scsidnikufesin

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2016-10-03

アーティスト概要 (I MOTHER EARTH)

カナダのオルタナヒーロー的バンド。93年デビュー。1stアルバム「DIG」でいきなり地元の音楽アワード・JUNO AWARDのベスト・ハードロック・アルバム賞を、カナダといえばのRUSHをさしおいて獲得。(RUSHとは以後、密な関係が続く)

初期はややハードロック寄りの感触強めの、ジャム/ファンク要素(ラテンパーカッションがレギュラー参加)もあるシブめかつ祭祀的なグランジサウンドを身上としたが、チャートを戦えるポップセンスもあわせもっていた。

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複数のシングルヒットを放った2nd「SCENERY AND FISH」は本国でダブル・プラチナムに輝き、当時日本でも話題になる(B!誌で)。しかしデビュー後早くから、創作活動に関われないことに不満があったシンガーのエドウィンが脱退。後任を得て更にアルバム2枚を制作するも、レーベルやマネジメントとの軋轢、メンバーの相次ぐ病気・怪我、アーティスティック路線を突き詰めた結果のセールス不振などが重なり、2003年におこなわれた4時間近くに及ぶキャリア集大成的ライブを最後に活動が止まる。

2012年からライブ活動を再開しsoundcloudで新曲も発表。2016年には代表作となった2ndのリリース20周年として初代シンガーが復帰している。

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2016-09-29

CONDITION HUMAN
QUEENSRYCHE

2015  CENTURY MEDIA

分家後第2弾となる2015年作。引き続きトッド・ラトゥーレがヴォーカル。前作より更にメタルキッズ的なマニアックさ・あやしさを増しており、もはや万人受けのど直球でもないながら、恐ろしく意欲的な内容になっています。

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思えばQUEENSRYCHEって、運指の都合で変なところに♯や♭がついたような、微妙だがそこが引っかかりもするギターワークがたまに見られたものです。(たとえば「OPERATION: MINDCRIME」収録"Speak"イントロの開放弦交じりのフレーズなど)

あの感じがこのアルバムでは大幅に復権しており、どことなくばたばたしたツインリードも増量。むろん結果は良い方向(ワタシとしては)。冒頭曲の思いがけなさすぎる歌い出しなど、ヴォーカルラインのクセも同様の傾向でさらに深化。以上、つまるところQUEENSRYCHEっぽさの正体は、ジェフ・テイトでもクリス・デガーモ(G./結成から97年まで在籍)でもなく、マイケル・ウィルトン(G.)だったのではないかという結論に至っている現在です。

このアルバムからの先行公開曲は、のっそりしたギャロップビートにのっそりした刻みのリフが乗る"Guardian"単純だけど何だか型破りな、分家以降の冴えを感じまくります。ギターソロのあやしさはもう事故といっていいレベルですが、無意味に巧過ぎる若手が多い今、こんなのを堂々と聴かせてくれるのは前時代の人しかいないというありがたさすら漂うような漂わないような。

初めて彼らに触れる若い人にこれがどう受け取られているのか見当つきませんけども、忙しくツアーも廻っているようでなにより。近々LOUDPARKで見られる人が心底羨ましいです。完全スルーだった時期を経て、ここへきてリアルタイムで新作を気にするバンドのリストに入りました。

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プログレメタル正統派メタルすごいハイトーン

2016-09-28

QUEENSRYCHE
QUEENSRYCHE

2013  CENTURY MEDIA

分家騒動のさなかに発表された2013年作。94年の「PROMISED LAND」以降はジェフ・テイトがなんとなく内省的なダウンビート感を好むようになり、低音で歌っても魅力のあるシンガーではあったものの、肝心の曲が(続く97年の「HEAR IN THE NOW FRONTIER」以降)いまひとつなことも多く、このまま「当人達のやりたいこととファンの聴きたいものが合致しないまま、ライブじゃ懐メロをやってくれるベテランバンド」になっていくのかーと誰もが思っていたところ、このアルバム。一気にヤル気とアクの強さを取り戻し、華麗なる復活を遂げております。

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ダウナー要素は一掃され、往年に増してがっちりした鋼鉄筋肉質へと変化。新任Vo.のトッド・ラトゥーレが、基本的にはジェフ・テイトに声も歌い方もよく似ていながら、作ったような不自然さはなくて、有り余るパワーで全体の士気を高めている印象です。ちなみにFacebookの投稿を見ても非常にナイスガイ。いい人をもらったねえと、この人事は心から祝福しています。

その勢いで曲にも以前よりカッ飛ばし感みたいなものが乗ると同時に、そこでそのメジャーコード!?と思わず腰砕けになる凄い外し方を身につけてきて、これがまったくもって大正解。先行公開されていた"Redemption"のBメロ~サビの恐ろしいフックなど、ひねくれの極地だった頃のRAGEに勝るとも劣らんインパクトかと。キャリア30年超えにしてこの前進は恐れ入ります。

既存曲の焼き直し感は希薄だし、作曲のベースになる感覚が最近の音楽のパラダイムに染まってしまって「現役感はあるけど、あの味わいはどこ行った」と嘆かわしくなったりすることもなし。誰からも自分達らしいと思われる姿のまま数歩先に踏み込んだ「価値ある新作」として、また聴き応えある楽曲の集積として、凄く評価できる作品だと思います。この波に乗ったままわずか2年のインターバルで次作へと続く。

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プログレメタル正統派メタルすごいハイトーン

2016-09-28

アーティスト概要 (QUEENSRYCHE)

アメリカでメタルが盛り上がらんとする82年にデビュー。超音波ハイトーンシンガーのジェフ・テイトを擁し、デビューEPはIRON MAIDENやJUDAS PRIESTを思わせる欧州的な湿りが正統派メタルリスナーに評価される。続く1stフルでシリアスかつ理知的な路線に舵を切り、脱落するファンもいたが独自の地位を築く。徐々に洗練が進み、コンセプトアルバム「OPERATION: MINDCRIME」でメタル隆盛の時代を制し(88年)、次作「EMPIRE」からのシングルカット"Silent Lucidity"がアンプラグドブームにバッチリはまってトップバンド扱いになってしまう(90年)。

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とはいえ元々コマーシャルさをメインとする音楽性でもなかったのと、グランジ/オルタナブーム以降に採用したダークな内省路線がメタラー受けせず、髪の長いメタルバンドが暗くなったところで市場にも受け入れられず、主要メンバーであったクリス・デガーモ(G.)も脱退して浮き沈みを繰り返す。

往年の正統派路線に戻って活力を取り戻したかに見えた(06年「OPERATION: MINDCRIME II」リリース)が、今度はシンガーのジェフ・テイトとその他のメンバーの不仲騒動が起き、バンド名の使用権を巡って裁判沙汰にまで発展。「ジェフ以外」のバンドは新たにトッド・ラトゥーレ(CRIMSON GLORYに在籍歴あり)を迎え、ジェフは多数のゲストミュージシャンの協力を得、2つのQUEENSRYCHEがほぼ同時期にアルバムをリリースするという珍事も起きる(2013年)。その後、莫大な金で「ジェフ以外」がQUEENSRYCHEの名を勝ち(買い)取り、他方ジェフは自らがコンセプトを考案した代表作のタイトルであるOPERATION: MINDCRIMEをバンド名として、それぞれ活動を継続。

個人的に最高傑作は86年の「RAGE FOR ORDER」。枝分かれ後はトッド・ラトゥーレの入ったほうを支持しています。

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プログレメタル正統派メタル

2016-09-28

STIGMATA
JACK IN THE BOX

1995  PANSER RECORDS

グランジブームが世界中のミュージシャンに対して「これじゃないと食えない」または「いま巷にはこれしかない」という脅しをかけたおかげで、それなりにオーヴァーグラウンドでの活動を標榜していたこの頃のバンドの多くが、まっすぐ好きなものを追求するままに作ったのではない、「やってみっか」的なこの頃だけのダークさ・変化球・野生感 etc.をもった作品を残してくれているのが、ブーム衰退から20年は経とうという今でも興味の尽きないところです。

今回のこちらはノルウェーのバンド。93年のデビューミニに続く唯一のフルアルバムです(のちにデモ音源を含むコンプリートディスコグラフィもリリース)。

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ブーム後発組にも「もさもさした16ビートの野生性で押すPEARL JAM系」、「サバス+ツェッペリンを匂わすSOUNDGARDEN系」、「言い切りの繰り返し&微妙なところも全部パワーコードでいくNIRVANA系」(意外とこれが一番少数)、そこに随時JANE'S ADDICTIONぽいトロピカルファンクが混じってきたり、といろいろタイプがありますが、このJACK IN THE BOXは「元メタルを匂わせる、ハーモニー+整合感のALICE IN CHANS系」に大別されるでしょう。中から人形が飛び出すびっくり箱を意味するバンド名も、おのずとAICの"Man In The Box"を想起させます。

ただし、なんとなく耳にする感じをつないで高品質にまとめた程度のフォロワーではない。グランジに感化されてうまくいったメタル界隈の作品群の中でも、最高峰といえる内容じゃないでしょうか。

ダウンチューニングと休符の重力を有効に使いつつ、調性感のスキマを突くような複雑なハーモニーを乗りこなすギターリフがかなり普通でなく、強烈に耳を引きます。バッキングの域を超えてもはやサブヴォーカルともいえる存在感。初期デモはKING'S Xの影響が色濃かったそうで、なるほど納得です。気になり過ぎて調べたところ、このギタリスト、以前はBLIND ORPHANSというプログレメタルバンドを率いていたとのこと。(←リンク先のサイト、泣けるのでぜひ読んでください)

入り組んだリフにリズム隊がビッタリはりついただけでも充分そこらじゅうがフックだらけになるんですが、さらにその上をまたぐ明快な曲展開、新鮮にして必然さもある転調使いのおかげで、情報量のわりにすんなりポイントが伝わりやすい曲ばかり。長尺展開やグルーヴ推しの表現にも不足はなし。ダーク&へヴィ+αというお題のもと、知力・体力・アイディアがどうにも高次元で実を結んでおります。感服。

ヴォーカルはキレイにメロハーを歌えたりもしそうな、ざらつきと透明感を自由に使い分けるこれまた逸材。1曲だけテノールみたいな声で歌ってるのがあって、それも全然成立してます。たまーにレイン・ステイリー(ALICE IN CHAINS)を模写したり、ダグ・ピニック(KING'S X)になりきってソウルフルなシャウトをかましたりと、芸を持て余すほどの芸達者ながら、その後のキャリアではベース専任でブラックメタルバンドに参加したりと、正体不明なところも。

当時よほど売れたらしく、本国では未だに幻のスーパーバンドとして支持があるようで、おかげでCDも高騰せず中古で入手できます(冒頭でちょっと書いたディスコグラフィ盤は少数プレスだったらしく相場4000円超え)。ちなみにこの1枚で解散した後、ヴォーカルだけ入れ替えて名前もAUTOPULVERと改めて数作リリースしており、そちらはエレクトロ要素を含むパワーポップ路線。ベーシストはノルウェーなだけに再結成TNTに参加したりしています。

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オルタナメタルグランジ

2016-09-24

アーティスト概要 (MERCIFUL FATE)

NWOBHMと地続きのタイミングでデンマークから現れた、オカルティック様式美メタルの家元。82年デビュー。

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KISSメイクとブラックメタルのコープスペイントの間をいく白塗り+隈取りのシンガー、キング・ダイアモンド(ソロ名義でも活動)の完全に裏声なハイトーンと、いわゆる泣きではないホラーファンタジー風の大仰な演出が施された楽曲が特徴。独特すぎてフォロワーの列は生まれなかったものの、スウェーデンのCANDLEMASS、アメリカのSAVATAGEらと並んで、パワーや感動で押し切らない暗黒メタルの裾野を広げた。

「デトロイト・メタル・シティ」以降、日本のお茶の間に定着する「メイク、悪魔/破壊、シャウト、うさんくさい」というへヴィメタルのイメージに最も近いかも知れない。が前述のとおり決してへヴィメタル代表ではない。

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様式美・クラシカルメタル

2016-09-24

TIME
MERCIFUL FATE

1994  METAL BLADE

94年リリースの再結成第2弾。スラッシュメタルブームを経てのグランジムーヴメント真っ只中という制作時期はほぼ影響していないようでいて、基本のオカルト様式美テイストに心なしか時代なりのソリッドさとねっとり度を増した質感になっているような。

当時さほど騒がれた記憶はないのですが、時の試練を経た今では傑作扱いになってるらしく、これだけ曲が立っていればそれも納得です。

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あくまで基本路線を突き詰めた頂点ということで、BLIND GUARDIANでいうところの「IMAGINATIONS FROM THE OTHER SIDE」、MORBID ANGELなら「COVENANT」の感覚でしょうか(=バンドの名刺代わりたるインパクトは初期作に譲るが、金太郎飴的ダレ感が漂う手前で洗練の極致にある)。
御大キング・ダイヤモンドのインチキハイトーンはというと、別段逞しさを増すこともなく、堂々とあやしさ全開。コーラスワークに相当凝った場面も多くあり、大勢のキング先生に一度に責められる感覚はちょっと凄いです。

ソリッドだねっとりだという印象も、単にサウンドプロダクションによるところなのかも知れないのですが。像がぼやけるほどのリヴァーブは掛けず、ギターはムッチリ太いが異常なフルレンジではなく、トータルの圧縮感が今よりまだまだ抑え目の90年代メタルサウンドで録れてます。初期作は80年代特有のバシャア...と伸びてアタックにも欠ける例の音作りが味わいでもあり、聴きづらくもあって、自分の世代的にはこっちのほうが俄然ありがたい。

この頃はMORGANA LEFAYやTAD MOROSEなど、シンプルな興奮に解を求めないねっとりミステリアスメタルが、世のダーク/へヴィ礼賛ムードの恩恵を受けて健闘していた時期でもありました。こうして90年代サウンドに収まったMERCIFUL FATE節を聴くと、その手のスタイルの影響源として彼らの存在も大きかったんだなということがわかりやすく認識されます。

アートワークの面では、ファンタジックなイラストでいくスタイルを捨てた、黒地+頭蓋骨写真のみという潔さで、シンプルさの重みでどこまでいけるか的なこの頃の空気を、これまた反映していたのかなと思います。ということでリアルタイムでメタラーだった人には色々懐かしい要素も多い1枚。1曲目は「へヴィメタルシンジケート」で流れたなあ~と買って聴いて思い出しました。

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様式美・クラシカルメタル

2016-09-23

TWO TRAINS
TWO TRAINS

2004  DUPLICATE RECORDS

90年代のゴシックメタル黎明期からノルウェーにいた、トロンボーン入り超デカダンゴシックの名バンド・BEYOND DAWNの元メンバーが一瞬やっていたバンドです。これは2004年に唯一リリースしたフルアルバム。

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BEYOND DAWNは、多くの初期ゴシックバンドが描こうとした「いわゆる退廃美」に近いようでいてそれらにツバを吐くような、反骨的なグッタリ感で最初から異彩を放っており、デスヴォイスからも早々に脱却。作品を経るごとにオルタナ的質感に磨きをかけ、最終的にはディストーションギターがほぼ完全に消えてRADIOHEAD的なエレクトロポップみたいになるという変遷を辿ったバンドでした。

そちらの停止後じきに制作されたこのアルバムでは、ゆるめに歪んだギターを再び中心に据え、アメリカのルーツミュージック風インディポップバンドくらいの軽さで、一番草食感があった頃のVOIVODがそのままピーター・ガブリエルの域まで突き抜けたような謎ポストロックに到達。隙間多めのトリオ演奏を土台としながら、人力/生音に必ずしもこだわらないアンサンブルの自由さが、楽曲の肝要な部分まで食い込んで幅を利かせている。注意深く聴くとサブリミナル的な電子音/エフェクト音の類もあちこちに。このあたりのハイブリッドぶりは、2000年代以降の北欧ジャズとリンクする部分もあったりなかったりするかも知れません(ほぼ知りませんが)。何にせよ闇が深すぎる。

ヴォーカルは低いトーンで終始声を張らず、コードワークや曲展開もおおよそはっきりせず、厭世的なまでの「何者でもなさ」が凄いですが、文脈戦争から出たリアクション的排泄物ではなく、「やることがあるからやったまで」という一人立ちしたシンプルさ、芸術作品としての強さがハッキリとある気がします。言いたいことがわかったあとも繰り返し楽しめる。

かと思えば「今本当にそう言った?」くらいのほんのり具合で、感動的なコード回しを一瞬だけ挟んでくるような作家スキルも有。こわい。

この後、ドラムのEinar氏は目下ブッちぎりで謎なアヴァンインディブラックトリオ・VIRUSを始めます。同じレーベルから買えますので、ぜひどちらもご入手を。

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オルタナメタルゴシックメタルノルウェーブラック前衛派