SCSIDNIKUFESIN

8 Feb, 2012

▼最近の収穫、サウンドベイ上前津にてJOURNEY「GREATEST HITS」("Only The Young"目当て)、GARY MOORE「BALLADS & BLUES 1982-1994」(15年越しに外盤買い替え)。以下レビューにつづく。
GARY MOORE「BALLDS & BLUES 1982-1994」

本日のレビュー:GARY MOORE「BALLDS & BLUES 1982-1994」

ただの思い出話を書き始めたら長くなったので折り畳みました。(この行をクリックすると展開します)
雑誌やラジオでそのときどきに気になった音源を場当たり的に買っていた中学時代(無論ペースは2~3ヶ月に1枚とか)。はじめは暗号の書のようだったBURRN!をそれなりに読めるようになってくると、自分の手元には「いわゆる名盤」がいかに欠けているかということに気付くように。何々を知らなきゃ語れない的な責任感よりも、ヘヴィメタルは明らかに好きな音楽だと思ったから、その中でも名盤・傑作とされるものがあるのなら当然聴いてみたいという一心により「定番ものを計画的に聴いていくための購入リスト」をまじめに作ったことがありました。もちろん.docでも.txtでもなく紙とペンで。
活字から音源の内容を想像しながらそのリストを吟味・更新するのが楽しく、バージョン幾つまで作ったかわかりません。良い悪いは別として、昔はこうやって未知の音源に出会うまでのプロセスにもけっこうな労力を注ぎ、楽しみを見出していたものだなあと思います。(そうじゃなくなったからこそきょうびの若い世代は、我々の想像を超えた創作性をもつことがあるとも考えます)
小遣いは教育上の信条によりさほど多くなく、お年玉はいくら貰っても自由に使えるのは10,000円まで(あとは強制的に貯金)という環境にあったため、リストはもっぱらメンテ専用で、なかなか「済」のしるしを打てることはありませんでした。
しかしそこで事件が。高校入試に成功し、第一志望のけっこういい学校にトンと受かり、「大事に使え」と行使権フリーな30,000円が到来。ウワーッとなって、当然すべてCDに化けました。ハズレもあったし、未だに大事な盤にも出会いました。「PERSISTENCE OF TIME」しか持ってなかったANTHRAXもこのときに残り全部を買った記憶があります。
…で、長かったですが、その中の1枚が今日ご紹介するこの盤というわけでした。よって聴けば自動的に高校1年を思い出す(その割に輸入盤に買い換えたりしている)。元祖マシンガンピッキング、THIN LIZZYでの大出世を経てヘヴィメタル黎明の時期に昔気質のギターヒーローとして活躍したゲイリー・ムーアのベスト盤。それもタイトルのとおりバラードとブルーズだけを選り抜いたものです。
ハードロックモード時のこの人は、極初期MSGのごとく作風自体に引っ掛かりはあまりなく、90年代になってブルーズメンになりきってしまった後はなんとなくメタルファンからシラーッとした目で見られ、ソロキャリアの作品は結局大してまともに追っておりません。しかしねちっこく多汗症気味のギターと、どこかもしゃもしゃした感じの太くないヴォーカルは、バラードで最大瞬間風速をガツーンと上げる特性をもっており、そこに無駄なくフォーカスしてくれたこのアルバムは、ベスト盤でありながら最高傑作という呼び声も無くはない品。
フュージョンの素養もあるだけあって(元COLOSSEUM II)、AOR風の曲は大人のテンションコードやあぶない転調を駆使したシブくもフックのある出来に。そして何より、湿った調性感のなかで繰り広げられるリードギターの暑苦しすぎる泣きよ。図太いトーンも含めて最高。わざわざソロだけにしか登場しないコード進行を設けることも多く、それに巧妙に添いながらしっかり歌うメロディ運びには、ただ上手いだけではない大局的な音楽センスも感じられます。
更にこのアルバムのいいところは、3曲の新曲を収録していてそのどれもが過去の名曲に負けてない素晴らしい出来である点。"パリの散歩道"ばりに強烈なフックの"One Day"、死にそうなSTINGみたいな枯れ枯れチューン"With Love"、一世一代の名演を収めたインスト"Blues For Narada"とどれも最高。既発曲をすべてオリジナルアルバムで持っていたとしても、これがあるために見過ごしは厳禁です。
去年、まだ若くして亡くなってしまったのは残念でした。THIN LIZZYもいいがたまにはソロワークも聴いて、偲ぶとしましょう。