.M.てな微妙な塩梅の作風の中に、RED HOUSE PAINTERSIDAHO直系のディープなプロト・スローコアチューンが混じってます。というか普通に素晴らしい歌ものアメリカーナとして認識すればいいんですけどね。あー、いまサイト内検索してみましたが、取り上げるごとに同じことばかり書いてるみたいです(→参考)、芸がなくてすいません。とにかく変わらぬ作風で信念を貫く人達なのですよ。地味にいい仕事してますので、メインストリーム的な音に抵抗のないシブ好みな人は500円くらいで見つけたらいっぺん買ってみてください。何の衒いもないヴォーカリゼーションと味の深いアンサンブルに心洗われます。

  11月17日
本日の収穫、珍しくグレイテストヒッツ大須にてHERMETO PASCOAL「ZABUMBE-BUM-A」、EBERHARD WEBER「FLUID RUSTLE」(79年ECM、ゲイリー・バートン&ビル・フリーゼル参加)、以下は300〜500円のバーゲンコーナーからSTEEL POLE BATH TUB「TULIP」(BONER!)、COWS「PEACETIKA & DADDY HAS A TAIL」(AMREP!)、AMERICAN MUSIC CLUB「UNITED KINGDOM / CALIFORNIA」(88・89年作カップリング)、THE JELLY JAM「THE JELLY JAM」(KING'S Xのタイ・テイバー、DIXIE DREGS〜WINGERのロッド・モーゲンステイン、DREAM THEATERのジョン・マイアングによるプロジェクト1st!)。よくもまあこんな微妙な品々をあの広大なバーゲン棚から見つけ出したもんです、今日は快挙。

【本日のレビューその1:STEEL POLE BATH TUB「TULIP」】


BONERといえば初期MELVINSなどもリリースしていたジャンクハードコアの名門。これはそのBONERから91年にリリースされている、以前紹介したDUHにも参加していた人がいるバンドのアルバムです。ジャケからしてHELMETの「BETTY」とかMELVINSの「HOUDINI」とかとも相通じるセンスでいかにも。で内容の方は、ほとんど説明不要の荒くれジャンク。KILLDOZERみたいに大人のブルーズテイストを忍ばせたりも、THE JESUS LIZARDのように恐ろしく切れ味が鋭かったりもせず、ひたすらボワア〜ッ!と暴れ散らすタイプ。押し引きの妙はけっこう心得ていて、引きの場面ではMELVINSを彷彿とさせたりもします。ヴォーカルの雰囲気から少々オリジナルパンクっぽいノリもあるような。もっとピンポイントな形容を試みるならば、DRIVE LIKE JEHU+MONORCHID+BLANKEY JET CITYでキマリですな。グシャッとした不良感と酒っぽさが何故かほんとにブランキー的です。90年代ジャンク研究家はもちろん、MO' SOME TONEBENDERファンとかにも意外とオススメできそう。

【本日のレビューその2:THE JELLY JAM「THE JELLY JAM」】


昨日はKING'S X似のPSYCOREでしたが今日は本物登場で。個人的にSHINER〜TLATのアレン・エプリーと肩を並べるバッキングギター・マエストロだと思っているKING'S Xのタイ・テイバー、この人大概プロジェクトやらソロやらやり過ぎなんですが、このTHE JELLY JAMもまた彼のサイドプロジェクトのひとつ。元DIXIE DREGSのバカテクドラマーのロッド・モーゲンステイン、DREAM THEATERの静かな激弾き職人ジョン・マイアングというリズム隊を従えてしまったムチャクチャな布陣。いかにタイの仕事がミュージシャンズ・ミュージシャンとしての評価を得ているかが窺い知れるってもんです。で内容、基本的に何をやってもKING'S Xとそう変わらんのですが、ここではメンバーの技量を活かしてプチ変拍子を多用したロッキン&ヘヴィ寄りなスタイルに。2ndの頃のALICE IN CHAINSとヌーノ・ベッテンコートのMOURNING WIDOWSの中間みたいな感じでしょうか。とにかくロッド・モーゲンステインは炸裂しています。しかしあくまで歌もの、ギターワークも雰囲気重視で、テクニックがうるさく感じないように全体をまとめてしまうあたりはさすが円熟とハイセンスの成せる業。PATROL好きな人なんかにいかがでしょうか?

  11月15−16日
収穫はなし。近頃はというともっぱらオクターブ調整に余念がない私ですが、SCHOP最新号にて「レコードショップスタッフのレコメンドを集めた新連載ディスクレビュー」に一般人代表でポツネンと混じってます。たぶん私だけ豪快に暴投してますので、どうぞご確認をば。

【本日のレビューその1:SCRAWL「Q」】


ANAL CUNTの編集盤やDOOMなんかもリリースするドイツのECOCENTRICなるレーベルから出ている、地元ドイツのアホ4人組。効率悪くキーボードも導入したスッカスカのアンサンブルで、スカ/タンゴ/オールドディスコ/東欧フォークとショートカットハードコア/グラインドのブツ切りをランダムに並べたような厭世系崩壊ミクスチャー。S.O.D.〜EXIT-13イズムの拡大解釈プラス欧州の伝統がこれなのか。とにかくとてつもなくバカバカしいことになっています。アコギ掻き鳴らしやチープなフルート(の音色のシンセ)、ゲスト参加の管楽器なども鳴り響く中、ヴォーカルはかなり低いガテラル声。CARBONIZEDよりももっと深みがなく、ショック目的の愉快犯であることが見え見えで狂気性は大したことなさそうなんですが、まあよくもここまで徹底してやりきってくれたわというのと、なにげにセス・プットナム(ANAL CUNT)がゲスト参加してたりするあたりとで、なかなかに心に残りそうな一枚です。空手バカボンのファンにおすすめ。24曲15分。

【本日のレビューその2:PSYCORE「I'M NOT ONE OF US」】


中古で非っ常〜によく見かける盤です。全然チェックする気もなかったんですが、たまたま見かけたレビューでKING'S X系とあったので、後日300円で発見し購入。リリースはどっちつかずなイメージのV2から。中途半端にヒプノシス風のジャケも何だかなーという感じです。で中身、おお確かにこれはKING'S X系ですよ。どっちかといえばダグ・ピニック(黒人ベーシストの方)寄り。容赦ないダウンチューニング・ヘヴィリフを効果的に出してはしまい、しまっては出し、優しい雰囲気のメロディックなパートや低音で囁くようなスポークンワードヴォーカルも混ぜ込んでくるという。多分この人達普通にKING'S X好きそうですね。括りとしてはSYSTEM OF A DOWNとかと同じあたりに来そうなんだけど、そっち系の連中の屈折性とはまた趣の異なるひとクセがなかなか面白い。POUNDHOUND+PRONG+CLUTCHとでも言ってしまえば片付いてしまいそうではありますがセンスはあります。演奏も隠れバカテクっぽいし、このまま踏ん張ってリリースを重ねてくれれば何とかなったかも知れないくらいの素材。今どうしてるんでしょう。

  11月14日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてGROUNDHOGS「THAN CHRIST FOR THE BOMB」(リマスター)、JOHN ZORN「LOCUS SOLUS」、FELA KUTI「CONFUSION/GENTLEMAN」、DESTINY'S CHILD「DESTINY FULFILLED」。何を血迷ってデス・チャ、とまあ自分でも思いましたけど、BGMに延々海外のR&Bばかりが流れている店でつい最近昼を食べて、なんと曲調にバリエーションというもののないジャンルなのだとビックリし(別にそれで成立してると思います。非難の意図まったくなしです)、それを思うとデステニーズ何がしの去年くらいに流行ってた曲は随分とエキセントリックだったんだなあ…と思い出していたところに525円で遭遇、購入に至った次第。

 私が物色中のジャズ棚付近に、どうやらバンドの練習帰りとおぼしき大学生くらいの数人がいつのまにかやんわり集結。こういう人達の会話は時々なかなか面白いので(過去の例:「田中宗一郎、あの人すげーよな。」など)物色を続行しつつ軽く耳を傾けていると…。「俺あの人好きあの人。チックコリアじゃなくてあー、名前出て来ん。あジョン・マクラフリン。」「ああ〜知らんなー。俺有名なのしか分からんで(※1)、ビルエバンスとか。ピアノの。」ここで、近くで作業をしていた店員もチラッとその一団を見る。威勢の良さそうな別のメンバー合流。「お〜、ジャズ見とるがー(※2)、ジャズいいの?…なあなあ、ボブディランってどんな?」「それってフォーク(注:ギョーザと同じイントネーションで)じゃない?いいんじゃない」うんうん確かにジョン・マクラフリンはビル・エヴァンスよりマイナーに違いない。「これからの人生」というものをたまにリアルに感じるのはいい。

 ※1:「分からんから」の意の名古屋弁
 ※2:「ジャズ見てんじゃん」くらいの意の名古屋弁

【本日のレビュー:JOHN ZORN「LOCUS SOLUS」】


TZADIK ARCHIVAL SERIES。ピーター・ブレグヴァド(SLAPP HAPPY)、アート・リンゼイ、アントン・フィアー、ウェイン・ホーヴィッツ、イクエ・モリなど、GOLDEN PALOMINOS参加陣とかなり被るメンツとともに、全てにジョン・ゾーンを含む計4通りのトリオでそれぞれ8曲ずつを収録しているアルバム。どれも83年のニューヨークで録られたもので、91年にリマスターされて出ています。83年といえばプログレ〜ポストパンクと地続きでNYアヴァンギャルドシーンがまさに隆盛を迎えていた時期。当然の如くノイズインプロに精が出ておられるわけですが、非常にフレッシュでかつ冴えてます。絶叫一辺倒ではまったくなくて、各編成それぞれに異なるまとまり(散らかり?)方になってます。以下個別で。

 ピーター・ブレグヴァド/クリスチャン・マークレイとの組では高速ランダムDJとスポークンワードとゾーンの異音。初期ボアダムスに少しアカデミズムを漂わせたような、暴力的なコンテクスチュアル・シャッフル・ミュージックか。ゾーンは物凄く高い音や物凄く短い音などを目まぐるしく繰り出して精神を圧迫してきます。
 アート・リンゼイ/アントン・フィアーとの組はARAB ON RADARも真っ青の衝撃・全力・アウト・ロック!オリジネイターのヴィジョンの強烈さはやはり別格です。LOADや5 RUE CHRISTINEあたりの似たり寄ったりのバンド30個分くらいの重みはあります。アート・リンゼイ、今じゃあんないい声でしっとり歌ってらっしゃるのに、この頃は狂人。
 ウェイン・ホーヴィッツ/イクエ・モリの組は日本の鼓(つづみ)的なランダムビートにゾーン・とホーヴィッツがこぞって妙チクリンな音を出しまくる、狂った鳥が巨大な壊れた獅子威しに群れる庭園のような雰囲気。音自体の変さもさることながら、余白/余韻が孕む強圧感がやたらと凄い。日本的な時間感覚のイメージなんだろか。マイク・パットンとかへの影響も甚大でしょうね。
 最後、ウィズ・キッド/M.E.ミラーの組は、生ドラムとノイズDJの死闘。音楽のダンサブル性を小馬鹿にするかの如く寸断されるリズム。これに至ってはフォロワー不在ですね。今やってもガンガン受けそうなのに。恐ろしいスピードでコンセンサスを見出してはアンサンブルごと変容していくこの駆動力はどこから来るのか。

 全体を通して、ジョン・ゾーンはあまり多く吹いていないというところがカッコイイと思います。コンセプチュアリストかつ陰の主演という。2006年も暮れようとしている今でさえ、ここに含まれていた音楽を自分たちの手で実現化しようとする新しいバンドが世界にゾロゾロ出てきていることを思うと、ゾーンの先見性には恐れ入るしかないですね。また非常にプロダクションが良く、今年出た新譜と思って聴くことすら全然可能です。これは文化人のたしなみ扱いでもいいんじゃないのか。迷惑ノイズに深みを求めたい向きはこれ1枚で一生充分。

  11月13日
本日の収穫、サウンドベイ金山で全てバーゲン棚からJOHN NORUM「ANOTHER DESTINATION」、VON GROOVE「VON GROOVE」、PSYCHORE「I'M NOT ONE OF US」、SCRAWL「Q」、HOLY TERROR「MIND WARS」、TYKETTO「STRENGTH IN NUMBERS」、V.A.「SOMETIMES DEATH IS BETTER」。どれもこれも300〜500円とは最高だ。物色中に店内BGMででMAGMAの「コンタルコス」のライブバージョンが流れていて、試聴したいのがあるけどMAGMAが最後まで完奏されてからにしよう…と長い間ジッと待っていたら(注:金山での試聴は店内BGM用のスピーカーでするので、その時流れているCDは一時中断されます)、かなりイイところで店員にあっさり違うCDに替えてられてしまいました。切ない。

▼ベタ過ぎて大人になると誰も言わなくなるジョークのひとつに「バナナはおやつに入りますか?」というやつがあると思うんですが、あれって結局、模範的な見解はどちらなんでしょうね。気になる未解決事件。「おやつじゃないってことにしてまでバナナをたらふく食べたいんだったら、持ってきてもいいですよ。だけどそれはお弁当の一部ということになるから、食べるならお弁当の時間に全部食べなさい」と答えれば、児童はそこから先を自問自答してくれるでしょうか。

 それにしても、たかだか200〜300円という狭小な予算枠の中に遠足の日いちにち分の幸せを構築できた小学生時代の暮らしを思うと、大人の道楽とは何とも肥大したスケール上に展開されているものだなあと、先日通りがかった高島屋の様子を見てそう思いました。3万円のブーツ、3万円のダンエレクトロ、3万円の猫、3万円分の音楽ギフト券、3万円分のチロルチョコ、まあどれが取り立ててアホらしいということもないわけですが。例えば日本国内で5万で売ってるエフェクターがアメリカだと200ドルくらいだったりすることとかを知ると、少なくとも、受け入れるがままにいたずらに金銭感覚ばかり肥大させられることは、注意深く避けたいなと思います。産業は信用しないに限る…と年々強く感じます。あるところにはある良心を上手く見つけて生きていきたい所存です。「キン肉マン」の主題歌は何故「心に愛がなければスーパーヒーローじゃないのさ」という一行をあんな目立つ位置に、しかも唐突に置いたのか不思議に思います。子供には深すぎる、資本主義にいいようにされがちな我々が最も心に留めておきたい一行を。

【本日のレビュー:JOHN NORUM「ANOTHER DESTINATION」】


(昨日の続き)と振ったからには今日はジョン・ノーラムです。EL&Pと1文字違いのあらゆる小さな事物に「パパパーッパー、パパパッパッパー…」というイントロを思いっきりパクられた超有名曲"The Final Countdown"を演奏していたスウェーデンの叙情ヘヴィメタルグループ・EUROPEの元ギタリスト。件の曲が入っているアルバムで「コマーシャル化を狙ってギターの音が過度に小さいミックスにされた」などといった理由からバンドの絶頂期に脱退、その後ドン・ドッケン(ex.DOKKEN)のソロアルバム参加を経て今度は自身のソロ作「TOTAL CONTROL」「FACE THE TRUTH」(後者は元TRAPEEZE〜DEEP PURPLEのグレン・ヒューズが参加)をリリースして順調にキャリアをつなぎ、95年にリリースした3作目がこちら。

 この人は昔からラフなエッヂでとにかく熱く弾きまくるスタイルが魅力で、敬愛するゲイリー・ムーア(ex.SKID ROW〜THIN LIZZY〜COLOSSEUM II〜BBM)の影響がとても良い形で濃厚に現れています。適度なブルーズフィーリングもありつつ、クドクドになり過ぎないメロディ性が絶妙。しかもギター小僧的にインストでまくし立てる趣味はなく、本作を含めリリースしてきたソロ作はどれもヴォーカル入りの歌もの。ここではBLUE MURDERのセカンドギタリストだったケリー・キーリングが参加していて、ソウルフルな歌唱で気を吐いてくれていますが、ジョン本人によるヴォーカルも全然良い。全体の作風としては、95年という時期もあってややヘヴィなアプローチが目立つものの、それに食われて潰れてしまうほどではなく、むしろ彼の荒々しいフィーリングが活きてカッコイイです。ダウンチューニング&グルーヴリフに出くわすと必ず「それをあなたがやらなくても」と思考停止の拒絶反応を見せていた昔のBURRN!編集部の器量の狭さを思い知る。むしろEUROPE時代に得意としていた作風から離れて、時流を意識しながらも己の歌心の芯の強さを通したのは拍手モノじゃないでしょうか。ハードロックはまあまあ聴けるが叙情メタルに興味はないという人なら、このアルバムから最初に入っても問題ありません。あるいはジョン・ノーラムっていいよねと少しでも思っている人だったら絶対探して買ってほしいです。あっ、やっちゃった、"Sunshine Of Your Love"のカヴァーやっちゃった。

  11月12日
収穫はなし。外に出ないのは勿体ないくらいの秋晴れの休日をひねもす家で過ごしました。成果は「ライン録音のためのギターの音作り」、「オークションで機材チェック」、「運指練習の研究」。「運指練習」の「研究」?という無言のツッコミを明らかに期待した文面なわけですが、どういう事か説明しますと、ワタクシ昔からギターの運指練習のパターンを自前で作るのが密かな趣味なのです。そこらの教則本の「オルタネイト・ピッキングの基礎練習」というページにある1234↑1234↑…、2345↓2345↓…、というやつ、あれを真面目にマスターしようとしたところで、あまりの応用性のなさと動作自体のつまらなさにすぐに嫌気が差し、普通の人はコツコツ頑張る気になるわけないです。運指練習の目指すべきところはすなわち「弦移動やピッキングの表裏の都合に引っ張られずしてあらゆる局面をクリアに弾き通すこと」、「狙った音程に指先を正確に飛ばす条件反射的身体感覚を身につけること」、「トロい薬指や小指を酷使してしっかり独立させること」といったあたりにあるはずで、そこに重点を置いた音楽的な運指練習があるはずだとダラダラ研究を重ねて10余年。ここへきてようやく、これを毎日3セットやれば2年でクレイグ・ゴールディくらいになれる、なれそうだ、という感じのものがまとまってきています。別に速く弾くことだけが目的ではなくて、手癖ペンタ一辺倒からの脱却や相対音感の強化にも役立つ内容になってます。この流れだとこのまま己の著書でも紹介して「2,500円くらいで絶賛発売中!」といきそうな雰囲気ですが、そういう商売の人ではないのでそのうちこのサイト上で公開しようと思います。

 あと大昔、「マサムネ・フレージングのセオリーを徹底解析してまとめてそのうち公開する」と宣言したことがあったはずですが、それも実は忘れてません。ロゴだけが先に完成していた新・一人宅録ユニットのことも忘れてません。最近の悩みは「有言不実行が多い」です。

【本日のレビュー:CRAIG GOLDY'S RITUAL「HIDDEN IN PLAIN SIGHT」】


ということでクレイグ・ゴールディです。GIUFFRIAというバンドでデビューしてROUGH CUTへ移り、ヴィヴィアン・キャンベル脱退後のDIOに引き抜かれて「DREAM EVIL」1枚のみに参加、そのあとに結成したのがこのCRAIG GOLDY'S RITUALとのこと。ご苦労様です。これは90年リリースの恐らく1作目。音楽的には何てことのない、イングヴェイをもっとアメリカナイズしたようなSHRAPNEL系こってり飽和メタル。ギターインストもたまに入ってますがおおむね歌もの中心。さすがに楽曲のクオリティは無難で、かといって心に残るものはなし。ギターの方はというと、ソロ云々の前にバッキングからしてマシン的な弾き方にびっくりします。ピックを持つ指から手首までの完全な脱力状態を伺わせる軽くて正確なカッティング。上手いというより「人間か?」と。あざといヴィブラートもバシバシ挟んでくるわけですがそれも全て型どおり。リード時はあまりフラッシーな離れ業(スウィープや変なタッピングなど)は使わずに、ひたすらレガートでクソ速いフルピッキングでものを言うタイプ。速弾きギタリストだけに憧れて速弾きばかり練習するとこういうことになるのかという端的な見本ですな。華は期待できないが鉄壁の安心感ならあるので、ロニーの横でヴィヴィアン・キャンベルのカラオケ行為に甘んじさせるにはまさに適材。

 と酷評しているように見えるかも知れませんが、ジェフ・スコット・ソート時代のイングヴェイみたいな80年代のメタル・オリエンテッド・メタルにツボがある人にとっては最高以外の何者でもないA級クローンですので、私は大満足です。改めてイングヴェイの影響力の大きさを思い知るとともに、ロニーの相方はジョン・ノーラムとか空いてなかったのかなとも思う。

  11月10−11日
収穫はなし。相変わらず「ドニチエコきっぷ」が秀逸。土日に名古屋に遊びに来て市内を転々としたい人は買うといいですよ。

【本日のレビュー:PIT ER PAT「PYRAMIDS」】


シカゴのPIT ER PAT、コンスタントなリリースが続きます。昨年末のEPから1年弱で2枚目のフルアルバムを出してきました。今回はデロデロ退廃度が大幅アップして、ユセフ・ラティーフCAT POWER+MAGMA+フェラ・クティてな様相に。これはなかなか凄いことになってます。SLINTやBASTROの残党が大成していったやつの化石じゃなくて、正真正銘字面どおりの2006年版「ポスト・ロック」ですね。見事な一歩です。この人たちの場合、ヴォーカルラインやそれに成り代わるフレーズの存在によって、後ろのアンサンブルに注意を向けようとしなくても耳に入ってくる感じが敷居低くて更に良い感じ。地球上のどこかわからないところのフォークミュージックのよう。もうReRやCUNEIFORMに移籍してもいいんじゃないでしょうか。プログレッシャーから音響ロッカーまで、是非チェックしてみて下さい。

  11月9日
収穫はなし。いやー危ない、危ない危ない、PayPalから突如、身に覚えのないレシートメールが届いて、「この処理を確認またはキャンセルするならこのページへ」という行をクリックするとPayPalのログイン画面っぽいページが出現。ここではたと冷静に、ブラウザ上部のURL表示を確認してみたところ、www.paypal.comで始まらない全然違うドメイン名が。ここでうっかりパスワードを打ち込んでログインしてしまっていたら終了でしたね。おー恐いよ。

 これも日頃、myspaceのログイン画面で「パスワード盗用のニセログイン画面に注意!URLの一番最初がwww.myspace.comになっていることを確認しろ!」というメッセージが毎回出てきて、それでドメイン名を確認するのが癖になってたお陰です。異言語だとうさんくささに気付きにくいから充分な注意が必要ですね。以上、今日のヒヤリ・ハット事例でした。

【本日のレビュー:AREA「CAUTION RADIATION AREA」】


日頃ウルサくデメトリオデメトリオ…と言い続けている私ですが、実はAREAのスタジオ盤はこれだけ持ってませんでした。(というかこれを含め全て中古で揃えました。頑張った。)こちらは74年の2nd。AREAといえば「インターナショナル・ポップ・グループ」と銘打ってバルカンや中央アジアその他の民族音楽、ジャズロック、現代音楽などをハイテンションに合体させた、かなりラディカルなイタリアのプログレバンドでございます。ここでものっけから複雑怪奇な細切れバルカン変拍子炸裂で踊る足がもつれまくり。以降全収録曲、彼らのキャリアの中でも最高と思われる過激さでブッ通してくれます。火花一発で爆発しそうな緊張の限界のインタープレイが壮絶すぎ。全くお座なりにならない崩壊インプロ、クリスチャン・ヴァンデに呪われたKLUSTERのようなノイズコラージュ、両者混じってHELDONミーツOPUS AVANTRA状態(!)になったりもして、全ての事象が絶倫そのもの。そしてアイディア負けしないどころかバンド全体に勝ってぐいぐい牽引してしまう稀代の変態シンガー、デメトリオ・ストラトスの力強い雄叫びがまたグッと耳をつかむ。地声とファルセットを高速で入れ替える、ヨーデルのような民族楽器の笛のような「ひょおひょおひょ…」という得意のパッセージもガンガン出ます。各曲常人離れした演奏能力をこれでもかと見せておきながら、ラストはメルツバウばりのピュアノイズで後味悪〜く終わらせてしまうセンスも最高。普通にLOADやTROUBLEMANのバンドをチェックするような人が聴いたらいいです。形ばかりではない、体を張った真性の変態行為に度肝抜かれます。

  11月8日
収穫はなし。近頃上がっている機材熱(物理的に放出される熱じゃなくて私の中のです)で、CDはしばらく買わなくてもいいやという気持ちにせっかくなってたのに、KING'S Xのタイ・テイバーのソロ新作、COPELANDの新作、TROUBLE初期作DVDつき再発、DEF LEPPARD「HYSTERIA」のデラックスエディション、MESHUGGAH「NOTHING」のギター差し替え&リミックス/リマスター(評判激良)とピンポイントで欲し過ぎるものがたまってしまって、いつCD Connectionのお世話になろうか悩みどころです。しかしケーブル類一式調達&ギターのアップグレードのため年内に東京一泊かという話も持ち上がり、そうなるとユニオン巡礼は避けられず(避けるべきか…)、何をどう工面してどうなっていったらよいのか分かりませんね。今度から燃やしたり刻んでバラまきたい裏金があったら私にメールください。よろしくお願いします。

【本日のレビュー:MEMENTO MORI「RHYMES OF LUNACY」】


80年代スウェーデンが産み落としたドゥームレジェンド・CANDLEMASSが誇ったモリゾー系巨漢シンガー、メサイア・マーコリンという人がおります。激しく天パーな頭髪が真横に伸びる強烈なルックスとヴィブラートの聴いたカロヤカなハイトーンとのギャップで凄まじい存在感を放っていた彼が、CANDLEMASS解散後にその元メンバーとKING DIAMOND〜MERCIFUL FATEに参加していたギタリストを連れて新たに結成したのがこのMEMENTO MORI。今回取り上げるのは93年の1stです。イングヴェイかと思う壮麗なメタリック・ファンファーレで幕を開けるので何だどうしたと一瞬驚きますが、メインとなる音楽性は「HEAVEN AND HELL」以降のBLACK SABBATHや、やはり古巣のCANDLEMASSやMERCIFUL FATEなどに近い雰囲気のオカルト様式美。ドゥームといっても土臭さゼロでひたすら妖艶に迫ります。最近のバンドはこういうのを求めるとどうしても甘ったるいゴシック寄りのものになってしまいがちなので、中近東スケール多用の強硬路線で押し通してくれるこのアルバムはちょっと有り難いです。ちなみに同じCANDLEMASSからの派生組であるABSTRACT ALGEBRAも同系統でした。オッ!!MSGの大名曲"Lost Horizons"のカヴァーが入っている(しかも前半のかなりおいしいポジションに)!ズバはまり!!!ああ最高じゃないか。何やってんだよ。完コピーじゃねーかよ。この感動のためだけにオールドメタラーは全員buy or dieです。

  11月7日
収穫はなし。ようやく普通の11月になったという感じの寒さが良かったですね。今年は秋がなかったな。モンテールの新作シリーズは食べてみたいのが多過ぎる。

【本日のレビュー:FLASH「OUT OF OUR HANDS」】


YESの2枚目まで在籍していたギタリストのピーター・バンクスがYES脱退後に結成したバンドの3rd。73年リリースってことで時期的にはプログレが一番脂乗ってる頃ですが、インテリにKING CRIMSON型(ジャズロック〜インプロヴィゼーション)、夢うつつにYES〜GENESIS型(壮麗シンフォ)、ドタバタとEL&P型(インタープレイ+クラシカルアプローチ)…のどれにも収まらず、まさにYES初期だけに固有だったポップ/フォーキー/クラシカル/サイケのクロスオーヴァーする音をそのまま継承。コンパクトめな尺の中にもフラ〜ッと変な方へ行ってしまう展開がマメに挟まれていて、ひとくちにプログレとも何ともいえない感じです。物凄く変なギターポップだと思って聴けばよいんじゃないでしょうか、というか今これを、アナログシンセに囲まれて寝起きするような宅録野郎が新作としてホレどうだといって出してきたら、おーってことになるんじゃないでしょうか?ならないか…。ともかく、結構いいです。GENESISファンが実はアンソニー・フィリップスのソロも必聴であるように、髄まで愛するYESファンは聴いとくべき。

  11月6日
収穫はなし。ヒマな時間を送るのがこわいというほど忙しい人もいるのに、いま自分は漫然とPCに向かって何をやっとんだろうか、と思ったときはギターの練習をすることにしています。運指練習好きです。

【本日のレビュー:URGE OVERKILL「STULL EP」】


TOUCH AND GOクラシックスでございます。URGE OVERKILLというのはよくわからんバンドで、ジャンクというほど壊れきらず、オールドロックやフォークをやたら踏まえてくるものの真面目さは感じられず、2年前に書いた別の作品のレビューでも言葉に困っています。92年のこのEPはというと、1曲目からニール・ダイアモンドのど直球なカヴァー。オイ…と途方に暮れていると、ニール・ヤングがMEAT PUPPETSに加入したような曲や、SOUL ASYLUMがVAN HALENになり損ねたような曲、普通に重量級ジャンクハードコアな曲などが、いずれも実に淡々と吐き出されてきます。恐らくはこのシッポをつかませない諧謔性(しかもアメリカのロック文化に根差したもの)と、あとは生演奏の並外れたブッ太さで聴く人を沸かせてきたのでしょう。リヴァーブ病から免れたドライ&ロウな録音と相俟ってのオチなきボケ倒しが、慣れてくるとなかなか心地よい。オルタナ的空気で大手を振って闊歩してもいいんだという時代の悦びが多分に含まれてはいますが、今の耳にもしっかり有効。300円とかで見つけたら拾ってみるといいです。

  11月3−5日
▼3日はライブやってきました。計6組、変態マスロック中心のメンツに混じっての出演でしたがどうだったんでしょうか。普通に客として楽しんできたので良かったのです。リハ後の空き時間にSTIFF SLACKに立ち寄り、収穫THE LIFE AND TIMES / NUEVA VULCANOのスプリット、PIT ER PAT「PYRAMIDS」。

▼4日は昼に大学のサークルの先輩がCD探検ツアーにやって来て、そのまま駅の方へ出て夜は小規模OB飲み。OBの空気は落ち着きます、というか、知らない時間を施されるような感覚が非常に有意義に感じられます。部屋で勧めるために久々に聴いたART OF FIGHTINGがやっぱり良かったなー。

▼5日は少し前に頼んで昨日届いていたギターのブリッジとネックの装着作業。どちらも相当行き当たりばったりなやり方をし、しかもネックは安全に真っ直ぐネジ穴を開けるのが大変なのでちょっと保留中。ネットで衝動買いをし過ぎるとロクなことないんだよ、という授業料と化すかも(号泣)。それならいつ使うか判らんスペアとして飾っておこう。

【本日のレビュー:ART OF FIGHTING「WIRES」】


やっぱこれです。いいアルバム。オーストラリアの唄ものスローコアバンドの2003年作。スローコアというか単にゆっくりした現代フォークですね。高音のきれいなアルペジオをユサーユサーと小波のように折り重ねる手法は心なしか同郷のDIRTY THREEと相通じるところもあり、しかしもっとコード進行がはっきりして唄もの然とした曲作り。親しみやすくそれぞれに彫りの深い名曲を連ねてきます。ロン・セクスミスが天上人になったかのような透明で厚みのある歌声もひたすら素晴らしい。心に隙のある人がうっかり没入モードで聴いてしまうと泣き濡れて寝れなくなりそうな温かさ、穏やかさがあります。順当にいけばジェフ・バックリーやPLUSHあたりのファンにオススメしたいところですが、これは自分は何々ファンとかいった意識を捨てて、人の子なら誰にでも聴いていただきたいくらいですな。老若男女オールシーズン、心のサウンドトラックにどうぞ。

  11月2日
本日の収穫、ブックオフ栄生店にてDEATH「THE SOUND OF PERSEVERANCE DELUX EDITION」(ライブDVDつき限定盤!)、DON HENLEY「I CAN'T STAND STILL」、URGE OVERKILL「STULL EP」。ヘッドバンギングのあとには筋肉痛、怖いのは筋肉痛よ。ということで、ライブ翌日(および翌々日)の筋肉痛に悩まされないように、また10分1000円のとこで髪短くしてきました。遠心力がかかると髪の重量も結構バカにならんのですよ。

▼↑で購入のDEATHのライブDVDを早速見る。チャック・シュルディナーかっこいいなあ…。

【本日のレビューその1:TRETTIOARIGA KRIGET「TRETTIOARIGA KRIGET」】


「30年戦争」というバンド名がカッコイイです。リリースは74年、スウェディッシュプログレの伝説盤っすね。クリムゾンの初期から第3期までのおいしいところをグガッと凝縮して、更にジミヘンばりにグオングオンとうねる破滅型ジャズロック。シンセは不在で、ボギボギに歪んだベースとサイケに弾きまくるギター主導で不協和音と変則拍子にまみれながらハイテンションに転げ回ります。かと思いきや時々スッと引いてジャジーなコード使いでクールダウンもかましてきて、ドラマの波の流れ作りが半端でなく巧妙。あー大変だ、SWEEP THE LEG JOHNNYもGOLDENも立つ瀬なし。時々入るヴォーカルは軽くヘタになったピーター・ハミルみたいで、これまたマイナープログレらしい味わい。これもう全然2006年の今イケてます。あまりマニアックにのめりこんで密室くさくならず、暴力性を常時キープしてるのがイイんじゃないでしょうか。THE MARS VOLTAとかの影響でどんどんプログレOKになってる昨今、周りと差がつく1枚っすよ。

【本日のレビューその2:WADADA LEO SMITH「LAKE BIWA」】


2004年、地雷率高めのTZADIK COMPOSER SERIES。しかもワダダ・レオ・スミスとなると更に危険が増すわけですが、参加陣の豪華さにつられて買ってしまいました。御大ジョン・ゾーンをはじめマーク・リボー、クレイグ・テイボーンジェイミー・サフトジェラルド・クリーヴァースージー・イバラなどなど。ヴァイオリンやチェロ、テューバなども加えた編成で、そこはかとなーく日本っぽい風情と色彩感に仕立ててます。もったりと長いフレーズをユニゾンでなぞったり、拍に従わずランダムに飛び交う鼓笛を再現したり。フリージャズ/現代音楽と雅楽との自然な親和に取り組もうとしたんでしょうか。結局インプロパートになると彼らの言語で進行するわけで、和アプローチは単なるお題の域に留まっている気もしますが、薄っぺらいわけではないし、長尺なのに要所要所丁寧に形づくられたコンポジション自体が秀逸なので、そこを楽しめばよいでしょう。BLASTティム・バーンてな世界か。ラストの曲は何故か"Africana World"というタイトルですが、タムがドコベコと乱れ打たれるツインドラムのサバンナ模様がえらいカッコイイです。

  11月1日
収穫はなし。まとまった宣伝を書いた途端に月が変わってしまいました。ライブのお知らせは先月末日の日記後半をご参照下さい。

▼朝、見慣れない市外局番から携帯に着信。どうせかけ返しても自動音声で出会い系がどうのとか…と踏んで無視していると、留守録にメッセージが。曰く、「あ〜俺だけど、」俺?「例のコンクリートの****、*******しといてねー」。思いっきり土建屋の業務連絡だったので、かけ返して親切に「間違った番号にメッセージ入れてらっしゃいますよ、何番におかけでしたか?」とやるのは面倒でそのまま放っときました。今頃誰が怒られてるんだろうか。ごめんね。

【本日のレビューその1:RAZA DE ODIO「LA NUEVA ALARMA」】


SADISTといえばメロディックデス黎明の頃にイタリアから登場した異端バンド。80年代中期から活動していたNECRODEATHというカルトスラッシュバンドのドラマーと、ネオクラ系の速弾きもこなすギタリストを擁し、緩急が激しくインテレクチュアルなスタイルを身上として、泣きに拘る北欧勢とは一線を画していたのでした。そのNECRODEATH〜SADISTのドラマーと、SADISTの初期シンガーだった人とが新しく始めていたのがこのRAZA DE ODIOです。フラメンコをたしなむブラジル系ギタリストがいるせいか何故か歌詞はポルトガル語中心。でパーカッションやトライバルなリズムなどを導入し、思いっきりSOULFLYやBRUJERIAに感化された(オフィシャルサイトにわざわざそう記してある)ヘヴィスラッシュをやってます。SADISTのあの閃きを思うとこういう方向に行ってしまったのはやや残念な気もしますが、ペソのドラミングの冴えはやはり保証つき…と思ったらNECRODEATHが忙しくて早くも脱退済みだそうです。何。SADISTの夢の続きは追えませんけどもとりあえずペソのファンは買っておいて下さい。このアルバムではまだ叩いてますので。フラメンコギター+高速2ビートで爆走するハイパー・デスラッシュ・チューンなんかも後半に入っててそのへんは面白いです。あら、S.O.D.の"United Forces"のカヴァーもやっているのね。フォーセー!

【本日のレビューその2:SADIST「TRIBE」】


ということで本家SADISTいきます。今回は一世を風靡したデビュー作ではなく2nd。これがリリースされた96年当時といえば、「グランジに転ばないでいるメタルの活路はデス化かプログレ化のふたつにひとつ」とばかりに、世界中のアングラシーンからのし上がってきた有象無象のデスメタルバンドと、DREAM THEATERに触発された亜流プログレメタルバンドで溢れかえっておりました。このSADISTはそれらのクロスオーヴァーをいち早く実践したバンドで、かつ独特の世界観とハイセンスでもって早くも完成形にもっていってしまったのがこのアルバムなのです。

 その内容には今でも驚きます。サスペンスドラマのオープニングの如く変にミステリアスなコード使いの多用、複雑極まりない変拍子、激展開、猛烈なテンションの絶叫デス声と速弾きリードギター、舞うシンセ、しかもプロダクションまで含めてどこもダサくない。MAHAVISHNU ORCHESTRAとCRIMSON CURSEの奇跡的な結婚か。芯は確かにメタルですが、BAUHAUSやDEPECHE MODEみたいなあやしさやフュージョン的な軽妙さも交えてメタル純正培養っぽくない不敵な余裕があり、極上のプログレッシヴ・マスロックとしてもしっかり機能します。随所で炸裂するベースの高速フレットレス指弾きがクール。ATHEISTやCONFESSOR、PESTILENCEなどと並んで、いま各界の変態サウンドをお探しの向きにメタル畑が絶対の自信をもってオススメする筆頭チョイスです。MESHUGGAHに感化されてかヘヴィポリリズム路線にガバッと振った次作「CRUST」も同様にグレイト。マジでこれはドンキャバのヒマゴみたいなのを熱心に拾い集める前に是非聴いて頂きたい。

最新に戻る 他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama