物色日記−2005年12月

※頻出語句解説はこちら
  12月31日
▼0時を回ったあとで堂々と2005年最後の日記をアップロードする不粋さよ。紅白も何も見てないので(レコード大賞を食事中にチラッと見たけどミュージックステーション同様恐ろしい番組だった)、自室のPCを前に座っている今の感覚は全くいつもどおりのただの深夜でしかないわけですが。しかしまあ今年は大学卒業以来ようやく一念発起して色々と前進を作った一年でありました。来年はそれらを軌道に乗せねばというところです。うむ、やるだけですな。年末ジャンボは毎年ちゃんと一等が当たるように言ってあるのにおかしいな〜。収穫はなし

【只今のBGM:PIT ER PAT「3D MESSAGE」】


ここのところ一日2・3枚頑張って書いてましたが今日はこれだけでアッサリまとめさせて頂きましょう。もう何年も、同じCDを2回以上家で全部通して聴くことがほとんどなくなってきたわけですが、その中でも一聴にして強烈に長期記憶にこびりついてしまってやたら反芻することが多かった、今年の脳内リピート率ランキング上位盤がこの人達の1stフルでした。それでこれはついこの前発表になった最新の4曲入りEP。同じくTHRILL JOKEYリリース。音楽性は1stの方のレビューに書いたとおり全然変わりません。常に16分で何かを鳴らしているドラムは眠りかけの祭り太鼓といった様相、それに焦る様子もなく淡々と不思議の世界を歌い紡ぐ女性シンガーとエレピは演歌(もはや軍歌か)並みのバリバリ短調なのにあくまでポーカーフェイス、ギターはなくてベースがささやかに大道具、て感じのトリオ態勢。急かされているようで呑気で、妖艶なのに肉感的でなく、何度聴いても謎めいててとにかく気になります。料理なら「カンタベリーの冷笑とゴシック的退廃のシカゴポストロック仕立て ユーラシア哀愁風」とでも命名しましょうか。哀愁の方向性が"ハンガリー舞曲"っぽい時もあれば"荒城の月"みたいだったりもして何とも不敵。ああ4曲だけなんて、この先がますます気になる。

  12月30日
▼今日・明日とバーゲンのバナナ本店に赴くが収穫はなし。買い過ぎもいい加減におしとCDの神に止められたようです。でもまあ明日3億円当たるのでいいんですけど。

【本日のレビューその1:THE MICROPHONES「MOUNT EERIE」】


二階堂和美とUSツアーを一緒に廻ったフィル・エルヴラム率いるKのフォーク音響ユニットのラストアルバム。現在はこのアルバムタイトルを取ってMT. EERIEと改名してますね。ローファイ・インディフォークとサイケな宅録オリエンテッド・ノイズ音響が五分五分という、K所属アーティストの中でも異色の作風でやってきた人達で、最後となるこの作品では遂にそのノイズ音響部分で巧妙に音楽を語るまでに進化し、THIS HEAT(ポップス的時間感覚無視のポストエディット)とAMON DUUL(原始的な祭祀ムード)とPOPOL VUH(宗教的ひたむきさ)とSONORA PINE(うなだれる質感、囁き)の融合のような前代未聞の形態へと到達。ギターのストロークと同量の多重人声コーラスが被さるバッキング、自在に駆使されるクリップノイズ、予測のつかない道筋で変移していくリズムトラック…と全編とにかく偏執的なプロデュースワークの手を緩めない。目標物をギロッと見定める目つきの鋭さはジャンルを超越してTODAY IS THE DAYにも並ぶほど。アルバム全体が5章から成る組曲方式の構成となっており、SLEEP(現HIGH ON FIREのメンバーがいた激ストイックな90年代ドゥーム/ストーナーの元祖)の「JELSAREM」すら彷彿とさせます。ブックレット(広げると巨大な正方形のイラストになる!)まで5曲の歌詞が紙面の下から上へ「登頂」を目指して並べられているという徹底した演出。この強烈さには感じ入ります。テープMTRでの数百のピンポンから生まれた、スピリチュアル・アブストラクト・ノイズフォークとでもいいますか、他で一切例を見ない稀代の問題作。凄いな。

【本日のレビューその2:BLASPHERION「REST IN PEACE」】


タイプライターで打ったようなチープ極まりない背ラベルおよび裏面クレジット、鳥獣戯画タッチの単色で胡散臭いホラーを描いた表ジャケ、OSMOSE(フランスのややカルトなデスメタル専門レーベル)の通し番号3番のリリース…とくればそりゃ気になります。MASTER'S HAMMERもOSMOSEだし、同様にチープな外装だったPHLEGETHONもまあ当たりだったことだしと思って、半ば研究素材として買ってしまった盤。その後の調査でベルギーの長寿ブラックメタルバンドENTHRONEDの前身であることが判りました。91年というタイミングながらUS初期デス系の模倣には一切走らず、CELTIC FROST〜BATHORYをまっとうに受け継ぐ生粋のカルトブラックサウンド。粗いブラストは正にこの時期の欧州地下といった雰囲気で、DARKTHRONEの1stがそうであったように80年代スラッシュの流れを汲むドゥーミーなスロウパートも効果的に挿入、ヴォーカルはやたらディープなゴア声寸前級。めちゃくちゃイーヴル&イルな空気を放っていて何かINCANTATIONみたいです。録音は安っぽいなりにマシ(ギターの異様な重さのせいで迫力なきドラムサウンドと強引にバランスが取れている)。演奏もツラさを感じない程度にマトモです。全く有名ではないですが、これはマニアにとっては隠れた聖典かと思います。最高にシブかっこいいじゃないですか。

【本日のレビューその3:KBB「FOUR CORNER'S SKY」】


POSEIDONシリーズその9、ヴァイオリニストを含む日本のプログレバンド4人組の2nd。プログレにヴァイオリンといえば即座に思い出すのはKANSASとUKなわけですが、その2バンドの雰囲気を受け継ぎつつもビリー・コブハム風だったり喜多郎風(?)だったり、ENCHANTやSPOCK'S BEARDみたいなハードロック寄りの新世代バンドに通じる感覚もあったり、いきなりヘヴィになって第3期クリムゾンっぽくなったりと、オーソドックスなプログレ〜フュージョンの美学を損ねない範囲内で多彩な表現。ファ〜ッと広角で情景が広がる感覚はSEBASTIAN HARDIE的でもある。時に歪みやワウもかませて表情豊かにソロを走らせるヴァイオリンの存在感がやはり大きく、その音色のキャラクターのせいもあってか、ジャケの通り凄く高い所にいるような爽快と緊張が隣り合わせの心地を味わえます。全員演奏は激ウマ(ハッスル時のドラマー氏は特にヤバイ)で録音も上々、これならいつワールドワイドでTHE FLOWER KINGSあたりと並び評されてもおかしくない。実際海外公演もやってるらしいとのことなので、ますます盛んにいってもらいたいですね。

  12月29日
本日の収穫、STIFF SLACKにて31 KNOTS「TALK LIKE BLOOD」、CHEVAL DE FRISE「FRESQUES SUR LES PAROIS SECRETES DU CRANE」「LA LAME DU MAT」、RAY BARBEE「IN FULL VIEW」(GALAXIA)、ROMA79「THE GREAT DYING」(ASCETIC)、JOSHUA LARUE「THE MIDATLANTIC」、PIT ER PAT「3D MESSAGE」、V.A.「裏7586」、そこで受け取ったフライヤーを早速バラ巻きにいったバナナ名駅店でBUDDY RICH「VERY LIVE AT BUDDY'S PLACE」。フライヤーって何のこと?という声が今聞こえたような…そう言われちゃ詳細を明かさないわけにはいきませんね、クリックで拡大どうぞ!↓

 東京の土曜は追加でTOEが決まったようです。全国で盛り上がりそうなこのツアー、是非ともお見逃しなきよう。

▼数日前に書いた「地上波デジタル対応の液晶テレビの画質が酷い」の件ですが、酷ぇーなぁ〜と思いながら数日見ておりましたところ、物凄く美麗に映るときとそうでないときがあることに気付きました。美麗なときは平面単色ですら表現力が違うほどキレイ。これはどういうことなんでしょうか、もしかしてA/D変換の質が物凄くテキトーで、デジタル仕様で作られたコンテンツに関してはちゃんと威力を発揮するがそうでないものは平気で劣化する、ってことなのか?と勝手に推察してみましたが。多分あと数年してデジタル一本化になれば、美麗な方しかなくなりそうですね。

【本日のレビューその1:31 KNOTS「TALK LIKE BLOOD」】


遅れ馳せながら今年リリースの最新作。オレゴン州の3人組の4thフルです。ややエキゾチックな哀愁歌謡をシアトリカルな全力マスロックに仕立ててくる独特の作風が更に完熟し、ある時はKARATEやBLACK HEART PROCESSIONのように枯れ、またある時はトム・ウェイツほどに淫靡で、そんな舞台演出を渋顔のバーテンからエキストラの客から回想シーンから全部メンバー3人で強引にまかなってしまうような、陶酔とズッコケが同時に来る感覚が何とも孤高。必死にエモーショナルなヴォーカルはセドリック・ビクスラー(THE MARS VOLTA)とスティーヴ・ペリー(ex.JOURNEY)の間で肩を並べるような逸材ながら、無理がある感じに頑張るバック演奏が彼をただのイイ男にはさせません。ギリギリで間が持たなくなるような音圧の抜き差しでもって安心感を突き崩すトータルアレンジセンスの冴えはMELVINSばり、"Starless"あたりのKING CRIMSONの哀愁系レパートリーをP.U.S.A.が大雑把かつ的確に要約してしまったような趣きもあります。知力・体力・人情がいずれも高いポイントで均衡をなす、現在のUSアンダーグラウンドシーンの豊穣さを物語る一枚。

【本日のレビューその2:GUAPO「FIVE SUNS」】


ワシントンDCのEL GUAPOではありません、CUNEIFORMリリースのイギリスの3人組です。2003年1st。パッと鮮やかでサイキックなジャケからして何かあるな…と思わせる佇まいですが、サンクスリストにアンディ・コナーズ(A MINOR FOREST)、スティーヴ・ヴォン・ティル(NEUROSIS)、マイク・パットンの名があってますます謎めく。中身はといいますと、聴き手の神経をダウンさせるプログレッシヴな長尺ミニマル暗黒インストでして、「KOHNTARKOSZ」をNEUROSISとPIT ER PAT(エレピ全開!)の合同企画が全身全霊でカヴァーしたような、奇数拍子でトランシーにのたうつ激鬱音楽となっています。区切られたパートの積み木状態には絶対ならないトロ火の長期戦的盛り上げを常とし、その上でアガりきってしまう場面でのイッてるシンセなどは精神の危機を知らせる警報の如く意識に切り込んでくる。ANEKDOTENとGODSPEED YOU BLACK EMPEROR!の奇跡的な橋渡しともいえるか。次の展開早く早く〜と焦らずに聴けることが前提となっておりますが、そこさえクリアすれば猛烈にハマれるであろう激ディープ盤。

【本日のレビューその3:FLAT122「THE WAVES」】


POSEIDONシリーズその8。ギター、シンセ、ドラムの邦人トリオの今年リリース作品。「E2-E4」的ミニマリズムに彩られた作風であろうと、ジャケの見た目だけで判断したら全然違って、ZNR(もしくはサティ)、RETURN TO FOREVER、GENESIS、HELDON、パット・メセニー、GILGAMESHSTORMY SIXなどを分断して出来たパーツを不揃いなままうねうねと連ねて圧縮したかのような、魑魅魍魎かつ素っ頓狂な変拍子ならぬ失拍子プログレ〜マスロック。ストイックなまでのリズムチェンジの嵐はDON CABALLEROやSPATIC INKに完全に匹敵するレベル。一方どんなアクロバットを繰り出す最中であろうと一本筋の通ったムーディさを優先して聞かせる姿勢はCHEER-ACCIDENTとも共通。聴き手の理解をはぐらかすような複雑さを持ちながら非常に情緒的な作品になりました。この強力さはジャパニーズ・プログレ愛好家の間だけで済ませてしまうには余りに勿体ない。ReRでもSIX GUN LOVERでもRUMINANCEでもイケる万国共通の激テク・アブストラクト・アート。

  12月28日
▼テレビで「今年を振り返る」企画をやると3分の1くらいの確率で登場するレイザーラモンHG、本人が出て来なくても色んな芸能人があのフォーを真似します。しかし大抵オリジナルの気持ちよさには及んでませんよね。本家はあの、これからフォーって言うぞっていう顔(半笑いになる)と声のトーンで右肩上がりかつタメの効いたテンションの流れを急速に作り出して、しかも「フォ」のアタックの山が少し遅め。そしてピークからの減衰が異様に潔く、速い車に目の前を一瞬で通り過ぎられるみたいな強烈なブロウと化すんですな。あれを「フ〜」と表音してあるのをよく見かけますが、納得いきませんね。本日の収穫はバーゲン再襲のサウンドベイ金山にてCRYPT OF KERBEROS「WORLD OF MYTHS」、TELEGRAPH MELTS「ILIUM」、GUAPO「FIVE SUN」(CUNEIFORM)、BLASPHERION「REST IN PEACE」(初期OSMOSE!ベルギー凶悪ゴシックデス)、RICK DERRINGER「TEND THE FIRE」(96年)、FRANK LONDON/GREG WALL「HASIDIC NEW WAVE」(KNITTING FACTORY)、以下500円/300円にてDAVID LEE ROTH「YOUR FILTY LITTLE MOUTH」(94年)、LOST GOAT「EQUATOR」(MAN'S RUIN)、PRONG「SNAP YOUR FINGERS BREAK YOURNECK THE REMIX EP」(ATOM HEART参加!!!)、同上前津にてJOHN FAHEY「GEORGIA STOMPS, STLANTA STRUTS」(97年)、MEPHISTA「ENTOMOLOGICAL REFLECTIONS」(TZADIK、スージー・イバラ、イクエ・モリ、シルヴィ・クロヴァジェによるトリオ)、TED REICHMAN「EMIGRE」(TZADIK)、BUDDY RICH「THE ROAR OF '74」、以下500円でMICROPHONES「MOUNT EERIE」、V.A.「ENCOMIUM -ATRIBUTE TO ZED ZEPPELIN」(HELMET、BLIND MELONなど参加!)、更にカイマンから届いたCACOPHONY「SPEED METAL SYMPHONY」。ゲッフ…

【本日のレビューその1:TELEGRAPH MELTS「ILIUM」】


アマゾンでILIUMのCDを探すと必ず引っ掛かる迷惑なCD、と思っていたら意外と近いとこの作品でした。FUGAZIやFARAQUET、MANISHEVITZ、イーディス・フロストなどの作品にゲスト参加してはチェロをさらっと入れていくエイミー・ドミングスが、ボブ・マッセイなるギタリスト(調べましたがこれといった経歴は判らず)と組んでのユニットの、恐らく1枚限りのアルバム。録音とプロデュースをDARLAお抱えのHOLLAND君が全面的に手掛けるほか、デヴィン・オカンポ(SMART WENT CRAZY、FARAQUET、MEDICATIONSEX HEX)が1曲のみドラムで参加、リリースはTHINGYなどを出していたABSOLUTELY KOSHER。チェロとギターのデュオってどんなんやねんと、全く期待しないどころか外して売る覚悟で買ってみたんですが、これが意外過ぎるほど良い出来。まったりアンニュイかつ凛とした、クラシカルともラウンジーともつかないチェンバーポストロックでしてこれは33.3RACHEL'Sの世界ですね。氷で精神を研磨されるようなヒリヒリする清涼感がよい。ポストロック好きに限らず、CRAMMEDやAYAAあたりが守備範囲のプログレッシャーからECMのかなり非ジャズなところまでついていけるという人まで広く(狭いか…)オススメできます。

【本日のレビューその2:足立兄弟「ADACHI KYODAI」】


昨日のTRIO96でその旨書き忘れましたがこれも引き続きPOSEIDONシリーズ、その7になりますかね。日本人のガットギター奏者二人による兄弟ユニット。1曲目から再生を始めた途端戦慄の速弾き!に遭遇して腰を抜かす。ラテンフレイヴァーもあるクラシックギターの前衛スタイルなんでしょうか、リズムやコード感を担当するバッキング的な右チャンネル氏の饒舌なパーカッシヴさ、それを背景としてフリースタイルで猛然と引き倒す左チャンネル氏のエネルギー、ともに凄まじい気迫で言葉を失います。勢いとしてはムチャクチャの域に近いのにそれが全部ちゃんと言語として機能してるという、上質のフリージャズにも似た感覚。その調子でやってくれるJETHRO TULLやKING CRIMSONのカヴァーもしこたま絶品。ガットギターってブツブツブツッと重いアタックや早めの減衰も含めて響きがパーカッション的で、こうやってパラパラとアブストラクトに散らすには最高に映える楽器ですね。二人だけで物凄く広がりのあるアンサンブルを組み上げています。あまり良い例えが思い浮かびませんが、TRACE(「鳥人王国」の)やARTI E MESTIERIをドラム入りのバンド演奏と同量の賑やかさのままアコースティック化したらこんな感じでしょうか…いやもっと独特のリリシズムがありますな。南欧に移住したジム・オルークがCHEVAL DE FRISEのギタリストと共演、とか?心洗われるのとおったまげるのが両腕同時にパンチを食らわしてくるような大変な盤。ノックアウト。上の画像では細かいところが潰れちゃってますがシルクロードの香り漂うオリエンタルな絵柄のジャケも美しいです。

  12月27日
本日の収穫、IMPORT-CD SPECIALISTSから届いたCACOPHONY「GO OFF!」。三木道三が今どうしてるのか一昨日くらいから凄く気になる。

【本日のレビューその1:CACOPHONY「GO OFF!」】


非メタラー諸氏にも今や「ヘビメタさん」として有名なマーティ・フリードマン。彼を一躍有名にしたバンドはMEGADETHであったわけですが、デビューしたのはHAWAIIというバンドで、それとMEGADETHの間に、後にデイヴ・リー・ロスのバンドに行くがALSが発病してしまい現在も闘病中のギタリスト、ジェイソン・ベッカーとやっていたのがこのCACOPHONYです。80年代に速弾きギタリストを大量発掘(リッチー・コッツェン、ヴィニー・ムーア、トニー・マカパイン等)したことで知られるSHRAPNELなるレーベルが、ポール・ギルバートのRACER Xとの双頭として抱えていた有力バンドでもあります。これは88年の2ndで、内容的にはVICIOUS RUMOURSにもう少しスラッシーな暗さとねじれを加味したような(=RAGEっぽい?)、よくお膳立てされたパワーメタル。おおむねオーソドックスなSHRAPNELサウンドかと思いきや時々ズバッとブレイクを入れてWATCHTOWERみたいな変態ユニゾンも投下。この二人のリードギターは単なるイングヴェイの非人間版では済みません。マーティは変にエスニックな香りのする音の抜き方やベンディングのカーブが特徴的ですぐに判るし、ジェイソンはとにかく凄まじいまでに正確無比な上速くても押し弾きの妙がちゃんとある冷静なバランス感覚があってジョン・ペトルーシとヌーノ・ベッテンコートの間みたいな人。変則的に崩した高速スウィープから何連符かわからない激フルピッキングまで完璧にシンクロするツインリードがまたRACER Xを上回る衝撃で凄い。ジャンプで何点、スピンで何点、あとトータルでの芸術的表現力も評価しよう、ていうフィギュアスケートの世界と同じ方向にロックギターも洗練されていくなら、その最高峰サウンドはこれだと確信してます。テクニックに偏執しているからといって芸術として不健全であるということはない。

【本日のレビューその2:TRIO96「DUO'03」】


名に反して4人だったり2人だったりする不定形ユニットの2004年作。ギターとドラムの二人によるライヴレコーディングのようです。アラン・ホールズワース風のキテレツコードを多発させるギター(実音とシンセ経由音を同時に出したりして低音を補っている模様)とせわしない手数ドラムが火花を散らしながら協調する、進化した21世紀型ジャズロック。ポストロック〜エレクトロニカ的アブストラクト感を伴うあたりはクリス・スピード率いるTHE CLAUDIA QUINTETなどを思わせ、トランシーな高揚感の持続はROVOともリンク。前衛性はきわめて強いものの実験の途中といった感じの半熟くささは一切なく、二人編成で世界を語りきってます。あらかじめコンポーズされた楽曲では和声のロングトーン中心にじっくりとイメージ描写に専念するギターも、インプロでは途端に燃え盛ってトレーンvs.エルヴィン・ジョーンズの様相。ドラマー氏はよくこれだけ大量の音を打ち鳴らし続けられるものだとひたすら感心。テレビの砂嵐をドラムセットで表現したかの如き高密度な速打を淡々とつなげまくる。ジャズ耳にもちゃんと香りが立ってプログレ耳には無論大興奮のグレイトな作品です。

  12月26日
▼先週半ば頃に壊れた自宅のテレビの代わりが今日やっと来ました。日立の液晶、勿論地上波デジタル対応。きょうびのマジ液晶はどんなものかと大いに期待したのですが、確かに遠近感や鮮やかさは派手に現れるようになったものの、デフォルトのままだとクッキリどころかグッキリバッチリ、輪郭はどうもカクカクするわ動けば滲むわで、設定で「画質」と「明るさ」を下げてやっとツラさがなくなるといった感じ。今までの何々管の類と比べるとかなり違和感があるし、「その形に見えるように限りなく近づけている」というデジタルくささを如実に感じてしまった。まあ撮るカメラの方も今はデジタルなんだろうから「こうやって家庭にデジタルが進出するにつけ我々のリアリティ観が云々…」などと知った口叩くのもアホ丸出しなんでしょうけど、普段いかに無自覚のまま巧妙な擬似リアルにちょろまかされているか、改めて考えると途方もないっすね。CD絶対否定派やデジタルレコーディング絶対否定派の気持ちも少し分かります。そんで本日の収穫FREE LOVE「INCUBUS (Plus 1)」(詳細は下のレビューその2参照)。

【本日のレビューその1:DIO「STRANGE HIGHWAYS」】


メタルかよーと読み飛ばされる前にこれだけ書いておきます、この男ロニー・ジェイムス・ディオは、皆さんがジミヘンやチャーリー・パーカーを聴こうと思うのと同じように、ジャンルを超えた「たしなみ」になり得る、ヘヴィメタル界が全時代全世界に誇る最強の、魂の歌い手であります。なので全員聴いて下さい、マジで!!!TANKやAGENT STEEL知らなくても「ロニーが好き」と言えれば私はいいと思ってます。さてこのアルバムはそんなロニーが80年代初頭から率いているバンドDIOの94年作で、WWIIIというバンドにいたトレイシー・Gというちょっとトンガったギタリストを迎えてダーク&ヘヴィ全盛の時代に立ち向かった果敢なアルバムでございます。それを世間的な言葉で平たく言い換えると「グランジやPANTERA系ブームに流されたダメアルバム」ということになるんですが…こういう音を十把一絡げに「日和った、終わった」と非難してしまったのは当時のメタラー及びBURRN!誌の罪ですな。もともと利口な様式美HRの望ましいレベル内に収まりきらない鬼気迫る剛性のある声をしているこの人ですから、90年代型のヘヴィネスに負けも流されもせず、暗黒をど真ん中から裂くようにガッシリと歌い込んでます。このカタルシスは従来の作風では実現し得なかったこと。しかも途中にぐっとドラマ的緩急がつく曲(冒頭2曲名曲!)や、昔からあったようなオーソドックスなアンセム風ミッドテンポチューンないしパワーバラードなんかも入り混じって、決してモノトーンなアルバムではないしロニーの表現の幅広さも圧殺されるようなことにはなってません。全体の雰囲気的にはTESTAMENTのアレックス在籍期ラスト「RITUAL」あたりに近いか。ファンタジックな高揚感という点では確かに欠けるが、ヴォーカルパフォーマンスの渾身の壮絶さは随一。エキセントリックかつ必死ということでTHE MARS VOLTAやSYSTEM OF A DOWNが好きな人にも無理矢理勧めてみよう。

【本日のレビューその2:FREE LOVE「INCUBUS (Plus 1)」】


名古屋を拠点に活動中のバンドのデモCD-Rを直々に送って頂きました。ホームページはこちら。バンドでの4曲+ボーナス1曲(ドラムが打ち込みなので現メンバーが揃う前のものと思われる)の計5曲入り。内容は中近東フレーズを効かせた70年代テイストのサイケハードロックで、これがフィンランドのKINGSTON WALL(もしくは「ELEGY」以降のAMORPHIS)を思わせる堂々としたものでかなりかっこよい。全編で大活躍するオルガンやシンセの、ギターとの絡みっぷりの端々からRAINBOWみたいな古典様式美が匂ってきて、マニアのツボをピンポイントで刺激。ミュージシャンの度量が活きるような余白を多めにとったアレンジや曲構成も昔気質を地で行くようでいいですね。一方けっこう深く歪んだギターによるヘヴィネスの扱いようからはしっかりと今日的な音圧感覚が窺える。完全レトロで終わらないがゆえにズッシリ濃厚な聴き応え。ヴォーカルは何だかピキ〜ッと張りのある声質で、独特の世界観をもった歌い方も相俟って「うわー日本人が英語で歌ってんだなあ…」という国産バンドによくあるディスアドバンテージを感じさせない。個人的にはSPIRITUAL BEGGARSとかよりも感銘受けてしまいました。この分だとライヴも相当アツイのが期待できそう。見てみたいっす。

  12月25日
収穫はなし。最近気をつけていることはチューニングです。ベースの1弦なんてどうでもいいやと思ってると意外なとこで致命的なアラが出て簡単にボツテイクと化す恐ろしさよ。どんな音源制作やライヴ演奏も「1000枚プレスに出す」「WOWOWで生中継されてる」と思ってやるといいですね。「ノットOK」は何があろうと「ナシ」であるというシビアさがプロフェッショナリズムの当然なのだなーとしげしげ思う。

▼そういえば一昨日のバーゲンの朝、開店待ちで並ぶ間、店の前を雪かきする店員の道具に使われていたのが12インチLPで笑った。そうそう割れもせずちゃんとお役に立ってました。105円段ボールで眠り続けるのとどっちが幸せなんでしょうか…

【本日のレビューその1:HAYMARKET RIOT「BLOODSHOT EYES」】


EUPHONEのライアンが最初にやっていたGAUGE、HOOVERのアレックスも在籍したRADIO FLYER、ティム・キンセラとBRAIDのボブが同時にメンバーだった伝説のシカゴオールスターユニットTHE SKY CORVAIRなどを渡り歩いてきたケヴィン・J・フランク率いるバンドの2001年1st。来年にジャパンツアーがあるかもとの話なのでピックアップです。ズバッとストレートなリズム(時々トリックあり)に単音弾き多用の変則リフ×2が絡みまくる、初期AT THE DRIVE INや1stの頃のQ AND NOT Uをワル〜くしたような王道ポストコアをやってます。スティーヴ・アルビニとイアン・マッケイの中間のような声でドスを効かすヴォーカルはヴェテランの貫禄充分、歌メロが若干オリジナルパンクを匂わせる瞬間があるあたりもシブイ。同系統の若き追従者が大量にいるせいで今やあんまり珍しい音楽性とはいえないですが、薄っぺらいワナビー意識じゃなくて「いや〜、こればっかりやってきたんだわ」というライフワーク的な自然体っぷりから来るいぶし銀の説得力がCD越しでもしっかり伝わります。ライヴも炙ったイカのような芯の確かな味わいが堪能できそう。

【本日のレビューその2:UZ USME DOMA「RYBI TUK」】


POSEIDONシリーズその5。チェコのバンドの2003年作です。クレツマーっぽい物悲しい旋律と踊れるリズムをANEKDOTEN+サムラ+高円寺百景の共同戦線で派手に調理してしまったような、バカ系東欧レコメンの最たるもの。ヴォーカルがとにかく気張る上、ギターもベースも結構歪んでるので、IN EXTREMOやEINHERJERあたりのフォークメタル/ヴァイキングメタルと実は殆ど変わらなかったりします。しかし変則拍子のパターンや民族楽器を自由に取り入れるアンサンブル構築のアイディアなどは、地でやってるだけにさすが豊富。NE ZHEDALIやKAMPEC DOLORESみたいな宿命的な鬱屈性が何故かこのバンドには希薄で、オンステージおっしゃ!!お客さんヨロシク!!とばかりに終始やたらとハッスルし続けるのがいつまでも笑える。70年代にシンフォプログレがイタリアに入って元々の形とほぼ別物になっていったように、この人達もRock In Opposition云々といった精神性など関係なく(もしかして意識してるかも知れないですが…)レコメンサウンドを乗り物として借りてきたところに土着の音楽をロックバンド形式でアウトプットしてるという感じですね。アヴァンギャルドな楽器使いで屈折しながら突撃してくるこのノリは、全くお門違いのMAKE BELIEVEや31KNOTS(ポルカっぽい所も近い)すら彷彿とさせます。それにしても最後までテンション衰えません…スタミナあり過ぎ。ちなみにこのアルバムの邦題は「鱈の皮下脂肪撲滅同盟」。何だか判らんけど凄い。

  12月24日
本日の収穫、アマゾンマーケットプレイスで購入のBARKMARKET「L RON」。大雪もすっかり融けまして。雪に覆われてると廃墟に見えて、「これ全部更地にしてもいいんちゃう?」という気になる。そういえばあまりに部屋が散らかっているときも「いっそ全部捨てたらいいんちゃう?」という気になる。CD買ったりする気はないけどBoAって歌上手いっすよね。

【本日のレビューその1:BARKMARKET「L RON」】


無駄に新しい四天王を提唱していこうと思っている今日この頃、まずはHELMET、SOUNDGARDEN、UNSANE、そしてこのBARKMARKETで「ポスト・ジャンク世代のグルーヴコア四天王」はどうでしょう。93年の2nd「GIMMICK」に続くこれがもう大本命の激名盤!!ポリリズム等のトリックも織り交ぜつつ、タメとずらしをしこたま効かせた好戦的なビート感は絶頂期LED ZEPPELINの域、更にQUICKSANDのような現代的な極太ウネリを強調しての超絶ヘヴィグルーヴに即死。今思い返すところの「グランジって結構カッコ良かったよね」という印象を100%以上美しく体現する最高のロックバンドです。TRAINDODGEと初期SHINERの中間をいくようでもあり、未だに充分ショッキングなものとして聴けます、聴けますというか特大パンチ食らいます。アグレッシヴな中にもどことなくブルージーな香りを背負い込んでいる(表面的特徴として似るのではなく根底のノリで)あたりはUNSANEと同等のオヤジな貫禄。必死のアジテイションとヘロヘロ酔拳のどちらともつかない不敵なヴォーカルの求心力も上々。全編一切緊張を緩めない、実に名盤らしい名盤なのに、現在は廃盤状態で新品での入手が困難というのが何とも嘆かわしいですよ。私はアマゾンに出品されるのを半年以上チェックし続けて、3000円で出たのをやっと買いました(カイマンがずっと6000円近くで出してるけどそれはさすがにやり過ぎ)。中古で見たら即捕獲しかない。

【本日のレビューその2:BANDVIVIL「BANDVIVIL」】


POSEIDONシリーズその4。日本人ギタートリオの2004年作。ジミヘン、アレックス・ライフソン、ロバート・フリップ、アンディ・サマーズ、ジェフ・ベック、etc...をブレンドしたような、プログレともフュージョンともハードロックともブルーズともジャムバンドとも言い難い、しかし男三人でひたすら泥臭い、とてもユニークなスタイルです。「ジャンルを超越した変幻自在のギター・トリオ!」という一見よくありそうな威勢のいい帯タタキが実は全然嘘偽りなく中身をそのまま語りきってしまうという衝撃の事態。オールドファッションなパワートリオの醍醐味の中に飄々と新しさを忍ばせるというこの芸当は、血肉とするネタのそれぞれに深くまで精通しているがゆえ可能なことなんでしょう(心なしかRUSH色が強めなのは嬉しい)。ニュアンス&歌心重視で意味なく弾き過ぎないソロパートも好感大。日本人には稀有な声の大きい説得力です。そして突発展開や変拍子にも涼しい顔で対応するリズム隊がまた質の高い職人っぷりを発揮。MUSEAのサブレーベルから海外流通もしてるみたいで、世界標準に充分かなうクオリティかと思います。

  12月23日
▼30度を越す夏の日も、雪が視界一面を覆う冬の日も、内田有紀が純こと吉岡秀隆と離婚しても、バーゲンがあれば僕達はそこに開店前から並ぶわけで…。本日の収穫年末拡大スペシャルは今日から200円OFFバーゲンのサウンドベイ金山にてGIRL「SHEER GREED」(DEF LEPPARDのフィル・コリン!)、1349「BEYOND THE APOCALYPSE」(SATYRICONのフロスト在籍、激ファストブラック!)、CRYPTOPSY「NONE SO LIVE」、ANCIENT CEREMONY「CEMETARY VISIONS」(ドイツ産初期ゴシック)、DIO「STRANGE HIGHWAYS」(94年問題作!)、LEO KOTTE「MY FEET ARE SMILING」(73年)、RAGE AGAINST THE MACHINE「RENEGADES」、CALIFONE「QUICKSAND/CRADLESNAKES」(2003年THRILL JOCKEY)、MARIO SCHIANO「ON THE WAITING-LIST」(73年音源、ATAVISTICから再発)、同上前津にてCHICAGO「HOT STREETS」「13」、OTOLITHEN「S.O.D.」(CUNEIFORM、BLAST〜TSUKIのベーシストによるプロジェクト)、HOELDERLIN「NEW FACES」(ジャーマンフォークプログレグループ80年作)、AMERICAN MUSIC CLUB「CALIFORNIA」(88年!)、HAYMARKET RIOT「BLOODSHOT EYES」、DR.JOHN「GUMBO」、ACTIVE INGREDIENTS「TITRATION」(DELMARK、チャド・テイラー&ロブ・マズレク参加)、DIRTY THREE「SAD & DANGEROUS」(95年)、JANE'S ADDICTION「RITUAL DE LO HABITUAL」、TONY WILLIAMS「LIFE TIME」(64年)。冒険と安心と確認がいいバランスで良かったなあ。

【本日のレビューその1:CHICAGO「HOT STREETS」】


セールス的には惨敗だったようですが、それでもこれはCHICAGOの全キャリアを通しても唯一のスペシャルな作品。スタジオフルアルバムで、タイトルが通し番号じゃないのは12枚目のこれだけ!他にもジャケに初めてバンドメンバーの写真を使った(ベスト盤除く)とか、プロデューサーが代わったとか、色々と心機一転の試みがなされた作品のようです。さてリリースは78年、フュージョンソウルがメインストリームポップスにかなり食い入ってきて、ディスコビートもそろそろ来るかという頃。長年売りにしてきたブラスロックスタイルもいい加減重たくなってきたのか、適当に時流になびいて尻軽になってるのが見え見えの内容。しかしこの「間違ってるCHICAGO」が、なまじ間違いない頃の並の出来の作品よりもグッと来てしまうのは天の邪鬼ゆえでしょうか…?いや、POCOとかも血迷ってからが楽しいのです。多分この時代のアレンジワークに共通する「これから80年代!」ていう無責任な快晴感が好きなんだと思います。本当に商業化してしまう17〜18枚目あたり以降よりはちゃんと情緒があるし。突出して印象に残る曲もそうないけど、その薄さが却って気楽。よく判らんですがDJやってる方とかはこのへんから選曲するとオシャレなのでは?

【本日のレビューその2:MARIO SCHIANO「ON THE WAITING-LIST」】


ATAVISTICリリースというのと、金管の人数がやたら多くて編成も変(アルト/オルガン兼任、サックス各種/フルート/ギター/ピアノ兼任、テナー/バリサク、トランペット、トロンボーン、ハモンド/プリペアドピアノ、ドラム、ベース×2)で、ジャケに使用のフォントがいかにもレトロイタリアンだったので購入。73年作品の再発のようです。オーネット・コールマン譲りのアメーバ伸縮および信号無視的脱調、収集のつかなさをコントロールする大人数乱サンブル(AECからビーフハートまで彷彿)、さながらキース・エマーソンによる必死の妨害(オルガンがとにかく図々しい)で調子狂わされてるエリントン楽団…みたいな、垢抜けと笑いとスリルを兼ね備えた親切フリージャズでした。今同じことをやったとしても「懐古的だ」といって非難される心配の全くない完成度。唐突に入る朗々とした歌ものトラックにもどことなくネタ的な開き直り感が漂うあたりはユゼフ・ラティーフのよう。タイミング的にRIOと共鳴してたのか、あくまでジャズ畑としてやったのか判りませんが、どっちのリスナーにもお勧めの内容です。

【本日のレビューその3:1349「BEYOND THE APOCALYPSE」】


ノルウェーブラックメタル・オリジンの一員SATYRICONのドラマーであるフロスト氏がドラマーを務めるバンドの2004年作。古風なジャケに見合った往年のMAYHEMみたいなスタイルながら、曲展開のフットワークが明らかに向上して全体がスッキリ締まってるのと、クサクサにならない程度に邪悪なドラマを作るリフのメロディアス具合が初期EMPEROR風またはCYCLONE TEMPLE+MORBID ANGELて感じでかなり乙で、基本スタイルが固まり過ぎているこのジャンルの新譜として理想的なショック度とスタンダード度を両方備えたグレイトな内容になりました。何よりドラムの荒々しい爆走っぷりが逞しい。速度感あるブラストは大事です。呪うようなスロウパートにも事欠かず、正統派ブラックメタルの魅力を凝縮したような出来ですね。プロダクションもラフな質感の割にバランスは申し分なく整っていて聴きやすいし、未入門者の最初の1枚にもオススメできます。アメリカでも近年どんどんヒップになってきているブラックメタル、ORTHRELMあたりの延長としておひとつどうですか。

  12月22日
収穫はなし。最近の脳内リピート率ナンバーワンはOGRE YOU ASSHOLE。名古屋また大雪です、もうやめて。日常のメインの移動手段が自転車なので、家の前の雪かきは各家庭の社会責任、やらねー家はどうかしてやがる、ブツブツ…とつい心が荒む。

【本日のレビューその1:V.A.「THE UNACCOMPANIED VOICE -AN A CAPELLA COMPILATION」】


秋のバーゲンで購入の品がウッカリ未聴のままでした。これはJAGJAGUWARの姉妹レーベルSECRETLY CANADIAN制作のコンピで、タイトルの通り「無伴奏のアカペラ」のみを集めたというコアな代物。しかし参加メンツが濃い。GOD IS MY CO-PILOT/THE HATTIFATTENERSのシャノン・トッパー、DRAG CITYから出しているAPPENDIX OUT、FOLK IMPLOSIONファンにはお馴染みミア・ドイ・トッドRED HOUSE PAINTERSのマーク・コゼレク、SPOKANEの人の本丸バンドDRUNK、インディロックの人気アーティストPEDRO THE LION、MODEST MOUSE、ダミアン・ジュラード、伝説のアシッドフォークシンガー・ヤンデック(!)、元BASTRO〜GASTR DEL SOLといえばデイヴィッド・グラブス、前衛ギタリストのエリオット・シャープ…と有名無名の垣根なく超ディープ&豪華な顔ぶれ。内容はそれぞれの人がそれぞれの解釈で、アカペラによる空間構築をしているという感じ。完全独唱で歌そのもののヴァイブレーションを聞かせる人、テレコ録りでローファイ仕立てにしてくる人、多重録音で抽象画っぽくまとめる人、エフェクトを駆使して人声感を敢えて消す人など様々。意外と全員ちゃんと間を持たせられてます。楽曲の集積としての聴き方はほぼ不可能なため、若干精神修業的な匂いも漂う盤ではありますが、これが例えば全編ドラムソロだけとかトランペットソロだけだったりしたらもっと聴きようがなさそうというか、人の声ってだけである程度スッと入り込めるというのは不思議なもんです。ちょっとフリーセッション時の二階堂和美みたいだったりもしますなあ。私は割と無心に楽しんじゃいました。なかなかの隠れ名コンピかと。

【本日のレビューその2:DJAMRA「TRANSPLANTATION」】


POSEIDONシリーズその3。アルト+トランペットの2管にリズム隊という、ギターレス/キーボードレスの日本人カルテットの2003年作。体を張った諧謔で脱線の極致に挑み続ける突撃系レコメンスタイル〜CUNEIFORMど真ん中サウンドです。威勢だけを頼りに無謀なタックルを食らわすのではなく演奏自体は至極真面目(しかも激ウマ)にやってて、狂気の演出の中にも異様なまでの余裕。THE MUFFINS的なアグレッシヴ変拍子を基調に、切り替えの細かい極端なミクスチャー性は昔のFARMERS MARKETを思い出させ、不定形に山谷を作りながらどこまでもリフがつながっていく様は金管化した初期DON CABALLEROの如く。スラップ全開になる場面は4th〜5thの頃のSIEGES EVENのようでもある。いわゆるプログレというと私は「妄想の音像化活動」をやるものと思っているのですが、このバンドはそうというより、持てる芸(テクニック)とアイディアでもって世の中に散在する雑多な音楽をひとまとめにしていじり倒すという大会ないし求道行為をしてる感じ。それもまた現代的なプログレッシヴィティのかたちといえましょう。このへんのKNITTING FACTORY系トンガリジャズと紙一枚隔てて相通じるものが。

  12月21日
収穫はなし。久々にユーロロック・プレスを買う。目当てはMAGMA来日にともなうクリスチャン・ヴァンデのインタビュー。いい本だ。

▼家に帰ると「テレビが壊れた(写らなくなった)」という。食事時に軽く横目で見る程度だったとはいえ、テレビを見ようと思っても見れないという状況は、家という囲いの中だけ外界と遮断されてしまったかのような、息苦しさや不安を感じてしまうものです。それじゃ仮にこのままテレビが全然見れない生活になったとしたら、用事に拘束されない家での暇な時間を、特に趣味などを持たない人は何によってやり過ごすのか考えてみたところ、思い浮かんだのは「人(家族、ご近所を含む)と関わる」「環境(自然を含む)を改めて観察したり絡んだりしてみる」「本をわざわざ買いに行って熟読する」など。見事に普段あまり積極的にやってないことだらけなので勝手に唖然としてしまいました。テレビがついてるだけで「何か音してるし動いてるし、俺の時間は今、ちゃんと出来事に埋め立てられている」という気になってしまうことのヤバさを再確認。ごく近くにいくらでもあるリアルなものをじっくり省みることなく、現実とズレた時間および距離感覚のもとで自分と自分の興味だけを世界の構築要素してしまう人ばかりの世の中はヤバイなあ、自分も正にその一員であったと気が付いて尚更ヤバイ。ひょっとしてテレビのない生活は凄く良いんじゃないかと思い始めてます。

【本日のレビューその1:HELLA「TOTAL BUGS BUNNY ON WILD BASS」】


今日の激テク変態系ポストロックをLIGHTNING BOLTとともに支える筆頭株・HELLAの、1stと2ndの間にリリースされた7曲入りEP。OXESその他のようなDON CABALLERO〜SWEEP THELEG JOHNNY発展型のリフものマスロックじゃなく、爆撃乱打ドラム(一応拍子は明確)にフレーズのようなノイズのような曖昧な上モノが寄り添う、THE FLYING LUTTENBACHERSDEERHOOFとAPHEX TWINとRUINSの中間のようなフリースタイルの二人組です。普段はドラム+ギターなのがこの盤ではギターの代わりにほぼ全編ファミコンっぽい響きのキーボードが入っておりまして、体力バカ・テイストが更にバカ方向に全開。コンポジションのメモというより現象実録といった感じに仕上がっているため度を越したフリージャズのように楽しむことも可能。CURLEWやTHE MUFFINSみたいなやつにゾッコンなハードレコメンマニアにも多分たまらないでしょう。ハッキリした構成やメロディをあまり持たない、漠然とした表現のやり方ではありますが、強烈な妄想というかイメージから生まれ出る非常にピントの定まった音楽であることは一聴して感じ取れるはず。ありがちな「こんな公開実験に2000円とか金出して買うのもな〜」的腑に落ちなさは全くなし。ドーピングでムチャクチャに興奮したビル・ブラッフォードとあり得ないくらいベロベロに酔ったエディ・ジョブソンが破滅の限界に挑戦するセッション、てな勢いの物凄さです。世も末だな。

【本日のレビューその2:DAIMONJI「IMPROG」】


POSEIDONシリーズその2。ALTERED STATES、GROUND ZERO(大友良英)、是巨人などのメンバーであるナスノミツル、KIRIHITOほか国内アングラパンク/プログレバンドを多数プロデュースするホッピー神山、そして言わずと知れた吉田達也によるインプロユニットの2003年リリース作。オビには「緊張感が心地よいソリッドでエモーショナルなZEUHLジャズロック」と書かれてまして、ZEUHLときたらそれすなわちMAGMAを暗示致します。手数ドラムとエレピその他のシンセとベースの3人で、確かに「KOHNTARKOSZ」や"De Futura"(「UDU WUDU」収録)がもっと突撃してくるような雰囲気の、ヘヴィで極度に張り詰めたスジナシ・セッションが展開。これがもう即興とはにわかに信じ難いくらい、無計画のはずなのに意思を持ってうねっていくようなスパンの大きい構築性をもっていて、本気でびっくりします。リズムからリズム、リフからリフへと完全ノーストレスで繋がれるさまはどう聴いてもあらかじめ綿密にデザインされた大曲。勿論ミクロでの演奏自体も、みっともない探り感など一切見せず各々のバカテク/激センスを思う存分炸裂させながら、集団としての結果の音をビシッと見定めて次の舵を反射的に切る、この上なく達者なもの。ヴァンデになりきるヴォーカルが二人分いる(ホッピー氏と吉田氏)のにはちょっと笑います。プログレがネタでこんなインプロが出来てしまったというのはひとえに、メンバー全員の深いMAGMA愛あってのことですな。個人的には高円寺百景より好きかも。

  12月20日
▼日常生活の中で最も想像力が沸き立つ瞬間は、新品CDのキャラメル包装をはがしている時だと思います。本日の収穫、アマゾンから届いたRUSH「COUNTERPARTS」「TEST FOR ECHO」(リマスター!!)、ブックオフ栄生店にて木根尚登「LIQUID SUN」「NEVER TOO LATE」(いずれも250円)、宇都宮隆「BUTTERFLY」「WATER DANCE」(いずれも100円)、スピードウェイ「THE ESTER/BASE AREA」(79〜80年、TM NETWORKの3人が在籍したバンド!2in1リイシュー)、小田和正「SOMETIME SOMEWHERE」(500円にて)。…そして、以前KAMPEC DOLORESのレビューの話を頂いたPOSEIDONさんから「よかったらレビューで取り上げてほしい」とのことでガッツリ送り込まれてきた、大量のPOSEIDONリリース/取り扱い作品(全て新品)!FLAT122「THE WAVES」、TRIO 96「DUO'03」、UZ JSME DOMA「RYBI TUK」、DJAMRA「TRANSPLANTATION」、おU「おU」、BANDVIVIL「ばんどびびる」、DAIMONJI「IMPROG」、CHERNO「MISSING ILLUSION」、F.H.C.「TRIANGULATE」、足立兄弟「ADACHI KYODAI」、壷井彰久×鬼怒無月デュオ「ERA」、KBB「FOUR CORNER'S SKY」、LU7「L'ESPRIT DE L'EXIL」、荘園「SHOW-YEN II」、あと以下はCD-Rで月の海「SIVLE REDYC CHOWDER」、CLIMATE OF EARTH「CLIMATE OF EARTH」、レーベルサンプラー2種。一度に対処できる量を超えてますが日々地道に取り上げていこうと思います。うおー。

【本日のレビューその1:RUSH「COUNTERPARTS」】


オルタナの大波に世界中が飲まれておりました90年代初頭、「神経質に屈折しつつダイナミックなリフ」「柔軟に発展/脱線するリズムアプローチ」の揺り戻しにこのバンドが「おお、一周まわって俺らの時代や〜」と思ったかどうかは知りませんが、ともかくカナダのベテラントリオの15枚目にして大幅な若返りが断行された成功作。RUSHはLED ZEPPELINみたいなことをやりたいバンドとしてスタートして、その後プログレ的な大作志向に乗ってみるもののブームの終わりとともにあっさり離脱、コンパクトな楽曲の中に変拍子や激テクの効いた緻密なアレンジを施したスタイルに転身した「PERMANENT WAVES」(80年)、「MOVING PICTURES」(81年)あたりで大ブレイク。その後ニューウェイブにかぶれてシンセを大胆導入(しかしライヴでは三人で再現)するなどややハイソ方向に進み、90年代に入って折からのグランジムーヴメントと往年の自身の音楽性が偶然リンクすると、いきなり気合を入れ直して作ってきたのが93年のこのアルバムです。歌ものとしての完成度を高めるスキルは80年代でじっくり培ってきたとして、今回はそこにぐっと野心的で生々しいバンドサウンド意識が割って入り、特にグイグイうなるリフが発する強烈な遠心力には有無を言わさず揺さぶられる。曲によってはSUNNY DAY REAL ESTATEやSHINERおよびCRANK!系の初期エモバンドを先取りするようなハッとさせるアイディアも。どうもファンじゃない人に訊くと「声が苦手…」と言われることが多いですが、SDREのジェレミー君のように慣れればクセになる系だと思ってます。うーむ、"Stick It Out"はヒットしたし、90年代といえばこれ、というチョイスの中に混ぜてもいい名盤であります。次作「TEST FOR ECHO」で更にアッと驚く熟成を見せるんですがそちらはまた近いうちに。

 あ、今回はリマスターということでわざわざ取り上げたんでした(最初に聴いたのは高校の頃)。音数が多くて豪勢めにリヴァーブが乗っている時代の音源をリマスターすると、ケバ立ちは均されるけどその分、飛び出てた分が周りにべたーんと伸びてしまって、「ツルツルしてるんだけど滲んでいる」感じになってしまう気がします。オリジナルはスッキリしてるけど若干ボコボコしてるし、どっちを良しとするかは難しい。

【本日のレビューその2:LU7「L'ESPRIT DE L'EXIL」】


POSEIDONシリーズ(※今日の日記参照)で。毎日1枚いきたいと思います。届いたCD全部に一度ざっと耳を通してみて、大筋でサムラ/マグマ/マハヴィシュヌ…て感じのバンドが多かった中(勿論それもイイんですが)、一枚だけ際立って異色だったのがこれでした。キラキラならぬフワフワ・デジタルシンセとフュージョン風ギターをフィーチャーした、何ともソフトで優美なニューエイジタッチの国産インストポンプロック。ゼロ・コーポレーションから出していたドイツのEVERON(懐かしい!)、アメリカのHAPPY THE MAN、「NUDE」の頃のCAMEL、YESっぽいときのCAIRO(「試合に負けてマイクパフォーマンスをするときのラッシャー木村」みたく細かい例えになってますが…)などなどを思わせる、今やなかなか存在しない匙具合になってます。これがもし83年リリースだったとしたら(実際は今年)ブッちぎりの金字塔として専門店通いのコレクターをヒイヒイいわせたであろう濃厚な内容。サポート陣はきっと豪華絢爛なはずですが私は不勉強であんまり判らず、唯一見覚えのあった「永井敏己」の名を検索してみたらVIENNA〜GERARDの人でした。他の人も調べれば出てきそう。CGによるジャケもLE ORMEの初期作あたりにどことなく通じるファンタジックな世界観をスマートに描き出していて、中身とベストマッチ。これはいいと思いますよ。

  12月19日
▼こちら中継先の盛岡市内です。まあ、嘘ですが。

↑近所の道

↑ひと晩の積雪量、午前9時観測

↑市街遠景

↑テニスコート?
名古屋は58年ぶりの積雪量を記録したとのことなので、記念に写真撮っときました。雪国の人が見たら大したことないんでしょうね。

夜は得三でOGRE YOU ASSHOLE(以下オウガ)のレコ発ツアーファイナル。オウガはタラ・ジェーン・オニール、OWENの前座で見てしこたま好感触だった長野のバンドでして、今日はオープニングに二階堂和美も出るということなのでそりゃ黙って直行です。開演30分前で相当会場は埋まっていて(本日の得三はテーブル有り)、運良く比較的前の方に座れたもののその後更にドヤドヤと詰め掛けてほぼ満員御礼に。LIGHTNING BOLTとDMBQの時よりも入ってたんではないかと思うほど。机しまえよ、得三…。

▼一番手はタラジェンの時も見た名古屋のYO-MA。BUILT TO SPILLとNUMBER GIRLが7:3てな感じのギターロック。展開で盛り上げる系の曲作りがなされている感じで、歌ものっぽくアレンジしてある割に曲構成の方に耳が行く。平均年齢高めとあって演奏の安心感は抜群。リズムは本当に鉄壁でした。

▼二番手は本日の目当てその一、去年の7月以来約1年半振りに見る二階堂和美。相変わらずジブリのヒロイン風のいでたちでエレアコ一本を手にニコニコニコと登場。ロックバンドに挟まれているので今日は賑やかめに、みたいな前振りののち、高速昭和ブギー+ラップ(ジャイヴ?)みたいな"レゴブロック〜今日を問う"でロケットスタート。以前に増して顔芸が派手になるとともにヴォーカルも恐ろしく変幻自在度が高くなり、ブギーの女王からやさぐれジャズシンガー、野生の少女、絶叫トロンボーンへと秒刻みで化けるロデオ的豹変パフォーマンスに絶句の嵐。更に続いた"テワワナゲシ"ではもう殆ど悪ノリの勢い(都はるみの"あんこ椿は恋の花"のワンフレーズまで飛び出す始末)でテンションが上がり続ける。しばらく見ないうちに更にグレードアップしてらっしゃいました、恐るべし!!「溢れるまま」といった印象だったのが「次から次へ」のエンターテインメントになって、もはやベテラン役者のような貫禄。よりビタッと決まるようになったギターに伴ってアレンジもより柔軟に。

 最近は「紅白狙い」がアツイらしく、曰く「地元(広島)は田舎なので、フジロック出たとか言っても音楽やってると認めてもらえない。紅白くらいじゃないとダメ」だとか。それで用意したという"ラバーズロック"という新曲は、ちょっと他人事のような歌詞のド直球(のフリをした?)ラブソングで、いや〜これで紅白出ちゃったら話違ってきやしませんかい…と一応以前から知る者の感想。普通に今までのレパートリーで「めざましテレビ」の軽部さんのコーナーにでも出れば後の展開は全てOKだと思うんですがなあ。さておき、名曲"脈拍""レールのその向こう"も披露され、ラストは"ショッピングブル"の脱臼度6割増ヴァージョンで盛大にシメ。最後の挨拶にドッと声援と拍手を送る客席。そりゃそうだと毎回思う。ホントこの人は早く紅白出るべき。

そして本日のメイン、OGRE YOU ASSHOLE。セッティングが終わって一旦捌け、例によってTHE POLICEの"Message In A Bottle"を入場曲にヌヌッと再登場するメンバー4人。夏に見たときセーター姿でステージに上がって度肝を抜いてくれたギターヴォーカル氏、今日は普通にネルシャツでした。自分達のレコ発だからといって特別緊張している様子もなく、むしろいくらかどっしりした構えでいつものオウガ節を披露。前はもっぱらMODEST MOUSE+祭り囃子(NUMBER GIRL〜ZAZEN BOYS経由?)だなーと解釈してたんですが、メジャーキーの大らかな感じの曲ではふとBLIND MELON("No Rain"のスマッシュヒットで有名、自殺したシンガーのシャノン・フーンはガンズのアクセル・ローズの従兄弟)がよぎったりもしました。ぺらーっとしたまま飄々とハイトーンをかますヴォーカルもそういえばどことなく雰囲気が被る。影がさした文系青年(あくまで風貌からのイメージで…)だけが抱える、部屋の中の攻撃性、何だか許しに満ちた優しさ、絶対的諦念、そういうものを現代人的な低体温で形にしてくれるこのバンドのセンスはなかなかに稀有なもんだと思います。ただのグデグデ無気力ではない、したたかな言葉の芯がある。とにかく名曲が多いのが強い。

 演奏はいつもながら申し分なし。弦楽器3人の緻密なハーモナイゼーションに感心しきり。ギターヴォーカル氏は歌いながら結構重要なフレーズをちゃんと弾くから偉いというかカッコイイなあ。微妙な調性感をデリケートに輪郭づけるベースのフレージングも冴えてる。メインアクトとしてまとまった曲数を演奏すると、リズムアプローチが特定方向を狙い撃ちし続けるのが後半やや気になってはきたものの、逆にこれだけ強烈なフィルターをもってるということは今後スタイルをシフトしていっても確実に面白かろうと思わせる。イイ感じに経年変化してそのうちKARATEみたいに熟成していくのではと期待しまくっております。ということで1月のMAKE BELIEVE(前座にオウガ出演)も勿論行きます。あ、二階堂さんは3月にMT. EERIEと廻るらしいっす!

本日の収穫は物販にてOGRE YOU ASSHOLE「OGRE YOU ASSHOLE」。レコ発ですから。

【只今のBGM:OGRE YOU ASSHOLE「OGRE YOU ASSHOLE」】


音楽性に関しては上記ライヴリポート中の記述を参照下さい。音源としての完成度はといいますとこれが良い。冒頭曲を含め何曲かでヴォーカルがダブリングされており、こういう声質には実にハマる。何ともキャラクターのある声ですな〜。んでサイドギター氏のフレージング/音色のMODEST MOUSEオマージュっぷりがライヴより顕著に聴こえる。しかし激似ながらもちゃんと新しい別の音楽をやれてるあたりはニール・パート(RUSH)まんまのマイク・ポートノイ(DREAM THEATER)の如しか。ミックスはあまりガチッとやらず、ローファイ風な質感を損なわない程度にバランス良く整った、国内インディレベルでは理想の域。歌がよく聞こえるのはいいと思います。そこ肝心ですからねこのバンドは。パフォーマンス的にも変にこぢんまりしないで、ライヴでの良さがちゃんと伝わる出来。生で2・3回見ただけで聴き覚えて、あっ好きかもと思った曲が、ズラッと鼻先から尻尾まで詰まってるということはこれは名盤なんではないでしょうか。アマゾンでも既に買えるようになってるみたいですから、気になった人、見たことがあって気に入ってる人は是非とも一枚。

  12月18日
▼名古屋市内でも大雪が降りっぱなしです、鬼のように寒いっすね。と今日ばかりは当たり前のことを書いて全国の皆様と辛みを分かち合いましょうか。冗談でも何でもなく本当にこの状態で、街中を自転車に乗って走ってました。↓

帽子(傘代わり)と環状マフラーで眼鏡以外全部塞いでます。…もうやめようと思います、こりゃさすがに怖いわ。収穫はなし

【只今のBGM:BARNEY KESSEL/SHELLY MANNE/RAY BROWN「POLL WINNERS THREE!」】


1作目、「RIDE AGAIN」、これ、「EXPLORING THE SCENE」「STRAIGHT AHEAD」と続いたシリーズをやっとコンプリート。60年CONTEMPORARY。POLL WINNERSを名乗るユニットは他にも色々あるみたいですが、私にはこのケッセル/マン/ブラウンの三バカ大将が最高です。アダルティ〜な冷静さを装いながらも、実は秘めている各人の手練手管を尽くしてギタートリオならではの薄さを濃厚なる隙間に変える、熟年お笑いコンビみたいなノセあい・ツッコミあいが毎度のことながらお見事。ウエストコーストならではの天気の良さとサービス精神も手伝ってとにかく愉しい。ツプ〜ンと引っ掛かる独特のブルージーなトーンで、ジャズギターらしからぬチョーキングやピアノばりに複雑なコードを自在なタイミングで繰り出すバーニー・ケッセルはやっぱりこの三人でこそ映えますな。気転の効いた疎密のコントロールで少人数アンサンブルを俄然彩り豊かにするレイ・ブラウンも良いし、シェリー・マンはやっぱりちょっとエキセットリックなパターンやキメをかましまくってきて面白カッコイイ。技とグループ表現の必要充分な関係をわかりやすく堪能するには本当にうってつけです。ジャズやインプロの意味がわからねーというロッカー諸氏はこの人達のどれでもいいんで是非聴いてみて下さいな。ついでに演奏の微妙な温度や距離感までリアルに捉えきった録音も最高。

  12月16−17日
本日の収穫、P-CAN FUDGEにてBARNEY KESSEL/SHELLY MANNE/RAY BROWN「POLL WINNERS THREE!」(60年)。サークルの後輩が野外ライブで知り合って親しくなったロック好きのカナダ人を、部員達によるジャムセッションでもてなすべく、演奏のできる居酒屋に大挙して行く、という変わったイベントに立ち会った日でした。件のカナダ人はやはりカナダ人らしくRUSHの大ファンだそうなので、音出しのついでに"YYZ"や"The Spirit Of Radio"のワンフレーズを弾いてみたりしたのに、これといった反応はなし(ただその時私のことを「あいつは何歳だ?」と不思議そうに部員に尋ねていたような気はする)。その後の手探り全開のジャムにはexcellent!と甘めの賛辞が送られ、ビールを部員に勧めまくってすっかり楽しんでいるかと思いきや何と2時間ほどで帰ってしまい(同行したネパール人が「眠い」と言い出してやむを得ずとのこと)、店内にだんだん常連っぽい一般客も増えてきたので一旦演奏は切り上げ。

▼23時をまわった頃、後ろで飲んでいたおじ様方4名ほどが颯爽とステージの方にやって来て演奏を始め、おお魅せてくれますか熟年の妙技…と期待したらこれが驚くほど普通でいささか肩透かし。各々それっぽく聞こえるようなイディオムは長年のパターン学習で染み付いている様子でも、注意深く追うと「スケールアウト」っぽいものが相当「適当」であることが判り、ルーズなリズムの集合にグルーヴは生まれず、あらかじめ仕込まれていたかのような流暢なグループ表現(即興においては個人技よりも重要と考えます)やら、迷いのなさゆえのノーミスやら、そういった感嘆に値するまでの鋭さは見当たらず。そりゃ歳取ってるからって全員CDデビューできるくらい上手かったら世の中大変だわな、と納得して帰宅。湯浅学が失敗したみたいな政治家に「損失補填の遺憾の意はまず議席の過半数が東シナ海の偽装問題から云々…」などとつぶやかれるよりは田中麗奈あたりに両目を直視して一言「ダメ、ゼッタイ。」と言われた方が間違いなく心が動くわけで、「一見楽器が上手い」のと「語れるプレイヤーである」のとはシビアに見分けていかねばなるまい。

【本日のレビューその1:SINISTER「HATE」】


オランダのデスメタルバンドとしては最古参の部類に入るSINISTERの95年3rd。減速パートの比率がやや多めで時々オーケストラるなシンセも挿入される、初期ATROCITY(ドイツ)にも通じる雰囲気の激展開系ブルータルデスをやってます。精密かつ激烈なブラストパートにはかなり燃えるものの、大抵数小節だけやってすぐにリズムチェンジが入ってしまって、あくまで一過性の起爆剤として投入されている格好。しかし通常時(?)もリフがVIO-LENCEばりの屈折ザックリ系だったりして結構味わいがあるのでまあ問題なし。やけにスタミナを感じるのは同郷の後輩NEMBRIONICと共通してますね。パッとするかと言われれば、比較的しない方って気もしますけど、デスメタル通ならこの奥ゆかしき乙っぷりがわかっていただけるはず。優秀な若いカーボンコピーバンドよりはこういうシェイプアップされきってない旧世代の音源を聴いた方が個人的には楽しめます。95年という時代柄、ほんのわずかだけメロディックなリフにかぶれてる箇所が現れるあたりもたまらん。

【本日のレビューその2:INCANTATION「DIABOLICAL CONQUEST」】


USブルータルデスでSUFFOCATIONと並んで最も好きなバンド。過去にも紹介してます。これは98年RELAPSEリリースなのですが、そうとは思えないブチバタモゲゾゲした荒々しいプロダクションが不吉で最高。変速をかませつつも基本的には2ビート〜ブラストで威勢良く猛進してくれるスタイルで、鈍くモタりながらミチミチと刻まれるギターリフがこれまたいつもながら不気味な響き。初期CARCASSのような死臭っ気よりもっと呪いじみて、OBITUARYより妄想的、AUTOPSYとCANNIBAL CORPSEが7:3といいますか、とにかく音の端から端まで全てが徹底的なのが素晴らしい。機能美の中では表現されない歪んだ怨念がこれでもかと沸く。気迫はもはやブラックメタルの域。結局どのアルバムを取り上げても書いてることが変わりませんね。尊敬すべき金太郎飴です、これならいくらあってもいい。シブ好みなデスメタラーには一生の友ですよ。

  12月15日
収穫はなし。サンヨーのリサイクル電池のテレビCMにYESの"ロンリー・ハート(原題:Owner Of A Lonely Heart)"が見事リサイクルされているのにほくそ笑んでいるプログレッシャーは全国に大勢いらっしゃることでしょう。

▼「新御三家」「ものまね四天王」以来、そういう類の括り方に出くわす機会がめっきりない、という話になりました。嗜好が記号別に細分化されて同世代的共感の規模が小さくなったこと、発信者と受容者の距離感が薄れてそういう大義的なヒロイズムも成立しづらくなってきていること、そもそも個性の異なる複数のリーダーが立ち上がれるような真っ更な未開の土壌というものがここしばらく発掘されていないこと、などが要因であろうとあとで一人で考えておわり。そんな中「スリップケース、横長オビ、デザイン性の乏しいレーベルカタログはCD収集家の三大邪魔グッズ」というのを提唱してみようと思います。

【只今のBGM:WHITESNAKE「LOVEHUNTER」】


ホワスネといえば"Still Of The Night"か"Here I Go Again"か?みたいなレッテルのせいでスルーされがちになってしまって完全に損こいてる初期作品こそ、非メタラーの方々にも聴いて頂きたい英国クラシックロックの名作群ゾロゾロなのであります。イアン・ギランの後釜としてグレン・ヒューズとともにDEEP PURPLEに加入したデイヴィッド・カヴァデイルが、ギターにトミー・ボーリンを迎えての「COME TASTE THE BAND」を最後に解散したDPのあとにリリースしたソロアルバムから発展してバンド化させたのがこのWHITESNAKE。これは79年リリース作。リッチーの様式美趣味から自由になった身でとことんブルージーなハードR&Rを追求するスタイルが基本で、バーニー・マースデンとミッキー・ムーディというオリジナルギタリストの二人が在籍していたこの時代は、まだ80年代のショウビズ臭に冒されていなくて今聴いてもちゃんとシブい。いち早くこういう音楽性を実践していたBAD COMPANYあたりと手法的には近似する(2・3曲目の流れは"Rock Steady"〜"Ready For Love"とカブリ過ぎ)ものの、独特のジェントルな柔らかさがあるポール・ロジャースのヴァイブとは違ってデヴィ・カヴァ及びWHITESNAKEはよりブルージーさの質が下世話というか、あからさまにセクシーというか、「やっちゃった感」を微塵にも辞さない思い切りのよさが、強引なツブ立ちのでかさに繋がってる気がします。ああしかしこれはまだ習作的香りが強いな、クラヴィとスライドがうなるタイトルトラックやお得意の泣き系シャッフル"Outlaw"みたいなのが入ってるとはいえ。ヴォーカルの良さで大抵のアルバムはちゃんと聴けますが、ブリティッシュハード特有の哀愁がより顕著に開花したところに80年代的なパッとしたビート感も組み合った81年の「COME AN' GET IT」(マーティン・バーチによる録音も最高)が個人的には一番お勧め。

  12月14日
本日の収穫、バナナレコード大須店にてSINISTER「HATE」。最近何かとメタル系のCDばっかり買ってます。執拗な「俺メタル発言」は実のところ半ばネタ的でもあったはずなのですが、現在ここ数年でなかったくらいメタル愛が盛り上がってるのはやっぱり、20代折り返して脳のルーツ回帰が始まったせいなのか?最近のチャラチャラしたメロスピや親切ゴシックには相変わらず見向きもしませんが、どういうわけかMETAL CHURCHとかがやたらツボに来るようになりました。あ、多分ロニーに会ったからだな。

【只今のBGM:CHEER-ACCIDENT「INTRODUCING LEMON」】


もうちょっとでこのサイト上でコンプリート・ディスコグラフィーが完成しそうなCHEER-ACCIDENTをしつこく取り上げます。「DUMB ASK」「NOT A FOOD」、「THE WHY ALBUM」(未入手)、「ENDURING THE AMERICAN DREAM」「SALAD DAYS」、そしてこの「INTRODUCING LEMON」があって、「GUMBALLHEAD THE CAT」と初期コンピ「YOUNGER THAN YOU ARE NOW」があれば収集完了っぽいです。さて2002年リリースの本作、冒頭と最後に20分強の大曲を含む計9曲の腹一杯アルバムで、録音はELECTRICAL AUDIOにてアルビニ師匠。これがまた過去最高の出来なんですな〜、プログレとポストコアとテクニカルスラッシュをダンディな詩情のもとに融合させたようなスタイルでやってきたわけですが、シカゴらしいアコースティックな鳴り(本物のブラスセクションまで導入)も瓦解する超絶変拍子も完璧にひとつに煮崩れて、「どれでもない全て」な音楽性に到達してしまいました。ヤバイ。ジョン・フェイヒイが電撃加入してしまった80年代初頭のRUSH、をオマージュするDON CABALLERO(時々STORM & STRESSにもつれ込む)+TOWN AND COUNTRY+THOUGHT INDUSTRY共同戦線、をエディットするランディ・ニューマンかぶれモードのデイヴィッド・カニンガム…てな物凄さ。ここまで徹底的にやっておきながら、まず来る感触は「インテンス」より「リリカル」なのがこのバンドの重要な持ち味です(再三同じこと書いてますね…)。激ドラマーのシム・ジョーンズがピアノを弾いて歌う曲(そればっかりのソロアルバムすらある)も入っててそちらも当然最高。ジム・オルークが激賞してるとかいった売り文句はもう必要ありません。すぐさまショッピングカートに入れて注文を確定して頂きたい大名盤。こりゃすげーな〜。

  12月13日
収穫はなし。新聞の広告で十六銀行にQ-LOAN(キューローン)なるものがあるのを知ってウケてしまった。下記参照。↓

【只今のBGM:JOHN GREAVES & PETER BLEGVAD「KEW RHONE」】


HENRY COWとSLAPP HAPPYの合体作業はその後ART BEARSへと発展したわけですが、ダグマー・クラウゼを持って行かれたSLAPP HAPPY側のピーター・ブレグヴァドと、カウ末期(「WESTERN CULTURE」制作前)に一人ポツネンと脱退したジョン・グリーヴスによるもうひとつの後日談が77年発表のこの「キュー・ローン」。リサ・ハーマンという女性シンガーを迎えるほか、ドン・チェリーやチャーリー・ヘイデンと共演歴のあるカーラ・ブレイ(as.)およびマイク・マントラー(tp.)、全盛期セシル・テイラーのバックを勤めたアンドリュー・シリル(ds.)などゲスト陣も豪華。カウ/ハッピー共作シリーズの中でもSLAPP HAPPY寄りの作風だった「DESPERATE STRAIGHTS」の匂いに通じる、「近付いて凝視すると実はグロテスクな虫たちの生活」みたいな(?)変態牧歌ポップスを、もっとカンタベリー・ジャズロック然とした雰囲気(SOFT MACHINE、NUCLEUS、GILGAMESH、etc...)でプレゼンしたような内容になっております。ダークで破滅的だったART BEARSと比べるとこちらは英国らしい諧謔が効いた奇想曲といった趣き。しかもサポートがマジもんアメリカンフリージャズの面々ということで演奏の「ジャズっぽさ」に鈍臭いところがない。これは未だもって刺激的な出来です、PIT ER PATの1stとジャケの雰囲気まで似てる。現在はマニアの望むところの風情を全く解さない不粋中の不粋再発レーベル・VOICEPRINTが、例によってアートワークに手を加えてリイシューしていらっしゃるので、心あるリスナーの皆様はVIRGINからのオリジナルジャケ(左上の画像はオリジナル)のものをお探し下さい。

  12月12日
▼次長課長と中川家の圧巻なるインタープレイに思わず目が冴えてしまった今宵でございます。本日の収穫はナディアパーク内ヤマギワソフトの新品100円放出ワゴンにてWARRIOR SOUL「ODDS AND ENDS」、SHAWNA「POWER LOAD」(LONG ISLAND、WHITESNAKE〜FOREIGNERタイプのフィメールVo産業ロック)、BOBBY FRISS「FATE」(LONG ISLAND)。

【本日のレビューその1:JIM MARTIN「MILK AND BLOOD」】


今やマイク・パットンを輩出したバンドとしてしか語られることがない気がするFAITH NO MORE、しかしもともとイニシアティヴを握っていたのは、これからもっとブレイクというときに一人バンドを去った爆発系天パー長髪+激ヒゲ+サングラスのこの男、ギタリストのジム・マーティンでありました。脱退早々に結成が伝えられたBEHEMOTHというトリオバンドが結局ソロ名義に雪崩れ込んで、97年にリリースされたのがこの盤とのこと。FNMの「ANGEL DUST」で開花しかけた陰湿でやけにドラマのあるヘヴィリフがここではもう満開で、PRONGをエキセントリックにしてINFECTIOUS GROOVESの人食ってる感を加味したような、不思議に尻軽な90'sオルタナメタルに仕上がってます。ちょっとGALACTIC COWBOYSを匂わせるフシもあるかと思いきや初期IRON MAIDENみたいな男気哀愁展開に切り替わったりもして、変な人だけど本気でメタル好きなんだなあというのが窺える。で、ブックレットには明記されてませんが、AMGによるとバッキングヴォーカルにMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドが参加してるとのこと!よーく聴くと途中で確かにあの「ぅえアッ」という節回しが聴けます。ジムはMETALLICAの「GARAGE INC.」に収録されているLYNYRD SKYNYRDのカヴァーでギターを弾いてる上に大昔クリフ・バートンと一緒にバンドをやってたこともあるそうで、実は交流が深いんですね。まあそんな話はオマケとして、「ANGEL DUST」以降FNMがマイク・パットンに牛耳られることなくガッツリメタル化を進めていったらこうなったかもという姿をズバンと体現した、90年代の日陰メタルマニアには嬉しい一枚となっております。個人的には青春ど真ん中の音だなー。

【本日のレビューその2:BOBBY FRISS「FATE」】


またしてもLONG ISLANDシリーズ。いい加減誰も買わなそうなのを取り上げるのはヤメようかとも考えたんですが余りに最高なので。ジャケからしてギターインストものかと思ったらハードポップ系SSWでした。フロリダはタンパにお住まいの御仁らしく、誰か知ってる人参加してないかな…とブックレット巻末のクレジットをチェックしたところいきなり録音がMORRISOUNDでエンジニアはジム・モリス&スコット・バーンズ!95年リリースで、内容はデスメタルのデの字の右肩の点々すらない、「HOLD YOUR FIRE」の頃のRUSHとブルース・スプリングスティーンと初期FAIR WARNINGとTRIXTER(!)の中間のような超絶爽やかスタイル。こんな塩梅は初めて耳にするので今、猛烈にノックアウトされてます。おおおTWO FIRESの前身THE STORMにも匹敵する逸材ではないか。LAメタルの名残を漂わすスリージーなノリを、ソフィスティケイトされた完全メロディアス志向の楽曲に昇華させるこのセンスはマジで素晴らしいですよ。こんな宝石をいくつも抱えながら一つとしてメインストリームに押し上げなかったLONG ISLANDはもう幻のムー大陸ですな。680円以下で発見し次第全部買うことを誓います。ああ今日は大名盤が100円だった。幸せだ。

  12月10−11日
10日の収穫、矢場町タワーレコードの値下げワゴンからHATTIFATTENERS「RABBIT RABBIT」。10日は卒業した大学のバンドサークルの定期コンサートに赴き、LED ZEPPELIN完コピバンドを堪能。2800円払ってもいいくらい満喫、感動。

▼最近そのサークルの人々と、ギターが上手いって何か、何をやるとギターが上手くなるのか、という話をする機会がちょくちょくありまして…私としては、「速い」「正確」「幅が広い」といったことと無縁であっても、やりたいことをかっこよくやれている人はすなわち上手いプレイヤーであると思ってます。楽典的に一見あり得ない音階だろうと、OKとされるものだろうと、瞬間を読んで狙いをつけた音、ここしかないと歌わせた音なら「正しい」(ものである可能性が高い)し、演奏者の意思やその場の状況とは関係なく運指のなりゆき/ギターの構造/スケール/パターン学習云々だけに導かれるまま行き着いて発せられた音は「不粋」もしくは「ナシ」(であることが多い)だし、どちらにせよ世の中でやっていけているギタリストは誰でも、自分が身を置いている瞬間から感じる「次の音」を、ギターを通して不自由なく外に出す術を知っているものだと思います。そこがやっとスタートラインであって本題は「何を出すか」で、何かしら少しでも新しくてビクッとさせるものを持ってる僅かな人間だけが、どこへ行っても「上手い」と評され得ると。一生懸命芸を磨いた挙句毎回物凄く流暢に「って、何でやねん」「もうええわ」「ありがとうございました〜」といってシメるお笑い芸人になったとして、ゴールデンの司会を任される日が来るかといえば、来るはずなし。日本で日本語を話せるのは当たり前と考えると、楽器を熟知して然るべく扱うことなんか全然おろそかにするぜ俺は、と宣言する人は、それじゃボビー(・オロゴン)みたいに押し切れる訳ですねという話。そうでなければミスターマッスル止まり。「筋肉にキク〜」だけで茶の間を月曜から日曜まで沸かせるのは難しかろう(勿論金曜20時だけのヒーローというスタンスもアリですが)。中高修了して小論文くらいは書けるようになって、大学4年間の放蕩で自分探しでもして、自己分析と自己アピールをできるようになって初めて一人前、の序章、というのと同じですな。そう嘯くワタクシ自身は依然放蕩中でありますけども。

▼本国MTVのメタル専門番組HEADBANGERS BALLをたまたま、復活後初めて見る。なんかデスメタルみたいのばっかですね、LAMB OF GODはSLAYER+PANTERA、BLACK DAHLIA MURDERはAT THE GATES、そういう音を今様な自意識と距離感でもってスタイリッシュにやれば途端に「アリ」なのかと、何つうかポカーンという感じでした。デスメタルで食える時代到来か?それなら誰か雇って下さい!

【本日のレビューその1:HATTIFATTENERS「RABBIT RABBIT」】


GOD IS MY CO-PILOTといえばジョン・ゾーンやエリオット・シャープも絡みつつ東欧/中東の民俗音楽にまで題材を求めていった90年代NY知性派ローファイジャンクのドン。そのフロント(ウー)マンのシャノン・トッパーの別ユニットがこちらのHATTIFATTENERSです。GODCOより少し歌っぽくなって、青空のHALF JAPANESEあるいは崩壊寸前のBEAT HAPPENINGといった趣き。時々これとあんまり変わらなかったりして驚いてます。(まあヴォーカルは「普通に上手い」とは言えないものですが。)93年から99年までの録音をまとめた盤とのことで、ジャンクギターを楽曲として消化し始める後半の収録曲は初期DEERHOOFおよびSKIN GRAFT系のようでもある。とにかくブチ壊れた音楽を聴きたいという人には少々刺激が足りないかも知れませんが、ライフワークとしてこれをやっているという深みみたいなもんはある気がします。

【本日のレビューその2:VIKTOR KRAUSS「FAR FROM ENOUGH」】


ビル・フリーゼル作品のサイドマンなどをやって90年代中頃から活動しているベーシストの、2004年の初リーダー作。リリースはNONESUCHでリー・タウンゼンドプロデュース、ビル師匠も当然参加で、他のメンツはジャズ/ロック/ブルーズを股にかけて活躍する大ヴェテランのスティーヴ・ジョーダン、スライドギターの超大御所らしいジェリー・ダグラス、シンガーである実姉アリソン・クラウス。古典的ブルーグラスに今日的な鋭角性を盛り込んだ、ジャズっ気を抜いたビル・フリーゼルのような内容になっておりましてこれが大変良い。最新鋭のビデオカメラで切り取ったオールドアメリカンな風景というか、日本に例えれば和菓子屋が作る新手の抹茶デザートのような感覚に近い(?)。違って聞こえる懐かしさにハッとする感じ。キース・ジャレットばりにナチュラルに同居させているポップス的哀愁もまたよい。ベース弾きのリーダー作なのに完全にギターアルバムになってるのが良いのか悪いのかわかりませんが、不必要に出しゃばらずにこの音楽性をプロデュースしたという点は大いに評価できるところでしょう。優れた内容になっているからには全てよし。

  12月8−9日
▼とくダネ!のインタビューで美の秘訣を尋ねられたチャン・ツィイーの答えは「よく寝ること、最低でも8時間は寝ます」。堀江モンが以前何かのニュース番組にゲスト出演した際アナウンサーにちゃんと寝れてますか?と訊かれたときも「寝てますよ。8時間は寝ます」と言っていた。スゲーと思う。本日9日の収穫、ONTONSONから届いたにかスープ&さやソース「イピヤー」。寝れない奴はダメな奴なのか。

【本日のレビューその1:KEPLER「ATTIC SALT」】


2年前のジュリー・ドワロンや昨年のMARITIMEの日本ツアーにサポートで同行していたドラム/キーボード/その他のジェレミー・ガラ君が多分正式メンバーとして参加しているカナダのバンドの2004年作。同じくジュリーさんを手伝っていたSNAILHOUSEのデイヴ・ドレイヴスが全面プロデュース。RED HOUSE PAINTERSIDAHOあるいはART OF FIGHTINGを彷彿とさせる、歌心系音響フォーキースローコアをやってます。んで何故かリリースはTROUBLEMAN。MARITIMEの新作やPERNICE BROTHERSみたいなカワイげも織り交ぜて、しっとり深い割になかなかとっつきやすい出来。ポップソングアレンジのいろはを熟知しながらも、よくあるカッティングのパターンなり、8分で刻み続けるクローズハットなり、そういう何も考えずに受容/再現してしまいそうなルールに敢えてひとひねり加えて、珍奇とはいわないがノーマルにもならない仕上がりにしてきている気配りの細かさとセンスがお見事。これ意外と60年代らへんの和やかポップスが好きな人に来るんじゃないかと思います。

【本日のレビューその2:にかスープ&さやソース「イピヤー」】


二階堂和美+テニスコーツさやによるユニットのフルアルバム、ONTONSONの通販先行販売にて購入のブツを最速レビュー!トラックリスト("あいえの歌""生まれおちたか朝のモヤ""イピヤー山へ行く"など…)からも察せられるとおり、愉しくて平気に不思議(不気味と紙一重)でただ明るい曖昧な絵本のような、ノビノビと天気のよいフォーキー小唄が色々色々と計19曲に渡って展開。ほぼ二人の声とアコースティックギターの多重録音だけ(時々キーボードやリズムマシンその他も入る)で何らの過不足もなく成立する音楽作品に仕上げています。小さい子供のランダムな鼻歌なようでもありながら、その芯には堅固に共有されるイデアが自然と存在して、「イノセントな」「わくわくさせる」と評することに何のあざとさや居心地悪さも感じない。無理して言うならKLIMPEREI+THE SHAGGS+エリザベス・ミッチェル。氾濫するイメージと恐ろしい声量が圧倒的な二階堂さんのヴォーカルで相方の陰が薄くならないかという懸念が個人的には(テニスコーツを未聴の身として)少しあったのですが、ここでの二階堂さんは変に持ち味を抑えるでもなくデュオの片割れとして然るべき活き方をしてらっしゃいます。むしろさやさんの自由なヴォーカリゼイションと達者なホニャ語(ここまで流暢に使われるともうコバイア語みたいなもんという気がしてくる)っぷりに驚き。なおパッケージがちょっとびっくりする作りになっているというもっぱらの前情報の実態は…「アコーディオン型」「覗き込み型」とだけ言っておきましょう。買って頂いてからのお楽しみということで。こりゃ何ともヘンな、色々と揺るがしかねない、ここにしかない音楽でありますことよ。

  12月7日
▼以前KAMPEC DOLORESのレビュー依頼(既に掲載されてます、こちら!の少し下の方)を頂いたPOSEIDONさんのお勧めで、今池得三にTSUKIというスイス/ドイツ混成インプロユニットのライヴを見にいってきました。BLASTというレコメン系バンドの人がベース/クラリネット、ECMからソロ作品を出してたりする人がバスクラリネット/ソプラノサックス/エレクトロニクス(ノートPC)、あと各種おもちゃ/ガラクタ/パーカッション担当の人(女性)がいるトリオ編成です。

 ステージ上には猛烈な数の機材および小物の立て込むテーブルが3つ。ドラムおよびリズムマシンの類は使わず、となると内容もやっぱりというか何というか、フボォ〜、プルプルッ?ピエー!とランダムに吹き鳴らされる管楽器、ココココ…と入り混じる物音およびエレクトロノイズ、+α、という「お化け屋敷系集団即興」の類ではありました。しかしその+αがちょっと凄い。ベースをラップスティール状態に横倒しにして、ハンディサイズのマッサージ機なのか何なのかそんな感じの物で弦をやんわりこすってザリザリ〜ンと聴いたことのない音を出したり、指板と弦の間に金属のワイヤーのようなものを挟み込んでから両手タッピングでガムラン風のことをやったり(気のせいでなければ叩くフレットも全て狙っているように見えました)、クラリネットに持ち替えれば流暢にプルプルと乱れ吹くというツワモノなベーシスト氏。恐るべし!だがしかしおおかたの客は次のバンドが目当てだったようで、まばらにも程がある拍手で寂しく終了。

▼もう一つのバンドは日本のNEXT ORDERという4人組でした。MM&Wだったりビル・フリーゼルだったりするツインギターのフュージョン/ジャムバンド。曲の7合目あたりでロックばりに音量を上げて盛り上がる場面があるのが特徴的。とりあえず全員激ウマなんですが、中でもアウトしまくりながら恐ろしい危なげなさでアドリブをつなぎまくるギター氏がとにかく壮絶でした。最後に今日の出演者全員でセッションになるものの、こんなん?こんなん?てな調子のまま終わってしまった。しかしTSUKIベース氏がさっきは見せなかった光速鬼弾きを少しだけブチかましてくれて、本当に壮絶で、その凄さだけで今日は来た甲斐があったという気持ちになり帰宅。

本日の収穫は今池P-CAN FUDGEにてVIKTOR KRAUSS「FAR FROM ENOUGH」、アマゾンやらカイマンやらIMPORT-CD SPECIALISTSやらから届いたKEPLER「ATTIC SALT」(ジュリー・ドワロンやMARITIMEを手伝っていたジェレミー君のバンド)、CONFESSOR「UNRAVELED」(奇跡のドゥーミーハイトーンマスメタル、復活フルアルバム!!)、CHEER-ACCIDENT「INTRODUCING LEMON」、SEVEN STOREY MOUNTAIN「BASED ON A TRUE STORY」。届き過ぎ。これにはさすがに凹む。更に件のPOSEIDONさんから送って頂いた正式な製品版のKAMPEC DOLORES「EARTH MOTHER SKY FATHER」、そして物販で購入のBLAST「A SOPHISTICATED FACE」、BEST BEFORE「04/04/44」。BEST BEFOREはTSUKIのベース氏(=BLASTでもベース)の別ユニットらしく、手に取って迷っていたら近くにいた親切なプログレ紳士に「これ、エトロン(註:ETRON FOU LELOUBLAN)の人も参加してるみたいですよ」と教えてもらって購入に踏み切る。「頼まれてレビューを書く」みたいなことをおっしゃっていたので、きっとひとかどのお方だったんでしょう…ありがとうございました。

【本日のレビューその1:BLAST「A SOPHISTICATED FACE」】


そのTSUKIの鬼ベーシスト、パド(ペド?)・コンカ氏率いるオランダのバンドのCUNEIFORMからの99年作。金管が二人いる上、曲によってはヴァイオリンやら何やらも入って、かなりHENRY COW〜ART ZOID彷彿型のアヴァンチェンバー。何故かドラムは添え物程度にしか入らず、奇怪なユニゾンが複数ライン同時に交錯しては時々ドッカンと集合するという、カオスをコントロール下に収める超人的なコンポジション。この意思の群れを互いにひとつのコンセンサスのもとにつなぎ留めあう演奏者陣の精神力たるや想像を絶するものでしょうね。あんまり拍子らしい拍子もなく(出てきてもすぐ途切れる)、長唄的な(見かけ上の)あいまいさは正直ロック耳には相当とっつきにくいものですが、アンサンブルの視線の焦点にブレは全くなし。殆ど現代音楽の域だと思います。

【本日のレビューその2:CONFESSOR「UNRAVELED」】


遂に出ました、復活EPを経て再結成後初となるフルアルバム!たった1枚のリリースでその後10余年間カルトヒーローの名を欲しいままにしてきたわけですから物凄い存在であることです。さて早速内容の方、オールドスクールマスメタル最強バンドのように言われつつ実はTROUBLE狂だったりする彼らは自分達がドゥームメタルの継承者であるという認識でもあるのかも知れません。のっしり伸びたダウナーリフがデビュー当初よりクッキリ前に出る形になり、しかしロッキンにタメまくりつつ予測のつかないタイミングでブダダッ!と謎の変則フィルを挟みまくる怪ドラムは、若干鳴りを潜めながらも健在。無駄にWATCHTOWER風のハイトーンを終始キープしていたヴォーカルがもっと低い音域に移行してしまったのはいささか寂しい。大人になったのね。しかし一本調子で間延びしまくった独特の節回しは不変。パンチ不在か?と最初に少し思ったものの、円熟して更なる不敵なオーラを身につけていたことを途中で確信してやっぱり投降しました。ここまでストレートに「遅さ」を「濃さ」に変換してくるバンドは他に思い当たりません。NEVERMORE風の呪詛的な妖しさと、最近のMELVINSにも似た鬼気漲る牛歩、鉛まみれのDON CABALLEROの如き異様な量感をともなう崩壊ビーツ。さながらヘヴィメタル版ART BEARS?何て連中だ本当に。メタラー、ニュースクーラー、マスロック好きもいっといて下さい。今年一番の激々々ディープ盤!

  12月6日
本日の収穫、どこぞのハードオフでRACER X「SECOND HEAT」、アマゾンからBRANDTSON/CAMBER/SEVEN STOREYのスプリット、WHITESNAKE「LOVE HUNTER」、カイマンからFIRESIDE「UOMINI D'ONORE」、SEVEN STOREY MOUNTAIN「SEVEN STOREY MOUNTAIN」。届き過ぎ。買うから悪いのか。聴きたいものは買うけど、以前のような暴走した所有欲とは違ってきてる気がします。ウチにはようわからんCDしかねえな〜とお思いの方、売って減らすと生き方がしたたかになるかもですよ。「男として必要なものは全てゴルゴから学んだ」という名言がどこかにありましたが、CDカルチャーも突き詰めると色々あります。

【只今のBGM:FIRESIDE「UOMINI D'ONORE」】


かねてから所望の品がカイマンでちょっと安かったので遂に新品で購入。スウェーデン隋一の男気エモバンドの大名盤97年作。FOO FIGHTERSとBURNING AIRLINESの間をつなぐ、重量級の拳を変化球で振り下ろしてくるような作風でこりゃもーたまらん。NO KNIFEとATOMBOMBPOCKETKNIFEが合体してマッチョになったような雰囲気もあり(声がちょい似)。引っ掛かりを作りつつも曲の流れまでは妨げないリズムのトリックに、メジャーキーの響きを極限まで薄めて使う奥ゆかしき男の優しさ。用がない人には徹底的に不要でしょうけど、ごっついギターロックが好きなら相当効くと思います。中域がボモ〜ンと膨れあがってる上ブチブチにクリップしまくる雑なプロダクション(何故か曲によって程度に差がある)だけが至極残念。J様かトロンビーノ先生にでも録ってもらえばもっと完全無欠の金字塔になれたのに。内容はそれくらい強烈なだけに惜しい。

  12月5日
収穫はなし。部屋を整理した勢いで、このサイトも更新されない部分をバッサリ削除して大幅シェイプアップを敢行しました。物色日記をメインに据える格好にして、日記も「只今のBGM」にレビューを添え始めた月以前のものは公開をヤメ。更に今までなかった私がやっているバンドその他のHPへのリンクを制作活動のページとして新たに設け、サイト内検索も正式追加。このサイトに関して内のオールタイムベスト・リストも大幅改訂したのでよければ見てやって下さい。まあ、見にくくなったんですが。

【只今のBGM:THE BLACK LEAGUE「UTOPIA A.D.」】


これまた自家発掘系。「AMOK」をもって(正式にはその次のEP「LOVE & DEATH」でしょうか)SENTENCEDを脱退したタネリ・ヤルヴァの新バンドの2001年2nd。いやーシブイ。北欧メロディックデスの草分けとして名を馳せたフィンランドのSENTENCEDは、IRON MAIDENに接近する形で徐々にメロディック化というかノーマル化を図り、この人が抜けたあとはそれまでと似て非なるヘヴィゴシックになってしまったわけですが、その昔気質のロッキンなエッヂはこの人が持っていったようで、ここでは更に踏み込んでURIAH HEEPやBLUE OYSTER CULTのようになってます!グォゲ〜と豪快な半デス濁り声もバッチリ全開、むしろ貫禄が増して円熟の域。オールドロックオマージュということでCATHEDRALにもリンクしつつ、歌い回しが派手なのと、ガッチリしてロックなドライヴ感のある音作りとで、最近のANTHRAXに近い感触。ああ最高じゃないか、以前は売り払うことすら考えていたのに。あくまでメタル畑の土に膝まで埋まりながらも空気読めてるこの現役感は貴重。

  12月4日
収穫はなし。むしろ自宅に人を呼んで売りCDを間引きまくってもらいました。80枚くらい捌けたものの、まだ300枚近く余ってます。部屋が片付いてるうちにバナナの出張買い取りを頼んで、メールマガジンに載る男になろうかと本気で考え中。ついでに売らない所蔵音源の聴き会になっていったんですが、SKIN GRAFT系とジュリー・ドワロンと二階堂和美とDEERHOOFはやっぱりウケた。「ケニー・バレルよりバーニー・ケッセル」も受け入れられました。そしてウチの近所の「プサン」という韓国料理屋はマジでうまいので、地下鉄東山線本陣/中村日赤/中村公園あたりにご用の際は是非どうぞ。

【只今のBGM:KOURGANE「IVAN REBROF, LONELY HEARTS CLUB BAND」】


CDの整理をしていたときに久し振りに目に留まって気になった盤。クラシックギターとドラムの崩壊系ド変態デュオ・CHEVAL DE FRISEの1stのオリジナルリリース元と同じSONOREから出ているフランスのバンドです。こりゃヤバイ。後期HENRY COW的な激キメ変拍子(しかもブラスセクション全編フィーチャー)にMATS & MORGAN的な笑いと余裕を加味して、常にピッチシフターを薄くかませたヴォーカルが突発的に繰り出す裏声がDEVIL DOLLばりに気持ち悪いという、人間嫌いの過激派ハードレコメン〜ポストロック。曲によってMINUTEMEN+MAGMA+!!!だったりGONG+COMUS+MATERIALだったりして何だか壮絶ですよ。ベロベロベロ!とフランス語を汚くまくし立てる場面での下品なテンションはイルリメにも匹敵。そのせいかオシャレさは皆無でむしろ暑苦しく、AFTER HOURSより断然ユーロロックプレス向け。こんなバンドが無名でいるとはフランスもなかなか裾野が広いものですな。

  12月3日
本日の収穫、タワーレコード名駅の値下げワゴンでJIM MARTIN「MILK AND BLOOD」(FAITH NO MOREの元ギタリストのソロ作)を300円にて。今日は全国規模で悪名高い、かの変態激盛り喫茶マウンテンにて、とうとう小倉抹茶スパに挑んできました。と書くはずだったんですが不戦敗してきました。大学のサークルの同期と後輩と赴いて、甘味もの(いちごスパ、小倉抹茶スパ、バナナスパ、メロンパンスパ、キウイスパ、しるこスパの6種)もしくは激辛ピラフを完食したらその同期(現在は静岡でサラリーマン)のオゴリという催しで、当初甘味を制覇する気まんまんだったものの、いざメニューを前にすると、空腹だし普通に食えるもん食って幸せになった方がいいな〜という気分になってしまって結局オーダーの際に口をついて出た言葉が「コーンスープスパ」。塩コショウで火にかけたミックスベジタブルと絡んだ麺の上に、どろっと粘度の高いコーンスープがかかっているという代物でした。マウンテンのメニューの中では料理と呼べる出来で、何のストレスもなく完食。目の前の後輩が挑戦していたいちごスパより、もう一人が食べていた「なべスパ」に一同驚愕、唖然。直系30cm×深さ15cmはあろうかという鍋に、満タンに浮かぶ素うどんならぬ素スパゲッティ。ただのお湯に浸っているだけで具は人参、いんげん、白菜。つけだれにつけて食します。とにかく麺が通常の倍ある上に、どんどんお湯でたれが薄まってくるため最後はほぼ無味の麺と格闘せねばならないという新機軸のサディズムが活かされた一品でした。奢り主の同期は「コスモスパ」と称されたすき焼きのうどんのスパ版みたいなのを頼み、全員完食。食後は飲料部分よりアイスクリームの方が多いフロート各種を一人一個追加して全部食べて(飲んでとは言わない)帰ってきました。ああマウンテン好きだなー。

【只今のBGM:GUYANA PUNCH LINE「DIREKT AKTION」】


アメリカの4人組の2003年3rd。意外とオーソドックスなDROPDEAD風スラッシュコアかと思わせてアブノーマルな痙攣系単音リフや脱臼リズムチェンジがバリバリ入る、THE LOCUST以降の質感をもつ激崩壊ハードコアをやってます。必死で大急ぎの障害物リレーといった感じの、賑やかでやや滑稽でひたすら本気の突進力でもって、色んなものにブチ当たって足をもつれさせながらとにかく前方に突っ走り続けるような変則的なドライヴ感は相当強力。同系統の屈折ハードコアバンド達と比べても多めにウネってる気がします。後半にいくと曲間に初期GURU GURUみたいなアンビエントなフィードバックノイズが長々と入ったりするんですが、これも虚勢には思えない殺気を湛えていて、堰を切るように始まる次のイントロが俄然燃える。この手の新人は優秀で無難なのが多過ぎてちょっと食傷気味という方もこの根性の据わり方なら満足できることでしょう。

  12月1−2日
本日2日の収穫はバーゲン中のバナナレコード・パルコ店にてLARM「EXTREME NOISE- COMPLETE DISCOGRAPHY」(元祖ブラストビート!オランダの伝説的ファストコアバンド完全音源集)、GUYANA PUNCH LINE「DIREKT AKTION」、BARTOK「SOLO VIOLIN SONATA / DUOS」(NAXOS)、ナディアパーク内ヤマギワソフトの新品輸入版100円ワゴンからJONATHAN M「JONATHAN M」(LONG ISLAND、良質AOR〜メロディアスハード)、MICHAEL ZEE「CANDYLAND」(LONG ISLAND、カナダのシブめAOR)、PROCESS「SHAPE-SPACE」(FAT CAT、ストイックミニマルエレクトロニカ)。ヤマギワでは実はあと2枚ほどハズレを引いてきたのですが、LONG ISLANDの2枚は胡散臭いジャケに反して両方当たりだったのが嬉しい誤算(勿論外す覚悟でした)。

【本日のレビューその1:SUSIE IBARRA「SONGBIRD SUITE」】


鳥をシンボリックに描いたかわいいジャケじゃんと思いきや、そこかしこに配された金色が「TZADIKなめんなよオラ」とスゴんでくるようでやっぱり怖い。内容もパタパタと愛らしい雰囲気で始まったかと思いきやドラムのミニマルビートだけ据え置きでどんどんフリーのアドリブに突入してすぐ怖い。リーダーのスージーさん(TZADIK界隈やマシュー・シップなどと仕事、何とYO LA TENGOの近年作にもパーカッショニストとして参加)がドラムで、ピアノその他音響担当のクレイグ・テイボーン(ティム・バーンデイヴ・ダグラスらと共演)とヴァイオリンのジェニファー・チョイ(同じくTZADIK界隈で活動)の3人というベースレスの変則トリオです。収録曲の大半はノンビートの前衛即興で、ブックレットに「この世で鳥だけが天上の音楽を歌う」といった意味の小林一茶の俳句を引用しているとおり、鳥の群れのランダムな鳴き声の描写的なものを俳諧風ワビサビでたらーっと表現した感じのものになっています。充分不穏ではありますがフリーセッションとしては聴きやすい部類かと。9曲中3曲(前述の冒頭曲含む)だけ入っている明確なリズムありのトラックが、その方向性を変えないまま聴きやすくまとまってて、ありがちじゃなくビビッと来る仕上がりだし、私は好きです。こういうのばっかりにすりゃ親切なのにな。ともかく粋なジャケで全て許せてしまう範囲内なのでOK。

【本日のレビューその2:MICHAEL ZEE「CANDYLAND」】


この世で何人が気にかけているか判らない、倒産して数年経った今でもごく少数のマニア達に愛され続けるドイツのAOR/メロハー/骨董マイナーメタル専門レーベル・LONG ISLANDの作品をご紹介。過去にURGENTRESCUEといったバンドも取り上げていますのでご参照ください。さて今回はカナダのSSWさんの95年作で、「18 TIL I DIE」の頃のブライアン・アダムスに初期THUNDERを足したような枯れと胸キュンの塩梅が絶妙、素晴らしい。歌も巧いしプロダクションも上々、なのにこのレーベルかつ無名というだけでステイタスが負の値までいっているように感じてしまうというLONG ISLANDマジック。ご愁傷様です。90年前後のブルーズロック回帰ブームももう終わってた頃だろうに、開き直ってJOURNEYクローン化に興じたりせずにこの路線を堅守してくれた踏ん張りに拍手ですな。途中モロにというか完全にジェフ・ベック&ロッド・スチュアートヴァージョンの"People Get Ready"のイントロと同一のフレーズで始まる曲をやってしまっていたりするのももう愛おしくさえ思える。今後は500円以下で見かけたLONG ISLAND作品は全部買うことに決めました。

最新に戻る 他の月の分を見る
 
トップページ サイト入り口へ
情報と音源公開 制作活動
管理人のことなども このサイトに関して
リンク 冒険
いつも独り言 掲示板(hosted by Rocket BBS)
サイト内検索(google) 不完全
since 07/04/2002    copyright (c) Sugiyama