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QUEENSRYCHE

アーティスト概要

アメリカでメタルが盛り上がらんとする82年にデビュー。超音波ハイトーンシンガーのジェフ・テイトを擁し、デビューEPはIRON MAIDENやJUDAS PRIESTを思わせる欧州的な湿りが正統派メタルリスナーに評価される。続く1stフルでシリアスかつ理知的な路線に舵を切り、脱落するファンもいたが独自の地位を築く。徐々に洗練が進み、コンセプトアルバム「OPERATION: MINDCRIME」でメタル隆盛の時代を制し(88年)、次作「EMPIRE」からのシングルカット"Silent Lucidity"がアンプラグドブームにバッチリはまってトップバンド扱いになってしまう(90年)。

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とはいえ元々コマーシャルさをメインとする音楽性でもなかったのと、グランジ/オルタナブーム以降に採用したダークな内省路線がメタラー受けせず、髪の長いメタルバンドが暗くなったところで市場にも受け入れられず、主要メンバーであったクリス・デガーモ(G.)も脱退して浮き沈みを繰り返す。

往年の正統派路線に戻って活力を取り戻したかに見えた(06年「OPERATION: MINDCRIME II」リリース)が、今度はシンガーのジェフ・テイトとその他のメンバーの不仲騒動が起き、バンド名の使用権を巡って裁判沙汰にまで発展。「ジェフ以外」のバンドは新たにトッド・ラトゥーレ(CRIMSON GLORYに在籍歴あり)を迎え、ジェフは多数のゲストミュージシャンの協力を得、2つのQUEENSRYCHEがほぼ同時期にアルバムをリリースするという珍事も起きる(2013年)。その後、莫大な金で「ジェフ以外」がQUEENSRYCHEの名を勝ち(買い)取り、他方ジェフは自らがコンセプトを考案した代表作のタイトルであるOPERATION: MINDCRIMEをバンド名として、それぞれ活動を継続。

個人的に最高傑作は86年の「RAGE FOR ORDER」。枝分かれ後はトッド・ラトゥーレの入ったほうを支持しています。

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ディスクレビュー

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QUEENSRYCHE

2013  CENTURY MEDIA

分家騒動のさなかに発表された2013年作。94年の「PROMISED LAND」以降はジェフ・テイトがなんとなく内省的なダウンビート感を好むようになり、低音で歌っても魅力のあるシンガーではあったものの、肝心の曲が(続く97年の「HEAR IN THE NOW FRONTIER」以降)いまひとつなことも多く、このまま「当人達のやりたいこととファンの聴きたいものが合致しないまま、ライブじゃ懐メロをやってくれるベテランバンド」になっていくのかーと誰もが思っていたところ、このアルバム。一気にヤル気とアクの強さを取り戻し、華麗なる復活を遂げております。

ダウナー要素は一掃され、往年に増してがっちりした鋼鉄筋肉質へと変化。新任Vo.のトッド・ラトゥーレが、基本的にはジェフ・テイトに声も歌い方もよく似ていながら、作ったような不自然さはなくて、有り余るパワーで全体の士気を高めている印象です。ちなみにFacebookの投稿を見ても非常にナイスガイ。いい人をもらったねえと、この人事は心から祝福しています。

その勢いで曲にも以前よりカッ飛ばし感みたいなものが乗ると同時に、そこでそのメジャーコード!?と思わず腰砕けになる凄い外し方を身につけてきて、これがまったくもって大正解。先行公開されていた"Redemption"のBメロ~サビの恐ろしいフックなど、ひねくれの極地だった頃のRAGEに勝るとも劣らんインパクトかと。キャリア30年超えにしてこの前進は恐れ入ります。

既存曲の焼き直し感は希薄だし、作曲のベースになる感覚が最近の音楽のパラダイムに染まってしまって「現役感はあるけど、あの味わいはどこ行った」と嘆かわしくなったりすることもなし。誰からも自分達らしいと思われる姿のまま数歩先に踏み込んだ「価値ある新作」として、また聴き応えある楽曲の集積として、凄く評価できる作品だと思います。この波に乗ったままわずか2年のインターバルで次作へと続く。

プログレメタル正統派メタルすごいハイトーン

CONDITION HUMAN

2015  CENTURY MEDIA

分家後第2弾となる2015年作。引き続きトッド・ラトゥーレがヴォーカル。前作より更にメタルキッズ的なマニアックさ・あやしさを増しており、もはや万人受けのど直球でもないながら、恐ろしく意欲的な内容になっています。

思えばQUEENSRYCHEって、運指の都合で変なところに♯や♭がついたような、微妙だがそこが引っかかりもするギターワークがたまに見られたものです。(たとえば「OPERATION: MINDCRIME」収録"Speak"イントロの開放弦交じりのフレーズなど)

あの感じがこのアルバムでは大幅に復権しており、どことなくばたばたしたツインリードも増量。むろん結果は良い方向(ワタシとしては)。冒頭曲の思いがけなさすぎる歌い出しなど、ヴォーカルラインのクセも同様の傾向でさらに深化。以上、つまるところQUEENSRYCHEっぽさの正体は、ジェフ・テイトでもクリス・デガーモ(G./結成から97年まで在籍)でもなく、マイケル・ウィルトン(G.)だったのではないかという結論に至っている現在です。

このアルバムからの先行公開曲は、のっそりしたギャロップビートにのっそりした刻みのリフが乗る"Guardian"単純だけど何だか型破りな、分家以降の冴えを感じまくります。ギターソロのあやしさはもう事故といっていいレベルですが、無意味に巧過ぎる若手が多い今、こんなのを堂々と聴かせてくれるのは前時代の人しかいないというありがたさすら漂うような漂わないような。

初めて彼らに触れる若い人にこれがどう受け取られているのか見当つきませんけども、忙しくツアーも廻っているようでなにより。近々LOUDPARKで見られる人が心底羨ましいです。完全スルーだった時期を経て、ここへきてリアルタイムで新作を気にするバンドのリストに入りました。

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