物色日記−2006年1月

※頻出語句解説はこちら
  1月30−31日
30日の収穫、STIFF SLACKにてLOSTAGE「PLAY WITH ISOLATION」、ブックオフ栄生店にてPAT METHENY「PAT METHENY GROUP」、ORNETTE COLEMAN「THE EMPTY FOXHOLE」、MONSTROSITY「MILLENIUM」。結構穴場でした。

【只今のBGM:VIJAY IYER & MIKE LADD「IN WHAT LANGUAGE?」】


インド系アヴァンピアニストのヴィジェイ・アイヤーとヒップホップ仕事人マイク・ラッドが共演した2003年作。リリースしてるPI RECORDINGS、ロゴマークがカッコイイですね。この手の異種格闘ものにはTHIRSTY EARのBLUE SERIESにマシュー・シップ+ANTIPOP CONSORTIUMてのがありましたが、ヴィジョンの確かさでは断然こちらに軍配を上げたい。MCだけ剥離してしまうことなくアンサンブル全体がヒップホップ/エレクトロニカに歩み寄った作風で、打ち込みで事足りることを激ウマ・マンパワーでやっちゃいましたよ〜というだけではない複雑な広がりを見せます。エゴを出さず対象化されきったパーツ役に徹する生演奏が逆にストイックな難題克服的快感につながり、ビートの質も「うむ、10年前のジャングルだが…」みたいな微妙なものではなくきっちり最新型。フリージャズ風のエッヂを下敷きにプログレ的変拍子やポリリズムまでガンガン出て、イルリメとバーント・フリードマンとHENRY COWの三つ巴セッションでも聴いてるような異次元の感覚。あるいはTHE ETERNALS+CHROMA KEYか。集まった顔ぶれから発生し得る可能性すべてに妥協せず新しいアンサンブルを突き詰めていったかのような作り込みようはアーティスティックを超えてアカデミックですらあります。何とも勇敢な芸術であることよ。

  1月27−29日
27日の収穫はIMPORT-CD SPECIALISTSに注文してあったPESTILENCE「SPHERES」、28日はまたPOSEIDONさんから送って頂いた(いつも有り難うございます…)KAMPEC DOLORES「LEVITATION +FIRST ALBUM」、DAVID CROSS「CLOSER THAN SKIN」、本日29日の収穫は友人M田君から買い取る約束になっていたDAVE DOUGLAS「THE INFINITE」「WITNESS」「FREAK IN」、CHRIS SPEED「DEVIANTICS」、YEAH NO「SWELL HENRY」、JIM BLACK「SPRAY」「HABYOR」、VIJAY IYER「REIMAGINING」、VIJAY IYER & MIKE LADD「IN WHAT LANGUAGE?」、FIELDWORK「YOUR LIFE FLASHES」、TIM BERNE「THE SUBLIME AND」、CHRISTIAN VANDER「JOUR APRES JOUR」。そのM田君邸にあったんですが、子供用ドラムセット、アツイです。サイズは小さいしネジ類は簡単なものだけどちゃんとドラムの音がして、つつましいインディポップみたいなのを宅録したい人にはもう全然使えます。そんで4万くらいで買える。私が郊外暮らしの金持ちだったら明日買う。そして子供の成長ってのはいいもんですね〜。

【本日のレビューその1:DAVID CROSS「CLOSER THAN SKIN」】


POSEIDONシリーズその15。言わずと知れた元KING CRIMSONのヴァイオリニスト、デイヴィッド・クロスが何と昨年リリースしたソロプロジェクト作です。黒ずくめ(ベースボールキャップ着用)にヘッドフォンまでつけて、エレクトリックヴァイオリンを構えながら豆鉄砲ハト顔でカメラ目線のデイヴィッド氏…強烈なジャケであります。中身がまた意外!メタルクリムゾン路線が高じてなのか、最近のFATES WARNINGと解散直前のFAITH NO MOREとCYNICの中間みたいなプログレッシヴ・ダーク・メタルまっしぐら。不穏ながらも抑え気味のトーンでムーディに迫るパートの説得力などはやはりプログレのオリジナル世代ならでは、というか「RED」や「LARK'S TONGUE IN ASPIC」のワンシーンを思わせます。こりゃ想像を超えました。フリップ翁サイドの解釈とはまた違った第3期クリムゾンのロマンティシズムが、何とも若々しい流儀のもとにギュッと凝縮された激サプライズ盤!ビル・ブラッフォードとジョン・ウェットンと翁の三頭政治のように思われたあのラインナップも、ちゃんとこの人までイメージを共有していたことが窺い知れて興味深いことしきり。

【本日のレビューその2:PESTILENCE「SPHERES」】


前回のNEW YORK GONGに引き続き「その1と似てる」シリーズで。オランダを代表するプログレッシヴデスメタルバンドのラストアルバムです。これより前の作品では、メロディックな試みをやってるパートと普通にスラッシーなパートが剥離していたり、結局基本はオーソドックスな2ビートだったりしたのですが、ここではCYNICやATHEISTといった同世代の同類バンドと共鳴していきなり複雑化が加速。「LARK'S TONGUE IN ASPIC」期クリムゾンがくそヘヴィになったかのような異様にピリピリ来るリフ、SIEGES EVEN〜WATCHTOWERに準ずる乱数的変拍子の嵐、UK(英プログレの)ばりの緊迫感漂うギターシンセが渾然一体に入り混じり、93年当時にして死ぬ程革新的なインテリジェント・メタルを大成してます。初期MESHUGGAH(「NONE」EPくらいまで)にも全然匹敵する壮絶さでこりゃスゴイなあ。ジャケのとおり異形の宇宙が見えます。とにかく匂い立つ世界観の彫りの深いこと。マスメタル探求者が必携なのは勿論、DON CABALLEROやOXESみたいなメタリック系マスロックがイケるという人はもう即刻入手してブッ倒れて頂くしかないですな。再評価著しいATHEISTのド名盤3rd「ELEMENTS」とセットでどうぞ。

  1月26日
本日の収穫、カイマンに注文してあったCHEER-ACCIDENT「GUMBALLHEAD THE CAT」。日が長くなりましたもので、もうそろそろ鼻タレの時季っすか…今のうちに国家予算で全国の杉林にクル、クル、クレラップでもしてくれませんかの。

【本日のレビューその1:CHEER-ACCIDENT「GUMBALLHEAD THE CAT」】


以前もCOLOSSAMITEのEPにフリスビーをくっつけてきたことがあったSKIN GRAFT、このCDはやけに薄っぺらい包みで来たな…と思ったら、アナログ7インチサイズのコミックにCDが挟まってるだけというこれまたエキセントリックな代物でした。この欄でも再三取り上げているCHEER-ACCIDENTの2003年作であるこれは、多分SKIN GRAFTのロゴイラストを描いてる人による10数ページに渡る荒んだ漫画のサウンドトラック作品とのこと。SEA TIGERかGURU GURUのリハーサルかのようなカジュアル&ファンキーなインストセッション(勿論崩壊あり)や、ノイズのポストプロダクションで構築されるTHIS HEATもしくはMATERIAL+CALIFONE+ほんのりコバイアといった趣のオチなしビーツなど、80年代初頭のNYアンダーグラウンド現象をプログレ的視座ないし文脈で汲み上げてポストロック的空間感覚で気楽にまとめたような不思議な内容になっています。ファンとしては彼らからこういう音が出てくるのはかなり納得。いつもの激展開変拍子もシム・ジョーンズの美声もほとんど堪能できませんが、肩肘張らずしてこの何気ないキレの鋭さはやっぱり怖い。尊敬。後半にいくとMEAT PUPPETS+CAMELみたいなムチャクチャな曲が出てきてムチャクチャかっこいー。このバンドに触れる最初の一枚にお勧めはしないものの、圧倒的な懐の広さが確認できるという意味でひたすら貴重。果たしてプログレ聴いてない人にこのツボが通じるんかいな。

【本日のレビューその2:NEW YORK GONG「ABOUT TIME」】


上のを聴いてて何となく存在を思い出したので聴き始めたらもう半分くらい同じような内容でびっくり。GONGといえばカンタベリーとフランスを股にかけた70年代プログレ〜ジャズロックのサイケトランス派の旗手…というか、独特過ぎる世界観ゆえ何とも括りようのないバンド。その中心人物デイヴィッド・アレンがニューヨークで人を集めてNEW YORK GONG名義で作ってしまったのが79年のこのアルバムです。ビル・ラズウェルにフレッド・メイハーにと、その後MASSACREやらMATERIALといった重要バンドへ発展する人脈が一堂に会したモニュメンタルな作品であります。さて内容は、アレンのものでしかない宇宙的ヘロヘロサイケワールドが、旧来ロック的なイデオロギーをバッサリ排するパンク〜ポストパンクの硬直しきったビートを侵食してしまった、まさしくニューヨーク版GONGとしか言いようのないもの。スポークンワード気味だったヴォーカルスタイルにせよ、メッセージ性不明のヴァイブレーションとして存在していたもともとの音楽性にせよ、この試みに面白いほどマッチしてます。素っ頓狂なノイズも場違いなクリシェも彼らの言語の一部として淡々とビートを成す。いつどこで何をやっても完全オリジナルなトランス宇宙漫談にしてしまうアレンが凄いのか、ポストモダン時代の新生物を産み落とさんと革新的なイメージで貢献したサポート陣が凄いのか。ともあれエネルギーと可能性に満ちた混沌の種。参加者達は皆英雄ですわ。

  1月25日
収穫はなし。CDプレスの代金を振り込んで一時的に(と信じたい)びっくりするほど財政難に陥っているのでなかなか「本日の収穫」の文字が躍らぬ日々が続くかと思います。思えば数年前とは大違いです…午後の授業を自主休講にして栄から金山まで踏破する道すがらバナナ栄店→同本店→同パルコ店→大須の名前知らない店(ファミコンソフトとか売ってる所)→バナナ大須店(第1アメ横ビル内時代、サークルの先輩のお兄さんが店長でした)→バレンタインレコードマート(確かもうないはず)→円盤屋洋楽フロアおよび中古フロア(これも懐かしい…掘り出し物が多かった)→グレヒ大須→サウンドベイ上前津→同金山と廻って一日に20枚くらい買い込むツアーを夏も冬も一人でやりまくっていた、特にバナナ本店には3〜4日に1日のペースで出没してUSインディロックのCDを毎回ドッサリ5枚つかんでは「試聴お願いします」「(ビニールカバーはと訊かれて)なしでいいです」を繰り返していた大学後半のあの頃は、得たものも果てしないがやっぱり狂ったようでありました。量があっても明らかに手に負えなくなってる今ではCD買うときのテンションが以前と随分変わってしまった。しかし外に出て店に入らないと意外な新規開拓もないし、「もう新品のピンポイント買いでいいや」となってしまうのも寂しいところ。だから何で、去年の年末ジャンボは当たりもカスリもしないんだよ。

【只今のBGM:久保田早紀「夢がたり」】


時々こういう懐かし歌謡ものを興味本位で買います。「CD選書」のフォーマットは好きですし。さてこの人は"異邦人"で有名な女性SSW、79年リリースの一昨目。アタマ2曲は半ばSEのようなもので、「OPERATION:MINDCRIME」式の思わせ振りな幕開け。満を持して飛び出すトラック番号3曲目の"異邦人"は、ドラムセットと弦楽オケを共存させる(演歌で培われた?)アンサンブル構築手法と、妄想的なクドさをもつエスニックな味付けで盛り立てられつつ、歌メロの哀愁は正に日本歌謡のそれ。今聴くととても突飛にも思える。全体的に西南欧テイストを意識したアレンジが多いと同時に、いかにもプログレ通過後を思わせるシンセ使い、フュージョンソウルがくだけたようなアメリカン・メインストリーム基準のリズム感覚もかなり張り出していて、後期KAYAK(もしくはゴダイゴ)とGYPSY KINGSとキャロル・キングが一堂に会したかの闇鍋状態。しかし主役自身がちゃんとアーティストであるせいか、テクノロジーで質を均一化した偶像/虚像を安易に大量生産できるようになったその後の国内歌謡とは空気がまだ決定的に違いまして、一流の人を集めて凄く丁寧に、音楽を(市場への戦略意識などは恐らくあったにせよ、現在より格段に)芸術として敬意を払ってちゃんと高みを目指したような作り込み方に自然とこちらの背筋も伸びる。編曲には山口百恵や太田裕美などを手掛けた萩田光雄氏が全曲で関わっております。アイドルをかわいく見せるための歌謡曲よりしっかり骨のある出来で、後追いでわざわざ発掘されるにも堪える完成度かと。

  1月24日
収穫はなし。この日記およびレビューの更新には結構時間がかかるものでして、毎日こんなことで就寝時間遅らせて何やってんだろ…と思いもしましたが、ここのところ多忙でなかなかじっくり更新作業をやれずにいる生活を送っておりましたところ、それ(作業できないこと)が意外とストレスになっているようでした。何かやりながらでもCDを途中で飛ばさずに丸々一枚しっかと聴き込むというのは精神的にリッチな行いであることですねやはり。

【本日のレビューその1:GORGUTS「OBSCURA」】


今月14日のこの欄の続きです。カナダの屈折デスメタラーの98年3rd。2ndが93年ですから随分間が空いてますが、その間の時流の移ろいをきっちり汲みつつくそユニークに大化け!まず顕著なのはPANTERAの3枚目「FAR BEYOND DRIVEN」(94年)からの影響。あそこでダレル(R.I.P.…)が提示した、硬質ヘヴィリフの新たな可能性のヴァリエーション、ノイズの音楽的なコントロールは、スラッシュメタル終焉のトドメとなった同バンドデビュー作と同等にエポック・メイキングであったとこの作品を通じて再認識されます。PANTERAの猿真似に走って安易にスローダウンし何の成果も残さなかったおおかたの同系バンドと違い、このバンドはデスメタル然とした風体を保ったままそうしたエッセンスを程よく汲み取り、性急なリズムチェンジや激烈ブラストとの複合技で独自の創造性の新次元に踏み込んでおります。そしてメロディックデス/ゴシックが開き直りを極めたあとの「デス声ならば何でもあり」の風潮にまんまと乗じ、GONGのような人を食った怪しげカルトテイスト(これはオーストラリアのALCHEMISTが先駆ですが)も導入。すべては内なる妄想のために、よりダイレクトでディープな表現を目指して音楽性を多様化させている感じが何とも力強い。グッと豪腕筋肉質になったSOILENT GREENかEXIT-13か、TODAY IS THE DAYに乗っ取られたMORBID ANGELか、そんな孤高のパラノイアック・激メタルになってます。似たり寄ったりだなあと思いつつ「カオティック」・ニュースクールの若手を日々わさわさと掘り起こしてる向きにもガツンと効くこと間違いなし。

【本日のレビューその2:RUSH「TEST FOR ECHO」】


続きシリーズで、先月のこの欄で投げっぱなしの振りをようやく拾います。カナダのご長寿三バカ大将RUSHの、久々の成功作「COUNTERPARTS」に続く96年の大傑作!このアルバムを何度激賞してきたことはわかりませんがリマスター記念でもう一度。前作がマッチョなグランジスタイルをガツッとかじって飲み込んだ、やや習作的な面のある出来だったとすれば、こちらはその養分が髪の先まで届いて完全に新生RUSHとして立ち直したような作品に仕上がっております。アレックス・ライフソンお得意の空間プロデュース系アルペジオや、「PERMANENT WAVES」でのコンパクト化以来一貫しているポップで深遠げなメロディ感覚と、かつて自分達がやっていたことでもあるロック的なダイナミズム、変拍子を含むプログレッシヴなアプローチの揺り戻しとがベストなポイントで均衡を作りまして、末期SUNNY DAY REAL ESTATE(胸をすくような天井の高い感じにおいて、声やや似)とSOUNDGARDEN(ズリズリうねる荒いギターの鳴りにおいて)とC-CLAMP(変則拍子とガッチリはまる和みメロにおいて)の中間かのような、チャレンジと円熟が対等に共存するヴェテラン現役理想の一撃と相成りました。アメリカで変拍子の音楽やってる人にはクリムゾンなどと並んですべからく影響力絶大な人達です、昔っぽいプロダクションが苦手という方には是非このアルバムを最初の1枚にお勧めします。ちなみにリマスター所感は「音圧は上がったが息苦しい、環境によっては低域が無駄に腫れぼったい」といったところ。オリジナルはオリジナルでトータルコンプをあまり強調しない柔らかめの音像だったのでどちらを選ぶかはまあ好き好きですな。

【本日のレビューその3:足立兄弟「銜石」】


POSEIDONシリーズその14、以前も紹介した仰天フリーフォーム邦人アコギデュオ・足立兄弟の2ndです。前回送って頂いたものの中でも腰抜かし度でいえばこの足立兄弟はダントツでありました。続く今作は大筋で同傾向の内容ながら、アグレッシヴに押しまくるより若干、意図的に引いてみせる場面が増えてちょっとムーディさが強調された感も。勿論あの高速乱れ弾きは随所でバリバリ健在。熱く弾き倒す場面での気迫炸裂っぷりは相変わらず凄い。今回もROXY MUSICやJETHRO TULLなど絶妙なチョイスのカヴァーを織り交ぜたりして趣向を凝らしているのですが、こちらの耳が慣れたせいもあって1stを最初に一聴したのと同量のインパクトとはさすがにいかないところもあり、かといって質が劣るわけではないということで「宮殿」に対する「ポセイドン」的な位置付けになりましょうか。楽曲然としたやり方でドドーッと山場を作るラストの曲はかなり新機軸の香りアリですけども。この比類なき独創的な演奏スタイルと極小編成ゆえの自由度をフル稼働させてどんどん新しい驚きを提供していってもらいたいと思う反面、いっそ金太郎飴式に孤高の定点を突き詰めていくのもカッコイイかという気がしてきました。どちらにせよ、己の道をガンガン往ってくれればそれだけで間違いのない人達であることです。プログレファンのみならずHELLAやCHEVAL DE FRISE好きの人にもお勧め。相通ずる快感があると思いますよ。

  1月22−23日
23日の収穫は名駅69にて久保田早紀「夢がたり」、山口百恵「曼珠沙華」、DIO「MAGICA」、RAUL MIDON「STATE OF MIND」。CDプレス業者に送るマスターディスク用に、推奨されていた太陽誘電の10枚4000円強という超高級・低エラーCD-R、その名も「CD-R for Master」を購入してきました。

 濃紺の紙箱の中に薄くない普通サイズのジュエルケースで10枚、それぞれ個別にキャラメル包装を施され、盤の記録面には品質保持のためフィルムが貼られており使用直前にはがすというご大層ぶり。焼くのにも本当に緊張しまして、普段立てて使っているPCを水平にし、なるべく振動を起こさないようにその場を離れ、待っている間は家の中の電化製品のON/OFFを一切しないなど万全を期し(たつもりが迂闊にも階下のトイレに照明をつけて入ってしまった…)、出来上がったら迅速にケースにしまってホコリなどに触れさせない。

 とにかく今回の一連の作業では、「何かやろうと思ったら大抵のことはやれるようになっている」と切に感じました次第。要る物は探せばあるのが当たり前というか。世の中の技術とか商品とかサービスとか、スゴイですね〜。そりゃお金があれば何でも出来ると言いたくなる人もおるわと。ともあれ来月末頃からお買い求めいただけるようになります、ひとつよろしく。

【只今のBGM:DIO「MAGICA」】


2000年SPITFIREリリースの新作です。随所に平仮名があしらわれたアートワークが何とも謎…「ろつうひてく」って何のこってすてく??参加メンツはギターが「DREAM EVIL」で弾いていたクレイグ・ゴールディ、ドラムは80年代AC/DCに在籍したサイモン・ライト、ベースはRAINBOW時代から連れ添うジミー・ベイン。何やら大仰なコンセプトアルバムである模様で、SEをこまめに挟んだりしつつ、のっそり荘厳なスロウチューンが全般的に目立つという、ともすればダルくなりかねない方向であるわけですが、もうサバス風を騙ってのヘヴィ指向ではなく(それはそれで良かったけど)100%80年代型リフで占められておりまして、少しのほころびも見せず同じ気迫で完璧に当時の雰囲気を再現してしまうエネルギーに感服。もはやこれが新曲である意義など感じませんがいいのです。やっぱりロニー校長はスピリチュアルなヴァイブ出てます、魅せられます。ナチュラルな鳴りを積極的に拾ったドラムサウンドを含めプロダクションが最高なのも聴きどころ。いや、結構普通に感動すると思いますよ、オールドスクールメタラーなら。DESTRUCTIONのシュミーア復活一作目に近い感慨といいましょうか。リアリティのある、ちゃんと呼吸する古典。「買ってもどうせ…」と近年作の入手に億劫になっていたファン諸兄は、このとおりの充実の内容ですので安心して買って下さい。

  1月20−21日
収穫はなし。基本的にテレビの前にかじりつくことを良しとしませんが、寒いとコタツから出られず食事のついでにだらだらとザッピングしてしまうこともあります。MTV JAPAN、スペースシャワーTV、MUSIC ON! TVの激ローテーション。記憶に残っている最近の所感は、1)平井堅は本当に歌が上手いというべきか疑問に思えてきた、2)和製ヒップホップ/R&Bの半分くらいの歌詞はかなり凄い、3)YUIという若いSSWに何かグッときてしまった、4)日本のエモ系ギターバンドは「Aメロでバスドラ四つ踏み」をやりすぎ、5)SUM41は完全にメタルで羨ましい、といったところでございました。ジェフ・バックリーの"Grace"に戦慄が走ったのも今は昔、自分が歳取っただけなのか、いや産業音楽はより狡猾になってる気がしますよ。

【本日のレビューその1:MICHAEL NACE「YOUR MEEKNESS GIVES ME HOPE」】


DRILL FOR ABSENTEEという最高のマスロックバンドをやっていたマイケル氏が昨年リリースしたソロワーク3作目。過去にこの欄で2ndを取り上げています。ニール・ヤングかボブ・ディランか…と驚く1曲目はやっぱり軽いジャブで、達者なアコギ指弾きでちょうど最近紹介したこれみたいなJAGJAGUWAR対応型路線でいったり、OSWEGOが枯れきってTHE BYRDSになってしまったようなアンプラグド・マス・フォーク(?)に挑んだりと様々。以前に比べてバンドサウンドより歌にもっと重心が移った感です。CANYONがもう一皮むけていたらこうなったかも?血肉はアメリカンフォークでしかないのに骨格が新人類でハッとする。あくまで旧来品の中身そのままで皮膚だけ張り替えるDRAG CITY勢とはまた趣が異なります。どちらにしろこういう自然体の離れ業はやっぱりアメリカ人自身だからこそ出来る芸当ですね。変拍子だぜーとわざわざ嬉しくなっている様子もなく普通に歌ものフォークとして熱くなっておられます。聴く人によって色々と感動しどころが違ってきそうな、つつましくも奥行きと広がりのある佇まい。ちなみに今回もジョセフ・マクレドモンド&ヴィンセント・ノヴァラの裏DC助っ人コネクションがバックメンバーとして活躍しております。決して前に出ようとしないながら上手いな〜ドラム…

【本日のレビューその2:MASTERMIND「BROKEN」】


POSEIDONシリーズその13。90年代中盤にBURRN!誌を毎月熟読していた身には懐かしい名前!ギターがメインのテクニカルプログレメタルバンドという風にフィーチャーされていたはずで、高校生当時に買おうか買うまいか相当胸を熱くした覚えがあります。やっと聴けて感慨しきり。さてこれはリリースが予定されている新しいスタジオフルアルバムからの2曲と、現メンバーによる旧曲再録の計7曲入り最新EP。いつの間にか女性シンガーが加入してたんですね。いきなりRUSHの"Tom Sawyer"を丸々踏まえたイントロに面食らいつつ、新曲は「AWAKE」の頃のDREAM THEATERとTAD MOROSE(CANDLEMASSと人脈が絡んだりしたスウェーデンのSAVADAGE風様式美バンドです、これも懐かしい)の中間のような大仰・屈折・ヘヴィな作風。こういうスタイルは一時期かなり広くメロディックメタル界に波及したもので、記憶にあるこのバンドの紹介のされ方の割にあまり取り立ててプログレッシヴという印象でもないのは意外ですが、攻めのダウンチューニングが何とも勇ましい。古い曲はオランダのELEGYとロニー時代のBLACK SABBATHの雰囲気がクロスする、リズムなりリフなりはある程度入り組んでいるのにどこか昔気質のアナログな手触りを残した変則様式美HRといった趣。総じて、若い人が好きそうな効率の良いツボ押しよりはロック然とした遊びを隙間に漂わせるタイプのバンドであるようで、数多のいわゆるプログレメタルバンドをしっかり習熟して出てきた若手にはない深い味が私にはもっぱら魅力です。平気でクリップ(レベルオーバーによるノイズ)しまくっていたりトータルコンプが大雑把過ぎたりといった装いの無頓着さがやや(中堅ヴェテランと思って聴いただけに)残念…正規の新作では改善されていることを望みたい。

  1月17−19日
16日の収穫に物販で買ったOGRE YOU ASSHOLE「タニシ」、MALE BELIEVEのサムのソロ(SAM ZURICK、FLOWER POWER?、PEOPLE DICKのどれがプロジェクト名でどれがタイトルか一切不明)。そんで18日の収穫はまたPOSEIDON増田さんから送って頂いたMASTERMIND「BROKEN」、アイン・ソフ「海の底の動物園」「五つの方針と九つの展開」、足立兄弟「銜石」。ここ最近は、フリーのオーディオ統合環境ソフトといくつかのプラグイン(秀逸なコンプとリヴァーブ)を集めてきてマスタリング環境を構築するやら、DTPの教本みたいなのを買ってくるやら、色々です。パーソナル・コンピュータによってきょうびの個人の制作活動というものが本格的にインディペンデントになっとるんやなあ〜と実感中。

【本日のレビューその1:JANE'S ADDICTION「RITUAL DE LO HABITUAL」】


何とも今更なチョイスですいません。フジで来日したせいでしばらく買いづらくなってましたが先日のバーゲンでやっと購入、これの1曲目"Stop"は昔MTV(まだUSAとガッチリ提携していた頃)で結構流れていたので普通に感慨深いのであります。しかし改めて聴くと何とも変なバンドですな。ビデオクリップの映像で覚えているのは、ギターは尖った形のメタルっぽいやつを使っていた、スケートボードでジャンプするシーンがいっぱい出てきた、くらいのもんですが、今冷静に向き合うと「SUICIDAL TENDENCIESっぽい」という線で音楽/映像イメージ両面において合点がいきます。すなわち変にファンキーで大胆で、エッヂはメタル然としていて、何ともいえないミクスチャー。更にこの独特の奇天烈ハイトーンヴォーカルと、ポストパンク的なフラつきのせいでよりいっそう孤高感がアップしてます。時々B-52'SやGANG OF FOURの残り香も漂う一方、ガンズ登場で当時台頭していた70年代ディフォルメな感触も若干。影響源となったと思しき音楽を列挙してみても、全くピシッと通った系譜が浮かび上がらない、吸い込んだ時代の空気とこのメンバーの巡り合わせとで発生してしまっただけの孤立した「現象」だったとしかいえないアルバムであります。このフルパワーなエキセントリックさは現在はSYSTEM OF A DOWNやTHE MARS VOLTAあたりに流れ着いてる気も。風変わりでアーティスティックだがとにかく躍動的で血が通っていて、小難しい勘繰りなしでも惹きつけられる。

【本日のレビューその2:アイン・ソフ「海の底の動物園」】


POSEIDONシリーズその12くらいです。日本のカンタベリーサウンド最右翼と目されていたバンドだったそうで、これは91年作のリマスター。確かにNATIONAL HEALTHっぽいフュージョンプログレな香りもありつつ、結成当初バンド名を「天地創造」と名乗っていただけあってやはり「WIND & WUTHERING」あたりのGENESISに非常に近いシンフォニックな鳴りや展開が多用されているほか、6曲目収録の"Ride On A Camel"という曲だけドップリCAMEL風だったり、ドラムのフィルが時々完全にニール・パートだったりと、日本人のプログレ趣味を余す所なく踏まえたような作風といえましょう。全編インストで、長尺の曲だと各パートのソロも出てくるわけですが、そこで聴かれるアドリブの捉え方みたいなものは一方もっぱらフュージョン的。ダクダクに乗ったリヴァーブや正面きってのデジタルシンセ大フィーチャーっぷりも含め、大昔サークルの先輩に聴かせてもらったVIENNAとノリとしては近いものを感じました。80年代後半のジャパニーズ・プログレ共通の匂いなんでしょうか。プログレの「必死の骨董品」みたいな佇まいよりは楽曲的なドラマ性の方にスポットを当てての解釈ですね。そういう聴き方をする向きならばかなりピンポイントで欲求が満たされるであろう充実の出来です。

  1月15−16日
15日の収穫、バナナレコード・ジャズシンジケートでANTHONY BRAXTON/MARIO PAVONE「SEVEN STANDARDS」(BATTLESのタイの父アンソニー!デイヴ・ダグラス参加の95年KNITTING FACTORYリリース作)、STIFF SLACKにてMICHAEL NACE「YOUR MEEKNESS GIVES ME HOPE」(ex.DRILL FOR ABSENTEE)。STIFF SLACKで聴かせてもらった元ROADSIDE MONUMENTのメンバーの新バンドPATROLが、もろBARKMARKET〜SOUNDGARDEN彷彿型でキラー過ぎる出来だったので、音源出たら即買いでしょう。TRAINDODGE共々ヘヴィグランジリバイバルの波をガガッと作っていってくれたらもう最高の時代になりますな。

▼本日16日は今池得三にてMAKE BELIEVE!シカゴポストロック界で一大人脈を築くJOAN OF ARC関連組のドン、ティム・キンセラが現在主力として率いているバンドです。まだ16日しか経っていない2006年でまずは一番の衝撃だったに違いありません。

▼今日の前座は二つあってまずは豊橋のTHE ACT WE ACT。最初に詳しくご紹介したのはもう随分前のことになるので、今回は改めてリポートさせて頂きます。音楽性はGUYANA PUNCH LINEやSWING KIDS、LACK OF INTERESTあたりに近い雰囲気の脱拍子&激展開・ブッ倒れハードコア。これから演奏する曲の歌詞について説明したりするくらい吐露すべき言葉と衝動をしっかり持ってる人達で、各メンバーが鳴らす無秩序がギリギリの線でバンド総体のグルーヴとして束になって、広角視野でフラッシュするようなグループ表現が毎度見事。もっぱら猛烈に倒れまくるヴォーカル/ギター(弾かないカオリ氏)サイドと、楽曲の基礎をガッチリ固めるベース/ギター(弾くだーふく氏)サイド、その狭間で殺人的なリズムと死闘するドラム氏という構図で、20分あるかないかの手短なセットをズガガッとヤリ抜けてくれます。今日は序盤ちょっと大舞台の緊張ゆえか「敢えて冷静にマイペース」な感があったものの、途中ヴォーカルゴミヘン氏が華麗にキメたカオリ氏への水平跳び蹴りあたりから俄然ブーストがかかり、最終的にはステージとイス席の間の狭いスペースで小モッシュが起きるほどの騒ぎようになりました。なおベースてっつ氏がしばらくバンドを長期離脱するとのことで、ベースが要やなあと見ていたのでどうなるんでしょうか。海外ツアーの話もあるらしく、今後の動向が気になるところ。

▼二番手はフロム長野、OGRE YOU ASSHOLE。先月のレコ発でじ〜っくり見て以来、形容するならMODEST MOUSE+BLIND MELON+NUMBER GIRLであろうという線で見解がだいたい定まってきてます。自分がCDを結構聴き込んで臨んだこともあって安心のステージ。新曲は少し雰囲気が明るくなってきてる気がしました。この路線いいなあ。相変わらずおしなべて名曲度が高いし、キャラのあるヴォーカルには惹きつけられます。やや淡々とセットをこなし(音楽性的にそれでいいと思いますが)30分強ほどで終了。今日の前後のとりあわせからするとちょっと大人しい印象でしたかな。

▼そしてメインのMAKE BELIEVE。音楽性の詳細はこちらを参照して下さい。セッティングからもう絶句の嵐でした。まずティム兄が太っている。おっさんであります。ギターのサムとドラムのネイトはいずれも、80年代ベイエリアスラッシュバンドのリハーサル風景みたいな短パン(ネイトはスポーツタイプ、サムは長ズボンを膝上で切ったもの!)+Tシャツ姿、しかもサムは裸足にぺたぺたのサンダル着用。ベースのボビーは普通にスッとしたカジュアルな格好。うーむ読めない。広げたキーボードスタンドがどこにセットされるのかと思いきや、タム類を全部取り払ったバスドラの上にまたがるように設置!これはパッドでも置いてシンセ音源を鳴らすのか、という読みが更に裏切られてドッカリ乗せられたのは、普通のノードリード!!そりゃキーボードスタンドにはキーボードだわな…ともう何が何だか判らない状態。ひとしきりの準備が済むと招聘元DOTLINECIRCLEのカトマン氏が煽りとともにバンドを紹介し、位置に着いてドーン!ときてからはひたすら唖然としただけです。ドラマー氏は器用にスティックを置いたり持ったり投げ捨てたりしながらシンセとドラムの演奏を両立(!!!)、開放弦含みのハンマリング/プリング/スライド/タッピングetc.を駆使した総指弾きギターは手元を見ながら聴いても全然意味不明で、ティムはあの酔拳ヴォーカルを目の前で本当にやってくれました。エモの草分けだったCAP'N JAZZからJOAN OF ARCで和める音響フォークにグッとシフトしてから、OWLS、FRIEND/ENEMYと徐々にボルテージを上げてきていたティム兄、このバンドではモッシュすら可能な変則突撃スタイル全開になってくれて頼もしい限りです。ライブではBATTLESやTHIS HEATみたいなヒリヒリした緊張感がより濃厚に感じ取れたように思います。

 曲が進んでも、叩きながら弾くシンセと高速アルペジオギターのトップノートが超人的に絡むユニゾンや、全くカウントできない変則拍子に、慣れることなく驚嘆するばかり。この人達の変拍子は単純に4拍から足し引きしたりずらしたりするだけじゃなく、かなり長いひと回りの中で拍を止めたり、待ったり、繋いだり、突っ込んだりして、バンドぐるみで上手くポリリズム感を装いながら悪ふざけのようにフレーズを伸張させていくのが何ともユニーク。「計算」よりも「野生」を強く感じました。プログレや前衛ジャズを当たってもこんな拍子展開は聴いたことない!そこに歌を乗せる合間に調子よくダンスをキメるティムの頭はどうなってるのでしょうか!?イス席で座って見る客(よっぽど立ちたかったけど下手に孤立して後方の客の邪魔になったらな〜…などと考えてたら立てませんでした。この点において得三は非常にマズイですな。)を相手にテンションも緩み気味だったのか、歌ってないときはデローンと床に転がったり、伸脚運動みたいなのをしたり、ひらひらと踊ったりと、パフォーマンスは酔っ払いそのもの。ギター/ベース両名はほとんど動かずに何食わぬ顔で自分の演奏をこなし、フィルでも常時フルストロークのドラマー氏は無茶がたたってか一曲終わるごとに息があがっていた様子。途中でバスドラのヘッドを破って交換するなんて場面もありました。MCは真顔で「誰か、コメントや質問は」といって沈黙するなどやや突き放し気味。ネイティヴのスピードで話し掛けて反応がないと「何君ら、寝てんの、死んでんの?」みたいな空気になるところは弟のマイクa.k.a.OWENと一緒ですな。一応通訳役を立ててコミュニケーションに務めようとする痕跡はあったものの、逆に客の方がわかりづらいジョークをふっかけてしまったりして(「捕鯨と平和についてどう考えるか」など)結局あまり疎通せず。それでも演奏の方は白けモードになることなく全力近くでやり通してくれました、さすがプロ。

 本編が終了してアンコールに呼び戻されると、まず出てきたのはティムとサムのみ。ティムはドラムセットに座り、ドンドンタン、ドンドンタンと叩きながら"We Will Rock You"を途中まで歌うというハプニング。「明日の大阪じゃアンコールで出てくるにちょっとアイディアがあるんだ。一旦引っ込んで、服をメンバー同士取り替えて出てくるんだ。あっサムがボビーの服着てる、みたいなね。…」などと笑っていいのか迷う喋りも挟みつつ2曲やって完全終了。片付け中、持参したJOAN OF ARC「THE GAP」のポスターにサインを貰いに行くと、サムはオイオイ凄いの持ってきたな!みたいにテンションが上がり、ティムはというとジッとポスターを見ながら少し間をおいたと思ったらいきなりスラスラと文章を書き始めました。↓

「このアルバムは皆に変がられた僕の昔の子供みたいなもので、その理由のみにおいて何か僕はこのアルバムが一番好き。」みたいな意味でしょうか?下の絵を指差して、「左のこれはハート、右は脳」と説明してくれました。その二つが音楽を作るときに一番尽くすものということなのか、ただ単に手紙の署名としてなのか、結局意図は読めずじまいですが、何となくセンチメンタルな感じに受け取って(間違い?)握手を交わして帰ってきました。今日の所感まとめとしては「最後まで読ませない連中だった…!」です。何にしろ衝撃自体は甚大。残りの公演、行ける方は是非とも見に行ったらいいですよ!!大阪・神戸・京都・東京があります、日程詳細はDLCで。

【「只今のBGM」は割愛します。すいません。】

  1月13−14日
▼こんばんは、本日14日の収穫はカイマンでまとめ買いのGORGUTS「CONSIDERED DEAD/THE EROSION OF SANITY」「OBSCURA」「FROM WISDOM TO HATE」。更新が滞りがちですが本当にその数十分を割くのが絶対無理というわけではなく、なので今日は作業に取り掛かる前にこれを書いときます。今日は布団直さずに出掛けたな〜と思って出先から帰ってきて、すなわち起きたままの状態である自室の布団が、見たら意外と品の良い状態だったりすると、自分も歳を取ったなあと感じます。親は何であんなに寝相良くいられるんだろうと昔はよく不思議に思っていたものですから。

【只今のBGM:GORGUTS「CINSIDERED DEAD/THE EROSION OF INSANITY」】


オッ1曲目が「ヘヴィメタルシンジケート」(註:HM専門誌BURRN!によるラジオ番組)のCMに行くときのジングルだ!さてこのバンド、新たにゾッコン溺愛枠入りしそうなので複数回に渡ってお届けしようと思います。カナダはケベックのデスメタル4人組の、これは91年1stと93年2ndのカップリング。3作目からいきなりビーフハートを引き合いに出されるようなド変態路線に豹変するとのことで、試聴したら本当に悶絶モノだったので思わず初期作から一挙に注文してしまいました。デビュー作ながら普通のオールドスクールデスというにはどうもグリッと黒光るような異様なヘヴィネスとリフの捻れに拘り過ぎるフシがあり、この頃から後々のスタイルの片鱗は覗かせているようです。CANNIBAL CORPSEのようなグニャグニャした展開に、若干CONFESSORを思わせる粘っこいリフが絡み、ヴォーカルは野太い咆哮型。同じ激展開でも例えばSUFFOCATIONは極端な起伏の中に筋の通ったドラマをちゃんと置いているのに対して、このバンドはどこかヒョイヒョイと聴き手を振り回すというか、白熱するよりもひたすらエグかったりグロかったりする気がします。カナダ産とあってCRYPTOPSYにもかなり影響与えてそう(そう思って聴くとかなり似てる)。ちなみに1stはMORRISOUNDにてスコット・バーンズ録音で、ゲロッと来るほどの重低ギターサウンドがグッド。2ndは地元で録ってて(エンジニアはコリン・リチャードソン)、内容はほぼ同傾向ながら時々PESTILENCEやATHEIST的展開が割って入るようになり面白い。これより後の作品も聴いたらまたこの欄で実況します。

  1月12日
収穫はなし。雑誌の立ち読みでもするしかないちょっとした待ち時間があって、ポルノ本とばかり思っていた「PLAYBOY」の月刊版(9割以上活字の男くさい中身でした)の表紙に高倉健のインタビューありというのを発見し、7〜8ページに渡る濃い談義録を読破。思わず実現不可能な望みを高倉健と改めてしまいました次第。

【只今のBGM:BRUCE COCKBURN「HIGH WINDS WHITE SKY」】


カナダの有名なクリスチャンSSWの人だそうで、これは71年の2nd。雪の積もった公園(すすけた住宅地?)のモノトーンなジャケ写真からして、DRUNKあたりのJAGJAGUWARサウンドが臭ってきそうなわけですが、正にストライク!アメリカンなフォークブルーズスタイルの土臭さをやや荒涼とした木の匂いに代えたようなアコギのつま弾き(つつましくも激ウマ)と少しのオーヴァーダブをバックに、ジェントルな中にも秘めたる熱さのある中低域ヴォーカルでしっとりクッキリ歌い上げる、ルー・バーロウマーク・コゼレク、SCUD MOUNTAIN BOYS(pre-PERNICE BROTHERS)、NAD NAVILLUS、声色だけならリチャード・シンクレアなども彷彿とさせる極上級の歌い手です。いや〜こんなのがあったら大半のJAGJAGUWARやDRAG CITYのレプリカ系フォーク職人達は全く意味ねーじゃないか…と愕然とするくらいの、何というか絶対的な説得力が漂ってます。哀愁っぷりがアメリカ産のものより日本のフォークに近いこともあって尚更スッと響いてくる。これの前後作とか、80年代以降の顛末とかは現時点で無知ですけども、とりあえずこの盤が最高ということは間違いなし。

  1月10−11日
▼本日11日は何も買わず10日の収穫はIMPORT-CD SPECIALISTSから届いたINCANTATION「THE FORSAKEN MOURNING OF ANGELIC ANGUISH」。天使の苦悶の見捨てられた嘆き、ってよく解らんけど壮絶なタイトルだなと思って、既に持っている他のアルバムまでブックレットをよくよく見てみたら、デビュー以来かなりのペースでリードギタリスト以外のメンバーが入れ替わりまくってるバンドであることを初めて知りました。そこそこ世界で名を知られていてもデスメタルバンドをパーマネントでやり続けていくのは相当タフなんだろうなあ…と脱落組の境遇と心中を勝手に窺い知ってしまった。父親の若い頃の写真を見たら弥生人系の長髪と鋲リストと黒ずくめの上下でカメラに向かって犬歯を剥くデスメタラーだった、みたいな現象がそろそろ起こってくるわけですよね。EDGE OF SANITYのダン・スウォノ以外のメンバーとか、PESTILENCEの人とか、どこでどうしてるんでしょうか…

【只今のBGM:MINIATURE「I CAN'T PUT MY FINGER ON IT」】


WINTER & WINTER再発シリーズ。ジョン・ゾーンのMASADAでも叩いているジョーイ・バロン、BLOODCOUNTやBIG SATANなど数多くのプロジェクトを抱えるマルチ・サキソフォニストのティム・バーン、ヘンリー・カイザーやアンディ・サマーズなどと共演するセリストのハンク・ロバーツのトリオによる91年作です。初っ端からロックばりのリムショットとカオティックなオーヴァーダブ全開のMATERIAL+ART BEARS+CAPTAIN BEEFHEARTな展開に度肝。多少ジャズ然としたアンサンブルが現れる曲もせいぜいオーネット・コールマン止まりで(しかも激変拍子)、とにかくストレートであるとかマトモであるとか言える部分の全くないド変態・コンテンポラリー・ミクスチャー・ミュージックになってます。ビート感の重心はのっしり低く、現代音楽風の無調フレーズを淀みなく吹くサックスは四次元で這いまくる大蛇の如し。レス・クレイプールに勝るとも劣らぬダークなファンクネス。半ばプログレですが、このファンキーであるという点ゆえやはり骨格はジャズだなという印象になります。ブチまけ感でいえばTHE CRANIUMMAKE BELIEVEが好きな人でもイケそうですよ。

  1月8−9日
本日9日の収穫、バナナレコード・ジャズシンジケートにてDAVID KRAKAUER'S KLEZMER MADNESS!「KLEZMER, NY」(TZADIK RADICAL JEWISH CULTURE)、WADADA LEO SMITH'S GOLDEN QUARTET「GOLDEN QUARTET」(TZADIK KEY SERIES、ジャック・ディジョネット参加!)。MINIATURE「I CAN'T PUT MY FINGER ON IT」(WINTER & WINTERリイシュー、ジョーイ・バロン+ハンク・ロバーツ+ティム・バーン!)、TOM PREHN QUARTET「TOM PREHN QUARTET」(ATAVISTIC UNHEARD MUSIC SERIES)、CLIFFORD THORNTON「FREEDOM & UNITY」(ATAVISTIC UNHEARD MUSIC SERIES)。自販機でしるこドリンクを見ると腹具合に関わらず買いたくなるのは「動物のお医者さん」の影響。

【只今のBGM:RAY BARBEE「IN FULL VIEW」】


デビューEPが最高だった一人ラウンジイスト、レイ・バービーの1stフル。引き続きトミー・ゲレロのGALAXIAから。クリーントーンのギターとアコギ、ヴィブラフォン(の音色のキーボード)、カリンバなどを打ち込みのリズムに乗せて、ジャック・ジョンソンとアーチャー・プレウィット(THE COCKTAILS〜THE SEA AND CAKE)の中間のような、レイドバックしたほんのりジャズ/ボッサ/ラテン風味のインストを1曲だいたい3分台で手短にまとめてズラッと詰め込んでおります。「天気のいい暇すぎる休日」「オフ時のスポーツマンの落ち着いた優しさ」といった印象を本当にそのまま音にしたような出来で、デビュー作でオッと思った人の期待を全く裏切らない好フォローとなりました。褐色の肌をしたカジュアル版AMERICAN FOOTBALLなんて雰囲気も。この凝縮されきった無駄のない表現はやっぱり、パーソナルレコーディングでチマチマ丁寧にこねくり回して作ったからなんでしょうかね。一応ゲストもちらほら参加してるみたいで、よく知らない名前に混じってダグ・シャリンのクレジットが。彼が参加の2曲だけ途端にHIM〜MICE PARADEっぽくなってます。あらあら。

  1月7日
収穫はなしバンドの他のメンバーの録音に立ち会って14時から22時の8時間、小粒のマシュマロやらえびせんべい詰め合わせやらを無尽蔵に消費し続けながらユーロロックプレス最新号を読破。大量かつ広範なCDレビューもさることながら、再結成だ新バンドだといってシーンにカムバックしてきたヴェテランミュージシャン達に色々と突っ込んだことを訊いてくれるので面白い本です。生き様から音楽観まで、創作/表現活動に長年身を置いてきた人々ならではの興味深い回答を皆さん語ってくれます。今号のクリスチャン・ヴァンデ(MAGMA)の有り難い御言葉、曰く「演奏とは演奏家が音楽からの要請のままに、発展していくイデ(idee/発想・理念)を音に紡ぎ出すこと」とな。

【只今のBGM:GOD MACABRE「THE WINTERLONG」】


スウェディッシュ・オールドスクールデスメタルの隠れた名バンドの唯一のアルバム(EP?)に、MACABRE ENDと名乗っていた時代のデモ3曲を追加してリミックス&リマスターを施したもの。NIHILISTやCARNAGEのようにその後の人脈発展には寄与してないようですが、ポストロックブームを語る際に思い出したいC-CLAMP、くらいの感じで重宝する存在です。あるいは英国プログレにおけるCRESSIDAでも。内容はENTOMBEDやDISMEMBERの極初期作に酷似した、全くもって無骨なストロングスタイル。ハードコアパンクばりにパワーコード(チューニングは一音下げ)をゲゲーゲゴゴーゴと掻き鳴らしながらロービットな2ビートを炸裂させ、時にドゥーミーな減速パートも挿入してドラマティックにキメる。このへんの人達は何故にこうもギリギリでヘタウマなんでしょうね。独特のず太さをもつスコッグスベルグ・サウンドと相俟ってとにかく豪快ロッキン。DEICIDEの人を更に獣に近づけたようなヴォーカルも邪悪さ満点でたまらん。ドラムが微妙にエレドラかトリガーか打ち込みかのどれかっぽいけどまあ大して気にならない程度なのでよし。イースタンユース好きからFOO FIGHTERS好きまでイケると思ってますがどうでしょうか。

  1月5−6日
本日6日の収穫はアマゾンマーケットプレイスでQUIET SUN「MAINSTREAM」、バナナ・パルコ店でBRUCE COCKBURN「HIGH WINDS WHITE SKY」。最近よく失敗するのは早く寝ることです。

▼私も寄稿している自主出版レビュー本「MAG FOR EARS」の第2号が、少し前から通販可能になっていて、更に名古屋では千種の正文館に実物の在庫が置いてあるそうです。一度店頭でお手に取って頂いて、フムフムと読み入りかけて、これ450円出せば帰ってゆっくりじっくり読めるんなら買って帰るかあ〜と1部ご購入、という流れでいって頂けると完璧ですね。ひとつよろしくお願いします。

【只今のBGM:QUIET SUN「MAINSTREAM」】


THIS HEATのチャールズ・ヘイワード(ds.)とROXY MUSICのフィル・マンザネラ(g.)が一緒にやっていたバンドが75年にリリースした唯一のアルバム。今の今までこれを聴いたことがなかったという私はもう完全なるモグリ・プログレッシャーであります。E.G.からのオフィシャルリイシュー(リマスターとの表記はなし)ながら何故かジャケが変更になっておりますが、メンバーの誰かがオリジナルジャケを好かんかったのでしょうかね。内容はシンフォ系ほど頭がデカくなく、クリムゾンよりは俗っぽいロマンがあって、泣き泣き哀愁系サイケロックが変人ドラマーによってねじ曲げにねじ曲げられ変拍子トランスプログレ〜ジャズロックに化けてしまったような雰囲気。エレピ主導のミニマル展開はマイク・オールドフィールド風だったりしつつ、縦横無尽に色んなものを叩きまくって上向きの渦をグングン回していくようなドラムはGONGのバックをやる時の吉田達也のよう。危機感を漲らせてアグレッシヴに突っ込んでいくビート感は既にTHIS HEATを彷彿とさせます。どんな大仰なフレーズも乾きと微笑をたたえて聞こえるのはいかにもカンタベリーらしいところでもあるし、ポストロック/マスロックじみている気もする。THE CANCER CONSPIRACYやRUMAH SAKITなんかは結構モロ。時代を超えた大名作として語り継がれて然るべき盤ですな。

  1月4日
本日の収穫、アマゾンマーケットプレイスにてカイマンから購入のRUSH「ROLL THE BONES」(リマスター)、同じくDRAGONJAZZもといジャズシンからのSPACEWAYS INC.「VERSION SOUL」。「ROLL THE BONES」を新品でリマスターに買い替えるとは我ながら壮絶。どれくらいの何かというと、STINGの「SOUL CAGES」を旧通常版、リマスター前のデジパック、リマスター…と集めるような行為でしょうか。いやいやRUSHファンとしては正しい行いです。

【本日のレビューその1:SPACEWAYS INC.「VERSION SOUL」】


ここのところ続くジャズらしきもの、今日も懲りずにいきます。お付き合い下さいまし。現代トンガリ系の先端というともっぱらNYということになっているようですが、こちらはシカゴ。THE FLYING LUTTENBACHERSの作品で録音していたりポストロック系アーティストのコンピに紛れ込んだりするサックス奏者ケン・ヴァンダーマークのトリオです。あとの面子はウィリアム・パーカーなどと共演しているハミド・ドレイクがドラム、TRIPLEPLAYという別ユニットでもケンさんと一緒のネイト・マクブライドがベース。ポストロックよろしくダブやファンクや変拍子を粋に咀嚼して、シンプルかつ激濃で攻めるミニマム・グルーヴィンな内容でこりゃー非常にグレイトです。THE SORTSの「CONTEMPORARY MUSIC」路線をサックスのみでやったような感じか。本物のジャズミュージシャンにこれをやられちゃTHE BOOMHIMの立場がないっすな…。巧すぎ。ワンホーンってことでスキマだらけで、ソロ回しも何もソロやる人が一人しかおらんわけですが、どこにテーマがあるのか判らないが何となくリフレインっぽい繰り返しを醸し出すグニャグニャした構成の妙、フリー的崩壊からなだれこむノンビートセッションパートやドラムソロ、などの工夫で展開に不敵な山谷を設けています。オシャレ。これはもう全然ロッカーにお勧めできます、変に7〜8年前のジャングルビートを今更人力再現してたりするような無残なNHK的ジャムバンドに「あ〜やっぱジャズ畑の人ってウマイよなー、微妙に時代の空気読めてないけど…」などと中途半端に感心してみたりする前にこれ。

【本日のレビューその2:おU「おU」】


変わったバンド名です。POSEIDONシリーズその11。珍しく直輸入版+オビという仕様で、ジャケではバンド名は「O-U」と表記。86年頃からかなりのスローペースで活動していて現在は沈黙状態という日本人ジャズロックユニットの、88年と94・5年のライヴ音源をコンパイルした作品です。カンタベリーの優雅さやのどかさとザッパの妄想クリーチャー的イビツさが合体したような音楽性をヴァイオリンやサックス、クラリネット、トロンボーンなども交えて演奏するスタイルで、GILGAMESHがふざけて小さい嘘ばっかりついてるようなレコメンジャズロックと現代音楽のハーフ(のジャズロック寄り)といった雰囲気。のっそりとしてるようで非常に冴えてます。6〜7人編成の緻密なアンサンブルでだいたい6分以上の曲をきっちりコントロール下に収めるというのはひとえに中心人物である清水一登氏(キーボード)のコンセプトがよっぽど強烈なんでしょう。その時々の表情が全部鮮やか。ただ単にレコメン風になりたかったっす〜、みたいなバンドも世界中に平気でいるけど、このバンドは何か持ってる言葉がユニークですね。直球英国フォークからメロドラマ・チックなタンゴ調、キー不明の近代クラシック調まで、独自のフィルターを通して愉快に聴かせてくれます。海外で評価が高いというのも納得。

  1月3日
収穫はなし。休みなのに8時半に早起きしたと思ったら朝食後そのまま寝入ってしまい気がつきゃ11時。夕食後うっかり細木数子の特番を見続けそうになってこれはイカンと思い立ち、昼からやっていた録音の続きに戻ってひとしきり没頭し、「そろそろ21時くらいか…?」と時計を見たら23時過ぎ。アマゾンのマーケットプレイスでDRAGONJAZZと名乗る出品者に注文したらそれはモロ地元のバナナレコード・ジャズシンジケートであった。以上本日の凹みでした。最初の2つはどうでもいいけどマーケットプレイスの手数料340円は返してほしいな。

▼最近はやたらとTZADIKにときめいてます。アマゾンのレーベル名検索で出てきたのを片っ端から試聴して、店頭で出くわしても困らないように大予習。「Composer Series」のキワドイ奴だけ用心すればそんなに怖くはないようで。しかしあの統一感のあるアートワーク(金と黒で統一された裏ジャケ、「New Japan」シリーズで必ず定位置にある正円、etc...)はやっぱり何とも言えない。

【本日のレビューその1:TED REICHMAN「EMIGRE」】


2003年TZADIK、表ジャケ下方を横向きに貫く細い金帯が目印の「Radical Jewish Culture」シリーズの品。デイヴィッド・クラカウアーやマーク・リボーなどと共演するアコーディオニストのソロです。アコーディオンのみならずギター、チター(金属的でややデチューンドな響きのユダヤの弦楽器)、オルガンなどを使いこなす才人。その他ベースやドラム、ヴィオラなどひととおりの楽器はゲスト陣が添えてくれています。ロック然としたアレンジではなく生楽器の柔らかい輪郭線で型取られた、深くて穏やかなパーソナル・インドア・チェンバー・クレツマー。ブダペストからフランス、アメリカと渡ってきて今はNY在住というだけあって、ナチュラルなクラシックの香りや因縁じみた暗さと、ガランと整理された都会的洗練が混在。タラ・ジェーン・オニールやL'ALTRAやRACHEL'Sがユダヤ系の大御所としっとり共演したような雰囲気もあり今っぽいスローコア風の口あたりで聴けます。1曲1ネタで手短に色々聴ける切手帳的構成で、クレツマー及びTZADIK素人へのハードルは比較的低いんじゃないでしょうか。大袈裟なエキサイトメントも泣かせるメロディもありませんが、じっくり向き合って聴き入る余白なら大いにある。メランコリック(≒ダーク)+内省的ってことでCHROMA KEYファンの方なんかもいかがですか。聴き始めはよっぽど早送りしそうになってたけどだんだん染み入ってきて今凄くテンションが同調して感動してます。

【本日のレビューその2:GEORGE RUSSELL SEXTET「EZZ-THETICS」】


随分前、多分OJCと見れば何でも興味を示していた頃に何となく買ったものです。何やら立体図形を組み合わせたような謎めいたジャケにもそういえば惹かれた覚えがあります。61年RIVERSIDEリリースの3管セクステット作品。買った時気付いてたのかどうか、とりあえずエリック・ドルフィー参加で、更にこのトランペットのドン・エリス、聞けば前代未聞の変態変拍子ビッグバンドを率いてザッパにも直接的な影響をガンガン与えた人だそうで。そんな線が今日調べ物の最中にやっと結びついて、2年振りくらいに手に取りました。リーダーのジョージ・ラッセルは白人ピアニストで現在は大学教授。ここまでの文字情報でおおかたの音楽性は浮かび上がってきたようなもんですね。わかりやすいフリー的崩壊はないながら冒険的(冒涜的?)な調性使いで、スウィングの悦びはほとんど圧殺されて理知性主導の逸脱行為にダイレクトに目がいく、偏屈ダンディ達の先鋭ジャズとなっております。どこかコミカルな押し引きも効いてて超インテリな酔っ払いといった趣きも。聴く側は気まぐれっぷりに翻弄されつつ「今の凄まじいキレは確信犯か?」とビクビクしまくるという。爆笑問題太田が憑依した田村正和が白昼夢を見たらきっとこんなん。現代のNYアンダーグラウンドどころから新譜として出てきてもおかしくない内容。

  1月2日
▼満腹と酔いとシャックリで思考がダウンしてます、新年会っていいな。本日の収穫はIMPORT-CD SPECIALISTSから届いたRUSH「PRESTO」(リマスター)。最近ここもカイマンもケース割れが多いよ!

【只今のBGM:CHEVAL DE FRISE「LA LAME DU MAT」】


フレンチマスロック界随一の名バンドCHEVAL DE FRISEの5曲入りEP。リリカルでフリーフォームなクラシックギターとジャズ的フレーバーもあるドラムが猛烈な高速変拍子で破れかぶれの決闘を繰り広げる、盛り上がる途中のクリムゾンをギュッと早送りしたような「欧州版HELLA」といったスタイルの1stを引っ提げて突如登場し、世界中のポストロッカーを絶句の嵐に巻き込んだこの二人組、ここでは少し落ち着いて詩情面をしっかり聴かせる感じにシフトしてきました。焦って身悶えするパコ・デ・ルシアといつになくドラマティックになっている吉田達也がART BEARSのことを思いながら牽制しあって丁寧に抽象画を描いているような(?)雰囲気。時にグボー!と盛り上がる場面もことさら映える。こりゃプログレッシャーにこそ是非聴いていただきたい人達です。UNIVERS ZEROがもっと常軌を逸したみたいなのをお探しの血気盛んな御仁はこれしかないっす。

  1月1日
▼おめでとうございます、本年も当サイト及びワタクシの関連仕事諸々をよろしくお願いします。奉公や兵役に借り出されたり飢餓でたやすく死んでしまったりすることのまずない今、一年として区切られた日数の12/31が1/1にリセットされるだけのことに正直めでたさを感じる意味が判らんですが、習慣は習慣として親戚とかに会えばサラッとおめでとうございますと言ってしまいます。何か知らんけどめでたい気もしてくる。さりとて元日、ただの一日。普通に部屋で宅録しただけでした。2月末にライヴを控えて新音源の制作を進めているドイモイのギター録りが、左右のチャンネルのチューニングの完全一致に徹底を期すためなかなかペースが上がらず(ちょっと録ってもボツにしまくり)、作業の合間に適当に弾き倒していたのがいい感じだったので思わず新ユニットにしてしまいまして、こちらで既に聴けます、よろしく。収穫はなし

【本日のレビューその1:JOSHUA LARUE「THE MIDATLANTIC」】


THE SORTSのギタリスト、ジョシュ大先生の2枚目のソロ。発売元のAFTERHOURSは最近エクスクルーシヴものにも日本語で値段とかプリントするようになってきましたね。これがオリジナルで他からのリリースはないらしいのでまあいいんですけど。内容はまたグッとラウンジーかつアダルトになりまして、素晴らしいなあ、トミー・ゲレロから黒っぽさを抜いたものとクラブジャズから鼻につくハイソ感を除いたものに、大人の男が肘先で語る翳りと優しさをドップリまぶした、実に奥ゆかしいグルーヴミュージック。音数は少なく見せつつも細部まで気配りにぬかりがなく、ホレこれ聴けと下世話に突きつけてこないながら俳諧の如くどこまでも味が深い。うまい豆腐にはワサビだけを少しつけて食う、というのと同じ感覚で、軽い刺激の波が心地よい洗練されたグルーヴをそのまま頂けます。これが単なる和みかといえばそうではなく、実は刺青ありまっせという隠れた威厳もちゃんと窺い知れる。平日は魂削って働いてるお父さんの休日の日曜大工みたいな趣き。すなわち勝負感は抑え目だが妥協もない。バンドやってる人のソロワークとしては完璧なる理想形でしょう。これ普通にUAとか好きですって人でも感動するんじゃないかなー。年に数枚の「良過ぎて参るCD」に早々と出会ってしまった。

【本日のレビューその2:F.H.C.「TRIANGULATE」】


昨年末から続くPOSEIDONシリーズその10。シリーズって何のことやねんという方のために今一度ご説明しますと、プログレ系アーティスト招聘やCDリリースを手掛けるPOSEIDONの方から「良かったらレビューに」とCDをドッサリ送って頂いたのを1枚ずつご紹介しているのであーります。さて今日のこれはサブレーベルとなるVITAL RECORDSリリースのブツで、スティック(タッピングのみで演奏する8弦ベース)とキーボードとコントラバスの札幌発三人組。ドラムレスながら低音二人が変拍子で強力なビート感を形成、キーボードはもっぱらポケーッとしたオルガンの音色やピアニカで淡々とウワモノを乗せる。TOWN AND COUNTRYがディシプリン・クリムゾン(あのイントロをパロった"Elephant Walk"なる曲も収録)をZNR風に改造したような、オチもなく真顔で延々ボケ倒すレコメンタッチのトイ・チェンバーになってます。小さい箱の中でゴムボールが各面にポンポンと跳ね返り続けるような、整然としつつ変則的で妙な躍動感を孕むミニマリズムが何とも愉快。短い1曲ずつがタカタカと大量に連なるテンポの良いアルバム構成も快適です。これ飄々とやってのけてるように聞こえるけど、目に見える緊張感を押し殺してシニカルなムード作りに徹する集中力は相当なものでしょう。ライヴで見たら凄そう。

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