物色日記−2005年7月

※頻出語句解説はこちら
  7月31日
▼昨日の日記に登場した彼ですが、いい加減腹が減ってきたのか今日手頃な高度をかなりノロノロと飛んでいるところを発見したので反射的に殺生してしまいました。収穫はなし

【只今のBGM:VIO-LENCE「OPPRESSING THE MASSES / TORTURE TACTICS」】


のちにMACHINE HEADを結成するロブ・フリンを輩出したベイエリア・スラッシュ末期の名バンドとして名高いVIO-LENCEの2ndが、拷問の方法を詳細に歌った歌詞が検閲に引っ掛かって長らく日の目を見なかった「TORTURE TACTICS」EPを加えて再発。特にリマスターと謳ってはいませんが、オリジナルではポスポスしていたドラムが若干カッチリとして、ギターの重圧が前に出るようなマスタリングに変更されているようです。このバンドはANTHRAX的なハードコア寄りの硬質感をもつザクザクリフ、シャープなヒットでメタルらしからぬ猛烈に煩雑な高速フィルをバカスカ繰り出す(全体的にツッコミ気味のノリも良い)ドラム、そして何よりハイトーン化したゼトロ(EXODUS)みたいな声質と変なイントネーションで不思議なアジテイトを聴かすヴォーカルと、変化球を狙ってるわけではないのにユニークづくしな人達でした。MESHUGGAHやM.O.D.似の噛み付くようなバッキングコーラスもカッコイイ。モータースポーツのような爽快感を味わえるスラッシュメタルは数あれど、オリンピックの体操競技の如く羽根のような足取りで跳ね回るかの感覚が味わえるのはこの盤だけ。いや〜大好きなアルバムです。買い直しだけど古いのは売らない。ジャケがいかにも再発くさくなってるのが残念ですね。オリジナル盤はこのようにクール!massをoppressしちゃってます。今回やっと日の目を見た「TORTURE TACTICS」の方はタイトル曲でない2曲の方が予想外のノリでこれまた楽しめました。長らく入手困難だった1st「ETERNAL NIGHTMARE」も今年やっと正式に再発されたらしくめでたい限り。THE HAUNTEDやTHE CROWNみたいなサッパリ豪腕系がイケる人は是非ともお試しを!

  7月30日
収穫はなし。最近自室で一匹の同じ蚊と同棲してる気がします。一度も刺されないんだけど奴はオスか?たまにニアミスするのに、私の機敏さと執念が足りずなかなか捕捉&圧殺出来ぬまま3・4日経過。何食って生き長らえてんだろと思って検索してみたところ(アホ丸出しの検索キーワード「蚊の食料」で奇跡的にヒット)、栄養源は果実や植物の汁だそうですね。部屋には植え込みも何もないのでじきに行き倒れるはず。蚊を弔ってやりたい気がするのは人生初。色んな人生初があるもんです。

【只今のBGM:GENE KRUPA/BUDDY RICH「THE DRUM BATTLE」】


ジーン・クルーパはスウィング時代のスタープレイヤーだそうで、その人と超人バディ・リッチとの共演盤…のように書いてあるから買ってみたものの、アタマ5曲は単独ドラム+ピアノ+アルトという変則トリオ、6・7曲目でやっとバディ・リッチが登場してしかも片方は他の楽器がないドラムバトルのみの3分半という内容でした。いやしかしこれが満足。52年の録音とあって既に旧時代の人となっているとはいえまだまだ現役のジーン氏、強烈にジャストなタイム感と完璧なアクセントワークでぐいぐいスイング!コンプ強めのプロダクションも相俟ってドッシャドッシャと威勢良く揺らしてきます。ビッグバンドを率いていたせいか賑やかで芯のはっきりしたパターンと華のあるキメがわかりやすくてイイです。これがベーシストつきのノーマル編成だとドラムの煽りに盛り上がり過ぎて普通のアゲアゲ・コンボ作品になってしまいそうなところを、ピアノとアルトのみで残りのスペースを全部ドラムに提供することで曲中どれだけソロじみたことをやっても混沌とせず、燃える主役ドラム+仕立て屋二人という構図をスッキリ確保。いや一応ピアノソロ(ハンク・ジョーンズです)で大歓声が飛んだりもしてますが。終盤のドラムバトルでは客もさすがに凄まじい熱狂ぶりを見せておりまして、ドラマーとしてうめースゲーとかいうレベルではなく、他のメロディ楽器と同じくフレーズの歌心に高揚してるといった様子です。ドラムソロにフレーズもへったくれも意外とあるもので。名のあるドラマーはやっぱりフレーズが光る。ラストの曲は12人編成(incl.レスター・ヤング、オスカー・ピーターソン、バーニー・ケッセル、レイ・ブラウン!)のバンドにエラ・フィッツジェラルドのヴォーカル(スキャット強力!)まで加えた豪華大フィナーレになっててお祭り気分。トータルのつくりでは何か変な盤ですけど楽しめます。

  7月29日
収穫はなし。書き忘れましたがバナナレコードは只今、毎年恒例マルフク券配布中です。1枚買って100円引き、10枚買って1000円引き、300枚買ったら30000円引きかぁ〜。30000円あったら宝くじが300枚買えて、多分3億円になるからスゴイですね。3億枚バナナで買い物すると今度は300億円もお得だからスゴイと思います。

【本日のレビューその1:CONVERGE「YOU FAIL ME」】


大傑作「JANE DOE」に続く去年リリースの最新作。リリースはEPITAPHっすか。前作は狂気の単音ギターと崩壊変則キメを駆使して、強烈なコンプの効いたプロダクションと相俟ってカオス爆裂のハイテンションアルバムになってましたが、今回はもう少しクリアな音像でリフの変態性もやや引っ込み、何より曲展開の押し引きの妙に更にこだわった跡が見られ、ポスト・カオティック・アートコア(?)ともいえる熟成っぷりに。しかしどちらかというと激なパートの方が多いです。OFF MINORと激/抑比率を逆にした感じ、あるいはKREATORの「COMA OF SOULS」的(そういや声もちょっとミレに似てる)とでもいいましょうか。衝動を弱らせぬままどんどんコントロール性を高めていくこのバンドの成長っぷりは凄いですなあ。タイトルトラックに至ってはISISばりのスロウ&スペイシーな新機軸。ショック度でいくと前作の方が上かな〜という気もしますが、リアルタイムでこういう進化を見せられるとコーフンしますね。スケールでかいなあ。

【本日のレビューその2:KREATOR「RENEWAL」】


ということで上に挙がった「COMA OF SOULS」の次作を。DESTRUCTION、SODOMと共にジャーマンスラッシュ三羽烏のひとつとして数えられ、初期はそのデスメタリックなまでのゴリ押し猛スピードで巷のスラッシャーを圧倒してきた彼らが、METALLICAのブラックアルバムおよびPANTERAブームで一気に広まったストレート&ヘヴィ化旋風に呑まれかけて制作した92年の問題作です。敢えて過剰にラフなプロダクションのもと、裏声吐き捨てヴォーカルをやめて地声アジテイト型に鞍替えし、更に過去あまりフィーチャーされることのなかったダークさをグッと前面に押し出して時流にあやかってみたもののファンからは総スカン、一変してSLAYERの如き激疾走スタイルに返り咲いた次作「CAUSE FOR CONFLICT」で何とか仕切り直したという流れにある、一般的には失敗作呼ばわりの代物なんですが、改めて聴くとこれがいい。スラッシュメタルバンドがスローダウンすると大抵何かしら裏の本性が出てくるもので(もともと身のないバンドはやっぱり何にもならなかったりする)彼らの場合はドイツらしくインダストリアル〜ゴシックを咀嚼したような独特の暗さが浮き出てきてるのが大変興味深い。同郷の隠れ名バンドDEPRESSIVE AGEにANTHRAX的硬質感をプラスした雰囲気でもあります。それって要はイマドキの極悪ニュースクールHCそのものなんですな。図らずもこのアルバムは時代を10年近く先取りしておったわけです。うーむリスペクト。FERRETやEQUAL VISIONから出てても何らの不思議もない。爆裂2ビートのファストチューンもちゃんとあって作品トータルでのバランスも取れてるし、文句のつけどころがあんまりないなあ。これはそろそろひっくり返って名盤ということになってもいいのでは?駄盤と呼ばれて久しいため中古発見率は低いです、根気よく探して買って下さい。ニュースクーラーにこそお勧め。

  7月28日
本日の収穫、数ヶ月振りくらいの気がするバナナレコード四ツ谷店にてSWAYZAK「DIRTY DANCING」、CONVERGE「YOU FAIL ME」、ORSO「MY DREAMS ARE BACK AND THEY ARE BETTER THAN EVER」。明日からの参戦に向けて気分を昂ぶらせているのか、行けない恨み節か、2004年のフジロックTシャツを着てる人を街中で見た。

【只今のBGM:ORSO「MY DREAMS ARE BACK AND THEY ARE BETTER THAN EVER」】


REXでベースやギターを担当していたフィル・スピリトを中心とするユニットの2004年作。他にHIM、THE BOOMなどに参加のカルロ・セナモ、同じくHIMのメンバーになっているグリフィン・ロドリゲス、REXやJUNE OF 44などでヴァイオリン/ヴィオラを弾くジュリー・リウの3人が正式メンバーで、更にゲストとしてダグ・シャリン(CODEINE、REX、JUNE OF 44、HIM他)やジョシュ・ラルー大先生(THE SORTS、HIM他)、マット・シュナイダー(HIM、THE EXCITING TRIO他)といった面子も参加。要はシカゴのHIM〜REX人脈オールスターですな。となると出てる音も自ずと察しがつくとおり、バンジョーやアコギにヴァイオリン、ヴィオラ、サックスなどが絡むアメリカーナ・チェンバー・フォーク(おおかた歌入り)。BOSCO&JORGEPULLMANよりもっとアーシーで、リリースがPERISHABLEということもあり牧歌的なCALIFONEといった印象も。はたまたRACHEL'Sエグベルト・ジスモンチやビル・フリーゼルのようでもあったりととにかく色々。アンサンブル徹底重視の作りはこの際ジャズとして紹介された方がいいくらいの感じです。美しく和やかで郷愁を誘う秀逸盤。山のお出掛けの際にはi-Pod(じゃなくてもいいけど何かしらの携帯音楽端末)に入れておくと自然の音と混じってまた良さそうでもありますよ。

  7月27日
▼今日はどう書き始めたらよいのか、新栄クラブロックンロールにて、フランスのYEEPEE出演のイベントに自分も出てきました。ネット上でのオフィシャルな事前告知を一切見掛けなかった今回の日本ツアー、どうも通常よくあるどこかの招聘といった類のものではなかったらしく、ライヴハウス側すらどういう経緯でブッキングの話が来たのかよく判らない状態だったのだとか。日本に友達がいて観光ついでに来てみたとかそんなんでしょうか。今日のその他の出演者もライヴハウスが声を掛けて集まっただけの人々。私がサポートでドラマーを務めているシロクマもその一つであったということです。

▼一番手LOST IN SILENCEは男性一人の弾き語り。おおBRANDTSONのTシャツ着用。あとでエフェクターボードを見たらそれはもうTHE GET UP KIDSとかONELINEDRAWINGとかDASHBOARD CONFESSIONALとかFROM MONUMENT TO MASSESとか錚々たる取り合わせのステッカーがぺたぺたと貼ってありました。OWENと徳永英明とカヒミカリイの間のような(?)全編ウイスパーのゆったり泣き落とし系SSWでした。続く二番手microguitarは青クサ・エロな歌詞バリバリのこれまた男性単身弾き語り。かなりフィッシュマンズの人を意識した唱法ながら、清志郎成分を取り除いて代わりに河村隆一っぽい女の子周波数を足したようなちょっとした飛び道具的ノドの持ち主。

▼そして何と三番目がメインのYEEPEE。メイヨ・トンプソンとキャルヴィン・ジョンソンの中間のようなディープ&ジェントル声のエマニュエル(♂)とストレートで澄んだエリザベス・ミッチェルみたいな声色が好感大なジョアン(♀)のアコースティック・デュオでした。曲はRED KRAYOLAみたいだったりBEAT HAPPENINGみたいだったり、時々THINGYみたい(男女ヴォーカルの絡みが特に)だったりしつつ、アコギ一本の簡単そうなコード弾きと二人のヴォーカル+α(変わった打楽器、ボコーダーなど)で過不足なく語られる、和やかでちょっと変なインディポップ。発想とアウトプットの間に余計なものが何もない感じの、潔くして快いパフォーマンスで、そうプロの表現屋のやり方ってこれだよと納得しきり。良かったなあ。

▼そして何故か最後にシロクマ。二番目まで見てYEEPEEすら待たずに帰った人がかなりいたせいもあり、フロアの眺めは冷涼この上なし。ライヴハウス主導のローカル・アマバン・シーンとは恐ろしいものです。そりゃ自社ビルも建つわと。まあでも面識ない人に「ドラムもかっこよかったです」と言われたから全て良しです。なにぶんドラマーとしてこういう(大学のサークルとかではない比較的おおやけの)場でステージに立つのはこれがまだ3回目という初心者君なのでありがたい。バンド自体は演奏、MCを含め全体のプレゼンが上手くいってたと思います。そろそろ見に来て下さいよ、次回は9月25日だそうですよ。

▼ということで今日もちゃっかり写真。最初2つは割愛ですいません。

↑YEEPEEその1 下向いてフラフラと

↑YEEPEEその2 ボコーダーでCYNICを思い出したダメな私

↑シロクマ前二人を激写!

↑帰り道にてついでに撮影 名駅西・円頓寺商店街はただいま七夕祭り開催中なのです

↑各家庭がこのようなハリボテを作り、自宅前のアーケード天井にゾロゾロと吊るします これは力作の部類 高校の学祭みたい

▼物販のCDはシロクマの澤田君が1部もらっていたようなので買わず収穫なし。よい一日でした。

【只今のBGM:KING CRIMSON「THE CONSTRUKCTION OF LIGHT」】


先月紹介した「THRAK」以降数々のプロジェクトワークを経て2000年に久し振りにリリースされたフルアルバムがこちら。作風は「THRAK」から更にフュージョンっぽさが抜け、インストパートの比重が増し(なのでこの際ブリューも許せる)、「太陽と戦慄」時代そのままの怒涛のお化け屋敷マスロックとディシプリン・クリムゾンのフレームバイフレーム・ギターの危険な複合形に。カッコイイじゃないかとても。"Fracture"再演か!?とびっくりする"FraKctured"、遂に来た"Lark's Tongue In Aspic Part IV"など、当人達もすっかり回帰モード…というか本丸クリムゾン名義でやるのはこの音しかなかろうという判断なんでしょう。ファンは勿論歓迎です。ホントこりゃヘタな二番煎じマスロック/マスメタルよりガツンと来ますね。RELAPSEやGSLの新人を追っかけ回す前に是非とも!

  7月26日
収穫はなし。外を歩いてるときに突然顔面(口のあたり)を虫に激突されました。慌てて振り払ったきり姿は見ませんでしたが、何の虫だったか気になります。ゴじゃねえだろうな。

【只今のBGM:HAYSTACK「SLAVE ME」】


ENTOMBEDとBACKYARD BABIES他のメンバーによるプロジェクトの98年リリース2nd。人脈的にTHE HELLACOPTERSとかそっちの北欧ガレージ系と結び付けられがちなようですが、やってる内容はまるっきりUNSANEです!スラッシー&ブルージーな極悪非行リフとパワードラム、高音アジテイトヴォーカルが揃っての粘りのあるグルーヴでズドズドと押しまくる血塗れヘヴィジャンク。NY的な冷徹さの代わりに北欧のこの界隈ならではの極太ノリが加わり、ダウンチューニングらしい重圧感の巧みなチラつかせ方には元デスメタルの肩書きが光る。時々「SOUTH OF HEAVEN」以降のSLAYERを思わせる勿体つけ系展開も。これがアレックス・ニューポート録音の新人でリリースはCAPITOL、とかだとフーンで済まされてしまいそうな気配も若干あるんですが、思い込みなのか何なのか、ヴェテランならではの重みと余裕をやっぱり放ってる気がします。最近のENTOMBEDを支持する向きに限らずブチ切れ極悪ロッキンなのが好きな人はチェックしてみる価値ありかと思いますよ。

  7月25日
本日の収穫、バナナ名駅店にてHAYSTACK「SLAVE ME」(THREEMAN RECORDINGS!ENTOMBEDのメンバー在籍ガレージ〜ポストコアバンド)。バナナは今年もサマータイム開始してますね。平日は21時まで営業です、夕飯食べたあと突然「ウッ、PEARL JAM全作中古で揃えるぞ!」と思い立っても大丈夫。

【只今のBGM:ATTICA BLUES「TEST DON'T TEST」】


AARDVARCKのリミックスをしていたことで名前を覚えていて、アーチー・シェップのアルバムで同じ名前に再会。それだけで買ったのでMASSIVE ATTACKがどうのと言われても全く判らん私です。ほぼ全編女性ヴォーカルもしくは男性MC入りで屋台骨はR&B〜ヒップホップで、しかしブラック、バッド&セクスィ〜ですどーも!的なアクが全然ないクールな佇まい(UK出身ゆえか)、加えてトラックのいじり具合は相当テクノ寄りという、こういうノリのエレクトロニカ〜テックジャズに既に慣れていた身には非常にとっつきやすい作りになっております。サンプルとして対象化された生音/生演奏群が寄り集まってフレンドリーかつ太めのビート感を構築する手法はさすが元MO' WAX。真っ黒版MONEY MARKなんて言っても怒られないでしょうか。識者の皆さんすいません。ビースティOK、ヒップホップ風エレクトロニカOK、しかし直球R&B/ヒップホップへの壁は高い…てなロック野郎を親切に受け止めてくれる盤かと。PREFUSE 73より深入り出来た気持ちになれます。あとジャケがかっこいいですよね。

  7月24日
収穫はなし。普段テレビは殆ど見ないのに昨日から何となくフジの25時間特番を度々見てしまってて、「オッ珍しくテレビづいてるな〜自分」と思ってたのに台風が接近してることは知りませんでした。そして時々スペースシャワーやMTVやMUSIC ON! TV(VIEWSIC改め)を徘徊すると、世の中こんなにバンドばっかりいなくていいよなと凹む。

【本日のレビューその1:RED NORVO「MUSIC TO LISTEN TO RED NORVO BY」】


HELMETの名盤「BETTY」にも似るジャケですがこちらは普通に直球でこれ。40年代にはビッグバンドも率いていたヴィブラフォン奏者のレッド・ノーヴォの57年CONTEMPORARY録音のリーダー作で、バーニー・ケッセル&シェリー・マンのPOLL WINNERSコンビが参加していたのとヴィブラフォン/フルート/クラリネットがいる変わった6人編成だったのとで購入してしまいました。緻密なオーケストレーションとクラシック的和音展開でもの静かにスイングする平和なチェンバー・ジャズとなっております。ソロパートは添え物程度にしかなく、ひたすらアンサンブル重視で、ジャズ作品というよりほとんどスコア集といった趣き。参加メンツのサイドメンとしての活躍を堪能するにはちょい物足りない感もありますが、6人編成をフル稼働してのプチ・オーケストラ的様相にはほぉ〜と感銘を受けます。指揮者の如くパッパッと風変わりなキメを繰り出すシェリー・マンかっこいいなあ。暑苦しく燃えたぎらないのがウエストコーストの醍醐味ということで。

【本日のレビューその2:BRANCH MANAGER「ANYTHING TRIBAL」】


DISCHORDリリースの中でもマイナーめのバンドの97年作。これの前作のレビューでは相当冴えなそうな口振り(あれでも好意的に書いたつもりだったんですが…)でしたがこっちはなかなかテンション高いです。トリオの余白を活かした妙味ある絡みを軸に、やっぱりSMART WENT CRAZY風ラウンジスタイルやSCREAMばりの前時代的直撃メロディックharDCoreだったりしつつ、ギターヴォーカル氏が黒人とあってかTRENCHMOUTHみたいなラディカル・アフロテイストもここへきて発色。いつのバンドなんだか判らん不思議な塩梅に。この盤を最後に短命の「支店長」はどこかへ行ってしまいました。元メンバーは現在何やってんでしょうか…伝説と化すほどの気配も感じませんけども、INNER EARでドン様録音だし、安く見掛けたら救済してみるのもいいと思いますよ。

  7月23日
本日の収穫、御器所SOUTH OF HEAVENにてXYSMA「XYSMA」、PRIMORDIAL「THE GATHERING WILDERNESS」(アイルランドの激エモフォークゴシック2005年作)。舌をべろべろ出してる犬はやっぱり笑顔にしか見えない。

【本日のレビューその1:XYSMA「XYSMA」】


かのKYUSSとほぼ同期(ちょっと先輩)、フィンランドの伝説的ゴアロッキン・デスストーナー(?)バンドの初期音源ブチ込み盤!これはCAP'N JAZZの2枚組ばりにお得です。1stフル「YEAH」と続く2nd「FIRST & MAGICAL」がディスク1に、それ以前にリリースされていたEP3枚がディスク2に完全収録。このバンドはどういう連中かと申しますとね、まだストーナーどころかドゥームメタルなんて言葉すら市民権を得ず、ENTOMBEDはバリバリのストロングスタイル、CATHEDRALはひたすらノロノロやってたような頃に、灼熱デザートロック〜ガレージ直系のリフ&展開とCARCASSばりの極悪ブラストパート&ゴア声をあっさり融合させ、しかも古風なプロダクションにも徹底的に拘った、奇跡の突然変異バンドであったのです。BLOOD DUSTERもENTOMBEDもQUEENS OF THE STONE AGEさえも実はこのバンドが作った道路づたいに行っているという事実がもっと認知され、世界中から尊敬されるべきグレイトな存在であるのですが、いかんせんバックカタログ群の流通が悪くて特に初期のEPなどは完全に絶望的…と思っていたらこれですよ。さて気になるレアEPだらけのディスク2、時期を遡るほどブルータル&ゴア度が増して極初期は本当にNAPALM DEATHやCARCASSそのもの。それでもDISMEMBERほかスカンジナヴィア勢が何故か共通して持っている無骨ロッキンなビート感も隠し切れぬとばかりに強烈に存在を主張、メタルとして根の詰まった他の大多数のバンドとは違う穀物を食ってる様子が既に明らか。ゴア系リフのセンスも一級品なのにほいほいと容易くロックしてしまうこの達観ぶり(しかも89年やそこらで)はクールとしか言いようがございません。フルアルバム2枚分を収めたディスク1はもう最初の方に書いたとおりのユニークなゴア&ロールが大成されており、言うに及ばず最高。珍題が冴える名曲"I Feel Like Lou Reed"で幕を開ける3rd「DELUXE」とこの2枚組があれば恐いものなし。今すぐ買い!

【本日のレビューその2:BOLT THROWER「THE IVTH CRUSADE」】


もうひとつデスメタル続きで。老舗の中でもAUTOPSYあたりと並んで玄人好みのシブさが受けている英国の隠れ名バンド・BOLT THROWERの92年作です。一昨年12月23日のこの欄にも書いているとおり、鈍くて低いSLAYERといった印象のリフ臭で、オールドスクールのど真ん中ではないが初期ブラックメタルにも通じるプリミティヴな荒々しさが魅力のスタイル。非爆走時のKREATOR+「MORBID TALES」までのCELTIC FROSTってな感じもありつつ、REPERTOIREから再発されるようなB級ハードロックバンドを思わせもする。降雪から2・3日経って見るも無残に融けかけた雪だるまの如くグズグズしたこの足回りの悪さが独特の貫禄を呼ぶんですな〜。言う人に言わせれば全然判んないってことにされても仕方ないけどやっぱり確実に何か出てる、LUNGFISHみたいな人達ですかね。

  7月22日
本日の収穫、P-CAN FUDGEにてREDNORVO「MUSIC TO LISTEN TO RED NORVO BY」(57年CONTEMPORARY)。コンビニで買ったわらび餅に「わらび粉入り」と書いたシールが貼ってあった。

【本日のレビューその1:MATTHEW SHIPP「EQUILIBRIUM」】


ANTI POP CONSORTIUMとの共演などで音響方面のリスナーにも名前が知れているマシュー・シップの、THIRSTY EAR(PERE UBU他リリース)のBLUE SERIESからの4作目となった2003年のアルバム。ピアノ+ヴィブラフォンで無管、そこにシンセ/プログラミング他担当を加えたクインテットです。ポスト・モード(?)な無国籍先鋭ジャズ/現代音楽とヒップホップの渾然一体となったものをコンパクトにまとめて、あくまでジャズ然とした体裁によってジャズとして演奏した野心作ですな。「ジャズコンボによる恥ずかしい妄想公開実験クラブミュージックの成り損ない」は巷に数あれど、このアルバムではそうやってアイディアと手足がチグハグになることなく、限界までジャズ肌のクールなヒップホップともヒップホップをテーマとする先鋭ジャズともつかぬ、必然性の感じられる表現が全編に渡って行われております。これだけのイメージを持ちえるのも両分野の完全なるバイリンガルであればこそ。元パンクロッカー達がジャズや現代音楽やフォーク趣味をブチまけてしまったポストロックとは感触が似るようで本籍が異なる。AESTHETICSFRESH SOUND NEW TALENTの橋渡しとして貴方の新しい散財を招く危険な1枚。

【本日のレビューその2:ATROX「TRRESTRIALS」】


ノルウェーゴシックの代表的バンドTHE 3RD AND THE MORTALのシンガーの妹が歌うバンドの2002年作で恐らく3枚目。デビュー当初は何の変哲もないもったりした陰鬱ゴシックだったのが、2枚目で突如ケイト・ブッシュに悪い薬を盛ったみたいなアヴァンスタイルに転身、そして今回は遂にCONFESSORCHISEL DRILL HAMMER+90 DAY MEN+OPUS AVANTRA(!)みたいな物凄いホラー・プログレッシヴ・アトモスフェリック・マス・ゴシックと化してしまいました!こりゃヤバイ!メタル界のPIT ER PATか?基本的にはクラシックの唱法をたしなんでいるモニカ嬢が豹変して繰り出す、お嫁に行けなくなる必死の奇声(しかもヴァリエーション多過ぎ)に意識を引きずり回されっぱなし。メタル畑の手練が凝りに凝って作り込んだバックと相俟ってもう圧巻。正式ドラマー不在につきリズムトラックが打ち込みなのだけが残念ですが、ミックスが良好なのでそのことは途中で忘れます。変態ゴシックファンは勿論SKIN GRAFTや31Gのバンドをチェックしてるような人も騙されたと思って聴いてみて頂きたいビックリアルバムです、知られないままでは勿体ない。

  7月21日
収穫はなし。ビアガーデンではないけど久々に飲みました。この空腹と喉の渇きで乾杯してはマズイと、事前にピルクルの紙パック500ml入りを一気飲みして臨んだら大丈夫でした。

【只今のBGM:CRYPTOPSY「UNGENTLE EXHUMATION」】


何と93年の4曲入りデモがオフィシャル再発。2002年に出てたようですけど。正統派ながら超テクニカルで殆ど痙攣のようにしか聞こえないブラストビートをフィーチャーした情け容赦なきブルータルデスメタルスタイルを既に大成しております。出世作2nd「NONE SO VILE」より幻のデビュー盤「BLASPHEMY MADE FLESH」をプッシュする私としては当然ストライクゾーン。リフや曲展開は現在よりいくらか単純で、先発バンド達からの影響の生々しい跡もそこかしこに窺えるものの、超人的なブラストのキレは変わらず。なんかこの運動神経のよいキメやテンポ感はデスメタルというよりスラッシュ的、もっと言うと早回し版SADUSですな。初期の名物シンガーだったロード・ワームは「ふぉえャッ」という独特の吐き捨てシャウトを交えた低音グズグズヴォーカルで陰険さをブチ撒いてます。まあしかし総じて「バカ巧いがノーマルなデスラッシュ」といった収まり具合か。行き過ぎた技巧を個性として暴虐の限りを尽くすこれ以降の作品の方が間違いなく強力ではあります。

  7月20日
▼有言実行、収穫はなし。とはいっても今晩も風があってね〜涼しいですよねー。梅雨が明けたということはビアガーデンですか?名古屋・栄の路上で演奏してる何だかわからんインストバンドはその面白くもない演奏が中日ビルの屋上まで聞こえてきて迷惑千万(そうでなくてもうるさいのだ!)であるので夕立にやられて感電してほしい。

【本日のレビューその1:MELVINS「EGGNOG」】


91年の4曲入りEP。ベースは現在ACID KINGをやっているロリ嬢です。収録曲の長さが順番に1分45秒、2分16秒、3分24秒、12分50秒という何とも人を食った構成の盤です。年々テンションが上がってる気がしていた彼らですが古いのもやっぱり全然全開ですね。前時代の数多のハードロック、サイケ/ファズロック、ハードコアパンクその他の毒々しい闇鍋にして悪の錬金術。「いわゆるスラッジコア」「いわゆるストーナー」を選択して演奏してるバンドとは余りにも違い過ぎます。BLACK SABBATHやらBLACK FLAGやらという名前をつないでいけば形容可能なスタイルであるものの、こういう音楽あるよね、こういうやり方でやると面白いよね、みたいなものを一切感じさせない孤高の狂気。これをデビュー以来20年間一貫して保持してきた彼らのヴァイタリティ(というか何というか…)には恐れ入ります。新しめのリリースともどもチェック。

【本日のレビューその2:GUNFIGHTER/TRAINDODGE「SPLIT EP」】


未だ尾を引く日曜のTRAINDODGEショックゆえ久々に聴き返してみた1枚です。2002年ASCETICリリース。前半に2曲収録されているGUNFIGHERは4月21日のこの欄でも紹介済みの男気パワーグランジバンド。いかにもグランジらしい地味さをシブ系ポストコアにマッチさせてしまった奥ゆかしい音楽性で私は好きです。寝ても覚めてもALICE IN CHAINSやSOUNDGARDEN流しとるなあMTVは、てな時代を実体験した御仁ならグッと来る熱いものがあるはず。後半に同じく2曲収録のTRAINDODGEは、久し振りに聴いた感じが全然しないいつものTRAINDODGE節そのもの。2ndフルリリース翌年、二人目のギタリスト(既に脱退した模様)加入後の録音とあって、大名盤「THE TRUTH」に近いパワー重視のストレートかつリフ・オリエンテッドな作風になってます。先に収録されている"United Skeletons"はトム・G・ウォリアー風の「ウーッ!!」というシャウトが聴けるキラーチューン!続く"When The Wicked Walk With Fire"は途中にアンビエントエレクトロ+アコギの延々としたブレイクを挟んだり「THE TORCH EP」冒頭曲の変形テーマが出てきたりする8分弱の大曲でこれまたドデカイ貫禄。SHINERとANTHRAXをリンクする新種のヘヴィロックであります、変態でもシニカルでもマメな伝統芸でもないロック然としたアツさを直球で投げ込んでくるバンドをあまり見かけなくなっている昨今、彼らのようなやり方はだんだん受け容れられていくんではないでしょうか。その火種として気を吐いていってもらいたいもんです。ということでこのEPは見かけたら即買い。

  7月19日
収穫はなし。この場に敢えて特記すべき話題のない日はレビューだけにしようと何度思ったことか知れませんがいよいよそうしようと思います。今晩は涼しくて感動したとか言われてもどうしようもないでしょうし。とりあえず二日前のTRAINDODGEショックが未だあとを引いてます。あと今晩は涼しいなあ。

【本日のレビューその1:MISSION OF BURMA「VS.」】


ボストン産ポストパンクカルテットの82年1st。GANG OF FOURやP.I.L.やWIREあたりから想像可能な、リズムの捉え方が変で音響面では野心的でだらしない虚無感もまとった、よく出来た王道ポストパンク以外の何者でもないですな。スラッシュメタルでいえばEXODUS、プログレでいえばGENTLE GIANT。先に名前が売れたオリジネイター達とタッチの差で後続になってしまったがギリギリ第一世代入りみたいなポジションでしょうか。ああ初期FUGAZIもNOMEANSNOもここにある。ディストーションギターを新しい音響楽器として扱ってしまったり、ハードコアのスピード感を知性でズタズタにコントロールしてしまったりと、ロック史が地道に積み上げてきたコンテクストを御破算にしておきながら演奏してる音楽はちゃっかりロックというこの頃の一連のバンドによる諸革新は、70年代のパンクと呼ばれた音楽からするとそろばんと電卓くらい段違いですね。そして今は電算機として進化を続けるのみという。この手の音に関心がおありなら、こういう雛形盤はたしなんでおくに越したことはないかと思います。

【本日のレビューその2:CACTUS「CACTUS」】


ティム・ボガード&カーマイン・アピスのVANILLA FUDGEリズム隊両名に、ジェフ・ベックとロッド・スチュアートを加えたスーパーグループを結成しようとして失敗し、元AMBOY DUKES(テッド・ニュージェントがいたバンド)の人やら何やらを引っ張ってきて出来た短命バンドの1st。ハードブギーがトレードマークらしく、冒頭からVAN HALENばりの高速シャッフルでスッ飛ばしてます。うーむ猛々しいぜ。割とスッキリ整然としつつもロック然とした不良な色気をガンガン振り撒いてくれて、私の少ないオールドロック語彙で例えるとHUMBLE PIE(「SMOKIN'」以降)に近い雰囲気?この過激さがまだ新鮮だった時代のパンチ力を想像してみると、そりゃケツ蹴り上げられる心地だったろうなあと。ワイルドだがイマイチ華のないヴォーカルのせいか「目立ったセールスのなかった万年オープニングアクト」みたいな言われ方もしてるようですが、BB&Aへの布石として、あるいはハードロック黎明期のアメリカ人の意識の記録として、今や大いに省みる価値ありでしょう。

  7月18日
収穫はなし。名古屋でちょっと有名なハンバーグ専門店「ヒッコリー」の山手通店(本店は名東区)に物凄くガッカリしたことくらいがせいぜいここに書ける大事件であった今日は、突然ミュージシャンについて語りだすシリーズでGORGOROTHについて語らせて頂きます。ノルウェーブラックメタルの中でもそんなにオリジネイターというほどではなく、ブラストやヴィジュアルがとりわけ凄いわけでもないバンドですが、ブラックメタルといったら私は(そんなに数知らないですけど)このバンドが好きです。とにかく渋い。速さや汚さではない、味わいの深度で勝負するような実力本意かつ迷いなきスタンスが頼もしい。畑違いで例えるとUIBARKMARKETのようなもんでしょうか。以前書いたレビューも参考に是非それとなく探してみて下さい。

【本日のレビューその1:M.O.D.「THE REBEL YOU LOVE TO HATE」】


2003年、久々の新作。完全MSGパロディなジャケに、1曲目から白人ラップメタルを馬鹿にする内容と、以前にも増して下劣な風刺性を高めての復活です。90年代に入っても割とスラッシュ然としたスピード感を守り通していた彼らですが、今回はいきなり全面スローダウン、今更PANTERAやWHITE ZOMBIEの真似事を何ゆえ…と少々情けなくなるような方向転換っぷり。ざくざく軽快でスポーティな疾走感が快かったのに。しかしビリー・ミラノのヴォーカルだけは逞しくなる一方でして、どんどん増える体重に比例して貫禄もかつてない次元に達してます。後半に登場するBAD COMPANYオマージュな曲(ツボ押さえすぎで笑える)、それに続くアップテンポナンバーでやっとテンションが上がったと思ったらする本編終了、ジョーク風の別ミックスがその後無駄にオマケとしてくっついているという、まあ実にダラダラしながらもヴェテランとして見せるものは一応見せているという仕上がり。99年のS.O.D.復活作で飽き足らなかった人向け。ちなみにハードコア/クロスオーヴァーの影は今や皆無です。

【本日のレビューその2:McCOY TYNER「INNER VOICES」】


77年作。バッキングコーラスやブラス隊ありとの表記に、80年リリースのビッグバンド編成での名盤「13TH HOUSE」のプロトタイプが聴けるのではないかと、多分に胡散臭いジャケやタイトルに我慢して買ってみたらこれが大当たり。5度を駆使する緊迫したコードワークと男女混声のあやしい合唱のこの1曲目はやっぱりMAGMAであります。ヴァンデが聴いて啓示を受けたというコルトレーンのバックで弾いてたのはこの人ですから、ある意味本当に元ネタなわけですな。その後は完全フリーに走る前のトレーンサウンドにラテン味を加えたようなのを1曲だけ挟んだあと、コバイアコーラスにしか聞こえない合唱をフィーチャーした高速フュージョン化MAGMAみたいな曲が再び続く。本当に聴いてたんじゃないかと思えるほど「UDU WUDU」期のMAGMA(もしくは後期ZAO)にソックリ。ブラジル人のパーカッショニスト、ギレルミ・フランコ(キース・ジャレットの作品にも登場の人)を参加させてるだけあってか全体的に音数多いラテンノリも香る。ソロタイムはあくまで熱く長く、普通にジャズとして聴いて充実の出来といえる内容だと思います。裏RETURN TO FOREVER的な盤として密かに支持されませんかねえ。

  7月17日
▼TRAINDODGEジャパンツアー、名古屋公演@鶴舞KD JAPONに行きましたとも!ありゃー凄いものを見た。開演予定の18時半近くに会場に到着すると、外にあっさりメンバー3人+ASCETICのオーナーを発見。myspaceで彼らに追加リクエストを出したところメッセージが返ってきて「(アップしてる音源を)気に入った!ナゴヤで会うのを楽しみにしている」と言ってもらえていたという経緯が実はありまして、stiff slack新川さんの後押しで突撃、「例のmyspaceの奴です、お会いできて嬉しい。あ〜と英語はてんでダメなんですが…去年あなた達の『THE TRUTH』を買って、すごい感動しました」程度のことしか喋れずその場は終了して早々と場内へ。

▼1番手はどうやら名古屋が誇るURTHONAである模様。元サンディエゴ在住の米国人ギタリスト・チャーリーさんの不思議なヴァイブレーションで綴られる、相変わらずの変態ノリノリ突撃インストポストコアが堪能できました。ドラムに一切マイクを立てないPAのせいか金物類とギターばかりやたらと目立って、低音のパンチがなかったのが少し残念。それでも一応聞き取れていたベースはいつもどおり歌心とグルーヴを心得た演奏でお見事でした。この人の存在が結構肝ですな。

▼2番手は東京からTHE UNDERCURRENT。かなり前に見たときはMINERALラインの叙情エモを更に激情寄りにした感じってな印象だったのが、今日はグランジ&オールドロッキンなノリが加わって、かなりの進化の跡が窺えました。特に専任ギター氏が非常にニュアンスのある演奏をしていたお陰で、よくある国産ワナビーバンドが往々にして持たない「音楽らしい豊かさ」とでもいうべきものを体得していたように思います。ヴォーカルがもう一枚スポーンと吹っ切れてくれればなお強力になりそう。圧巻だったのはドラム氏。小柄な女性なんですが、全身を使った大振りでバシバシと激打、その音量と気迫たるやそこいらのアマチュア男性ドラマーや某DMBQの人なんぞ足元にも及ばないほど!狭い会場なだけに余計に壮絶でした。

▼3番目は奈良のLOSTAGE。近くにいた客が「LOSTAGE見るの初めてなんだけど」「やべーよ、スゲーカッコイイ」という会話をしていたのでほうほうそうか…と期待していたところ、正に!KEROSENE454やHOT SNAKESあたりを彷彿とさせながらも邦楽的なツカミも忘れず、しかも4人が4人過剰なまでの激パフォーマンス!狂ったように暴れるベースヴォーカル氏と、長髪をグルグル回しながら壮絶テクで叩くきまくるドラマー氏が特に壮絶。MO' SOME TONEBANDERやらSPARTA LOCALSやらの層に今にでも入っていけそうなクオリティとパワーがありました。客の反応もさすがに良く大喝采。お住まいの街のお近くにやって来た際には是非見に行ってみて下さい。

▼4番手は今回全公演一緒に回っているBALLOONS。前に見たのは去年の31KNOTSのときでした。その時は上手いしセンスあるけどやたら丁寧なバンドだなーという印象でしたが、USツアーを経てパワーアップしたのか随分とアンサンブルが緊密になって、前よりがっつりロックする感じが増してました。彼らのちょい泣きでいかにもアーバンなクールさはきっと東京の空気なんでしょう、そのへんもさりげない体臭にまで昇華。MEDICATIONSや31KNOTSなどの現在形マスロックシーンに堂々と参入できるレベルにまでなってるのではと思います。

▼そしてお待ちかねのTRAINDODGE。メンバー3人はいずれもずんぐりガチムチのアゴヒゲ男達で、ギターヴォーカルのジェイソンは頭頂に薄日が…。「THE TRUTH」で4人目のメンバーが加入したはずだったのが今回は3人での来日で、シンセはMIDIパッドやら何やらでまかなうという情報を得ていたのでどんなセッティングになるのか注意深く見てたら、ドラムセットにそれらしいパッドが組み込まれたのと、ハイハットのわきに普通に鍵盤つきのシンセがスタンバイ。まさか弾きながら叩くんじゃあるまいしと思いつつ演奏開始。何と弾きながら叩きやがりました!最新EP「UNDER BLACK SAILS」収録曲から始まったんですが、一瞬のブレイクの隙にスティックをシンセの上にパッと置いて、左手で弾きながら右手一本でドラムも演奏続行。シンセパートが終わると信じられない素早さでスティックを持ち直し両手で激打!いやそんなトリッキーな演出の説明は二の次でもよいのです、Cまで下げたガッツィーなヘヴィリフと極太リズムの絡みは超即効性!前座4バンドも充実して今日は一流バンドばっかだなースゴイいいなーと思っていたのが、彼らが揃ってドパーンと一音目を鳴らした瞬間からもう圧倒的な世界の違いを感じざるを得ませんでした。あらゆる音がデカイ、太い。というか曲がデカイという感覚。至極シンプルな動きなのに琴線をグモグモと引っ掴むリフおよびキメフレーズの数々、そしてリフと等価かそれ以上の存在感で曲の流れを作る爆撃重低ドラム!必要以上に煩雑な動きはしないながらもフィルの一つ一つが全部ハイライトに聞こえるあのドラミングはかつて聴いたことのないものでした本当に。曲中に頻繁に登場する静かめのパートも、それまでどれだけ白熱しまくっていようが一瞬で切り替えて然るべき雰囲気を作り、その抑えっぷりがまた来るべき再燃を予想させるという巧みな表現能力。芸術的と呼べる域。

 名古屋は今回の招聘元stiff slackのおひざもととあってか、客もバンドを大歓迎モードでかなりハイテンション。咄嗟のブレイクやファインプレイがあるごとにヒューッ!と声が飛び、曲が終われば拍手より先にまず歓声。曲間も「やべー」「すげー」等の話し声がそこかしこから。余りの強烈なヘヴィグルーヴに、私は途中からこれはヘヴィメタルだと思って(ベーシスト氏はBURNT BY THE SUNのTシャツ着用!)メタルのライヴよろしく派手に頭を振ってたんですが、気がつくとフロア全体の頭が揺れている。KD JAPONでヘッドバンギング(とも呼べないくらい軽いものでしたが)の絨毯を見たのは初めて!BALLOONSのギタリスト氏に「凄く謙虚な奴らなんで」と紹介されたとおりMCは「ありがとう、会場と共演バンドと来てくれた君らみんなありがとう。CD2種類とTシャツ、後ろで売ってるから良かったらあとで買ってね」みたいな内容のみ。フロアからの熱烈過ぎる歓声にたじろぎ気味の場面すらあり。ありゃー幸せだったでしょうなあ日本まで来て。あと2曲と予告してやり終えたあと「もう1曲いい?」と会場のPA氏に確認したのち演奏、それが終わると普通にギターからケーブルを外して片付けようとするからそんなのイカンよと猛烈なアンコール要求が飛び、えっマジでみたいな嬉しそうな様子でアンコールへ。客の手拍子にあわせて叩き始めたドラムをやめる気配がないと思ったら、そのまま前のアルバム「ON A LAKE OF DEAD TREES」の1曲目へもつれ込み観客熱狂!それも終わると盛大な拍手で惜しまれつつの完全フィナーレ。名古屋で久々にあれだけ盛り上がるとこ見ました。

▼ということで今回も写真を。撮影位置の悪さと会場の暗さとで(フラッシュは何となくためらわれるので…)あんまりロクなのないですが。

↑URTHONA 左ギター氏は収まらず

↑THE UNDERCURRENT 左半分だけですいません

↑LOSTAGEハッスル中!

↑LOSTAGEドラマー氏はどう撮っても写らない

↑BALLOONS 一応4人写ってます

↑TRAINDODGE!近い人影のはベース氏

↑ドラムのロブ、弾き叩き中

↑ミニアンプにサインもらいました!「このアングルで書くの難しいな…」とジェイソン

▼物販ではCDのみ購入で収穫はなし。次は27日のYEEPEEです、何卒よろしく!

【只今のBGM欄は割愛します。過去のTRAINDODGEレビューはここここなどを参照】


  7月16日
▼よりによってクソ暑い中本日の収穫、サウンドベイ金山にてMAYHEM「CHIMERA」、SEPULTURA「CHAOS A.D.」「MORBID VISIONS/BESTIAL DEVASTATION」(ともにゴールドディスクリマスター)、ATROX「TRRESTRIALS」(THE 3RD AND THE MORTALのVo.の妹バンド、ケイト・ブッシュ風変態ゴシック)、THE ANOMOANON「ASLEEP MANY YEARS IN THE WOOD」(ネッド・オールダム)、BOLT THROWER「THE IVTH CRUSADE」(激シブデスコアテイストのUK老舗バンド!!)、ANGELCORPSE「IRON, BLOOD & BLASPHEMY」(SARCOFAGO、KREATOR、JUDAS PRIEST等のカヴァー含む編集盤!)、DELIVERANCE「LEARN」(クリスチャン・スラッシュ!93年)、VIO-LENCE「OPPRESSING THE MASSES/TORTURE TACTICS」(後期スラッシュ大名盤!検閲でカットされ別リリースとなった「TORTURE TACTICS」含むリイシュー!)、GIRL「WASTED YOUTH」(DEF LEPPARD加入前のフィル・コリン在籍)、M.O.D.「THE LABEL YOU LOVE TO HATE」(2003年NUCLEAR BLAST)、CHRIS WIESENDANGER「URBAN VILLAGE」(FRESH SOUND NEW TALENT)、MATTHEW SHIPP「EQUILIBRIUM」(THIRSTY EAR BLUE SERIES)、同上前津でCACTUS「CACTUS」(ティム・ボガード&カーマイン・アピス!)、KING CRIMSON「THE CONSTRUCTION OF LIGHT」(2000年新作)、HEAVENLY「VS. SATAN」(K!)、DOUG SAHM「HELL OF A SPELL」「BACK TO THE’DILLO」、SEPHARDIC TINGE「MORENICA」(TZADIK)、GENE KRUPA AND BUDDY RICH「THE DRUM BATTLE AT JATP」(オスカー・ピーターソン、バーニー・ケッセル、レスター・ヤング等参加の52年作)、McCOY TYNER「INNER VOICES」(77年)、THELONIOUS MONK「MISTERIOSO」「THELONIOUS MONK WITH JOHN COLTRANE」。何やらおやじ臭い買い物でした。

【本日のレビューその1:GIRL「WASTED YOUTH」】


NWOBHMの定番JET RECORDSリリース82年作。おおクール!非常にキャッチーなLA肌のポップメタルをやってます。時代柄ニューウェイブの直線的なリズムが結構入り込んでて、なんかLES SAVY FAVとFOREIGNERの中間みたいですよ?そこはかとない泣き具合も含めて正に。アレンジやヴォーカルは簡素なりに別段ダメだなー貧乏だなーと思わせるところがなく、しかし気体レベルで紛れ込むNWOBHMの熱血が全体に異様な気迫を与えているのが非常に燃える。これはむしろお硬いのが好きなメタラー諸兄よりポップパンクとか昨今のガレージリヴァイヴァル系聴いてますってな人の方に受けがいいかも。勿論HANOI ROCKSとか初期RATTこそ最高という人なら全然問題なく好物のはずです。とにかく何だかわからないパワーのたぎった好盤だと思いますなあ。無駄な人為感のないタイトなプロダクションがまた最高。ちなみにフィル・コリンのリードギターはやっぱり当たり障り無く器用にやってます。

【本日のレビューその2:SEPHARDIC TINGE「MORENICA」】


TZADIKには珍しい普通のピアノトリオ作。アンドリュー・コールマン(p.)、ベン・ストリート(B.)、マイケル・サリン(Ds.)によるプロジェクトのようです。98年。黒と金を基調にして至るところにユダヤの六芳星をあしらったこのレーベル共通のアートワークはやっぱ怖い。中身は予想通り、東欧独特の悲壮な翳りのあるクレツマー・ジャズから現代音楽風のものまで。総じて音楽的にまとまってますからご安心を。静謐と素朴な泣きを大切にしながらかなり鋭いアンサンブル構築を試みてる様子です。テーマとソロの境界すら不明瞭だったりする不思議な展開で、異国情緒とアウトを行き来するフレーズで淡々と歌い続けるピアノはなかなか見事。意味不明の変拍子/ポリリズムなんかも出てきてこりゃかっこいいなあ。美しい、優雅、快適、といった類の音ではありませんが思わず注意を引かれたまま離れられないような濃厚さはあります。以前買ったこれも素晴らしかったし、TZADIKのノーマルなコンボジャズ作品は外れなしか?

【本日のレビューその3:HEAVENLY「VS. SATAN」】


SARAH RECORDSというところから90〜91年頃にリリースされていた音源をまとめた盤とのこと。メロディックパンクの筋肉を極限まで軟化させたような和めるギターポップをやってます。何をやっても名曲に聞こえるこのバンドのマジックは凄い。一聴目でオッ何か初期スピッツっぽいなと思ったんですが、彼らもデビュー前はブルーハーツみたいなことをやっていたという経緯を思い出して納得。その頃の音楽性はきっとこんな風だったんでしょう。DIYインディ野郎だぜという部分を過剰にアピールするでもなく、ただ名曲を名曲として演奏する4人組というスタンスがいいですね。80年代の名残が香るうっすらコーラスがかったクリーントーンも泣ける。ホントそれに泣ける。1st・2ndまでのスピッツが好きな人には(女性ヴォーカルですけど)是非聴いて頂きたい盤です。

【本日のレビューその4:MAYHEM「CHIMERA」】


言わずと知れたノルウェーブラックメタルの王者、発売当初は賛否両論の反応だった気がする2004年作。ヴォーカルは引き続きマニアック(人名です…)。気合の4面開きデジパック、さすが大物の貫禄。そこにメンバーそれぞれの写真があしらわれてるのですが、ミスター・ブラストビートことヘルハマーだけが革ジャンを着てても明らかに腕が太いのが凄いっす。近年はブラストにこだわらないアーティスティックなアプローチも目立っていたこのバンド、今作では昔ながらの凶悪性がかなり戻ってボババババと派手にやりながらも、大仰なスロウチューンもボチボチ健在。しかしあまり小難しくし過ぎないでメタル然と聴かせてくれる分とっつきやすくなったというか、えっこれMAYHEM?という違和感はどこかへ行きました。相変わらず邪悪&荘厳なコードワークで1曲1曲を大粒に仕立てる手腕はお見事ですなー。変化をつけるのが難しいこのジャンルにあってこれだけ豊かに色を変えて見せるってのは偉業です。味わい深し、これぞヴェテラン。入門にも適するパーフェクトな1枚。

  7月15日
収穫はなし。サウンドベイは10時開店であります。夏のバーゲンはあんまり気合入れて早く並ぶと、通りがかる近隣住民からの「何このもさい列…?あレコード屋さんなの、気色悪い」みたいな視線がツライですがまあ並びます。

【只今のBGM:THIN LIZZY「THIN LIZZY」】


71年DECCA、忘れ去られたデビュー作。有名曲は見事に1曲もないですね。やけに長ったらしく説明的なタイトル("クロンターフ城のフレンドリーな警備隊員""農家じゃ物事は上手くいかない"などなど)がPINK FLOYDくさいなあと思っていたら、音楽的にも結構影響が窺えて意外。アコースティック・ソフトロックと呼ぶには曖昧過ぎるサイケポップ/アートロック/R&B、てな感じのことをやっています。トレードマークのアイリッシュテイストはあまり表出してないものの、"Emerald"の前段階みたいな"Return Of The Farmer's Son"など僅かに片鱗を窺わせるような展開もたまにあり。何だか違和感のあるプログレの間接喫煙みたいなキメフレーズの数々を叩くブライアン・ダウニーがやたらキマッてるあたりも面白い。フィルはフィルです、何も変わりません。デビューしたての新人にも関わらずレイドバックしてるんだかガッと噛み付いてくるんだか判らない不敵なヴォーカリゼイションは凄い。そんでギターのエリック・ベルはとにかくサイケ野郎。そこら中で発揮されている音響的野心は恐らく全部この人由来のもの。聴き進むにつれ本当に地味な曲ばっかりだけど、奔放すぎるミクスチャー感には密かに驚かされっぱなし。MAN'S RUINに移籍してしまったTHE HIGH LLAMASか、フォークロックに目覚めたCATHEDRALか?今のストーナーシーンでこんなバンドが出てきたとしたら最高にクールでしょうな〜。そう思って見るとこのジャケもしびれる。

  7月14日
本日の収穫、カイマンから届いたTHIN LIZZY「THIN LIZZY」。そして実は昨日の収穫、バナナ・パルコ店にて$TINKWORX「AIN'T-CHIT HISTORY」(DELSIN!)がありました。この遅れは何かというと、日記を更新してから家を出掛けてバンドの練習に向かう途中での買い物だったからです。何の練習かと申しますとね、告知!!先月末にもライヴがあったシロクマのサポートをまたやらせて頂くんでありますな。

[YEEPEE Japan Tour 2005]
7月27日(水)名古屋 新栄CLUB ROCK'N'ROLL
19:00時開演
YEEPEE(from FRANCE)
シロクマ
LOST IN SILENCE
microguitar
前売り2000円 / 当日2300円

メインのYEEPEEはオリンピアのKとも絡みがあるフランスのバンドとのことで、前回迷った人も今回は是非!取り置きメールはかこの際シロクマ澤田君 までドシドシどうぞ!お一人様何通でも結構!!あとドイモイの方も来るべきアクションに向けて鋭意準備中です、何かあった際にはチェックよろしくお願いします。イベント出演オファー(土日祝開催なら確実です)も随時お待ちしております!

【只今のBGM:$TINKWORX「AIN'T-CHIT HISTORY」】


AARDVARCKが好きで盲目的に贔屓してるアムステルダムのDELSINから。太い四つ打ちとデトロイティッシュな平行移動コードでベーシックなラインを作りつつ大筋でかなり直球小ダサ・ハウス風、そして圧倒的に今日的な感触を与える人力カオスな各種エレメンツの偏執的抜き差しと、いかにもDELSINらしいフューチャー・デトロイト・ハウス(適当に書いてるけど合ってるのでしょうか?)に仕上がっております。エレクトロニカ寄りの観念的な部類よりはかなり踊りオリエンテッドな香り。チープな初期デジタルシンセの「どこで使うねんコレ」系飛び道具音色が凄く音楽的な扱いで頻用されてて、やっぱりこういうのはやりようだな〜と痛感。踊れるビート目指してあらゆる音響に意味を与えていく芸術ですな。ワタクシ、テクノのいろはに関して全く無知なので、正直突出した個性があるかどうか保障のあることは書けないんですが、人を食ったジャケのイラスト同様(裏や内側がまた笑える)軽いエキセントリックなジョークで他人の感性の膜をあっさり破り抜く人みたいな冴えのある意識は確かに感じます。

  7月13日
収穫はなし。自力で断髪してから数ヶ月、また伸びてきたから切りたい。自力は仕上がりが確実でないし作業自体も片付けも面倒、切りに行けば「自分で切ったでしょう」と言われるから面倒、というジレンマ。何事も面倒臭いめんどくさいと言ってる奴は死ねば楽じゃんというのが持論なので、死なないように頑張って決断したいと思います。

【只今のBGM:TRAINDODGE「THE TORCH EP +2」】


来日直前!につき予習で。ツアー詳細はこちら!既に持ってた1枚ですがリマスター&ボーナス2曲追加とあって買い直しです。もともとは2000年リリースで4曲入りでした。まだトリオ編成(今度のツアーは3人で来るらしいですけど)なものの音楽的には大名盤「THE TRUTH」にかなり近づいていて、がっつりヘヴィなダウンチューニングギターと猛々しいヴォーカルが冴えに冴える、QUICKSAND〜BOYS LIFEラインのポストコアの進化形をやってます。かなり派手に歪んでるのに聴き慣れない響きのコードワークやアルペジオを力技でねじ込むこのバッキングギターのセンスは本当に驚異すべき。ドバタッ!とタムの熱いキメを多用するパワードラムもカッコイイですなあ。トラディショナルな部分も多々あれど、ありそうで無かった新しさをもった頼れるバンドだと思います。「ANGEL RAT」〜「THE OUTER LIMIT」期のVOIVODと他人の空似なのも個人的には嬉しいところ。追加された2曲はいずれも激ハイテンションな逸品。現在はもっと凄いことになってます、最新アルバムおよびEP買ってライヴにGOです!「THE TRUTH」購入から一年余にして念願のライヴ観戦、いやー楽しみ。名古屋は鶴舞KDハポンにて日曜!

  7月12日
▼いやぁ〜モかった、COPELAND名古屋公演行って参りました!THE SORTS以来の新栄アポロシアターにて。客はJIMMY EAT WORLDとかそっちの流れのエモ・キッズといった様子で大半が高校〜大学生前半風。UNSANEの黒Tシャツにビーチサンダルという服装で行った今年26歳の私はフロア前方では相当浮いてました(物販のHOWLING BULLの人は「オッいいTシャツ着てますね〜」と突っ込んでくれた)。そうかやっぱりこういうの聴くのは若い人だけか…

▼1番手はDEEP ELMからこの度MILITIA GROUPに移籍したBRANDTSON。実は昔のアルバムを以前に買って手放したことがあるバンドなのですが、最近の音源を試聴したらなかなか垢抜けててヨロシかったので結構期待してみてました。出てきたのは4人組のモい男達。左ギター氏は結構普通にイケメンで、帽子といいそこからはみ出る横髪といい名古屋が誇るFILE-UNDER店長山田氏に60%くらい激似!中央ギター氏は一番ロッカー風の服装をしてたけど小柄でビール腹、ベース氏は寒冷地帯風のずんぐり体形でスキンヘッド、ドラマー氏はがっちり短髪・太ブチ眼鏡のいかにも文系エモラー(?)。演奏はまあアメリカの若手らしいパワープレイながらも、叩きながら結構マトモに歌うドラマー氏、要所要所で彼と交代してクリアなハイトーンを炸裂させる左ギター氏の頑張りがとても好感。曲はおおむねよく出来ていて、4人編成を最大限に活かす絡みを多数設けた丁寧なアレンジで飽きず、グッと来るフックも随所に。余りに直球胸キュン過ぎて途中でこれはBON JOVIだ!と気がつく。肌触りだけは今風にしてるものの"禁じられた愛"がセットに入ってても何の違和感もないほどの懐かしメロハーそのものであります。2005年にこういうことやってもいいんだーと少し安心しました。最新作のCD近々買おうと思います。

▼2番手が今回目当てのCOPELAND。セッティングに現れたメンバー達を見て驚愕、ドラマーがいきなり全ヒゲ巨デブ!ロブ・クロウより丸い!ギターヴォーカル氏は目がちっちゃくて風体もヒョロヒョロというより何かにょろにょろしてるし、左ギター氏はイスラム教に入信したスコット・イアンのような物静かな特濃ヒゲマユゲ、ベース氏は帽子・小柄・なで肩・純アングロサクソン顔…おおこれは若かりしころのロブ(・ハルフォード)!この4人があの耽美的な音楽を奏でるのかとしばらく呆然としてました。しかしセッティングが済み演奏を開始すると途端に納得。新作収録曲中でもパッと勢いのある"Pin Your Wings"でスタートしたのですが、典型的なパワーデブドラムとも違う何だかジェントルなモタリビーツを屋台骨に、体を異様な向きにねじったままヴォーカル氏が凄い形相でぬぇっとりと歌い上げると、地面に広げてふわっと伏せられた絹布のようにスル〜ッとした美的波動(??)がステージからフロアまでを覆い尽くすんですな。仮にもロックバンドなのにこれは不思議な感覚。CDだと気恥ずかしいまでの美メロっぷりもここでは自然な空気としてスンナリ飲み込めてしまいます。ベース氏はまあ普通に職人ベーシストっぽい動きをしてるとして、左ギター氏がまた、表情ひとつ変えず手元をじーっと見つめながらリズムに乗ってるんだか乗ってないんだか判らないスロウなアクションを繰り出す変わった人で、しかし彼が出してるウワモノフレーズがとても重要。かくして4人がかりの奇跡的なCOPELANDサウンドが完成するわけです。いやあ驚いた。

 とにかく一つも華がない彼らのルックス面での求心力の源泉はひとえにヴォーカル氏の熱唱。地獄のサタンと「お前が死ぬか、ここにいるお前のお母ちゃんをこの場で殺すか?」「どっちもいやだあぁぁ」と問答でもしてる子供かのようなあり得ない口の形をして、時にK字、時にX字にうねうねグリグリと体をひねりながら、カート・コバーンとアンガールズの中間のようなぺったりストレートセミロングヘアを意味不明のタイミングで振り乱しながら、あのCDどおりの美声を必死で搾り出してくれる彼は間違いなくスターでした。なんか妙っぷりの描写しかしてないみたいですけど悪意はありません、むしろ逆です!己の身体から本気で何事かのものを排出しようとする人の姿は往々にしてキモいものですから。とにかく本物だと思いました。必死ながらも完璧にコントロールされたプロフェッショナルな歌唱でしたし。ジェフ・バックリーとクリス・シンプソン(MINERAL〜THE GLORIA RECORD)の間といったら言い過ぎか?いやそれくらいの感動はありましたね絶対。

 仮にもエモと言われるバンドらしく、轟音パートもけっこう頻繁に出てくるんですが、これまた真心のこもった轟音でひたすら心地良い。ハイここでバーストねみたいな安易な真似とは明らかに感触が異なり、独特の優しいモタリグルーヴとマッチして何ともいえぬ感情の高波に。もっと聴きたいなあ〜と思っていたんだけど、今日は後にもうひとバンド控えているということで、こちらの満足度としてはまだまだ八分目くらいのところで終了。無理にでもアンコール要求すりゃ良かった。

▼ラストは今回の企画主のOCEANLANE。日本人とイギリス人のツートップでリズム隊は日本人。ドラマー氏は長いドレッドを上手いこと左右に分けた完全なるマックス・カヴァレラ・スタイル。ベース氏はいかにもヘルプ風。セッティングではアコギがスタンバイされたり3つ目のギターアンプの準備がされたりと不可解なフリが多く見られながらも、一旦掃けてSEと共に帰ってきたのは4人。表二人は普通にエレキを手に取ってのスタート。おおとりあえずドラマー氏が風貌のとおり上手い。音がデカくフレーズも冴えている。曲は試聴して知っていたとおりクオリティの高いもので、前出2バンドにも全く劣らない。ただCOPELANDの壮絶なパフォーマンスと比べるといささかヴォーカル(日本人の左ギター氏がほぼ全部担当)が力なく、歌より演奏に耳がいってしまった感があります。英国人の右ギター氏は喋ると「フジロック〜来る人!いない、一人?マッジデ」といった調子の全然普通な日本の若者そのものでビックリ。3台目のギアンの使い道は、曲によって使い分けるのかなと想像してたら、何と3人目の仕事人ギタリストが途中の限られた曲だけで現れ、その曲を演奏するとまた帰っていくという豪快な展開に。途中、ステージそででノリノリで見てた関係者風の中年男性が、セット中盤頃の合間に左ギター氏に何やら耳打ちをしに堂々とステージ上に現れていたけど、あれは監督役的な事務所の人間だろうか?うーん。

▼ともあれ恒例の写真を。↓

↑BRANDTSON左側 中央ギター氏の腹が…

↑BRANDTSON右側

↑COPELAND、何だかクニャ

↑もっとグニャー!

↑ロブもといベース氏

↑ドラム氏 丸いっす

↑いつも物憂げな左ギター氏

▼物販ではTシャツのみ購入で収穫はなし。次のライブは日曜のTRAINDODGE!楽しみであります!

【只今のBGM:COPELAND「BENEATH MEDICINE TREE」】


2ndは予習で昨日聴いたのでこっちを。いやー滑らか、溺れられる美しさ。「泣けるポップスを作る」とスタンスを決めてやっている節もないこのナチュラルな心優しさが本人達の気質から滲み出ていることを確認出来て今日は非常に良かったです。去年出たカヴァーEPでのど真ん中選曲が示すとおり、良質のメインストリームポップスで育ってきたんでしょう、そういう耳で作る音楽はやっぱり(危なげな意外性がないという意味も含むが)形が安定しててスッと聴けるのが良いところ。そこに良いヴォーカルがいればもうそれで充分。優れたバンドですよ。この手の音のブームが去っても生き残りそうな芯の強さを感じます。てことで完全どエモなこの1stはまだ旬のうちに買って聴いといて下さい是非。

  7月11日
本日の収穫、先週のバーゲンをすっかり忘れてたバナナ栄店にてMISSION OF BURMA「VS.」、DELUXX「THE FORGIVENESS TOWEL」(DELUXX FOLK IMPLOSIONのルー先生以外によるローファイ宅録ユニット、92〜96年までSEBADOHのドラマーだったボブ在籍!)とTHE ROOTS「THINGS FALL APART」の2枚はまだ残っていたバーゲン段ボールから315円で。週末のバーゲンに向けての未聴CD消化キャンペーンにつき1日2レビューが続いております。↓

【本日のレビューその1:LE ORME「COLLAGE」】


イタリアンプログレの代表的なバンドのひとつ。初期はノーマルなポップスをやっていたのがプログレブームに触発されてプログレを始めたというタイプのバンドゆえ、本家英国への憧れやら何やらが丸見えで、真性バンドには是非欲しい壮大な妄想宇宙といった類のものは持ち合わせていなさそう。それでもそこそこ上手くいってしまうのがイタリア産の強み、土着のセンスでなかなか立派な叙情派クラシカル・ロックに仕立ててます。雰囲気として近いのはGENESISの「TRESPASS」あたりだと思いますが、それ以上にオルガンが幅を利かせてのジャムっぽいノリが(クラシック趣味が共通するということもあって)DEEP PURPLEに近いですね。キーボードトリオというだけで世間ではもっぱら「イタリアのEL&P」呼ばわりだとか…安易な。ともあれ、プログレ然としたものが聴きたいならもう少し後のアルバムの方がオススメです。舶来ロックが舶来プログレに造り変えられるその瞬間を目撃してエキサイトするんだ俺はというマニア向き。

【本日のレビューその2:BANCO「CANTO DI PRIMAVERA」】


イタリアンロック続きで、先日の部屋の整頓で発見された随分前の未聴CDを。DEL MUTUO SOCCORSOをバッサリ省略して短くBANCOと名乗っている79年作。いきなりHELDONかASH RAをポンプロック風にやったような意外なインスト曲で幕を開けるのですがこれが良い。やっぱりオリジネイターと呼ばれるバンドの美意識は刺さるものがあります。以降の歌ものチューンは、時代柄ニューエイジ/AORにかなり感化されてて最高!まだキラキラとチープでない太いシンセ群、やや胡散臭いワールドミュージック趣味のアレンジを大量にまぶしつつ、変拍子やクラシック趣味は排除されてないどころか全然健在なのに明らかに大衆ポップとして垢抜けてるこのバランス感覚は何なのか!YESの裏名盤「DRAMA」をも凌ぐ、プログレバンドならではの近未来ユートピア的描写(?)が素晴らしいなあ〜。ニューウェイブじゃなくてニューエイジ似ってのがポイントですね。その手の音特有の絵に描いた森林浴みたいな透明感と産業ロック的な直球胸キュンが紙一重となって、巨漢ジャコモおじさんの凛とした愛溢れるハイトーンによって全て正当化(もはや浄化の域)される。CAMELの「NUDE」やヴァンデ師の「TO LOVE」にも通じるちょっとした神々しさを覚えます。ブーム終焉間近のプログレが次世代ポップスを吸い込んで物凄く所在不明の音楽性になってるのがたまらないんだ俺はという玄人向き。イヤ随一の大名盤と言いたい!!

  7月10日
本日の収穫、バナナ本店にてRITES OF SPRING「END ON END」(リマスター)、JOHN CAGE「MUSIC FOR PREPARED PIANO VOL.2」(NAXOS)、STIFF SLACKにてMEDICATIONS「YOUR FAVORITE PEOPLE ALL IN ONE PLACE」、TRAINDODGE「THE TORCH EP」(ボーナス2曲追加のリマスター!)、JOAN OF ARC/OWEN/LOVE OF EVERYTHING/MAKE BELIEVE「THE ASSOCIATION OF UTOPIAN HOLOGRAM SWALLOWERS」(7インチ2枚組の4バンドスプリット、同内容CDつき盤!)。近頃のデニーズはクオリティ高いですね、何度か行って毎回感心してます。

【本日のレビューその1:MEDICATIONS「YOUR FAVORITE PEOPLE ALL IN ONE PLACE」】


待望の1stフル!先に出ていたEPは大筋でもろFARAQUETな天才肌マスロックでありながら、ほんのり淫靡な泣きが加わってよりメロディ面の親しみやすさを意識した感じになってたのが新機軸でした。今回はその部分がより顕在化、更にEX HEXでの活動からのフィードバックもあったのか、往年のスタイルからは想像もつかないようなノーマルでストレートな曲もやってて、何だかMODEST MOUSE+SILKWORMみたいになっちゃったか!?というのがパッと聴いた印象。SOUTHERNやFLAMESHOVELから出てそうな神妙なムードもあります。もうテクニックでいたずらに人を驚かせるようなことはヤメて心に響く音楽を作ろう、とデヴィン先生が思ったのかどうか判りませんが、ところがどっこいおおかたのファンが期待してるのは複雑怪奇なギターフレーズで綴られる感動の激キメ変拍子ラッシュですから、というところで若干難しさのある変化ですな。ドラムの手数は多いけど、まったりアルペジオでコード感を作るギターとやや乖離気味な場面もあり、FARAQUETでのテクニカルさとはまた質が異なります。「ウンこれもMEDICATIONSか」と一発で言わせない時点で不発なのか、後から来るタイプなのか。少なくとも「よくあるマスロック」からは脱却しているし、スケール感もアップしてる気がしますから、早計なことは言えません。今後もまだまだ要注目。

【本日のレビューその2:JOAN OF ARC/OWEN/LOVE OF EVERYTHING/MAKE BELIEVE「THE ASSOCIATION OF UTOPIAN HOLOGRAM SWALLOWERS」】


気になる新譜レビュー・パート2ということで。今や大量の名義を濫発してファンを混乱させているJOAN OF ARC周辺組の、本丸に近い4組によるスプリットです。順番に。
 MAKE BELIEVEのボビーがやっているLOVE OF EVERYTHINGはアレンジ/音響処理こそイカレてるものの、曲自体は結構素直な和やかインディポップですね。最近のTEENBEATやKの新人だよと言われても何も疑わない。USインディ好きな日本のリスナーに正に受けそうな雰囲気です。すぐにでも似た国産バンドが現れそうだ。JOAN OF ARCは目下の最新作「JOAN OF ARC, DICK CHENEY, MARK TWAIN...」でのスタイルに近い、やけにアッパーなジャングル風(?)ビートと大量に切り貼りされたその他エレメンツ(含チェロetc.)によるミニマルな演奏をバックに男女ヴォーカルが曖昧な歌をのせるといった具合の曲。音質はかなり宅録の香りが漂います。パーソネルが記されてませんが多分実行犯は二人か三人ですね。OWENは裏切られようもないOWEN節。この人の曲はつまるところ全部一緒で、アレンジのやりようや突出したフックの有無で名曲か否かが決まる(というか全部名曲といえる出来にしている)、ということを先の日本公演で確認済みなので、これも完全に予測の範囲内。だけど良い。つつましい打ち込みドラムとひととおりのオーヴァーダブが施されたしんみり系の曲です。MAKE BELIEVEはやっぱりイカレてます!スッ転び変則ドラムと信じられないシンクロを見せる奇怪ギターとエレピ、そしてティム兄の酔いどれシンギン!やけにキャッチー!これは新しい音楽です。ヤバイなあ〜。いかにも企画EP向けのお手軽なプロダクションでまとめちゃってるのだけがちょっと不満なものの、それだけに正式なニューアルバムの方には並々ならぬ期待がかかります。この3曲だけでも既にデビューミニより先の地平にいってますから。
 ということで全7曲、1000円ちょっとと値段的にもお手頃ですし、ファンはマストの品でしょう。

  7月9日
収穫はなし。2・3日前に部屋を少し片付けた勢いで大・売りCD裁判。半日潰しての審議の末、明日持って出掛ける用のカバンに詰め込まれたのは過去最多規模の90枚余…。今日は心の声をよく聞きました。結局ロックが好きらしいです。

【本日のレビューその1:400 BLOWS「BLACK RAINBOW」】


最近頻繁に名前を見かける3人組。今年になってGSLから2ndフルが出てるようですがこれは2003年の1stです。ドラム・ギター・ヴォーカルという編成もあって、歌入りOXESまたはマスロック化したKARPといった印象。躁モードに入ってる時のMELVINSや後期FAITH NO MOREにもよく似てます。とにかく太い。独自の妄想パワーを感じるので劣化コピー的な野暮さは一切ありません。音が減衰する間や休符をヘヴィに響かせる手法は90年代前半的ながら、切り替えの速さで唖然とさせるフットワークと体力は今世紀基準のもの。PRODIGYと水前寺清子の間みたいな声質のヴォーカルがまたユニーク。この人が実際冴えてるならライヴは相当ガツンと来ることでしょう。RELAPSE系を追っかけてる人からZAZEN BOYSのファンまでオススメ。

【本日のレビューその2:MECCA NORMAL「THE FIRST LP」】


売りCD裁判中に発掘された未聴CD。長い間床に転がってるうちに聴いた気になって棚にしまわれて挙句裁判にかけられるという可哀相な仕打ちに遭わせてしまいました。いざ内容を(初めて)聴いてビックリ。完全にエレキギターとヴォーカルのデュオという体裁で、特にドラムやベースの不在を補うでもなくただ淡々とコード弾きされるギターをバックに女性シンガーがひたすら歌うという全編逆カラオケ状態。曲はBEAT HAPPENINGみたいな画数少なめのギターポップ風です。それだけなら面白くも何ともないんですが、歌ってるジェーン嬢のヴォーカルが何というか、GOD IS MY CO-PILOTのシャロン嬢扮するしずかちゃんに空中と喧嘩してる酔っ払いが乗り移ったみたいなとんでもない気持ち悪さで、その御下劣ヴァイブだけでアルバム一枚聴き通せてしまう。ダニエル・ジョンストンよりもっとコントロール外のヤバさです。THE SHAGGSファンでもこれにはうぐっとなるはず。しかも笑い一発で済まずに耳が離せない求心力を持っている。

  7月8日
収穫はなし。レビューをちゃんと書くようになってからというもの、この日記も随分と情報量が増えてきたものですが、前に一度だけ「作りました」と書いて以来特にどこからも正式なリンクを貼っていないGoogleによるサイト内検索のショートカットページを、実は私自身が愛用しております。主にレビュー内で「X月X日のこの欄でも取り上げたXX年作」とか書きたいときに。あるはずなのに引っ掛からなかったりもして結構不便なんですが…。皆様もよろしければブックマークなんぞして頂いて、例の物色日記で薦めてた気がするCDを今日中古で見かけたがあ奴何と書いていたか、と気になった時などにご活用下さい。

【本日のレビューその1:SUFFOCATION「SOULS TO DENY」】


今月はやたらと激なのばっかり続いてますが今日も。4月の来日公演での驚愕のパフォーマンスがまだ記憶に新しい、ここ数年解散状態にあったUSブルータルデスの王者SUFFOCATIONの復活アルバム。単なる「速くて低いスラッシュメタル」ではないブル・デス文化を創出したのは何を隠そうこの人達であると世間の評価も一定しております。魑魅魍魎とした単音リフと異様に入り組んだ激展開&キメの嵐で綴るハイパーテクニカルなスタイルはデビュー以来変わりがなく、予測を妨げるような変則ブレイク、スロウパートでの丁寧なヘヴィネス表現など、極端性由来のエキサイトメントを新鮮なまま持続させる押し引きの妙がやはり卓越してます。どれだけ巧い新人が出てきてもここだけは彼らにかなわない。ヴォーカルの歌い込み度もヴェテランならではですね。この手のバンドのヴォーカルって結構平気で拍子とズレたりすることもありますが、この人は演奏全体を指揮するかのようなキレでガッガッと猛りまくってて本当にカッコイイ。いやー効きます、夏こそラーメン的な発想で毎日SUFFOCATION、これしかないっす。

【本日のレビューその2:DYING FETUS「STOP AT NOTHING」】


RELAPSE続きで。クリアな高殺傷性ブラストでマニアの度肝を抜く有望若手(もはや中堅か)の2003年作。凄いテクニカルだと思ってたけどSUFFOCATIONのあとに聴くと要はテンポチェンジをいっぱいやってるだけだなというのが判ります。しかしSOILENT GREENにも通じるニュースクール肌のリフ使い(ビヨッと混じるピッキングハーモニクスなんか特に)もあって、立ち位置的にはもともと微妙に違ってますね。噛み締めて味わうというよりは爽快感をざっと浴びるといった楽しみ方が向く。今のRELAPSEサウンドとしてはこっちの方がストライクなんでしょうなあ。非メタラーへのアピール度はより高い。ドラムも凄いけど多分ギターの正確無比な高速16分刻みがこの特有の、石だらけの濁流で耳を猛烈にしごかれるような感覚を生み出してるんだと思います。ライヴでも完璧に再現されるならファンになってしまいそう。プロダクションがスッキリし過ぎてちょっと迫力に欠けていた前作「DESTROY THE OPPOSITION」も曲と演奏は冴えてましたが、今作の方がトータルでのブルータリティは上に感じます。まどろっこしいのは苦手だがBENUMBまでいくと簡素過ぎるってな御仁にオススメ。

  7月7日
▼偵察客の先行確保狙いでバーゲンちょっと前から放出を始めてるとしか思えん…本日の収穫、驚愕のサウンドベイ金山にてTHE RAVENOUS「BLOOD DELIRIUM」(ダン・リルカ、NECROPHAGIAのキルジョイ、AUTOPSYのクリス・ライファートらによるアングラB級デスメタルユニット2nd)、ABSCESS「URINE JUNKIES」「SEMINAL VAMPIRES AND MAGGOT MEN」「THIRST FOR BLOOD, HUNGER FOR FLESH」(AUTOPSYのクリス在籍)、MISERY INDEX「RETALIATE」(DYING FETUSのメンバーによるバンド)、SUFFOCATION「SOULS TO DENY」(最新作!)、DYING FETUS「STOP AT NOTHING」(2003年RELAPSE)、CRYPTOPSY「UNGENTLE EXHUMATION」(93年のデモCD化!ロードワーム在籍!!)、SODOM「TAPPING THE VEIN」(92年大名作!!)、INCANTATION「DECIMATE CHRISTENDOM」(2004年、スリップケース&ボーナストラックの限定盤)、HIRAX「BARRAGE OF NOISE」、THIN LIZZY「LIVE AND DANGEROUS」(リマスター)、400 BLOWS「BLACK RAINBOW」。あのメタルコーナーはやばいです、これでも絞ってきた方ですから。どうなっとんねんサウンドベイ。しかもちょうど店内BGMがMAGMAの「K.A」で尚更燃えた。

【本日のレビューその1:HIRAX「BARRAGE OF NOISE」】


80年代B級ベイエリアスラッシュ/クロスオーヴァーバンドの、2001年の復活作…と誰が思うでしょうか、このジャケと装丁を見て。そして何より内容を聴いてです。SACRED REICHとかHEATHENとかそのへんよりもっとマイナーな層で聴かれたハッタリ・ロッキンかつやけにキャッチーな80'Sサウンドがそのまま再生。ゼトロ(EXODUS)とボン・スコット(AC/DC)の中間みたいな胡散臭い張り上げ系ヴォーカルがまたありがちながらも見事なパフォーマンスでたまらんです。クリーントーンのアルペジオだろうがソロだろうが一切オーヴァーダブなしでLR2チャンネルで通すギター(しかもチューニングが若干ヤバイ)も貧乏くさくて潔いなあ。これはもう、一つの信念を貫き通した者だけが達し得る次元の説得力でしょう。AGENT STEELと並んで保護してあげたい化石魚。ああ再結成作だというのにメンバーが着てるTシャツがEXODUS、SLAYER、TESTAMENT、ACCUSED。生涯スラッシャーでいてもらいたい。

【本日のレビューその2:SODOM「TAPPING THE VEIN」】


スラッシュメタルブームの終わりにドイツのベテランが産み落とした伝説盤。92年というともう初期デスメタルの代表バンドもひとしきり出揃った頃。掟破りのブラストビートなるものも市民権を得て、80年代に活躍したバンド達はこぞって「重・低・遅」化(というよりPANTERAの物真似)の波に甘んじていた中、SODOMの進路はその真逆。あくまでスラッシュメタルの域を出ないBPMにとどまりながらも、長いキャリアで培った高度なコントロール性を発揮した狂気リフの応酬で体感速度をビシバシ上げていくという策に出たのがこのアルバムです。意外と野太い吐き捨てダミ声ヴォーカルもデスメタル時代に対応する破壊力を誇る。どっちかというとブラックメタル的ですね、とうとうと平坦に流れる呪詛じみた淀みが。ブラックメタルの若手新人を聴くと、まあ明らかにスタイルとしてその音楽性を選択して演奏もこなしているといった感があるものですが、この作品に関してはどうやってこの猛烈な負のテンションをアルバム1枚分維持したのか…と想像に苦しむほどのリアリティがあります。SODOMというと何かと初期作とか「AGENT ORANGE」あたりが取り上げられがちなので見過ごしてる方も結構いるかと思います(私もその一人でした)、こりゃRAZORとかを血眼になって探し回るより前に買っときましょう。

  7月6日
収穫はなし。「とくダネ!」で佐々木恭子の発言はいつもことごとく小倉氏の遮るようなコメントで流されてしまって可哀相だなあ、虐げられてんなあ、と彼女に肩持ち気味に思ってたけど、実際大したことも言ってなかったということに最近ようやく気付きました。岩上安身が不動のベストですわやっぱり。室井佑月が近頃は許せる。全然話通じてない人、あなたは真人間です。朝8時過ぎに家でテレビ見れてんじゃねえよと罵って下さいまし。

【只今のBGM:THE MONORCHID「LET THEM EAT」】


CIRCUS LUPUS他を渡り歩くカリスマシンガー、クリス・トムソンが在籍したバンド。DISCHORDとSIMPLE MACHINES(TSUNAMIのメンバーによるレーベル、IDA初期作をリリース)のハーフリリースとなっている96年作です。録音はINNER EARにてJ.ロビンス。内容の方はというとヘリウムを吸った挙句よだれダラダラになった所ジョージが泥酔した低速NOMEANSNOに加入したかのような、テンション高いんだかユルいんだかよく判らないユーモラスな貫禄系変態パンクをやってます。痛快!ポストコア文脈に属すとこなんだろうけど、豪快な破綻っぷりと直線的なノリはむしろオリジナルパンクっぽく、その感じがカルトなオマージュというでもなく自ずと滲み出ちゃってるのがまたカッコイイ。心の広いメイク・ユー・スマイル・ヴァイブはマニさん(GURU GURU)やオーネット・コールマンにも通じます。カッコイイ〜と笑えるーがいっぺんに来るとそのツカミパワーは計り知れませんね。ちなみにメンバーがかぶっているSKULL KONTROLも同様にグレイトなバンドですのでそちらもチェック。

  7月5日
収穫はなし。最近はフッとCD屋に寄りたくなる衝動を、「この前買ったあれもこれもまだ聴いてない、何も買わずに早く帰ってそれらを聴いてた方が幸せじゃないのか?」と考えて自制できるようになり気味です。偉いなあ。

▼昨日の長大なHELLOWEEN考に引いてらっしゃる非メタラーの方が大勢いると思うので今日はフォローとして、これまた唐突にビョークについてでも書きましょうか。実は「HOMOGENIC」までのキャリアをおおかた網羅するくらいの(通常手に入る)CDは集めてありまして、やることはいちいちスゲーなあと思うから買ってたんだけど、心のお気に入りになったことがない人です。共感の余地がないのだと思います、普通の人間の歌じゃなさ過ぎて。自分のどこかとつながる感覚がある音楽にやっぱり人はグッと来るというか、「サシで落とされる感」を得るものだと思っております。彼女のライブを見ることがあったら多分オーロラか火山の大噴火でも見るような心地なんではないでしょうか。同じようなこと考えたことある人いませんかね、いると思うんですけどね結構。ビョークみたいな人はいないですから。

【只今のBGM:HARMONIUM「HARMONIUM」】


カナダのケベック出身のフォークプログレグループ。74年POLYDORリリースの1stです。あまり変拍子や熱血展開に精を出し過ぎず、歌ものとして割とストレートにやるタイプのバンドで、これがイギリスだと古楽テイストが幅を利かせてややコスプレ気味な、またイタリアだとドン臭いブルーズ/サイケ誤読やら地中海特有の高粘度な叙情が加わってちょっとコアな仕上がりになるところなんですが、この人達は非常にアッサリと、少しだけ大仰なアコースティック・ソフトロックといった方がいいくらいのまとまり方をしてます。気楽に泣けて(?)いいですなあ。THE BYRDSのフリをしたTHE COCKTAILSがYESの"Starship Trooper"あたりをカヴァーしてるみたいな不思議な感覚。さりげないのに冴えてるというか。全編フランス語による訥々としたヴォーカルもまた良し。これはプログレッシャーだけのものにしておくには勿体ない!新品探してでも聴いてみて頂きたいです。広くオススメ。

  7月4日
収穫はなし。特筆すべき何事もなかった日は全く唐突に音楽ネタでも書いていこうと思います。お茶を濁すような駄洒落にお付き合いさせるのも申し訳ないですし。今日は最近何故かこれについて考える時間が多かった、HELLOWEENの「KEEPER OF THE SEVEN KEYS(邦題『守護神伝』)」を勝手に斬ってみます。

 スラッシュメタルもパワーメタルも渾然一体としていた80年代中頃、暴走するツーバスと反則級にラフなヴォーカル、そして何よりイングヴェイとは異質のクラシカルさ―イングヴェイがディミニッシュスケール、対位法、ペダルノート等の表層的特徴にあやかった「クラシックを導入したハードロック」だったのに対して彼らは「クラシックの体色をしたメタル」であった―をもってシーンに突如登場したHELLOWEENは間違いなく"新型"であったといっていいでしょう。より上手いシンガーのマイケル・喜助もといキスクが加入して発表された2枚続きのコンセプトアルバムである「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」では、演奏面での人間的な至らなさ、無骨さの排除に成功。昔気質のインタープレイないしグループ表現といったものが全くなく、IRON MAIDEN他の初期メタルのように演奏におけるパワーにもの言わすでもなく、譜面上のメロディと指示記号のみによって再現される即時性なきオーケストレーションとしてのメタル、いわば呼吸しない彫刻的メタルを身上とするバンドは、QUEENSRYCHEなど既にボチボチ存在してはいましたが、英米由来のブルーズフィーリングおよびその文脈上にあるロック的パーツからも完全に(ドイツという地理性もあり)免れてひたすら極端なスピードと叙情メロの融合によるスリルの追求に徹底した有力作品はこれが最初だったように思います。

 ちなみにこの流れに更に追い討ちをかけたのがANGRAの1st「ANGELS CRY」。今度は更に飛んでブラジルから。もはやツーバスやツインリードといったメタル的特徴すら形骸化し、「メタルで武装したちぐはぐの似非クラシック」なる新次元に踏み込み、メロスピ(メロディック・スピード・メタル)の作り方を図解してしまった作品です。これに学んだ若いメロスピ・バンド達はやっぱり物凄く彫刻的で呼吸を感じない。メタルが窮屈だと言う人が無意識に嗅ぎ取ってるのはそういう部分なんだと思いますが、逆にいえばそれが現代メタルのカタルシスに不可欠な整合感の源泉にもなってるわけです。マニア達はよりクッキリと特化する記号の嵐に大喜びというポストモダン的現象ですね。HELLOWEENから話が逸れかけてますが、つまりはヘヴィメタルの中にあったロック性の息の根を止めてメタル・コミュニティの閉鎖性をより高める(=メタラーにしか聴けない、メタルでしかないメタルを大量生産する)契機となったのがHELLOWEENというバンド、のあの2枚だったよなーと、最近改めて思ったわけです、CHROMING ROSE聴いて。勿論それだけのインパクトを実現化するクオリティがあったのは言うまでもないことです。"Eagle Fly Free"や長尺のタイトルトラック"Keeper Of The Seven Keys"に顕著なように、悠然としたメジャーキーをスピードメタルに臆面なく導入して前例なき(そして今も破られない)表現をやってのけた功績が彼らにあるという事実は風化させるまい。

 いやあ手短にスッと何か書くつもりがえらく大仰になってしまいました。無い日記ネタを必死で探して夜が遅くなるのはやめようと思っての試みだったのに…これだと続編はないかもですな。ちなみにワタクシ、HELLOWEENは果敢な公開実験作「CHAMELEON」で終了と考えております。HAREM SCAREMは「VOICE OF REASON」まで、DEF LEPPARDは「SLANG」まで。今猛烈に買いたいのはDIOの「STRANGE HIGHWAYS」です!問題作が好き。

【只今のBGM:BEHOLD...THE ARCTOPUS「NANO-NUCLEONIC CYBORG SUMMONING」】


TROUBLEMANのサブレーベル?なのか何なのか、ORTHORELMのミック・バーが関わってるというVOTHOCシリーズで出ているバンドの3曲入りEP。これはテクニカルスラッシュ以外の何者でもないでしょう…DYSRHYTHMIAより更にメタル度アップ、激度アップの凄過ぎる内容。ドラム、ギター、タッチギター(ギターとベースの音域をフォローする12弦のタッピング専用ギター)のトリオでATHEIST、WATCHTOWER、MASTODON、CYNIC、DON CABALLERO、THE DILLINGER ESCAPE PLAN、THE FLYING LUTTENBACHERSをヤケクソで洗濯機にブチ込んで回したような異常音楽をやってます。これは物凄過ぎてヤバイ。TROUBLEMANのサイトには「カルトなヘッドバンガーだけでなく誰もが楽しめるトゥルー・ヘヴィメタルバンド」と紹介されてますが確かにそのとおり。火だるまの人間を見たらそりゃ誰でもウオーやべーって思うのともはや同じ要領。ただ激烈テクニカルなだけじゃなくていちいちフレーズやアンサンブルが死ぬ程カッコイイからもう全面降参するしかないっす。最近TROUBLEMANまた面白くなってますね〜。フルアルバム早く出せ!そんで日本来て!!この名前今後要チェックです皆様。

  7月3日
収穫はなし。今日知ったびっくりニュース、ドイモイが先週あたり、名古屋のローカルFM局・ZIP-FM(馬から落馬して落ちたみたいな日本語ですが)でひっそりオンエアされてたとのこと。親戚宅を訪れた際に高校生の従兄弟に手土産でバンドのCDをあげたヴォーカル二村君が、えっこれ昨日流れてたよと教えられたそうです。どこそこの大学のサークル出身のバンドで…などと紹介されていた素性も正しく、従兄弟の聞き違いではない模様。来たね電波デビューおおお。ギターの篠田君は木村カエラに一歩近づいたと大変喜んでました。

【只今のBGM:A CANOROUS QUINTET「AS TEARS」】


メロデスがカテゴリとして認知されてドッと人気が出た頃の有力マイナーバンドのひとつ。これは4曲入りのデビューEP。サンクスリストを見てもAMON AMARATHやLOBOTOMYなど懐かしい名前が。内容はもう慟哭系の激疾走メロディックデスそのもの。展開豊富ながらスピード感は損なわず、相当扇情力の高いメロディを常にまといながらドオーッと押し切る様は圧巻。初期DARK TRANQUILLITYから歯痒さと取り除いたような、なかなか理想的なスタイルです。時々ギターフレーズがEDGE OF SANITYっぽいなと思ったら録音がダン・スウォノ。フレーズじゃなくてトーンが同じだったんですね。裏返り気味で必死にキャアキャア絶叫するミカエル・スタンネ似のヴォーカルもテンション高いなあ。それほどユニークなところはないですが、どうも途中で盛り上がりの腰を折るような展開をするバンドが多かった中でこの人達は潔くスパスパやってくれるので爽快。マニアならずとも見かけたら買ってみるといいんじゃないでしょうか。

  7月2日
収穫はなし。今日はおおよそこの場らしくない話題を。皆さんもそろそろどうしようかと気になっている、そうあの2005年万国博覧会・愛地球博へ行ってきたのですよ。完全時系列で説明致します。

▼一生のうちにまた日本でやることもないだろうし、せっかく近くでやってるし…と一念発起して赴いたのではありません。姉夫婦がウチ一家を招いてくれたんですな。ということで5人での移動。朝9時頃駐車場着、駐車料金は一般車が3000円/日。そこからシャトルバスで会場に運ばれます。バスは本数も多くて変に待たされることはないのですが、補助席まで出して満員になるまで詰められます。そこらへんを不快に思う向きは藤ヶ丘からのリニアモーターカーを利用すべきでしょう。会場到着、ゲートにて荷物検査&金属探知機。に至るまでにまず、標準的な中学校の体育館にすし詰めで7〜8杯分くらいの人間が列(というより絨毯、芝生の域)をなす。しかし断続的ながら数百人単位でドッドッと通されているようで、覚悟したほどは待たずに済みます。荷物検査は、何千人もの列をバイト君が日々さばいてるわけですから、当然かなり適当です。神妙な面持ちで中を覗き込まれて「ふんふんふん、ハイいいですよ」みたいに言われるのだがカバンの開いてないポケットに持ち込みのペットボトルや火炎瓶やブートレッグ収録グッズがあっても絶対バレない。

▼いざ入場、何はともあれ場内をぐるっと通っている環状高架「グローバルループ」でだいたいの移動をこなします。ここで人によって基本コマンドを「何十分何時間並んでも目当ての展示を見る」とするか「とにかくアドリブで移動しまくって、列ができてないパビリオンに手当たり次第入る」とするかに分かれることでしょう。結果としては、前者の方が賢いのではと私は思います。私自身は終日後者で、企業パビリオンや押井守の何やらは当然スルー、目に付いた即入館可能なところをガンガン渡り歩き続けました。

 列が出来るか出来ないかの違いは、ひとえに体験イベントないしVTR上映のあるなし。列が出来ない所は大抵展示物がちらほら、説明つきの写真パネルが何枚も、映像が垂れ流される30数インチくらいのディスプレイがいくつか、出口付近でその国の名産品販売および料理屋、というフォーマットで相場は決まってます。限られた時間にドンドン行くぞというつもりでいるからそんなもの殆ど目にとまらず、よほどデカイとか音が出るとかそういう類の物くらいしか記憶にありません。というか普通にプレゼンに工夫が感じられない所が多い。自国を紹介するって時にあんな大学祭みたいなクオリティでいいのか?どこだったか、展示物の説明書きがワープロで出力したみたいなチープな紙で、しかもそれがセロテープで直に貼り付けてあるだけなんていうお粗末な所もありました。自然の写真を掲げられても別にその国の気風までは漂ってこないし、歴史的な発掘物の陳列にしてもレプリカがポンと置いてあるだけじゃ高校の授業の資料集の方がよっぽど面白い。テレビもネットもガンガンあって、「いわゆる異文化」に対する身構えが出来てしまっているから、ただ見せられたんじゃ珍しさも感慨もなくなってんだな〜と。こういうやり方での万博そのものへの疑問は、来る前からあったけど、来て尚更増大。展示の中身よりむしろ、並ぶ列を退屈させないようにちょっとしたボケをかましながらもてなす各国人整理員たちの自然な異国ノリの方が「ああ万国」と思わされました。知るべきは外国より外国人のことか。

▼積極的に斬新な参加型展示を試みようとする国も多々あれど、「音と光の云々…」みたいなのもやっぱりだいたい想像の範囲内。要はちょっと趣を変えただけの映画館であったり、手狭でアートな遊園地であったりするのみ。その内容が意義深いか否かが一番の問題であるはずですわな。それもまあ良いものからクソ茶番まで色々。並ぶ系を避けてたためこの手のところはあまり見てないんですが、とりあえず我らがUSAは最低でした。さておき、そういう凝ったことをやるのは大抵が先進国で、食べ物の産地としてくらいしか名前を知らないようなアフリカの国なんかはもうこぞってただの大物産展。エボニーの象とかアクセサリーとかそんなのばっか。欧米(日本もか)の遠隔農園と化され、歴史の遺物と自然以外のものは搾取されてきたんだから、万博で見せるものといったらそれくらいしかなくなってんだなと、世知辛き南北問題がここでも垣間見れる。

▼会場内では喧嘩する親子(ダダこねる子供にキレる親)をいっぱい見ました。私も途中から、あとの4人の鈍重なフットワークにしびれを切らし、食事以外は単独行動に出ることにしてしまいました。何しろ行き先の選択肢が多過ぎる上、歩いての移動はそれなりに疲れて気も滅入るので、大所帯で行っていちいち「次、どうする?」みたいなこと言いながら何待ちかわからん時間を強いられるような状況になるとかなりツライと思います。あるいは会話の地平のズレを感じる恋人とかと行くと多分険悪になります。その場をどう効率よく堪能するかという方向性を共有できてる人と行くのは必須。老人の5〜6人グループとかいくらでも見かけるけどようやるなと思います本当に。

▼だいたい私が見てきたのはこれくらいのことです。これ以上の驚きないし感銘はやっぱり、未知の技術であっと言わせる企業パビリオンとかそういう所にあるんでしょう。そうなるとやっぱり事前に内容に関して情報収集をして、スケジュールをだいたい決めておかねばならんことになりますな。「わざわざ人混みに分け入るような真似はしたくないけど記念のつもりで行っとくか」程度に思ってる人は、自転車で牧野ヶ池緑地に出掛けて、浮いたお金でケヴィン・エアーズまとめ買いでもした方が多分充実すると思います。想像通りなりにもうちょっと面白いかと思ったけどダメだったな。

▼てことでライヴリポートの如く写真をいくつか。

↑すいてるパビリオンの典型

↑お土産屋だらけのアフリカ

↑待つとこだとこれくらいはザラ

↑回廊は全て木造…

↑スペイン館 カラフルなハニカムが目を引きました

↑スイス館 山!って

↑アイルランド館にはケルト十字 おお「HEADLESS CROSS」〜

↑この巨大もけもけは何ですかー チェコ館です

↑夕方ごろのゲート付近はまた人の海

↑疲れた人達、4600円の昼寝

↑トルコアイスの「ドンドルマン」あやしい!額に必勝ハチマキで過剰パフォーマンス

↑それがしかも複数店舗!!

って感じでした。お疲れ様でした…。

【只今のBGM:CLIKATAT IKATOWI「ORCHESTRATED AND CONDUCTED」】


THINGYの超絶ドラマーが在籍していたバンドだそうです。リリースはサンディエゴの名門GRAVITY。不協ギターでごった返る陰湿カオティック系で、何に似てるとも言い難い不思議な塩梅。軽〜いMELVINSとも根暗なDRIVE LIKE JEHUともゴキゲンなJUNE OF 44ともつかぬユニークさです(ヴォーカルはちょっとジェフ・ミュラーっぽい)。狂ってるんだか地味なんだか。THINGYほど展開が激しくないんで少しわかりづらいですが、この人やっぱり運動神経良さげな熱いドラムを叩きますね。ササクレ屈折ギターとの絡みもまたナイス。ああやっぱり聴き進むと、何だかんだでサンディエゴサウンドだなあという気がしてきました。何をエネルギー源にこの変態テンションを維持してるのか判らん感じが。同じくサンディエゴ出身のチャーリーさん率いる名古屋のバンド・URTHONAを思い出したりもしました。数ヶ月棚に寝かせとくと良くなってきそうなポテンシャルを感じます。少なくとも内容のない盤などではない。

  7月1日
本日の収穫ハイパーイナフレコードから到着(迅速!)のYOWIE「CRYPTOOOLOGY」、BEHOLD...THE ARCTOPUS「NANO-NUCLEONIC CYBORG SUMMONING」、THE FLYING LUTTENBACHERS「THE VOID」、CLIKATAT IKATOWI「RIVER OF SOULS」「ORCHESTRATED AND CONDUCTED」「AUGUST 29 + 30 1995」(THINGYのドラマー在籍!)、THE MONORCHID「LET THEM EAT...」、LACK OF INTEREST「LACK OF INTEREST」。

【只今のBGM:YOWIE「CRYPTOOOLOGY」】


HELLAのバックで来日していた元THE FLYING LUTTENBACHERSのジョナサン師匠(人生のベスト・ベーシストです)が終演後ちょっと喋ってくれた時に「SKIN GRAFTの新しいバンドでYOWIEってのは知ってる?聴いてみるといいよ」と勧められた盤。ギター二人とドラムという編成のベースレスインストトリオです。ウム、新鮮味はないがHELLA、RUINS、MELT BANANA、ヘンリー・カイザー、GOD IS MY CO-PILOTあたりを彷彿とさせる激テク変拍子ローファイスカムジャンクの伝統芸の秀逸なる強化版。昔のアート・リンゼイみたいなデチューンド・ギターできっちり左右二人同じフレーズを弾いてたり、全編に渡る壮絶崩壊展開の嵐が全部決められたスコアどおりだったりと、世も末なこのノイズ塊をあくまで音楽として真面目に演奏する体力というか根性には頭が下がります。突飛な音楽にがっつきたい向きよりはこの手のスカムミュージックを心で感じる御仁にオススメしたい。妄想ワールド炸裂なアートワークも何だか良し。

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