SCSIDNIKUFESIN

18 Feb, 2011

▼最近考えていることは、デスメタルのドヨドヨと不穏に迫ってくる感じを、切り貼りのクロスオーヴァーじゃなく、薄めて溶かすような感じで、かつ愛と敬意をもって、もっと自由化できないかなということです。難しそうですね。
DEATH「SYMBOLIC」

本日のレビュー:DEATH「SYMBOLIC」

懐かしの一枚をおもむろに。メタルシチズンがデスメタル界の異変に気付き始めた93年、ジーン・ホグラン(ex.DARK ANGEL)+スティーヴ・ディジョルジオ(SADUS)+アンディ・ラロック(ex.KING DIAMOND)という最強の布陣でリリースしたテクニカル&メロディック・デスの金字塔「INDIVIDUAL THOUGHT PATTERNS」で一躍トップバンドになったDEATHが、メロデス7大バンド(EDGE OF SANITY、AMORPHIS、SENTENCED、AT THE GATES、DISSECTION、IN FLAMES、DARK TRANQUILLITY、だと思っています)もひとしきり出揃って温まったシーンに再度ぶつけてきたのがこの6thでした。
余談ですが当時は、CARCASSがCATHEDRALがPARADISE LOSTがみんなどこまでいっちゃうのと目が離せなかった、エクストリームメタルのビッグバンみたいな数年間でしたねー。そこから先は、目につくところではせいぜい順列組み合わせか高圧縮化くらいしか行われていない気がします。最近のデスメタルをほとんど聴く気にならない最大の理由。
本題に戻ってこのアルバム。アンディ・ラロックの代わりに入ったリードギタリストは現在はフロリダの大学でジャズを教えている人だそうで、言われてみれば確かに、物凄く流麗かつわずか~にスウィング気味な軽妙さでスイスイとスケールアウトしてくれます。凄いなこの人、読み方わからんけど(つづりはBOBBY KOELBLE)。ベースのケリー・コンロンはMONSTROSITYやVITAL REMAINSなんかにも絡むことになる生粋のデスメタラー。巨漢グラサン激手数マシンのジーン・ホグラン(Ds.)は続投、そして孤高の英雄チャック・シュルディナー(R.I.P.)はといえば、より余裕のにじみ出た作曲をするようになってまさにミュージシャンとしてのピークにあります。BPMとかを見れば前作ほどの異常な勢いはないまでも、鉄壁の完成度はキレキレという言葉が相応しい。デスメタルの下敷きになっているアグレッションの芯だけ残して、ほとんど最近のNEVERMOREみたいなことをやっています。METALLICAのブラックアルバムやPANTERAの登場によってメタルサウンドのポップソング化が実現したその道筋を、エクストリームメタルの世界まで延長・開放したバンドのひとつがこの人達だったといえましょう。
サウンドプロダクションの面でも、同じMORRISOUNDでの録音ながら今回からエンジニアがジム・モリスになり、クリア&ソリッドで量感もある仕上がりになっています。最近の、すべてが変に「マキシマイズ」された化調っぽい音とも違って安心感がありますね。展開は目まぐるしいわ、調性は一定してないわで、フック云々名曲云々という見方をすれば正直そこまで親切な内容ではないのですが、円熟とイノヴェイションの健康的な同居という1点だけでも充分素晴らしい盤でした。
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