05 音楽的バックグラウンドとメンバー二人の巡りあわせ
- 高 自分みたいなおっさん世代の人たちとかは、やっぱりちょっと昔のテクノと近いのではないかという事を、そっちに寄せたいような意見を言ってくる人がいる気がするんだけど、実は全然そういう辺りを参照しているわけではないと思って。そこがまた面白い所なんだけど、もうちょっとナチュラルボーンで、例えばゲームとか普通に子供の頃からやってきた人たちが、限られた機材でやってしまったら、この二人でやってみたらなんかこうなってしまったみたいな感じなのかな?
- 杉 僕の場合は(ゲーム音楽からの影響は)5、6段階間接的に掘っていったらようやくある、っていうくらいかもしれないです。
- 星 そういう趣向は意外と、杉山君と僕とで表向き全然違うような感じなんですけど。でも記憶に残る趣味を辿っていくと、意外と好きなものとか見てるものとか近いんですよね。杉山君も全然ゲームやってないと言いつつ、異常に難しいゲームをここ数年になって急に全クリしたり…。アニメとかもピンポイントで好きなのかぶってました。
- 高
そういうのって、直接触れてなくても、同時代の空気として感じていたっていうのってあるじゃない。だからそんなのやってないのになんか出てきちゃうとかね。
楽曲を作る上でのベースみたいなものは全然別の所にあって。
で、杉山君なんてさ、砂金を採集してる人みたいな…(笑)めちゃくちゃ色んなCDを聴いて、人が絶対こんなもん見向きもしないような物もさ、相手にされないような物も全部聴いて、今日は砂金3粒くらい採れた、みたいな。 - 杉 (笑)
- 星 夜な夜なブックオフに通っては砂金を(笑)
- 高 そうやって色んなものを聴いてきて形作られてきた楽曲の原型みたいものがある。曲作る人って自分の中で何かしら原型を持って、それに気持ちよくはまっているかの物差しみたいものを持ってる気がするんだけど。杉山君と星君の中のそういうものを、こういう音像でぽーんと出せちゃったのが、ログメンの特殊性じゃないのかな。だってDOIMOIやってる人じゃない。メインで。こっち(ログメン)がメインではない。だけど片手間にやったというものには全然聴こえないし、むしろそういうものも色々積み重ねてきたのがこっちで思わず花開いてしまって、ポピュラリティを獲得してしまってるのでは。あとはもうお二人の個性が本当にいい形で…
- 星 出てますか?
- 高 うん、必然だろうけどいい出会いだと思う。気持ち悪いかそんな言い方(笑)
- 杉星 あっはっはっは
- 高 二人とも、ソロをやるとまたログメンとは違う作風だし、二人でやったからこんな事になったんでしょ?
- 杉
そうですね。自分は「どこにいってもこれが出てしまう」ってのがないので、ある意味ログメンは星君を想定して作っているって部分は結構あります。
“ネイティブアメリカンの友人”とかは最初に出来た曲なんですけど、星君と一緒に何かやるってなった時に、どういうの作ろうかなーと思って。これは言った事ないと思うんだけど、大学時代のバンドサークルの先輩でちょっと星君に似たタイプの、中性的なかわいい感じの人がいて、男で、その人が部内のイベントでかせきさいだあのコピーをやってたんですよ。普通に喋るようなトーンでラップしてて。星君はその感じだなと思って、ラップで作ってみました。 - 星 へぇ!はじめて聞いた!そしていきなりラップで来たか!と思いましたね。
- 高 そっかー最初にこれなんだー。杉山君が作ってきて、これ星君に歌えっていう(笑)
- 杉 これ本当は二人で声出したいんですけど、自分が絶対無理な…ドラムに対してズレ続けるフレーズをキーボードでやってて、さらに声までは、何度か試みてるんですけどどうやっても無理で。
- 星
結果一人で歌う事に。なんか変な曲ですもんね。最初きた時、爆笑しましたもん。本当…思ってたんと全然違って、これで来たかー!ってすごい思いましたね。
今はやっとそういうものに対して自分の立ち位置を見つけられる感じになれてきてますけどね。曲が増えて、対抗手段がある程度出来てきたから。でも当初はもう「出来たから!」ってものを覚えるのに必死で、これを弾きながら歌うのかーってなってました(笑) - 杉 (笑)これ以外やりようがない構造だもんね、曲的に。
- 星 そうそう。回数数え系のやつは(笑)
- 高 でもライブで見るとある種のダイナミズムがあるからね、演奏してる姿には。変だけどね(笑)
- 杉星 (笑)
- 星 “ネイティブ~”を作る時はでも、今みたいに向かい合って演奏するっていうイメージはなかったはずだよね?
- 杉 どうやるかまでは。二人分の手足でできそうだという事だけを考えて。
- 星 そうか、最初は押すと和音がいきなり出るカシオトーン(PT-80)が楽器のメインだったもんね。それと僕のマイクロコルグしか置いてなくて。杉山君は本物のバスドラ踏んでたなあ。ドラムセットを半分借りて、やれる範囲だったんだなー…懐かしい…。
- 杉 これぐらい(といって小さい四角形をかたどる)の台でやってたもんね。
- 高 この“ネイティブ~”がアルバムの頭にあるってのが、一つのツカミでもあるんだけど、なんというか、ベースの割と太い感じでわーっと来るのと、ドラムがね…
- 杉 ずれてる?(笑)
- 高 いやいやいや(笑)あのスネアが結構太くていい音してるんだよねぇ。
- 星 録音されてるスネア、とってもいい音ですよね、何気なく買ったおもちゃみたいなスネアなのに。5000円くらいの、ミニドラムセット用のやつで、チューニングなぞ一度もした事がないのに。
- 高 でもあれはやっぱりかねがね思っているんだど、生で聴いてもいい音。
- 星 他の楽器がしょぼいからよく聞こえるのかなぁ?
- 杉 でもミックスでのスネアの音作りはそこそこ頑張ってるけどね。コンプの深さとか、上からしかマイク立ててないので、スナッピー代わりにゲートリバーヴで音乗せたりとか。
- 星 なるほどねー。僕もあの音好きだよ。サンプリングしたいぐらい。
- 杉 おーありがとう。
- 高 のっけからあのどしっとした音がくると、おぉ!ってなるよね。これ例えば作業画面で見た時に、同時発音してるものが、割とうまくばらけてるような感じになってるのかなーとちょっと思ったりしたんだけど。かなり色んなリフがこう絡んで…
- 杉 そうですね。この曲は。線の数は少ないんですけどね。
- 星 ばらけるのは実際、一度にたくさんはやれないからっていう事情もあると思うんですけど…。
- 杉 空いた所に詰めていくっていう。
- 高 多分その辺、なんというか数学的な感じがあって、自分には出来ないってのはあって。
- 星 その後最初にできたバージョンより、今はだいぶ豪華になってますね。隙間にやれる事はちょっとずつ足して。
- 高 でも隙間に入れれてもさ、それ演奏できるって事も条件なわけでしょ?
- 杉 演奏できそうなものだけを足してます(笑)
- 星 でも“デート”とか、杉山君途中でバチを投げ捨てる場面あるよね?
- 杉 ああ、こっから先使わんっていう時には。
- 高 (笑)
- 星 投げないと間に合わない(笑)
- 杉 あれは、見てる面白みも若干あるかなと。
- 星 うんある。すごいある。僕は最前列で見てるからわかる、面白いよ。(笑)
06 〆
- 星 …だいたいとれ高オッケーだと思います。
- 杉 結構長いこと、文字起こしできるかって問題が(笑)結局全編褒めて頂いてばかりで恐縮でございます。
- 星 でもインタビューってそんなものなんだろうと思って甘んじて(笑)
- 高 もちろん正直な気持ちでしかないんですが。人が見た時に褒めてばかりのインタビューってのはね。もうちょっとこここうなんですかとか突っ込めるような感じがいいかなとも思ったんだけど。
- 杉 でも根拠のない褒めではないというか、高倉さんのアンテナに従って出たコメントだという感じがするので良かったです。だいぶ細かい所まで聴いて頂いて、それが嬉しい。
- 高 それだけ聴きどころ満載のものが出てきてしまったっていう。色んな人に聴いてもらえたらいいですね。
- 星 ほんと色んなジャンルの方に聴いてもらえたら嬉しい。高倉さんから頂いたコメントで、〆とさせていただきましょう。
- 杉星 ありがとうございました!
- 高 おめでとうございます。
(完)