SCSIDNIKUFESIN

21 Sep, 2015

▼数日前にブックオフ熱田にて購入したGARY ADKINS「INNER CITY BLUES」。

匂い立つ80s流儀なエレピでシケシケ叙情モード全開、R&B的なアクが強すぎないヴォーカリゼーションで特に高音の澄み方がAOR耳にも快適。このデビュー作がちょっとヒットしてからは地味に過ごしたものの、日本のCM(マンダム「ギャツビー」)でTHE STYLISTICSの"愛がすべて"を歌ったところ一部で話題になり、変に日本で仕事がある人になったようです。

80年代AOR~フュージョン/スムースジャズに傾倒して以降、数は少ないですがたまーにこういうシャバいR&Bは安く買ったりしています。メインボーカルを管楽器に置き換えたら、音楽的にはスムースジャズと完全に同一なものもあり。フュージョン初期においてもソウル/ファンクの影響は絶大だし、長らく苦手意識があったブラックミュージックもそろそろある程度体系立てて把握したい年頃になってきました。80年代全般~90年代初頭はこんな感じのベトベト湿ったポップス寄りなやつが多かったんでしょうか。

もともとは「メロハー耳でいけばここにも同種の赤面感を嗅ぎ取れる」という考え方で、ほとんど歪んだギターがフィーチャーされていないような畑違いのポップスも聴けると気付いたわけですが、その赤面感はまったくもってメロハー(HM/HR界)固有のものではなく、R&B、ソウル、カントリー/フォーク、SSW、フュージョン…とあらゆる米英大衆音楽がどうにも強烈な引力で「AOR的洗練」の画一的なスタイルに収斂されていったのが80年代だったんだなと、実態調査(=安レコ買い)を経て今更ながら実感を新たにしている次第です。ほんとにカントリーもAORソウルもAORプログレもAOR。各界のそういうのに惹かれてブックオフ店頭でそれっぽい盤を手にとって、試聴がてらALLMUSICで評判を見てみると、「全くらしくない、バックカタログの中でもマニア以外押さえる必要のない典型的なメインストリームポップススタイルのアルバム。某という収録曲だけシングルヒットを飛ばした」みたいなことが書いてあって全然評価されていなかったりする。ジャニス・イアンジェシ・コリン・ヤングみたいにちゃんと元の器のよさと前向きな化学反応を起こしている例もありながら。

これだけ猫も杓子もデイヴィッド・フォスターな時代だったから、「オルタナティヴ」は音楽性自体の形容じゃなくそういう名前で呼ばれたということも(むろん意味と経緯は知ってましたがなお)合点がいっているところです。そのへんの潮目はしつこく興味深い。