SCSIDNIKUFESIN

9 Mar, 2011

▼元GENESISのフィル・コリンズ(60)が音楽界からの引退を表明したそうです。理由は父親業に専念するため。何だかな~、と思うものの、40年も現役として活動していたことにむしろ驚き賞賛すべきかも知れんですね。GENESISおよびフィル・コリンズはまだ私が小学生だったころ、TM NETWORKの木根尚登がゲスト出演していたのをきっかけに聴き始めたAMラジオのリクエスト番組で、"No Son Of Mine"(「WE CAN'T DANCE」収録)や"Another Day In Paradise"がよく流れていて好きになったという因縁深い存在だったりします。あとの4人とアンソニー・フィリップス、幻の3代目シンガーのレイ・ウィルソンはどうしているかなー。
GENESIS「WE CAN'T DANCE」

本日のレビュー:GENESIS「WE CAN'T DANCE」

日記本文からの流れでGENESISです。プログレ時代の名盤の数々(「DUKE」まで)は各々コンプリートしていただくとして、今やわざわざ誰も勧めないであろうこの91年作を。
簡単にGENESISの歴史をまとめておきますと、極初期は牧歌的なフォークスタイルで、すぐに大作志向プログレに転じ、英国プログレ5大バンドのひとつに数えられる(「四天王」の場合は除外される)。品があってシンフォニックで根がポップな作曲およびアンサンブルは、YESの系譜に収まるようでいて似て非なるもの。暴走キャラのピーター・ゲイブリエル(Vo.)の脱退後はドラマーであったフィル・コリンズがヴォーカルを兼任。しばらくはプログレっぽい作風を維持したものの、ギタリストのスティーヴ・ハケットも脱退するといよいよコンパクトな大衆ポップスへ本格転向。とほぼ同時にフィル・コリンズはソロ活動も並行して始めて成功を収める。GENESIS本体では今「とくダネ!」のテーマ曲にもなっている"Invisible Touch"(86年)でビッグヒットを記録し、その次がこのアルバムです。
ポップ化以降は基本的に、明るめで肩パット盛りまくりテイストなアレンジが幅を利かせていたのですが、時代も暗くなった91年にリリースされたこのアルバムでは、どことなく重苦しさや内省的な雰囲気を漂わす曲が増えています。超シリアスな冒頭曲"No Son Of Mine"然り、FISH脱退後のMARILLIONの空気に通じなくもない場面も。と同時に、もっぱらバラードがウケるフィル・コリンズのソロ活動からのフィードバックも当然あり、そういう曲は本当にただの耳あたりがいいAOR状態。アルバム総体としては二世帯住宅的な様相です。
後者のほうは特に深く説明するべき点はないのですが、前者のほうが、決してプログレ時代を彷彿とさせるとまでは言えないまでも「80年代のチャラチャラ路線とはちょっと違う」と特筆しておきたいくらいの濃さはあります。おそらくトニー・バンクスによるものと思われる、短い尺のあいだでも豊かなストーリー性を感じさせるコード展開がとにかく効いている。よくあるソウル/ファンクの流れのおしゃれコードとはまったく異質なので、目立たないけど実はけっこう新鮮。個人的にGENESISの魅力はここに尽きます。10分を超すラストの曲(激展開はなくただただ悠長なだけでこの長さ)では、"Cinema Show"みたいな長いキーボードソロもひさびさに聴けます。GENESIS免疫がない人には難しいかも知れないけど、好きなアルバム。