物色日記−2005年1月

※頻出語句解説はこちら
  1月31日
本日の収穫、バーゲン中のグレ・ヒ今池店にてKEVIN AYERS/JOHN CALE/ENO/NICO「JUNE 1, 1974」、SANTANA「AMIGOS」(リマスター!)、EARTH AND FIRE「EARTH AND FIRE」、EYEHATEGOD「10 YEARS OF ABUSE (AND STILL BROKE)」。大寒波か花粉かどっちかにしてもらいたいんですけど。

【只今のBGM:EARTH AND FIRE「EARTH AND FIRE」】


ブギーワンダーランドのEW&Fとは何の関係もない、70年代のオランダ産プログレバンドの1st。のちにややシンフォ化するようですがここではREPERTOIREからの再発が似合う英米模倣型サイケ/フォークロックベースのことをやってます。女性シンガーが逞しくフロントを張ってるせいか翳りを薄くしたAFFINITYみたいな趣きもありつつ、大筋ではとっ散らかった初期PINK FLOYDてな印象も。この何ともいえない辺境的なドン臭さ、誤読感の中に、唐突にGENESIS風の牧歌クラシカルなオルガンが出てきたりはたまたサバスばりにアンホーリーなファズギターリフが混入したりと規格外のサプライズがあるから大陸プログレはやめられません。加えて「ポップミュージックにおいて無難な定型リズム」がまだ確立していなかったか、あるいはこぞってそれを打破しようとしていた時代らしい、今やあり得ないユニゾンやキメなんかも非常に新鮮で興味深い。ロック洗練の歴史の過程でオミットされてきたゴツゴツした部分なり成功しなかった自由な試行錯誤の跡なりに出会えるという点で、REPERTOIRE買いはとても楽しく思ってます。話逸れてきましたがこの盤、後年リリースのシングルB面がボーナスとして大量収録されてまして、より叙情性が増しているそっちの路線もなかなか。YESの誰も真似しないような部分に似てたりとここでもツッコミどころには事欠きません。結局プログレ/レトロックを一通りたしなんでおかないと細かいところまで笑えない内容といえばそれまでですが、博物館に陳列するにはこれ以上ない遺物ともいえます。マニアにこそ価値の高まる一枚。

  1月30日
収穫はなし。夜23時頃、コインランドリーに走って向かう途中手にさげていたカゴから黒い靴下(未洗浄)をポロッと落とした大学院博士生風の男性に、落としましたよ〜っといってその靴下を拾って自転車で追っ駆けて届けたら「すんません、こんな汚いもん」と凄い礼を言われたのが印象的な一日でした。あと覚王山奥にある一見怪しげなカレー屋「デリー」が常々気になってた人がいたら、意を決して入ってみることをお勧めします。インドかイタリアかといったらイタリア!

【只今のBGM:MARZ「WIR SIND HIER」】


KANDIS、SENKING、HAUSMEISTERなど、焦点は絞れてるもののいまひとつパッとブレイクできそうな要素に欠けるリリースが多かったドイツ産和みエレクトロニカレーベルKARAOKE KALKに、DISCHORDにおけるQ AND NOT Uの如くズバンと現れた救世主・MARZの待望の2ndです。前作「LOVE STREAM」はトイポップテイストを多分に含んだアコギ主体のフォークトロニカの超優良盤で、私も気に入って結構繰り返し聴きました。今回はその路線のまま更にソフィスティケイションが進んで幅も出たような、理想的な成長のあとが見られる作品になってます。バンジョーやホルンなど使用楽器が多彩化する一方でテクノ然としたビート感が大胆にフィーチャーされる機会も多くなり、それぞれのイメージを形にするために必要なことは何でもやったというような濃いこだわりがバッチリ確認可能。一定のイクイップメントのもとでコンポジション自体に変化をつけている様子だった前作よりもっとダイレクトに作り手の意識が伝わる仕上がり具合です。ちょっと音数増え過ぎかな?と思う場面もあれど、耳をすませばその組成はドイツらしい「こどものバイエル」風の素朴なフレーズばかりでどこまでも親しみやすい。アーバンなクールさいっぱいのMANITOBAみたいなのとは対極というか、全く異なる環境で育ってしまった生き別れの双子の兄弟のような存在。もうフォークにドップリ浸かったエレクトロニカなのかエレクトロニックなエディット手法をしこたま覚えたインストフォークなのか判らん次元の掟破りな一枚になってしまいました。TRISTEZAよりもUNWED SAILORよりも甘美。

  1月29日
▼今池ハックフィンにてMELT BANANA見てきました。先週のTHE ETERNALSから続いた今月のライヴ3連発のシメでございます。ではまたリポートをば。

▼今回は計5バンドというイヴェントなので、まあ開演ちょうどに行ってもトリ目当ての客なんか全然いなくてガラガラなんだろうなーと思って少し遅まきに到着すると、受け付けを経て進入したフロアは目を疑うほどの超満員、しかも1番手のヒズミ小屋は予定通りに演奏開始したらしく私が入ったときにちょうど終わるところでした。外にいる時にうっすら絶叫と破綻したキーボードが聞こえていたので恐らくはCRIMSON CURSEのようなことをやっていたのでしょう。チクショウ見たかったな。続く2番手はURTHONAのチャーリーさんがベースを担当するDANCEBEACH。BLACK FLAGやPITCHFORKのカヴァーをやるという話を耳にしていたのですが、アレンジを加えたヴァージョンをオリジナルも交えてやっていたのか、全曲自己アレンジのカヴァーだったのか、判らなかったもののとにかくチャーリーさんらしい屈折サウンドの、URTHONAに絶叫ヴォーカルを加えてやや直線化した感じのことをやっていました。座って聴いて興奮するのに向くような悠長なテンションゆえか客はさほど沸いていなかったようでした…。拍手のタイミングが難しい曲間の取り方だったせいもありましょうが。

▼続いては寺井氏a.k.a.GOFISH率いるNICE VIEW。MCで言ってましたが10年選手とは知りませんでした。これがなかなか、不穏インテリな音選びのリフとわーっと声をあげたくなるフック連発の、非常にクオリティの高い足踏み外し系ファストコアで痛快だった!演奏は一枚岩の如くビシッと統率が取れ、ツインヴォーカルによる煽りもフロア満杯のモッシュ野郎共に強い威力を発揮。2・3曲済んだあたりからサーファーやダイヴァーもガンガン現れるほどの盛り上がりとなりました。最後をシメた新曲はメジャーキーが不敵に響く佳曲で、今年前半に予定されているというフルアルバムリリース後も活躍が期待されます。

▼4番手はTHE FUTURES。ぺらぺら単音リフなんかも平気で使いつつ気楽なんだか凶暴なんだか判らないテンションで激疾走ブラストを繰り出す、BORN AGAINSTのなれの果てみたいな音楽性で、これまたファンが多いらしくフロア前方が完全にモッシュピットと化すほどの白熱のセットとなりました。善人会社員風のヴォーカル氏はマイクを握ったままクラウドサーフを決行したせいか戻ってきたら額から流血してて、それでももう1曲やってたからハードコアの人ってタフだなあ。

▼そしていよいよメインのMELT BANANA。ギターのアガタ氏は「ドラゴンヘッド」に出てくる変な人みたいなマスクを着用し気合充分。ヴォーカルのヤスコさんは城之内早苗と楠美津香の中間のような顔立ちのお方でした。ギターのノイズ一発で客は大沸き、曲が始まるとしばらくは面食らった感のあった客もすぐにモッシュを開始。ヴォーカルは想像したより全然取り乱さない安定したパフォーマンスで、もっぱらアガタ氏のギターがいかに自由自在で音楽的かを目の当たりにして私は脱帽しきりですよ。音源どおりにコントロールされる解析不能ノイズの殺到は本当に驚異的でした。(手元足元は全く見れなくてテクニカルな謎が一切解けなかったのだけが無念。)ブチブチに寸断された高速ビートを難なく叩ききるドラマー氏も壮絶の一言、ベースは小柄の女性ながら堅実以上の見事な演奏。やった曲は最新作からのチョイスが中心だったようで、耳に覚えのある曲が殆どなかったですが、速くて短い音楽にそんなもの関係なし。おえースゲ〜と見入りに見入ってました。DEVOのカヴァーも挟んで本編が終了、アンコールは2曲やって、更に止まない拍手で何と2度目のアンコール!BEACH BOYSの"Surfin' USA"も飛び出して客は熱狂。モッシュピットがピーク時でフロア3分の2くらいまで拡大するほどの壮絶さでした。ダイヴァー達もヘトヘトになってやっと完全終了。混雑がずっと酷くて空気も悪かったのでそそくさと退散致しました。

本日の収穫は物販にてMELT BANANA「CELL SCAPE」、あとバーゲン中のバナナ大須店でMARZ「WIR SIND HIER」(KARAOKE KALKフォークトロニカ待望2nd!)。そしてライヴ写真でございます。↓

↑NICE VIEW、GOFISH氏絶叫中

↑THE FUTURESはイカれてる

↑ボケてますが、ヴォーカル氏流血のアップ

↑MELT BANANA!
 それにしてもハックは爆音ですね。Q AND NOT Uの時もこんなガチガチにしなくていいのにっていう凄い音になってて、微妙な部分がわかりづらいほどだったのを覚えています。来たるMEDICATIONS名古屋公演はもうドラムの生音が聞こえる最前列を真っ先に取るしかない。

【只今のBGM:MELT BANANA「CELL-SCAPE」】


2003年リリースの目下の最新作。前作「TEENY SHINY」から突き抜けたポップさが特に顕著になってきてたところで、安易に開き直りスローダウンなどは敢行せずあくまでノイズリフのキャッチー化&ヴォーカルラインのフック設置を頑張った、入魂の最新版MELT BANANA実録盤となっています。悪かろうはずもなし。やけに分離が良く過剰コンプも控えめにしたプロダクションのせいか、ヴォーカルに「SCRATCH OR STITCH」を初めて聴いたときのような驚愕のテンションが感じられないのがちょっと残念ですが、「かわいいから好き」的女性ファン(ライヴ会場にも結構いた!)にはこれが親切なんでしょうか。逆に演奏面ではこれだけクリアに録れててこの圧倒的迫力かと、ヴェテランプレイヤー集団としての実力を見せつけられる結果になりました。ブラストとカオスなエフェクツを完璧に飼い馴らすこの手腕はもうPIG DESTROYERもTHE FLYING LUTTENBACHERSさえも黙らせるほどの貫禄。10年以上のキャリアでこの気概は本当に見上げたもんです。日本の宝ですな。

  1月28日
収穫はなし。1月も終わり近いっすね、1年を24時間に例えたらもう午前2時近く。「OPERATION:MINDCRIME」に例えたら"Revolution Calling"始まってちょっと経ったくらいですな。何だ、まだまだじゃん。それにしても3月にCATUNE招聘でMEDICATIONS来日とは…!

【只今のBGM:SIEGE「DROP DEAD」】


ボストン産ファストコア伝説バンドのアンソロジー盤。ブラストを使った世界最初のバンドの一つとして名高いようで、初期NAPALM DEATHなんかは確かにこのまんま。トトトト…としか表現出来ない非人間的なのじゃなくてあくまでスタスタスタという2ビート感が残る程度のスピードではありますが、つんのめりまくって全然合ってないヴォーカル、ヤケクソに弾き殴る感じがひしひし伝わるリフと相俟って、体感速度は相当。乱暴極まりないストップ&ゴーもスラッシュメタルじゃ聴けない痛快さです。TERRORIZERもASSUCKもMELT BANANAもこのバンドなしでは存在し得なかったのだろうかと思うと感慨しきりですね。ファストコアってエキセントリックなことに走らない限り高性能化と没個性が隣り合わせだから、私のようなペーペー門外漢としてはこういうオリジネイターを効率良く押さえときたいところ。ちなみにラストにエセP.I.L.みたいな、サックスとダブノイズが暴れるダウナーな長尺スロウチューンが収められてまして、あーパンク出身なんだなあ〜としみじみします。

  1月27日
本日の収穫、サウンドベイ上前津にてDIRTY THREE「DIRTY THREE」、THE CARIBBEAN「HISTORY'S FIRST KNOW-IT-ALL」、THE ANOMANON「MOTHER GOOSE」。死んでも治らぬ愚君小泉君を揶揄する報道をする古舘伊知郎がむしろ全然喋れてない「報道ステーション」はハリセン係を配備すればお笑い番組になるのにと思います。「とくダネ!」木曜日に勝るものなし。そういやオジーがまたドラッグ中毒のリハビリ施設に通ってるらしいですね…しょうもねー。とひとしきりしょうもないTVネタでお茶を濁してみましたけども、最近少しずつ日が長くなってきてイイ感じだなあと思いながら暮らしていますよ。

【只今のBGM:DIRTY THREE「DIRTY THREE」】


仕事人ミック・ターナー率いるインストサッドコアトリオの95年2nd。この頃からジャケデザインはミック自身が手掛けてます。さて地元オーストラリアはメルボルンにて録られたこのアルバム、ヨーロッパ山岳トラッド風ジャズロックがクリムゾン的に暴走したような1曲目で始まっていきなり意外。それ以外にもギターが普通にコードストロークなんかしちゃうような今なら絶対やらない感じの曲を交えつつ、波・雲・風・船の流れ/移ろいが混沌と絡んで微細に変化し続ける海辺の情景を見せるようなボヤケビート、ドローンアルペジオ&非メロディ持続音の三者が組み合うDIRTY THREEサウンドを既に完成させてます。(聴き進んで判ったんですがやっぱりこっちの方が割合大きいです。)アメリカンフォークっぽい大らかな泣きを多分に含むせいか、ジョン・フェイヒイみたいな人の音楽をバンドで立体化したらこうなるかもという感じもあり。とりあえずいわゆるポストロックとは県境またぐくらいのユニークな立ち位置にいる人達だと思います。今や散々シブいのに初期はこんなに気張ってたという記録として見るとまた非常に面白い。

  1月26日
▼さて行って参りました今池得三にてロブ・クロウ。またレポート書いてしまいます。前座は今回54-71のみ。いい加減短期間に何度も見てもそう変わらんなーという感想でしたが、いつも通り安定して上手いし曲も(だんだん神経衰弱状態になってくるけど)面白い。トリオになってから却って幅が出たのでは。しかし先日のTHE ETERNALSの一小節まるまるブレイクからバッと入る見事な息の合いようを体験してしまったせいか、ドラマーがクチで「ドゥツパツ…」とか言ってるのはズルだよな、とちょっと思いました。あそこが無音になったら私は降伏しますよ。

▼んでまずはロブ・クロウの単身アコースティックセット。MISFITSのシャツに丈長めのハーフパンツしかも肥満というアメリカンなスタイルで登場し、セッティング中からもうガンガン英語でボケ倒し。チューニングしてる音に合わせて歌いだすわ、やっと落ち着いたと思ったら「外国でも使えるPSP知らん?新しいプレイステーション。あれがあったら部屋でも遊べる」とかどうしようもないことを連発するわ、まあそんなこんなでいきなり歌い出してステージ開始。音源で想像したよりも気張った歌い方で、ギターはヴォーカルラインとのユニゾンとかを上手く交えながらアコギらしくないアルペジオを高速で繰り出す力技タイプ。今回のツアーの企画者とおぼしき女性を度々ステージそでから呼び出して、次に演奏する曲が何について歌ってるのか通訳させるんですが、「コナン・ドイルは作家やってなかったらただのおかしい人っていう歌」とか「STAR WARSの『ファントム・メナス』には心底ガッカリしたっていう歌」とかそんなんばっか。後半MISFITSの"Astro Zombies"、MINOR THREATの"Minor Threat"のカヴァーなどを挟みつつ手短めにソロセットは終了。そういや途中、私が着てたTシャツに気付いたロブが「おっDARKTHRONEのTシャツイカスね。ブラックメタル、デスメタル聴く奴いるか?グォーブルブルブル…」とひとしきりネタにしてくれるというハプニングもありました。いやあ、狙って着てった甲斐があったな。

▼続いてHEAVY VEGETABLE、THINGY、SNOTNOSEなどの曲をやるというフルバンドセット。ドラマー氏が微妙な前髪してんな〜と思ったのはどうやらMISFITSの真似だったらしく、またもやMISFITSのカヴァー"Chough/Cool"でスタート。その後も聴き覚えのない曲が続き、何と新曲(何名義?)さえ披露してたようで、皆知ってるあの曲この曲で盛り上がるということはあまりなし。予想してたような早回しバタバタ変拍子もあんまり聴けませんでした。まあしかしPINBACKでやってもおかしくないようなカッコイイ普通の曲も混じってて、お〜外タレやーという感慨に値するものは充分あったと思います。バックメンバーの面々がもうDEERHOOFやPELEをしのぐ田舎くささで笑えた。右利き用セットにそのまま座る左利きのドラマー氏はライドを叩くときも腕をがばっと交差させる頑固者で、大きなバッテンを作りながら必死こいて叩く姿は何だか壮絶だったなあ。4人になってもロブのジョークは快調で、「俺のホームタウン、アーノルド・シュワルツェネガーが州知事だぜ。ターミネーターがよ。ジーザス」みたいに判りやすいネタでどっと笑いを買ってました。

▼そしてオマケとばかり思っていたOPTIGANALLY YOURS。マイクスタンド2本を利用してバンド名とオプティガンのマークをでっかくあしらった幕を張りだしたので、これの前でちょこんと座ってやるのかなと思いきや、バック演奏全般担当氏はステージ端にオフィスのデスクよろしく(何故かカッターにネクタイ姿だった)演奏机を構え、ロブとさっきのドラマーとベーシストは幕の後ろで何やらごそごそ。そういえばドラマー氏はずっとズボンから網タイツの端らしきものがハミ出てて、コイツ変態かと思ってたんですが、ここで着替えるための仕込みだったことが判明します。結局ロブはトレンチコートの下にレトロな女性服、あとの二人はおばさんっぽいワンピースに動物のお面で出てきて、淡々と再生されるオケにあわせて歌って踊りまくりのステージとなりました。ほとんど曲ごとにネタを変えてて、全部説明するのは徒労なので少し下の写真を見て頂きたいのですが、もう何だか途中で宴会芸か学芸会か判らん感じになってきて若干マジ引きも入りつつ「イヤ、遠い異国の地でメイド服にサルのお面被ってステージ上をころころとデングリ返しする30代(推定)なんてご苦労様だよな」などと考えたりもし、とりあえず拍手と声援は手厚くしておきました。ライヴというより見世物だったのは間違いない。とうとうパンツ一丁になって本編を終え、アンコールの拍手に呼び戻されて再び弾き語りで披露したのは何とPINBACK「BLUE SCREEN LIFE」収録の名曲"Penelope"!今日一番の感動はこれでした。やっぱPINBACK見たかったなあ…という意外な後味を噛み締めつつ、西海岸ハイテンション倒錯インドア野郎の一大エンターテインメントに満足して家路に着きました。

▼では今回の写真。撮りどころが多かったので大量掲載です!

↑まずは54-71。今日はオールバックじゃないですね

↑弾き語り。隠れてる左足は靴下の色が違う

↑バンド。左手にあと一人影の薄いギタリストが

↑OPTIGANALLY YOURSその1…ポーズでキメッ

↑その2。みんな怖がるプードル男だそうで

↑小道具のお手伝いに急遽呼ばれたSTIFF SLACK新川氏!

↑アンコールはとうとう裸一貫でマジ絶唱…腹毛モシャモシャ
 それにしてもボビー・コンもこんなんだったし、トラヴィス・モリソンもこういう過剰ショウ系だと聞いた(城みちるを思わせるらしい)し、アメリカじゃこういうやり方が流行りなんですかね?「クリス・コーネルは笑わない、グランジは全員しかめっ面」なんて言われてたのも今は昔の話ですな。

本日の収穫はまず今池P-CANにてSIEGE「DROP DEAD」、ALCATRAZZ「LIVE SENTENCE」、会場物販でROB CROW「MY ROOM IS A MESS」、それと帰宅したらアマゾンから届いてたLOU BARLOW「EMOH」、ERICS TRIP「FOREVER AGAIN」、JONI MITCHELL「MINGUS」、THE SPEAKING CANARIES「GET OUT ALIVE: THE LAST TYPE STORY」。

【本日のレビューその1:ROB CROW「MY ROOM IS A MESS」】


去年あたりに出ていたソロ2作目。ほぼ弾き語り一辺倒だった1作目と違って今回はリズムマシンを使った模擬バンドサウンド仕立てあり、やっぱりアコースティック弾き語りありと様々にやり方を変えてやってます。基本的にどの乗り物に乗ろうともこの人のカートゥーン、ビデオゲーム&ミスフィッツなクルクルポップスタイルは不変なので、これを聴いてもPINBACKじゃん、一人THINGYじゃん、みたいなののオン・パレードになっとる訳ですが。短い曲をいとも容易く作っては吐き捨てるような創作スタイルはなんていうか娯楽産業大国アメリカらしいですね。ソロ名義なだけに好き勝手度は他のプロジェクトよりぐっと高くて、インチキデスメタルみたいなのが全18曲中3曲目という大胆なタイミングで出てきたりともうムチャクチャ。この人の部屋の中もこんなんなんだろうなーと思わせてくれるという点ではソロ作品としてとても好ましい出来になってるといえるでしょう。HEAVY VEGETABLEから何から全部集めてまだロブ・クロウ節が足りなーい!という人向けの一枚かとも思います。

【本日のレビューその2:LOU BARLOW「EMOH」】


不意を突いて出ましたソロ作。LOOBIECOREを時々チェックしてたので出ることは知ってたのですがある日アマゾンでいきなり予約可になってたので予約し、発売とともに到着です。さて今回はソロといっても大勢のゲスト陣(FOLK IMPLOSIONのイマード、SEBADOHのラス&ジェイソン、妻アビーほか計9名)を迎えてしっかりバンドアレンジを施した作風になっておりまして、曲・サウンドともにFOLK IMPLOSIONとSENTRIDOHの中間点のような印象。ブックレットには「this is loobiecore vol.2」と記されてるので、一昨年かその前あたりに出たSENTRIDOH名義の白いやつの続編なんでしょう。そういえばサイトで公開していた曲のタイトルもちらほら混じってる気がします。基本的にルー先生はほぼ全曲でアコギを手にしてまして、元々ベーシストだということを忘れるくらい達者。片やヴォーカルはもうどんどん上手い!毛布のように柔らかく届いて上ミノのようにいつまでも残るこの声を他に誰が持ってるっつーんでしょうか。すっかり円熟の歌人ぶりに、DEEP WOUNDでの絶叫やダイナソー1stでのヘタヘタヴォーカルを思うと泣けてきます。FOLK IMPLOSION近作っぽいパーカッションその他の装飾要素がいくら入ってても、ちょっと想像を働かせればギターと声だけで演奏するヴァージョンが聞こえてくるような、パーソナルな独り唄づくしのアルバムでもう、ファンとしては1000回賛辞を送っても足りないくらい最高なんですなあ。以前ブライアン・アダムスをカヴァーしてたことがありましたが今回は何とRATTの"Round And Round"を取り上げてまして、何らの違和感のなさにまた白旗。素晴らしいなあ、こんなもの自宅やそこらのスタジオでぼちぼち作って暮らす生活ホント憧れます。なりたい有名人はルー・バーロウです。

  1月25日
収穫はなし。またアマゾンの話ですけど前日夜「まもなく発送されます」になっててヨシ今日は届くかなーと夜家帰って届いてなかったときのガックシたるやもう最低。近頃はカイマンが熱いらしいです(海外からだから送料が高くつくと思ってたけど普通に340円でイケます)。今日は友人宅で久々の聴き会をしてきまして、ここのところの個人的ナンバーワンレーベルだというFRESH SOUND NEW TALENT関連がどれも良かったりしたなあ。何言ってるか全然判んないオネーチャンと一瞬話が通じたりするとたまらんよねと誰ぞが言っておりましたが、喋れないなりに喋れるようになったかもくらいのちっちゃい子供と会話すんのは実に楽しいっす。2歳にしてIRON MAIDENが大好きらしい。

  1月24日
▼今日も収穫はなし。今月はリアル物色が少ないですね。というのもアマゾンで10枚強発送待ち、mapで二階堂和美ボックス予約済み、2週間以内に3件続くライヴラッシュと出費が約束されておるからです。あと外寒いし。冬至過ぎたんだから早く夏になって下さい。

【只今のBGM:THE ANOMANON「THE DERBY RAM」】


オールダム家のネッド君がリーダーをとるバンドの2004年作。スペインのHOUSTON PARTY盤を買いました。殆ど何のヒネリもなくCSN&Yやディランを再臨させんとしたようなオールドアメリカン・フォークロックをズラズラーッと、と説明するのももはや不毛なPALACEサウンドそのものです。ウィル兄a.k.a.ボニー・"プリンス"・ビリーよりもっとポップな曲調がメインで声もやや張り気味なのが違うところか。スローコア的な重い静寂がのしかかることはあまりなくて、悪く言えばアクが弱く、良く言えば親切。しかし演奏にしろ何にしろホントに堂々たるものです。恐るべき引き出しの多さで曲のツブ立ちもいいし、殆ど全く新しさのないことを敢えてやろうとしてるのにそこに潔い信念がしかと感じられます。レプリカの確信犯としては最上の部類でしょうね。あまりに全部同じなために全部集めてしまいたくなるPALACEマジックに囚われた者なら当然買わざるを得ない。おっと聴き進むうちにサイケ化ドロドロカントリーから酩酊ジミヘンにすり替わるみたいな物凄い展開も出てきましたよ。まあ侮れないってことで。

  1月22−23日
収穫はなし。怠慢気味で済みません、今日はレビュー奮発しときます。さて、このバウンスを終わらせたらミックスダウン出来るヨシ!と思ってたとこでブレーカーが落ちてMTRの電源も当然切れて、その日作業した分が一発で御破算になってしまったという涙ぐましい挫折を経験したことはありますか?私はあります…冷暖房と電子調理機器とのコンボには要注意です。そんなどうでもいい話は本当にどうでもいいとして、今日のレビューはTHE ETERNALS余波と昨日のLIVING COLOURを受けて、往年の看板コンテンツ「3枚レビュー」(今読み返すと相当ムチャクチャなこと書いてあるので封印したいくらいですけど)風に「黒人メンバーのいるロックバンド」ということでいってみました。何故かHM/HR系ばっかでしかも4枚になっちゃいましたが。ではどうぞ。↓

【本日のレビューその1:THIN LIZZY「NIGHT LIFE」】


まずは何といってもこの人達でしょう。アフロの黒人シンガー/ベーシスト、フィル・ライノット率いる言わずと知れた名バンドです。初期は殆どハードロックのハの字もないようなことをやってたという事実が結構見過ごされてる気がするので今回はこれを選出。DECCA時代の3枚を経てVERTIGOに移った今作は、随所にHR的アプローチが増えてきたもののまだR&Bやソウル・ポップ、ブルーズからの影響が色濃く残ってまして、アコギが軽快な1曲目"She Knows"なんてクリス・リーがやってもおかしくない雰囲気だし、6曲目"Showdown"に至っては激クールなチルアウト・ファンク!代表曲のひとつとして残っている哀愁スローバラード"Still In Love With You"がこのアルバム全体の中では却って浮いてるようにさえ思われます。彼らの魅力の要となるフレンドリーなアイリッシュメロは既に健在。次作「FIGHTING」でツインリード満載のハードロックにがばっと目覚め、その後の大名盤「JAILBREAK」で完璧に大成する、その前夜のアルバムとして何とも言えない曖昧な趣きがたまらんです。

【本日のレビューその2:SUICIDAL TENDENCIES「THE ART OF REBELLION」】


クロスオーヴァーといっても各ジャンルで色々ありますがこの人達はスラッシュ/ハードコア・クロスオーヴァーの第一人者ですな。ギタリストのロッキー・ジョージがちぢれ長髪の黒人であります。スラッシーなヤケクソハードコアスタイルから徐々に整合感を増してきてM.O.D.やDEATH ANGELと比べても遜色がなくなってきたところで、避けては通れないブラック・アルバムの洗礼を経て完成したのがこの92年作。彼らなりのスローダウンを敢行しとる訳ですがこれが興味深い。ベースは一人でとにかくファンキー、ギターは完全メタリック、人を小馬鹿にしたような気の抜けた高音でアジテイトしてきたバンダナ男マイク・ミューアはこれまでに増してメロディらしいメロディを歌うようになり、その歌心がパンク由来のシンプルなツカミのあるものだったりするから、それらが組み合って展開されるミクスチャーサウンドのギリギリ度は半端ではない。何のことやら判らず当惑するほど所在不明の音になっとります。それがストレートな魅力になってるのかというと少々難しい部分もあるんですが、このポスト・スローダウン感覚を保ったまま硬質メタル路線で再度仕切り直した次作「SUICIDAL FOR LIFE」は文句なしの傑作。

【本日のレビューその3:KING'S X「EARCANDY」】


何度も大推薦してるバンドですがしつこくピックアップ。黒人ベースヴォーカルのダグ・ピニックと白人ギターヴォーカルのタイ・テイバーがほぼイーヴンでフロントを分けるトリオバンドです。METAL BLADEからデビューし、ダウンチューニングを使ったヘヴィリフ&偏屈アルペジオと三声コーラスが彩るポップなヴォーカルラインのマッチング、更にはジミヘンばりにラフ&ソウルフルなダグと軽くて優しい常人風の声質をしたタイのヴォーカルスタイルの対比のユニークさで、地味なワンアンドオンリーの座を欲しいままにしつつメタルリスナーからも非メタルリスナーからも敬遠されがちという哀しき三人。96年のこの作品はプロダクション的にも作風的にもオルタナ/インディロック色を強め、一方で安易な暗さや重さには溺れず豊かなメロディ感覚はそのまま活かした快作になってまして、これがもうSHINER、RIVAL SCHOOLS、TRAINDODGEあたりが好きな人には超ストライク!!!!!なのであります。ホントこれだけプッシュして未だ見向きもしてない人は早く買って下さい、このレビューを目にしたのも何かの縁ですので。このバッキングギターやトリオアンサンブル構築のセンスの良さはホント脱帽です。しかも名曲多数、文句なし。

【本日のレビューその4:SUFFOCATION「DESPISE THE SUN」】


最後はUSブルータルデス界でも屈指の技巧性を誇る5人組SUFFOCATIONの解散前ラストEPを。ギターの片割れのテランス君が勇ましいドレッドヘアの黒人です。この人達はとにかく細かい、そして太い。物凄く高速で複雑なリフやリズムを刻むのにその一打一打が沈むようにギラギラと重く、そうして放たれるおびただしい音の塊の殺傷力はもー凄いんですよ、同系統の他バンドと比べても差は歴然。ヴォーカルは一貫して重低咆哮型にこだわり、高音絶叫で安易に狂気を演出すればOKってことになってる近頃の風潮の正反対をいってます。シブイですね。スネアの音量を多少ないがしろにしてでもドスドスした突進力を取るブラストのノリ度も最高。DYING FETUSとかにつながるブルータルデスの系譜の原点として最近は一般的評価も高まる一方のようですね。イメージ勝ちしてたCANNIBAL CORPSEとかをのけて最強説さえ聞かれます。4月にNAPALM DEATHとのカップリングでまさかの来日が決定してますから当然全員GOですよ。

  1月19−21日
▼3日とも収穫はなし。20日は鶴舞K.D. JAPONにてTHE ETERNALS見てきました。以下軽くリポートを。

▼KARATEのときと同じく前座は3ついて、全部はツラいわと思って20時半に会場に着くと演奏していたのは2番手・ジョンのサン。頭弱げなノンミュージシャンズ・ハプニング・トイ・ポップて感じでした。適当が4人集まってやってんだなあって様子で、イノセントな白痴サプライズは殆ど無かったのが残念。しかしTHE ETERNALSのベーシスト氏がニタニタと楽しそうに見入ってたのが印象的だったなあ。続く3番手SU:は相変わらずPREFUSE73の焼き増し志願みたいな、ノートPCによるカットアップMCその他垂れ流し+サンプラーのリアルタイム操作+人力ドラムというスタイル。ベーシストがいなくなり、一時はツインドラムだったのが後で加入した女性ドラマー一人が残ってのデュオ編成となって、以前あった明らかな酷さは軽減されたものの、マシンと人力の絡みがちっともセクスィーでなくやっぱり燃えれず・ノレずじまい。いっそノートPC氏の音源制作ユニットと化せばいいのにと毎回(何故か前座で3〜4回見たことがある)思います。ちなみに1番手は過去2回見たことがあるTHE ACT WE ACTだったようで、多分また素敵なステージを繰り広げてくれてたことでしょう。しばらく活動休止するとかメンバーがフロアで喋ってた気がするけど真相はどうなんでしょうか…

▼んで本命THE ETERNALS、今回はデイモン・ロックス(Vo./Key.)、ウェイン・モンタナ(B./Key)と、CHICAGO UNDERGROUND DUO/TRIOでも来日したティム・マルヴェナ(Ds.)の3人という布陣。完全ノーリハだったみたいな話がセッティングを手伝うスタッフの間から聞こえてきたりしつつ、機材の多さ(シンセ3台とサンプラーあり)の割にはてきぱきと準備を済ませ、目下の最新作「RAWAR STYLE」収録"High Anxiety"で威勢良くスタート。んでいきなりフロントに立つデイモン氏のパフォーマンスが、太い!どっちかというとオバサン体型で背丈もそんなにない人なんですが、舞台役者ばりに腕をバシ!カシ!と振って全身で踊りながら、客の方をがっしと睨みつけて渾身のヴォーカルをブチ当ててきます。へべれけ風の目元をしたベースのウェイン君は不敵にごっそごっそと身体を揺らしながらカッチョイイフレーズを指で飄々と弾き出すのみ。時々シンセをいじる以外はずーっとそれでした。ドラムのティム氏は基本的に普通のことをひたすら安定して活き活きと叩く職人肌の人で、それでもたまーに鋭く繰り出される超絶スリリングなダブルストロークやマッチド/レギュラーのグリップ入れ替えには背筋凍る思いでした。あれで黒人的な濃さがあればもう文句無しだったんでしょうが、あくまでシカゴの流儀でやってるバンドであるってことで問題はナシでしょう全然。

▼それにしても各曲、大抵ずっとループしてるだけのちょっとしたサンプルを垂れ流してるんですが、メンバーの誰もヘッドフォンをつけてなくて、ほんの小っちゃいモニターから返ってくる音だけを聴いて一度たりともズレるだのズレを補正するだのといったことをしなかったのが結構衝撃でした。あとブレイクからの復帰が完璧過ぎ。一小節マルマル休んで次の頭がパーフェクトに揃うのって、外国人のリズム感からすりゃ当然のことなのか判りませんけど、それはもう見事にビタ!と揃っておりました。そういうオイシイ瞬間に限ってデイモン氏が派手なアクションで切り込んでくるからもう鳥肌寸前というか精神的鳥肌です。終始残念だったのは客の反応ですね。名古屋、静か過ぎで失礼の域です。曲が終わっての歓声一発目が殆どカトマン氏先導だったってのはヤバイと思いますよちょっと。受け手としてであっても仮にもこういう狭いコミュニティに加担してるんだから、良いオーディエンスとしてわざわざ海越えて来てくれたバンドを歓迎しようとか、毎度そんなに大黒字にもならないであろうところを良心ひとつで何とかやってくれてる招聘者の苦心に応えようとか、多少でもそういうとこに思いが及んでも良かろうに、この手のイヴェントの5つ中1つくらいしか行かず行ったら行ったでポカーンとして、そんで「誰ソレが来ない!名古屋飛ばしファック」なんて言ってちゃ都合良過ぎるわなと。拍手もロクに飛んで来ん割に演奏中写真ばっか撮ってる日本の客は何だかキモイなー再び来る気せんなーとかバンドからも思われてんじゃないかと心配になります。

▼ともあれ意外と暖かく「Thank you アリガト」とか言ってくれつつアルバムと同じ"Gussy Up Yourself"でシメ。本編終了だというのにアンコール不可が決定的な少ない拍手で、結局そのままバンドは撤退準備を始めてしまいました。単純にこの日の客はあんまりTHE ETERNALSを気に入らんかったのか?うーん寂しい町です。終演後はDLC物販でTシャツ(「RAWAR STYLE」ジャケに描かれているチーター君の首から上全景イラスト+文字)を購入し、寒い中そそくさと会場を後にしました。ということでいくつか写真をば。↓

↑踊るデイモン氏を目の前で接写!

↑3人の立ち位置はこの近さ…ウェイン君のTシャツ絶妙
 さて次回は近くて今月26日、今池トクゾーでロブ・クロウ見てきます。HEAVY VEGETABLEのレパートリーに大期待!!!

【只今のBGM:LIVING COLOUR「VIVID」】


黒人でロックといやメタラーがまず思い出すのはこのバンドです。88年の1st。いかにもこの時代らしい、IT BITESとEXTREMEをくっつけたようなソフィスティケイテッドなファンク様コマーシャルHRをやってます。ラスト作「STAIN」ではかなりカッコイイ90年代初頭型ヘヴィグルーヴスタイルに化けてたり、そもそもギターのヴァーノン・リードはジョン・ゾーンからマーカス・ミラーまで絡むマルチ仕事人だったりするわけですが、そんな片鱗はここでは殆ど見られず。ちょっとくらいブッ飛んだソロがあっても全体的にはかなり丸く収まってます。手法で見れば今やほとんど風化してると言っていいくらいの感じ。今でもこういうのって需要あるんでしょうか?ファンクネスの強靭さはかなりのものですから一概にバーゲン棚バンドとして片付けきれない部分もあります。まずは「STAIN」オススメです。

  1月18日
本日の収穫、バナナ大須店にてHUSKER DU「FLIP YOUR WIG」(85年)、LED ZEPPELIN「CODA」(リマスター)。天気が良くて宅録が順調ならいい一日です。昨日買ったミニアンプ普通に使いました。

【本日のレビューその1:CHISEL DRILL HAMMER「CHISEL DRILL HAMMER」】


ABILENE〜JUST A FIREのスコット・アダムソンがいたバンドの唯一のリリース。99年HEFTYでアルビニ録音です。HEFTYらしい潔癖マスロックなのですが、これがもう純邦楽に倣って純マスロックとでも呼びたくなるようなとんでもない内容。さながらHENRY COW化したILIUM、あるいはデジタルなエラーでブチブチにシャッフルされた挙句1.5倍速になったJUNE OF 44のような、和めない・ノレない・覚えられないと揃った超強力インストアンサンブルを大展開してます。単なる変拍子だけじゃなくテンポチェンジやクリーン/歪みバースト切り替えを使いこなしての不意を突く豹変にガクガクハラハラさせられっぱなし。かつ複雑な調性感は現代音楽かフリージャズかといった趣き。シカゴマスロックの偉大なイデア・DON CABALLEROとは大きく異なる方法論でこの完成度にいきなり到達してしまったとは驚きです。とっとと再プレスしてもらうか、せめて後の世でMUSEO ROSENBACHの如く秘宝扱いになってもらいたいものです。

【本日のレビューその2:MUSEO ROSENBACH「ZARATHUSTRA」】


そういやどんなんだっけなと思って何年か振りにプレイヤーに乗りました。アナログが高騰したレアものの代表格として名高いイタリアンロックバンドの唯一のアルバム。めでたく97年にBMGから世界流通で再発になっております。中身はもう絵に描いたようなクラシカルシンフォ。メロトロンの白玉、ハモンドにアナログシンセ、ブルーズロックの名残を引き摺る(あるいは「宮殿」クリムゾンの誤読とも取れる)バタバタした熱血パート、1曲目がいきなり20分の大曲、ヴォーカルはやけにオヤジ声、とプログレ最盛期の必須ツールが怒涛のフルコース。まどろっこしさをやや増したBANCOって感じでしょうか。ともあれ堂々とした風格とクオリティの高さで、伝説化するのも判ります。正直びっくりするような独自性がある訳ではないのですが、それを言ったらMETAMORFOSIはMAXOPHONEはQUELLA VECCHIA LOCANDAはどうなるのーって話になるので触れない約束ってことで。マニアのための達成感充足ツールという存在意義でもいいと思います、音盤購入は文化ですから。

【本日のレビューその3:HUSKER DU「FLIP YOUR WIG」】


DINOSAUR JR.の元ネタといってもいい、USインディギターバンドの先駆けとなったSST発メロディックパンクトリオの85年4th。初期のスピードと荒々しさが落ちて残ったのがモッズ〜グラムロック由来のどパンクテイストじゃなくてポップでいかつい哀愁だったという成り行きが、その後のアメリカン・アンダーグラウンドの流れを左右する大きな一因になろうとは、当人達も想像だにしなかったろうに。HOT WATER MUSICとかSTARMARKET(北欧ですけど)みたいなストレートめのスタイルでやっている今時のエモバンド達さえここからの影響が窺い知れます。さてこのアルバム、「ZEN ARCADE」と「NEW DAY RISING」の間のリリースということで、「やけに男泣きするパンク」から「パンキッシュな推進力をもった歌ものギターロック」への脱皮がまさに完了しようとするところを捉えた内容になってます。悪しきオーバーリバーブに毒されてしまっているのは残念無念。音楽的には古びてないどころか今の日本じゃもろ直球ストライクの域だと思います。20年遅れ。国産若手ギターバンドに入れ込む傍らピクシーズだマイブラだといっている人はこれをスルーしてちゃ始まりませんよ。

  1月17日
収穫はなし。ふらりと立ち寄ったコメ兵で珍品を衝動買いしてしまいました。写真左の小さいエフェクタに見えるもの、これ実はミニアンプなのです…!(右のKRAFTWERKはサイズ感確認用。)ダンエレクトロ最高。ツマミは一切なし、スイッチはON/OFFのみ、すなわちシールドをブッ差すととりあえず歪んだ音が出るという何とも男らしい代物。親切なことにアウトプットからアンプに送るとただのディストーションとしても使えるというオマケつきです。音はもうカリンカリンに乾ききったジャンクなもの。これが意外にそれなりの情緒がある音(レスポール使用、PUはバッキングがセンターでリードがフロント)してます。売価は3000円弱とくれば購入しかないです。部屋でちょっと繋いで鳴らす用にお一つ是非。

【只今のBGM:AROAH「THE LAST LAUGH」】


mapの通販で安くなってて買ったもの。スペインのACUARELA DISCOSというレーベルからリリースされている女性SSWです。ジェン・ウッドやCAT POWERみたいなしんみり翳るフォーキーなスタイルながら、マドリッド発ということでスパニッシュな熱っぽさも宿る楽器陣のアレンジが何だか新鮮。耳慣れないアクセントのアルペジオ(激ウマ!)に感動です。ヴォーカルはあんまり天上人っぽくなり過ぎない達観乙女風で割と親しみやすいタイプでしょう。時代柄IDAのようなポストロックテイストのアンサンブルにまとめられているものの、それがやりたい一心という訳ではなしに、作った歌を聴いて下さい的な姿勢がまず伝わってくるのがいいところ。異国からのスローコアフォークということで興味のある人はART OF FIGHTING辺りとあわせてチェックしてみてはどうでしょうか。レベル高し。

  1月16日
収穫はなし。船の沈む映画に泣くようなベタな真似は死んでもしない私も冬の指先のヒビワレ発生には抗えずとても残念です。MTRのボタンを押すときいちいち痛いし、タッピングが出来んとです…

【只今のBGM:SURVIVOR「EYE OF THE TIGER」】


82年3rd。映画「ロッキー3」の主題歌となったタイトルトラックのヒットのお陰で出世作となったものの、余りにそれが取り沙汰され過ぎてその後の名盤がきちんと語られなくて困るだの、それ以外の曲こそSURVIVORらしくて良いだの、ファンからは何かと槍玉に挙げられる作品です。さてそのタイトルトラック、ディスコ時代対応型の4つ踏みキックに勇壮なギターリフとお子様ランチの旗の如きピアノまでちゃらりんと乗っかって、VAN HALENにとっての"Jump"的な存在感を放っております確かに。それより赤面シンセに思わずむせ返る2曲目とかDIOがやってもおかしくない雰囲気の6曲目あたりを名曲と言い張りたがるファンの気持ちはよく判るしおおむね同感。今作限りで降板となるこのシンガー氏は、スティーヴ・ペリー似のハスキーハイトーンの持ち主でなかなか悪くないものの、この次から一気に洗練されることを知ってるせいか若干の田舎くささを感じる気もします。次の人の方がよりアメリカン・メインストリーム(当時)受けするセクスィ〜な声と歌い回しをしている。あとは序盤のいいとこでいきなりAC/DCの"Back In Black"に感化されたような中途半端な曲が出てきたりするのが全体のイメージを冴えないものにしてしまってマイナス点。しかしおしなべて垢抜けてるといえばBOSTONあたりより遥かに垢抜けてるし、「VITAL SIGNS」みたいな決定盤がなければきっとこれも普通に名盤扱いだったことでしょう。う〜ん、プッシュしてるのか買い控え勧告してるのか判らんレビューになってしまった。

  1月14−15日
▼両日ともに収穫はなし。どこからどうやってリンク貼ろうかまだ考え中なんですが一応サイト内検索のページ作ってみました。SLOWDIMEだけで2ページ分も引っ掛かって笑えた。

【只今のBGM:BILL FRISELL「BILL FRISELL QUARTET」】


96年。カルテットといってもギターにトランペット、ヴァイオリン/チューバ、トロンボーンという編成です。映画やテレビのために提供した楽曲をカルテット用にリアレンジしたアルバムということだそうで。クラシック/現代音楽マナーとオールドアメリカンな響きが入り混じった壮大なんだか片田舎なんだか判らない不思議な塩梅に仕上がっているのも、なるほどそう言われると納得。温厚でベタベタなスウィング/ブルーズ・テイストをフィルム用のスコアとして見事に今っぽくオメカシしてしまうこの人の手腕はやっぱ見上げたもんです。低音を出せる楽器が持ち回りでベースの音域を担当し、また何かしらパーカッシヴな要素は上手い具合に入っているので、一般的なリズム隊が不在なのも全く気になりません、というか、そんなもの不在でどんだけ豊穣なアンサンブルを編み出したかってのがむしろこの作品のひとつの意義であることでしょう。全面的に聴き応えあります。

  1月13日
収穫はなし。(昨日の続き)塗ったアロンアルファはその後もポロポロはがれたり死ぬまではがれなさそうだったりすることはなく、傷口が化膿したりもせず経過良好です。うむ。

【本日のレビューその1:COALESCE「GIVE THEM ROPE」】


THE GET UP KIDSのキーボーディストがドラムを務める重量級絶叫変拍子ニュースクールHCバンドの97年のデビュー作。EYEHATEGODの陰がさすBOTCHもしくはVISION OF DISORDERって具合で、リフ刻みも鋭いし小回りは利くんだけど重心は低くあくまでズルズルヘヴィな感触。ギターの高音域まで行き来して変態感を醸し出す最近の頭いいカオティック系とは似て非なる、CROWBARやそのへんの頃の空気そのままのシブい熱血90'sテイストが何だか泣けます。初期FERRETで聴けたような豪腕泣き抜きメタリックスタイルがお好きならもう超ストライク。というかそんな人は既に持ってそうですけどね。こんだけブッ飛ばしてるのにイマイチ目立たないのは惜しいとSTIFF SLACK新川氏もとりわけプッシュしてた気がしますがそれも大納得の破壊力です。見かけたら買い。ちなみにエンジニアはエド・ローズ、プロダクションは極めて上々。

【本日のレビューその2:THE LAW「THE LAW」】


ポール・ロジャースがケニー・ジョーンズ(SMALL FACES他)と組んで91年に1枚限りのアルバムを制作したまま消えたプロジェクト。何と2002年にリマスターになってます。アタマからいきなりデジタルなウワモノがバブリーに響くFOREIGNERみたいなイントロで始まって面食らって、更に意外なことに2曲目はDEF LEPPARDがその後自らヒットさせるフィル・コリン作"Miss You In A Heartbeat"!全11曲中自前は3曲のみであとは色んな人から提供を受けるという趣旨の作品だったらしく他にもブライアン・アダムスやクリス・レアの曲なんかもあります。しかし恐るべきはこの人のヴォーカリゼイション。誰のどんな曲でももともと自分のレパートリーだったかのように歌いこなしておりまして、もはや金太郎飴の域、しかし常に最高。赤面シンセが舞うJOURNEY風チューンみたいなのまでこの声で聴けてファンはもう黙って泣くしかありません。90年前後、ガンズが売れてCINDERELLAがシブ化してTHE BLACK CROWSやBADLANDSみたいなのが出てきた頃って、こういう何の変哲もない直球ブルーズロックをハイテクなアレンジでやるのが流行っておったわけですが、この人の場合その元ネタの当事者そのものですから、もう何か哀しさと説得力が入り混じる複雑な情緒をたたえた作品に仕上がってます。THE FIRMより先に探してもいい。

  1月12日
収穫はなし。アロンアルファは元来医療用として作られたっつー話を嘘か誠かとにかく耳にしたことがありまして、試しに指のヒビワレに塗って一日過ごしてみましたが快適でしたよ。傷口をグッと閉じて外からフタをするように塗れば別に傷口にシミることもなく無問題。水を触っても何をしても半日以上経って未だハガレません。これはお勧め。

【只今のBGM:GORDON HASKELL「IT IS AND IT ISN'T」】


クリムゾン史上最も哀しきフロントマン、ゴードン・ハスケルの74年発表ソロ作。「LIZARD」冒頭の"Circus"は、レイクでもウェットンでもなくこの人のシケた哀感漂う声によって歌われたからこそインストパートの狂気性が際立つ名曲になったと私は信じております。これはクリムゾン脱退後に制作されたもののようで、奇しくものちにクリムゾンに加入してスターとなるジョン・ウェットンがベーシストとして全面参加。内容はもう、この人のか弱くトツトツとした歌心がポツネ〜ンと主役を張る牧歌的フォークSSWスタイルの一点張りです。"I Talk To The Wind"のような背筋の凍る寂しさと紙一重の心温まる素朴ソングスの数々、さながら北国の人が冬の寒さに耐えてひとつひとつ丹念に造るこけしの如し。節回しが特別上手いとかではないけど精一杯の心ある語り口が胸を打ちます。必要充分にまとめられたアレンジもひたすら好感。この放送コード越え寸前の寡黙過ぎるテンションはそのまんまJAGJAGUWARやDRAG CITYスタンダードをクリアしそうな勢いですね。時々THE HIGH LLAMASさえ彷彿とさせます。プログレ/ブリティッシュフォーク狂ならば間違いなく至宝、そうでなくとも隠れた名SSWをお探しの方は是非お探し下さい。何だかよくわからないジャケもたまらん。

  1月11日
▼「急速に広まるノロ・ウイルス」なんつうパラドキシカルな見出し躍る今日この頃でございますが本日の収穫、タワーレコード名駅店にてスピッツ「スーベニア」!!国内アーティストの新譜新品を発売一日前に購入なんつうカワイイことを多分初めてしました。ドキドキ。

【只今のBGM:スピッツ「スーベニア」】


亀にまたがった青年がもってきたスーベニア=お土産といえば、浮かれて過ごしてスッカリ忘れていた時間を現実に戻す玉手箱であった訳ですが、2005年版スピッツのお土産はどんなものかと色々深読みしつつまず1曲目"春の歌"、往年の"渚"(「インディゴ地平線」収録)を彷彿とさせる王道スピッツチューン。2曲目"ありふれた人生"、これまた「ハチミツ」に入っててもおかしくないような優等生歌謡。3曲目"甘ったれクリーチャー"で「フェイクファー」以降のロッキンテイストがやっと登場して、あーあ堅実だなとガッカリしかけたところに続く4曲目"優しくなりたいな"がPLUSHをオールドサイケ化したような録音およびプロダクションの市場度外視な小品バラードで俄然テンション(個人的に)回復!もうこのまま全曲解説といきますか、新譜だし。よしよしと思ってたら"ナンプラー日和"との怪題が目を引く5曲目はオキナワンなツカミ+ノーマル親切なサビという"孫悟空"(「色色衣」、シングル「水色の街」収録)パターンで驚く&驚かない。6曲目にきた先行カット曲"正夢"は、序盤では正宗らしい歌メロ運びが当たり前のように冴えてるのにサビで盛り上がれないなあという印象がやっぱり変わらず。

 7曲目"ほのほ"、そろそろ一周してヴァリエーション(変奏)になってきた感もありつつ、同名調の転調が印象に残るこれまた王道。続いて若手ギターバンドに触発されたかのようなエモいアップテンポナンバーの8曲目"ワタリ"、これが後半のこの位置に落ち着いてるあたりで、ここまでの流れでやんわり感じていた「一見さんにも長いファンにも安心の正統派ポップスアルバムを」というのが今回のコンセプトになってるのかなとの読みが確実化します。9曲目"恋のはじまり"はタイトルそのままのシングル向きな曲。"正夢"があってこれがあるともうダメ押し感さえあり。イントロでCREAMの"White Room"を拝借して一瞬だけ度肝を抜く10曲目"自転車"、レゲエ仕立てになっているものの本体そのものは至ってスピッツらしい直球ソング。「花鳥風月」収録"流れ星"の初期ヴァージョンはレゲエ風だったという話を聞きましたがこんな感じだったんでしょうか。11曲目"テイタム・オニール"では「ハヤブサ」での若返りテコ入れが活きていて、ロックなアレンジとポップセンスが張り付け合板ではなくきっちり奥まで組み合った、何てことないけど嬉しい1曲。そこはかとなくUKモッズ〜ポップパンクの香りが。乱暴なフェイドアウトで尻が切れるあたりも判りやすいオマージュですな。終わりも近付く12曲目"会いに行くよ"は良くない意味での「王道」とは違う「ベタベタ」なバラードで、後半最も耳を引くハイライト。サビのタメる3連で婦女子は腰砕けになるがいい。ラスト13曲目"みそか"、やってくれました…AC/DCかJUDAS PRIESTか!?と度肝を抜くイントロを更に意外なアングルから活用するポップなAメロ〜Bメロ、うおお来たねJポップの夜明け、と思ったらサビは倍速化という安易な手で片付けられてしまって俄然ションボリ。しかし間奏に変拍子を挿入したりと悪ふざけは続き、シングルカット曲に平然とメタルな展開を捻じ込む氣志團やハロプロ周辺をみてウッカリ魔が差したんだろうという感じで何はともあれ終了です。"けもの道"でシメる前作と後味が被るな。

 さてここから総括。うわ今日長げーと読む気をなくした人はここからどうぞ。強引なまでの若返りに成功した快・異作だった「ハヤブサ」、そこに昔からの優しさを戻して更に細かい音響的チャレンジも光ったモニュメンタルな大名作「三日月ロック」ときて(シングルB面を集めた「色色衣」はカウント外)次はどうなんだと大いに期待しておった今作、もっとギリギリの線でいけばいいのにという私の希望的観測に反して、誰も裏切らない非常に堅実な内容となっていました。海外アーティストの国内盤オビだったら「挑戦的なアレンジまでも個性に昇華した円熟の集大成的11th!」とか書かれるところでしょうか。クオリティに関して心配無用なのはもはや当然、それ以上のビックリを求めるか求めないかで感想は変わってくることでしょう。声もどんどん良くなってるし幅の広いアレンジも小慣れてきてるし、作風が過去と重複しても響き方は異なる(マスタリングが引き続き最高)というのがポイントといえばポイント。またいつかちょっと際どいアルバム作ってくれりゃいいや、これも聴き慣れればあれこれと名曲になってくんだろうな、て感じで肯定的に付き合える範囲内です。水ものとして廃れない実力はもう明らかなので今後はいかに歳食っていくかを観察するとしましょう。

  1月10日
収穫はなし。3連休を利用してヒゲの放置に挑戦してまして、連休前からのトータル5日でだいたい2〜3mm伸びるという結果となりました。凄くどうでもいい報告でお茶を濁したいと思います。

【本日のレビューその1:BRUCE SPRINGSTEEN「BORN TO RUN」】


75年3rd。最高です、偉大です。ブライアン・アダムスも尾崎豊もTHE GET UP KIDSもみーんなこの人のヴァージョン違いに聞こえてならんくらい偉い。小っ恥ずかしいピアノやホーンセクションが躍りつつ、じじくさいフォークもブルーズも知ったことかとばかりに(いや、バックグラウンドにはあるんでしょうけど)青臭〜いメロディを力強く歌い込むこの人、若者が豪快にロックする新しいやり方、しかも今日に至るまで大衆ポップスの基盤に食い込んでいるスタイル、を提示した功績者としてもっと称えられんものですかね。このアルバムに関しては、80年代中盤以降の作品を一切持ってないのであまり大局観のあることは言えませんけども、自身のスタイルを確立して正に勢い盛んな様子は音からだけでも充分窺い知れます。WOLFSBANE(IRON MAIDENに一瞬だけ在籍したブレイズ・ベイリーがやっていたバンド)もカヴァーしたタイトルトラックの大名曲っぷりは勿論、ぼちぼち入っているバラード一歩手前のスロウナンバー群が、アメリカの大らかな情緒を凝縮したような出来で耳を引く。噴き出るものを抑えるかのようなふらつく中低音ヴォイスが時々ちょっとフィル・ライノット(THIN LIZZY)似なのもたまらんですね。1枚840円以下でコンプリート目指しませんか皆さん。

【本日のレビューその2:HEAVY VEGETABLE「FRISBIE」】


PINBACK代替公演の予習として買っときました。といっても既に持っている1stとも、その後のTHINGYとも大差はなく、曲を曲と思わぬショートカット展開の中にありったけの変拍子や殴打風ユニゾンリフや混線する男女トリプルヴォーカルを細断して詰め込んだ、ロブ・クロウ節全開の反逆系屈折ラヴリーポップとなっております。テクニックを駆使して屈折してみせたポストコアバンドは数あれど、ピリピリ気張るDC風、潔癖なシカゴ風、変態のサンディエゴ風のどれにも属さず(サンディエゴ産の人達なのに)、WEEZERみたいなのと近いポップパンク崩れのDIYインディ若者歌謡がパーツの基本になってるあたり何とも異端です。そのくせ初期グランジみたいなメタリック重圧リフまで完全にコントロールに収めてるからホント憎たらしい。ロブ・クロウは絶対ポストコアの屈折性とルー・バーロウのいい加減さに魅せられた元メタラーのしかも小動物好きだと思ってるんだけど真相はどうなんでしょうか?とにかく同じニオイを感じるので素直に降伏する気にならんのです。しかしライヴには大いに期待。この犬のジャケ、ケース裏の方にはきっちり後ろ姿を撮った反対アングルからの写真が使われてて、その跳び上がった手足がまたカワイイんです…

  1月9日
本日の収穫アマゾンから届いたV.A.「KIDS WILL ROCK YOU」、HEAVY VEGETABLE「FRISBIE」、THE LAW「THE LAW」(ポール・ロジャース!)、LIERS IN WAIT「SPIRITUALLY UNCONTROLLED」、JOHN LEE HOOKER「IT SERVES YOU RIGHT TO SUFFER」、バナナレコード岐阜店にてCOALESCE「GIVE THEM ROPE」、RALPH TOWNER「SOLSTICE」(ECM75年)、US MAPLE「SANG PHAT EDITOR」、ブックオフ一宮インター店にてMADLIB「SHADES OF BLUE」、BRUCE SPRINGSTEEN「BORN TO RUN」。一宮インターって何さと、突っ込んでくれた貴方には心を込めて握手でも差し上げたいですね。連休だし好天だしってことで、名古屋市の自宅から岐阜市まで自転車で移動して参りました…。その道程およそ31km、国道22号をひた走って片道約2時間での到着。いやー疲れた、二度としない。岐阜店や岡崎店っていざ電車で行って特に収穫がないと運賃スゲー損だよなと前々から思ってて、今回やっと自力到達に成功した訳ですが、今や逆にこんだけ頑張って5枚かよという後悔しきりです。よっぽどタイヤ外してコンパクトにしてJR乗ったろうかと思ったけどそれもせず、早めに日も沈んですっかり暗い中(出発が正午過ぎだったためその時間に)での一宮市再横断はとても辛かった。車の運転練習しようかなと思いました。

【本日のレビューその1:V.A.「KIDS WILL ROCK YOU」】


大人の生バンドをバックに子供達に70年代ロックのスタンダードを歌わせようという企画盤。やたらやる気のない"Smoke On The Water"、頑張って無理矢理ドモる"My Generation"ほか、全身の力がドッと抜ける珍カヴァー満載で楽しいです。FREEの"All Right Now"やALICE COOPERの"School's Out"、更にEAGLES"Hotel California"(意外と泣ける出来!)なんていうシブい選曲もありの全16曲。しかし奴ら、子供といえど言葉尻のちょっとしたニュアンスとか、ちゃっかりロックなフィーリングを体得してて感心です。さすが半ば土着の音楽として根付いてる国は子供から違いますね。ともあれ「MOOG COOKBOOK」2作やパット・ブーン「IN A METAL MOOD」と並ぶナイス企画として好き者は是非ゲットを。

【本日のレビューその2:LIERS IN WAIT「SPIRITUALLY UNCONTROLLED」】


AT THE GATESの前身GROTESQUEからの枝分かれ組だったと思います。この5曲入りEPが恐らく唯一のリリース。楽曲制作は90〜91年に行われたとだけクレジットがあって、録音時期などが不明なのですが、96年に一度BLACK SUNからリリースされたのが昨年CANDLELIGHTからリマスター再発になったものです。内容はむちゃくちゃテクニカルなブルータルデス!カオティック系と間違われそうなくらいの激展開&超手数に圧倒されます。これは凄い。強烈なブラストを交えつつ矢継ぎ早にテンポチェンジを詰め込んだ雪崩系で、CONFESSORともATROCITYとも趣きが違う。さながら時速300kmで海に山に脱線しまくるSUFFOCATIONか?スウェーデン産なだけあって一応スコッグスベルグ録音になっとりますが、パッと聴いてそうとは判らないクリア&軽めのプロダクションで意外。あの丸太割りのような暴力的サウンドになっていたらもっと殺傷力は上がったことでしょう。ちなみにここの人達のちにDIMENSION ZERO(IN FLAMESのイエスパーがやっていたプロジェクト)やTHE GREAT DECIEVER(ex.AT THE GATESのトマスの新バンド)、ゴシックの中堅DIABOLIQUEなどへ流れていったようで、そうなると歴史的にもなかなか重要なポジションってことになりますね。SEANCEあたりと共に忘れ去られないよう皆さん買って下さい。

【本日のレビューその3:RALPH TOWNER「SOLSTICE」】


アメリカ人ギタリスト/ピアニストの75年作。バックにヤン・ガルバレクを含む欧州勢3人を従えてのカルテットでございます。クラシック〜現代音楽、ポップス、および欧州その他の民族音楽を吸い上げたのをジャズ/フュージョン・マナーでアウトプットするという、高潔なるECMミュージックを端的に象徴する内容。1曲目冒頭の12弦アコギ(全編通してエレクトリックギターを使うことはありません)のひと掻きでいきなり背筋を凍らされ、のっけから名盤オーラ充分。アメリカンジャズの面影は殆ど現れず、ジャケのイメージのとおり静謐で張り詰めた空気のコンポジションが並びます。音数の少ないときほど却ってプレイヤー同士のやりとりの密さを感じるような充実の濃厚アンサンブル。複雑怪奇な調性をものともせずアコギ一本で自在に語るラルフ氏すげーっす、巧いっす。その響きのせいか、組む相手や作風によってはイージーリスニング風に聞こえなくもないヤン・ガルバレクのサックス歌い上げもただ端正な美しさをもって届く気が。途中いきなりお化け屋敷系インプロとかパット・メセニーみたいなロッキンな曲が挿入されるのも程よい呼吸調整として、全8曲飽きずに聴き通せる満腹の一枚でしょう。

  1月8日
▼聴取ペースが全然購入についてきません。本日の収穫、バナナ名駅店にてJOHNNY WINTER「JOHNNY WINTER」、JUDEE SILL「JUDEE SILL」(RHINO限定リイシューシリーズ)、今池P-CANにてMAGMA「MEKANIK KOMANDOH」(SEVENTH盤に買い換え)、NOMEANSNO「LIVE AND CUDDLY」、SURVIVOR「EYE OF THE TIGER」、THE BYRDS「THE NOTORIOUS BYRD BROTHERS」、GORDON HASKELL「IT IS AND IT ISN'T」(71年ソロ!)、CANNED HEAT「CANNED HEAT」、BILL FRISELL「BILL FRISELL QUARTET」(96年)。何だか今池に呼ばれてる気がしてて、行ってみたらこの大収穫ですよ。最近レジのにーさんがいっつも「ユーロロックプレス」のレビューページ読んでるのが気になる。

【本日のレビューその1:MAGMA「MEKANIK KOMANDOH」】


有名な「M.D.K.」のデモヴァージョンとしてこれまたプチ有名な盤。デモといってもプロダクションは全然問題ありません。構成は大筋で完成版とそう差がなく、アナログAB面の間で一旦切れていたところがノンストップになっている(ちなみにCDのトラック分けすら一切してないので39分弱ブッ通しで聴くしかない)、イントロがちょっと違う、程度のこと。しかしアレンジが随分違ってて聴いた印象はグッと変わります。この頃のMAGMAでは余り聴き慣れないオルガンが結構たんまりと入ってるのがまずデカイ。そんでブラスセクションとギターがなく、時々鉄琴っぽいのも鳴ってて、どんより重厚な完成版より何だかスッキリ軽やかな感触に仕上がっております。アクは弱いが聴きやすいという。演奏は勿論本気テンションで完璧になされているので、信者は黙って買わなければならない。ブックレットには歌詞も部分的に載ってます。ホルツ、ツェーベンデーゲゥシュター、ホルツ、ヴラーシクコーバイア〜、どべりつぇべりおべり。

【本日のレビューその2:NOMEANSNO「LIVE AND CUDDLY」】


90年オランダでのライヴを収めた盤!こんなものあったとは知らんかった、しかも525円で買えた。オランダ語とおぼしき狂ったラジオDJの捲し立てMCが冒頭にちょっと入ってて面食らって、息もつかせぬ間に「WRONG」トップに収録の大名曲"It's Catching Up"が炸裂!おおーカッコイイ、そして上手い。絶対的なスピードを超越する凄まじいスピード感にメタルをも凌ぐ整合感、このへんがこの人達の重要な持ち味だと思っとる訳ですが、もともとライヴ感のある録音がされているスタジオ盤と比べて全くガッカリしないどころか白熱度3割増でカッ飛ばしてます。複雑に切り替わるリズムパターンにも全く動じず不動のビートを堅守するジョン・ライト(ヴォーカルの片割れもこの人がやってるようです…歌いながらこれとは信じ難い)すげ〜。屈折リフ弾きながらごっついアジテイションを自在にこなすロブ・ライトの方もジェイムズ・ヘットフィールドばり(鉄壁のリズムギタリストかつシンガーという意味で)の貫禄で、この二人がタッグを組んでの兄弟グルーヴはホント壮絶ですね。会場はそこそこ狭めの所らしく、つつましいナチュラルリヴァーブをそのまま乗せたプロダクションが好感大。客の歓声も演奏中ずっとワーワー言ってるような被せ/差し替えモノじゃございません。いいなあ、ライヴ盤としての完成度が高い。ファンは必携、最初の一枚としてもオススメ。歳食い過ぎる前に来日してくれんかな。

  1月6−7日
6日の収穫はバナナ四ツ谷店にてPEGGY HONEYWELL「HONEY FOR DINNER」、WOLFPACK「ALLDAY HELL」、BUS「MIDDLE OF THE ROAD」。本日7日はなし。6日は久し振りに大学のサークルの人達と飲んで楽しかったなあ。VAN DER GRAAF GENERATORやNATIONAL HEALTHの名前を実生活で口に上せるなんてノーマルな人付き合いじゃ考えられないっ。愛知万博の別称なのか通称なのかとにかく「愛・地球博」という奴、音に「アイチ」が含まれてるって皆様いつから気付いてましたか?私はここ一週間以内です。

【本日のレビューその1:WOLFPACK「ALLDAY HELL」】


行方不明中のNASUMのヴォーカルがプロデュースの3rd。MOTORHEADの時代から変わらぬドッダドッドダッの2ビートまがい高速8ビートを軸にパワーコード一筋&完全ノー・ミュートなオールドスクールリフとダーティな絶叫を撒き散らす豪腕メタリッククラストコアそのものです。プロダクション的には最近のメタル畑のデスラッシュ勢にひけをとらぬパワーと整合感、ヴォーカルはほとんどデス声のような吐き捨てダミ声。スウェーデン産ということでほんのり男泣きな爆走っぷりも猛烈になっております。装いが多少フレッシュになってようが本質的には伝統芸ですね。熱狂的なハードコアリスナーって忠誠心の強い人らだなーって思います。同世代バンド達との微細な差の話なんてぺーぺー門外漢の私にゃ畏れ多くて出来ませんが、随分以前にやっぱりたまたま買ってみたDS-13と同等の清々しさとクオリティの高さは感じます。何だか弱そうなバンド名(現在はWOLFBRIGADEに改名したとのこと)のお陰か、そういやこれまでにも時々中古で安く見掛けることがあった気がするので、630円とかでバッタリ出くわしたときには愛と敬意をもって買ってあげて下さい。

【本日のレビューその2:BUS「MIDDLE OF THE ROAD」】


2003年~SCAPE。たまにMCやヴォーカルが入る親切系ヒップホップ・エレクトロニカ〜テックダブをやってます。必要充分な控えめ加減でアーバンな涼やかさ(?)を漂わすウワモノ、人声を排除して聴いてみると意外とディープ&ストイックなビートと、スキマ愛好者にはたまらん内容。ピュア・デジタルな感触ながらちゃちい偽ハイソ感のない音色処理も最高。ヒップホップを完全に一手法と見なして色々と技を凝らすPREFUSE73みたいなのとは全然似てなくて、TARWATERの金字塔「ANIMALS, SUNS & ATOMS」からKRAFTWERK臭を引っこ抜いたような雰囲気です。やっぱドイツ人はリズムと音響を無心に愛(め)でることのできる国民性なんでしょうかね。こりゃー濃いくせに判りやすくて良いなあ。調性感バリバリのお手柔らかフォークトロニカみたいなのしか聴けませんってな人でも楽しめそう。本気でヒップホップになりたげなPUSH BUTTON OBJECTSとかに迂闊に手を出して「やっぱ違う…」と頭を抱える前にコッチですよ。

  1月5日
▼2005年初本日の収穫はバナナ・パルコ店にてTHE SPEAKING CANARIES「SONGS FOR THE TERRESTRIALLY CHALLENGED」、CAN「LANDED」(75年)。

【只今のBGM:THE SPEAKING CANARIES「SONGS FOR THE TERRESTRIALLY CHALLENGED」】


300円からのバーゲン段ボールでオッSCAT(昔のGBVもリリースしていた米マイナーインディレーベル)じゃんと思って手に取って、裏を見たら「DAMON CHE - GUITAR, VOCALS」とのクレジットがあるではないですか。315円だし同名異人でもいいかと思って買ったらこれがホントにドンキャバのドラマーがギターヴォーカルを務めるバンドでございました!初めて知ったけど有名なんでしょうか?この人普通にギター上手いっす、アコギでタッピングハーモニクスをエディ(・ヴァン・ヘイレン)ばりに軽妙にキメる小曲なんかもあったりしてビックリっす。というか普通に曲自体やバッキングギターのセンス、トーンに至るまで、VAN HALENで育ちましたと大声で宣言するかのような似方!それが単なる上っ面の模倣ではなくきっちり咀嚼吸収されていて、しかも2nd〜3rdの頃のドンキャバのような爆裂変拍子ともガッチリ組み合ってしまってもう何だか判らない崩壊ハードマスロックと化してます。仰天の嵐。録音は93年でアル・サットン(ドンキャバ3rd、LAUGHING HYENAS、TODAY IS THE DAY、キッド・ロックにシェリル・クロウも手掛けた人)がエンジニア、アルビニ風のオフ&ロウ系プロダクションに仕上がってて上々。ドンキャバはポストコアじゃなくてポストメタルだと私は言い張っておったのですが、やっぱりこの人RUSHやVAN HALEN、VOIVODあたりのHM/HR異端派からBASTRO方面へリンクしてしまったクチだったというのをこれでバラしてくれてたようなもんですね。途中VAN HALENの「1984」収録"Girl Gone Bad"や同「DIVER DOWN」収録"Secrets"の直球カヴァー、明らかにジェフ・テイトを真似たQUEENSRYCHE風チューンもあり、聴けば聴くほど愛に溢れた本気のメタルオマージュっぷりに涙止まりません。最高だ。

  1月3−4日
▼両日とも収穫はなし。どちらかといえばマメな性格を自認していますが、自室の整理整頓はエントロピー増大が極限に達するごとにしか行いません。そろそろ机の上にあったはずの物を見つけ出すのに「おお、この層にこんなものまで埋まっていたとは…」なんつう驚きさえ伴う大発掘調査を催行せねばならない状況になってきたので、年明け早々というか年末怠けたツケで今更大掃除しました。今回は小学校時代のカンペンとかきたないテープカッターとか、使用可能だけど絶対使わないものを容赦なくボコボコ捨てて良い気分。しかし何と言っても部屋がきたなく見える原因はCD屋で貰う袋、ビニールカバー、バーゲンチラシの類、これに尽きます。彼等カサは大したこと無いくせに面積を食って視界を埋めますからね、ちょっとキレイにまとめるだけで随分効果があがります。斯くして大格闘の末、何とか快適に宅録出来るような落ち着きを取り戻した訳ですが、BGMにしていたPETER LANG「THE THING AT THE NURSERY ROOM WINDOW」が大変作業をはかどらせてくれて良かったなあと、言いたいのはそれだけでした。変則チューニング指弾きでアメリカーナ・フォークギターをアーティスティックにキメる、ジョン・フェイヒイと同じTAKOMAの人です。73年発表の盤だそうですがOWENそのまんま。アメリカ人になりたい方は是非。

【只今のBGM:TSUNAMI「THE HEART'S TREMOLO」】


タイミング的に少々物騒なバンド名でございます。NASUMのヴォーカルは見つかったんでしょうか…さておき、POLVOからMATADORつながりでCOME、COMEからタラ嬢→IDA→SIMPLE MACHINESつながりでこのTSUNAMIと、今年は図らずも薄いリレーが続いております。TIGERSTYLE移籍までのIDAがいたレーベル・SIMPLE MACHINESのオーナーが在籍する男女混成バンドのこれは94年3rd。初期IDAを殺伐とさせたようなポスト・コア体質のソフトタッチなインディロックをやっております。素人くさい女性ヴォーカルがフロントに立つあたり若干Kっぽい雰囲気も。90年代前半にも関わらず録りっぱなし風の堅実でバランスの良いプロダクションが秀逸です。それにしてもこの殺伐具合、何かに似てると思いながら聴いてて、途中で判明しましたALICE IN CHAINSですわ。あんなメタリックなギターとかはないけどヴォーカルの粘っこい節回しやハモリ、どんより暗い空気感なんかは、そう思い始めるとALICE IN CHAINS聴いてるとしか思えなくなるほど激似。偶然でしょうか普通に好きだったんでしょうか、このリンクは興味深いっす。ちなみにメンバーのクリスティン・トムソンはIDA初期作、THE SORTS、BRANCH MANAGER(!!)他のアートワークを手掛ける人だったりします。

  1月2日
収穫はなし。今日こそ宅録に精を出そうと、日の出てる時間帯は割と張り切って、しかし夕食後またビーテレの番ー特にだらだらと見入る羽目になり結局よくある始ー年の一日になってしまいました。志ー意が弱い。「さんまのまんま」を楽しく見てたつもりがいつの間にやら「踊る大捜査線」が始まり、フジテレビは何をそこまで大風呂敷広げる理由があるのか確かめようと真面目に見かけたんですが、だんだん「あぶない刑事」と「機動警察パトレイバー」の雑な親子丼みたいになってきたので水野美紀が拉致られたところで切り上げ。仮にも映画なんだから膨大な予算費やしといて耐用年数のことは考えないのかと切なくなりました。ヒップホップのフリして尾崎豊みたいな歌詞を平然と振り撒く数多の胡散臭い新人グループ達然り、国内娯楽産業のOKラインって結構信じられないとこにあるからよく驚きます。

【本日のレビューその1:COME「ELEVEN:ELEVEN」】


PULLMAN他で大活躍のクリス・ブロカウがいるバンドの92年作1st。一応クリスはCODEINを経てこっちに来てる訳ですが、スローコアもへったくれもないグランジ真っ只中でのリリースですから当時は「YO LA TENGOがいるレーベルの何やら暗いバンド」程度の認識で済まされてたことでしょう。メインで歌っているタリア・ツェデック嬢のやさぐれ声が怖い。やってることは粗いディストーションギターが殴りつけるスロウなアメリカーナ・グランジ・ブルーズてな感じでしょうか、3rd(バンディ・K・ブラウン、THE JESUS LIZARDドラムのマック・マクネイリー、元RODAN組のタラ嬢とケヴィン・カルタス参加!)と4thも持ってますが作風は変わらずです。悲しく沈み込むでもなく、拳を握って奮い立つような雰囲気でもなく、このユニークな煮え切らない激情の美学は何なんでしょう。同時代の誰にも似てないという点で意義があるとも言えるし、ただ単にうだつが上がらんだけという見方も可能。絡む人脈が豪華なのと、SEBADOHとも仕事をしていたティム・オヘイアによるプロダクションが92年らしからぬ好ましい出来になってるのとで、買ったら最後手放すに手放せない。スローコアの歴史をきっちり俯瞰したい向きならばスルーは許されぬバンドでしょう。

【本日のレビューその2:CALIFONE「ROOMSOUND」】


また他人の空似シリーズで。偏執プロダクション三昧のジャンクフォークブルーズユニットRED RED MEATの元メンバーによるバンドの2000年発表1stフル。重心低いっす、再生し始めた途端視界一面の青い地平線に延し潰された砂漠とまばらなサボテンしか見えない。LOS LOBOSとFOLK IPLOSIONとBECKが日射と乾きにやられてグタグタになったような激ディープ・歌ものダウンビート音響カントリーになっております。ストーナーまがいの酩酊感をたたえた、全く和まないモダン・アメリカーナ。メンバーでもある必殺仕事人ブライアン・デックがまた死ぬ程マニアックな音響工作を仕掛けてまして、ひたすらロー・テンションでも意識の集中させどころには困らないどころかあり過ぎて困るほど。それで結果的にちゃんとヴォーカルが曲を牽引する格好になってるというバランス感覚の鋭さです。ELEVENTH DREAM DAYやCHESTNUT STATIONのメンバーでDRAG CITY界隈での仕事も多いリック・リッツォ、TORTOISEにTHE FOR CARNATIONにPULLMANにと大活躍のミスターBROKEBACKことダグ・マッカムなどもゲスト参加して充実の1枚。GASTR DEL SOL亡き今、BOSCO & JORGEらと共にアメリカンルーツミュージックのリインカーネイションに真面目に取り組むアーティストとして重宝しようじゃありませんか。ハウ・ゲルブとの来日公演行っときゃ良かった…泣。

  1月1日
▼さて明けまして2005年、今年もSCSIDNIKUFESINをよろしくお願いします。皆様正月休みをいかがお過ごしでしょうかね。正月って何となく心待ちにしてしまうものの、いざ突入するとその実、国を挙げての一大・退屈責めキャンペーンじゃないかと、そういえば毎年思ってる気がします。巷の店は軒並み休業、テレビ欄は特別つまらない番組略して特番で埋め尽くされ、集結した親戚一同の喋りは果てしなく退屈、更にバラで3枚だけ買った年末ジャンボは何等賞にカスリもしないときて、そりゃ頼まれんでも国外逃亡(金持ちの選択肢)か酒盛り三昧(中流の選択肢)か寝る(我ら低所得層)かするしかない。とおめでたいムードに背を向けて腐っていても仕方がないので、ここぞとばかりに未聴CDの山を切り崩していこうと思います。

▼↑と書いたのが午前中。その後結局昼寝に耽ったりまんまとテレビの特番見たりしてしまいました。特に夜やってたスポーツ各界の筋肉自慢を集めてきて色々競わせるやつ、あれは超絶技巧に裏打ちされたミニマリズムと屈折展開の絡みでもって1曲30分単位でヴォルテージを上げ下げするTHEUSZ HAMTAAK三部作期のMAGMAみたいなもんで、なかなか画面の前から離れられず8割以上は見た。あの調子で世界各国からデスメタルドラマーを呼び寄せて最速ブラスト選手権やってくんないですかね。さてやって参りました神の領域520BPM、おっと22秒目でヘルハマー、テンポを見失う!いぶし銀もここまでか!アメリカの精密機械ジョージ・フルーク(ORIGIN)とブラジルの魔獣マックス・コレスネ(KRISIUN)が第2ブロック準決勝へと進みます。みたいな実況をね、伊藤政則の声でね。収穫はなし

【本日のレビューその1:BONE「USES WRIST GRABS」】


ということでBGMの方も技の祭典みたいなのに手が伸びました。CUNEIFORM看板バンドDOCTOR NERVEのギタリスト、同FOREVER EINSTEINのドラマーと、SOFT MACHINEのヒュー・ホッパー(ソロ作の再発とかが結構CUNEIFORMだったりする)が合体したというスペシャルトリオの1作目。1曲ごとに顔リフとキメユニゾンくらいは設けてあってあとは深く歪んだギターのアドリブソロが奔放に垂れ流されるという、非キメキメ・スコア系の暗黒&ヘヴィ変拍子ロックとなっております。要領としてはもう90年代後半以降のジェフ・ベックみたいなもの。ここまでくるとレコメンイズムは松屋の牛めしの牛肉よりも薄い。良くも悪くも手練れが3人集まって録ったプロジェクトアルバムだなあという印象ですが、THE MUFFINSや後期サムラが忘れられないダイハードなリスナーやLIQUID TENSION EXPERIMENTみたいなのが猛烈に好きな人にとっては直球中の直球になるんでしょうか。込み入ったとこまで聴き取ろうとしないで、裏ジャケに記された「このレコードは極限までウルサくして最後までブッ通しで聴きなさい。窓を開けて隣人にも聞こえるようにしなさい」との指示のとおりボゲーッと脳髄を開放して乗っかった方が楽しめそう。棚に収めるときにはAC/DCとCINDERELLAの間にってことで。

【本日のレビューその2:POLVO「THIS ECLIPSE」】


上のBONEと微妙に他人の空似なチョイスってことで次はPOLVOを。アイロニカルな知性派ジャンク〜ポストコアバンドとして90年代初頭から活動してきた彼等のこれは95年の5曲入りEP。TOUCH&GOから出してたこともありましたが今回はMATADORのリリースです。ATOMBMBPOCKETKNIFE、あるいは31KNOTSほか一連の54-40 OR FIGHT!系にも似るダルダル&屈折感は未だに結構カッコイイと思うんだけどなー、なんか余り発掘/再評価の対象に挙がることはないバンド。派生する人脈とかがないと少々出来が良くても途端に忘れられますね。音楽的功績としてはTHREE MILE PILOTあたりと同等の評価を得ても全然おかしくないことをやってるはずです。先日売りCD大裁判をした際に、何故かほぼコンプリートに近い揃い方をしながらここ数年間全く取り出して聴くことがなかったTRUMANS WATERをまとめて手放そうかどうか悩んで、「これがもし仮にSKIN GRAFTの古株だったら絶対喜んでもっと買うだろう?」と内なる弁護士に問い詰められて逆転無罪にしたばかりなことだし、POLVOもそんな感じでやんわり愛していこうと思います。

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