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JACK IN THE BOX

ディスクレビュー

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ROCKJUMPING

1993  CRIMINAL RECORDS

続くフルアルバムのレビューを先に書きました。

こちらは93年リリースのデビューEP。のちに多数のデモ音源を含む2枚組アンソロジーに丸ごと収録されるも、オリジナル盤ともども今は入手困難でガッツリ値が張ってしまっています。

Discogsでしつこくチェックし続けて数カ月、ようやく相場の半額ちょいくらいの出品があったので即ポチポチポチとやってやりました。レアなものをお勧めしてもしょうがないんですが、配信版は普通に買えることだし、日本語のレビューはたぶん見つからないであろうので、いつかこのバンドのことが気になって情報収集しまくってここに辿りつくかもしれない人のために書いておきます。

ダーク&へヴィというテーマに貫かれながらも知性の効いたアレンジで豊かな音楽性を示した「STIGMATA」には、個人的に大いなる衝撃を受けました。その2年前ということで、煮崩れる前のルーツ(メタル)成分がより出ているのを期待したところ、収められていたのはむしろ、より臆面ないナマナマしさでALICE IN CHAINSフォロワ―をやっている姿。ヴォーカルのハーモニーやギターのワウ入り単音フレーズなど、「STIGMATA」ではそこまで露骨じゃなかったAIC模写が要所要所に。

むろんコピーの範疇に収まらないひとクセも大量に含んでいて、危ない橋を渡るような音使いのあとで思いがけないところにズドッと着地するハイセンスはこの時点で既に健在。硬質感・へヴィネスとメロディックさが乖離せず両立する具合はオーストラリアのSHIHADの初期にも多少通じるような(表現内容自体は違う)。スパーッと開けて軽くなる場面やクリーンのアルペジオなんかでは、ルーツにあるらしいKING'S X色も顔を出す。

という具合で聴きどころはしっかりあるものの、総じて「AICの世界観を目指す途中で独自色がこぼれ出ている」という域ではあります。あとサウンドプロダクションはこの時期のアベレージより若干物足りないくらい(リバーブかなり深め、かつヴォーカルのコンプ薄めでローカル感有)。メンバーの関連作品にも手を出すくらいのファンになったのでなければ、アンソロジー盤「STIGMA MMX」のデータ版でまず聴いたうえで、プレミア価格で現物を所有したいかどうか落ち着いて考えてもいいのでは、という私感です。なにぶん全5曲で4000円とかしてしまうので。と言いつつ自分自身はたいそう満足しております。

オルタナオルタナメタルグランジ

STIGMATA

1995  PANSER RECORDS

グランジブームが世界中のミュージシャンに対して「これじゃないと食えない」または「いま巷にはこれしかない」という脅しをかけたおかげで、それなりにオーヴァーグラウンドでの活動を標榜していたこの頃のバンドの多くが、まっすぐ好きなものを追求するままに作ったのではない、「やってみっか」的なこの頃だけのダークさ・変化球・野生感 etc.をもった作品を残してくれているのが、ブーム衰退から20年は経とうという今でも興味の尽きないところです。

今回のこちらはノルウェーのバンド。93年のデビューミニに続く唯一のフルアルバムです(のちにデモ音源を含むコンプリートディスコグラフィもリリース)。

ブーム後発組にも「もさもさした16ビートの野生性で押すPEARL JAM系」、「サバス+ツェッペリンを匂わすSOUNDGARDEN系」、「言い切りの繰り返し&微妙なところも全部パワーコードでいくNIRVANA系」(意外とこれが一番少数)、そこに随時JANE'S ADDICTIONぽいトロピカルファンクが混じってきたり、といろいろタイプがありますが、このJACK IN THE BOXは「元メタルを匂わせる、ハーモニー+整合感のALICE IN CHANS系」に大別されるでしょう。中から人形が飛び出すびっくり箱を意味するバンド名も、おのずとAICの"Man In The Box"を想起させます。

ただし、なんとなく耳にする感じをつないで高品質にまとめた程度のフォロワーではない。グランジに感化されてうまくいったメタル界隈の作品群の中でも、最高峰といえる内容じゃないでしょうか。

ダウンチューニングと休符の重力を有効に使いつつ、調性感のスキマを突くような複雑なハーモニーを乗りこなすギターリフがかなり普通でなく、強烈に耳を引きます。バッキングの域を超えてもはやサブヴォーカルともいえる存在感。初期デモはKING'S Xの影響が色濃かったそうで、なるほど納得です。気になり過ぎて調べたところ、このギタリスト、以前はBLIND ORPHANSというプログレメタルバンドを率いていたとのこと。(←リンク先のサイト、泣けるのでぜひ読んでください)

入り組んだリフにリズム隊がビッタリはりついただけでも充分そこらじゅうがフックだらけになるんですが、さらにその上をまたぐ明快な曲展開、新鮮にして必然さもある転調使いのおかげで、情報量のわりにすんなりポイントが伝わりやすい曲ばかり。長尺展開やグルーヴ推しの表現にも不足はなし。ダーク&へヴィ+αというお題のもと、知力・体力・アイディアがどうにも高次元で実を結んでおります。感服。

ヴォーカルはキレイにメロハーを歌えたりもしそうな、ざらつきと透明感を自由に使い分けるこれまた逸材。1曲だけテノールみたいな声で歌ってるのがあって、それも全然成立してます。たまーにレイン・ステイリー(ALICE IN CHAINS)を模写したり、ダグ・ピニック(KING'S X)になりきってソウルフルなシャウトをかましたりと、芸を持て余すほどの芸達者ながら、その後のキャリアではベース専任でブラックメタルバンドに参加したりと、正体不明なところも。

当時よほど売れたらしく、本国では未だに幻のスーパーバンドとして支持があるようで、おかげでCDも高騰せず中古で入手できます(冒頭でちょっと書いたディスコグラフィ盤は少数プレスだったらしく相場4000円超え)。ちなみにこの1枚で解散した後、ヴォーカルだけ入れ替えて名前もAUTOPULVERと改めて数作リリースしており、そちらはエレクトロ要素を含むパワーポップ路線。ベーシストはノルウェーなだけに再結成TNTに参加したりしています。

オルタナメタルグランジ