05 レコ発共催者・kiiiuのこと、ログメンとの対照性ほか
- 星 福沢君は「ナゴミハイツ」以前からkiiiuちゃんと接点があったんだよね。僕らkiiiuちゃんが今の状態になる前の活動を全然知らなくて、せっかくだから聞きたいな。
- 福
僕が賽の目(註:名古屋・矢場町にあったイベントスペース)にいた頃、お客さんで来てて、終わった後に話しかけられて「すいません、これ、私kiiiuと言います」ってCD渡されて。それがキッカケで。
聴いたら、すごい打ち込みっぽい事やってたり、ピアノも弾いてたり。じゃあライブ一回してみて下さいよって話をして、これ衝撃的だったんですけど、その最初のライブで基本的にはピアノを弾いて歌ってたのが、MC中に急に「最近、中国の笛を買ったんですよ」って言って箱から出してきて、吹き始めたと思ったら「ね」とか言って「じゃあ次の曲」とか言ってて、あ、これは頭おかしいって思って(笑)うわぁ!こいつすげー!ってなったのが出会い。その後「岐阜でライブやるからPA手伝ってくれ」って言われて行った時に見たら、もう何か宇宙になってた。その時は照明とかもいっぱい置いてさ。 - ki 「今日は宇宙船をやろうと思います」って言って、照明もいっぱい置いて、3、4回くらいそういう感じでライブをやったんですけど、途中でこれめんどくさいなってなって、照明光らせるのはやめて、ループステーションとシンセサイザーだけのスタイルになりました。
- 杉 照明を光らせてたときの演奏内容は?
- ki もうその時は、今と一緒です。
- 杉 じゃあピアノ弾き語りから突然ループに移行したの?
- 福 だからびっくりしたんですよね。こいつすごいな…って。もう音楽としてすごいって。最初は「すごい味わいのやつ来ちゃった…」と思った(笑)でもいきなりループを使い始めた時に、もうアーティストだなって。
- 星 ナゴミハイツでkiiiuちゃんを推したのも福沢君なの?
- 福 はい、そうです。絶対入れようと思って。でも僕が「これ入れた方がいいよ」って言う曲を、全部省くんですよ(笑)
- 星 その感覚ね、僕らも今すごい味わってる。
- 杉 今、レコ発に向けて練習してるんだけど、この曲何で音源には入ってないの!どうせプレスすんなら入れればいいのに!っていうのが何曲も。
- 星 そうそう。でCDの中身聴いてみたら、うわー!なにこの曲、めっちゃいい曲!でもライブではやらないんだ!っていう(笑)
- ki 音源として作るのと、ライブでやるのとやっぱ違う…なんていうのかなぁ。
- 福 そういう意味でもすごくアーティストなんですよねー。自分の本当にやりたい、今、ジャストナウな感じのことだけやる。
- 杉 いいのが出来たのにもったいないとかいう気持ちが全くないのがすごいよね。
- 福 僕なんか結構邪念があるから、これは絶対いいぞって思うものはどんどん出したいし、もっとやればいいじゃないって思うじゃん。そういうのが全くないのが、彼女のいいところでもあるんですけどね。
- 星 なぞだ。一緒に居て興味がつきない。
- ki 最近はログメンとやってて非常に楽しいです。
- 福 いやー面白いでしょうね。苦闘するよね。つい入っちゃう手癖みたいなのに対しても、そこのシンバルは抜いて欲しいとか(笑)
- 星 分かるー分かる分かる(笑)すっごい細かいとこだけど、ここはダメなんだなってところがあるよね。「あ、はい」としか言いようがないんだけど。バレンタインドライブ(註:活動再開後初めてのライブをここで行った)でも客席の福沢君に急に鉄琴叩かせた事あったよね、あれは申し訳ない事した。
- 福 そういえば、あれも指定されましたもんね。手で止めて短くミュートするとか。
- ki 音の長さに対する感覚がとても細かいですよね。
- 星 ドンとチャッとメロディーがあったらいいとか、大雑把なこと言ってるのにね(笑)
- 杉 それを成り立たしめるには、それをどう鳴らすかですよ。音色はどうであれ、音のありようは大事ですよ。まあ簡単に上手くはいかないんだけど。たまにソロで演奏する時も、ログメンでも一緒なんだけど、ガタガタガターって崩壊しながら、「想像してください、こんな音楽でございます」って頭の中に訴えかけて何とかしようとするっていう。
- 星 そうだねーそれすごい分かるなぁ。杉山君は例えギター一本でやっても、音源になってる音をギター一本でどうにかして網羅しようっていう感じの事やるよね。フォークで弾き語りやりますって人はそんなんじゃなくてさ、ジャーンジャーンって鳴らして、それギターでも大太鼓でも構わんって感じで歌を歌うんだけどさ、杉山君は頭の中に鳴ってるやつを出来るだけ、持ってる物で再現しようとする。普通にやればいいのに(笑)
- ki その杉山さんの、やろうと思ってる事(と実際の状態)との距離感が面白くって、私はそこがすごく好きなんですけどね。
- 杉 でもきっと、それを上手に実現してる人を見たら、おおすごいって喜ぶと思うよ(笑)
- 福 でも僕はハプニングありきで好きみたいな所ってあって、例えばカタリカタリ(2000年代初頭から名古屋近郊を中心に活動しているトリオ)とか、すごくクオリティの高い事やってるんだけど「すいません、ちょっと間違えました」って言って途中で止めちゃうあたりもすごい好きで。
- 星 カタリカタリが与えた影響は本当に大きいよねきっと。僕も初めてPAした時なんだこれって思った。あの感じ、面白いよね。ハプニングっていうのか良く分からないんだけど、色々と楽器を持ち替えたり、間違えたりしながら、最終的には独特のコーラスワークに包まれてとにかくそれで良かったんだみたいな気持ちになる。
- 福 「ナゴミハイツ」を作ったのもそういう所なのかも。トータル的に好きっていう、完璧だから好き!とかじゃなくて、例えばログメンで言えばハプニングありきで好き。ライブ感って何だろうって考えた時に、それが結構究極なんじゃないかって。危なっかしさがライブ感なんじゃないかって(笑)
- 杉 まあでも、上手に成り立つか成り立たないかっていう次元じゃなくて、今回はどういう気分で、この曲をどういう形で提示してくるか?ていうのが本来のライブ感で…我々はそこまで行かなくて、道がちゃんとあるかないか、橋が落ちるか落ちないかみたいな…
- 福 それはそれで僕はありかなーって思うけど。
- ki この音源を聴いてからライブを見たら、この音を全部実際にリアルタイムで再現するんだーっていう驚きや感動はきっと最初にありますよね。ちゃんと手足使って出してる!っていうのが。ハプニングもあるんですけど、ここはこうキメようと決めた場所がほんとにちゃんと決まった瞬間のたまんないかっこよさみたいなのもすっごいあって、両方美味しい感じ、が最高に良い。
- 福 でもキマリすぎると何かちょっとそれも寂しい感じするなぁ(笑)
- 星 なるほど。この間(註:インタビューの約1か月前)東京行ったときも、開始早々にテーブルから物が落ちたり、決めてた演出が本番では飛んじゃったりして、いろいろうまくいかなかったんだけど、終わった後には「あ、何かいいライブだったな」ってなったりはした。
- ki そう、なんか観客の人たちも満足感がすごかったんですよ。
- 福 その話、名古屋の音楽シーンにいる自分としては、願ったり叶ったりみたいな所があるなあ。東京の人って完璧にやんないとダメだっていうか、仕上がったものを提示しないと喜んで貰えないってイメージがある。
- 杉 いつもだいたい、PA環境の激変で平常心が失われるのがハプニングのきっかけになってるし東京もそんな感じだったから、今度のレコ発に向けては本番に近い環境を再現すべく、近所の公民館の音楽室とかで練習してます。
- 福 ああ、ツイッターで見ました!そういう事だったんですね。
- ki 公民館練習はすごいですよ。入ってから1時間かけてセッティングして、やっとできる状態になるっていう。で、午後の3時から始まって10時までとか。
- 福 え!めちゃくちゃやってる!!!部活みたいじゃん(笑)
- 星
もう建物が閉まるギリギリまでやってる。途中でパン食べたりしながらね。楽しいよ、ほんと部活みたい。
ところで今回率先してグイグイ共同レコ発を牽引してくれてるkiiiuちゃんだけど、バレンタインドライブで初めて見てくれた時から、そんな風に興味を持ってもらえたの? - ki
ログメンっていう二人がいてめちゃくちゃ面白いんだよって「ナゴミハイツ」の制作に関わる人たち周辺から噂に聞いてて。へー面白そうだなーって思ってて、実際一番最初に聴いた音源は、収録された“ステイルメイト”で、あれを聴いた時にめちゃくちゃ好みで、関連性があるな〜が延々頭にぐるぐる残るんですよね、フレーズとして。意味無いんですけど、意味がないから余計に残っちゃって、出てくるんですよね。
ログメンのライブが見れるっていう事ですごい楽しみで、ステージにどんどん色んな物が組み立てられていって、もう期待感MAX。そのMAXの状態で、演奏自体も完全に、私あの時くらい興奮した事中々ないぞって思うくらいの興奮感があったんですよ。何だろう、目の前でパズルがパンパカパンパカ凄い気持ちよく組み立てられていく感じとか、メロディの美しさももちろんあるし、歌詞も(意味の上では)何でもないんだけど、何でもないものがただ提示されていってる感じ、そこに変にメッセージ性があるわけでもない感じ、とか何だろうな、すごく面白くって、もう興奮の3〜40分だった。 - 福 なるほど、今もちょっと興奮気味(笑)
- 星 と、とにかくありがとう。(笑)
- ki それ以来ログメンは私の中でずっと面白い事をやってる人たちっていう位置づけがずっとあるし、でも一つ一つの音の決め方であったり、細かく作る杉山さんの組み立ての美しさ、そして星さんのフリーダムな入り方、それを受け止める二人の感じが素晴らしいですね。なんかよく分からないこの二人だから出来上がるこの感じが…
- 福 よく分からない二人って(笑)
- ki
よく分からないですよ〜。だって独特すぎるんですもん、一人一人が。
福沢さん、ログメンを呼び戻して頂いてありがとうございます! - 杉 それは我々からも言わなきゃならない。
- 福 でもナゴミハイツをやって良かった!と思うのは、ログメンが復活して音源を出したっていう事がかなり大きいですよ。
- 杉 お声がかからなければプラス7〜8年かかってたかもね。
- 星
ほんとうに!ありがとうね福沢くん。
それでは最近めでたく父となった福沢くんにお祝いの品を渡しつつ、今回のインタビューもこれにて締めさせて頂きます。お疲れ様でした! - 福 え!お祝いもらえるんですか!ありがとうございました(笑)
(完)