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I MOTHER EARTH

アーティスト概要

カナダのオルタナヒーロー的バンド。93年デビュー。1stアルバム「DIG」でいきなり地元の音楽アワード・JUNO AWARDのベスト・ハードロック・アルバム賞を、カナダといえばのRUSHをさしおいて獲得。(RUSHとは以後、密な関係が続く)

初期はややハードロック寄りの感触強めの、ジャム/ファンク要素(ラテンパーカッションがレギュラー参加)もあるシブめかつ祭祀的なグランジサウンドを身上としたが、チャートを戦えるポップセンスもあわせもっていた。

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複数のシングルヒットを放った2nd「SCENERY AND FISH」は本国でダブル・プラチナムに輝き、当時日本でも話題になる(B!誌で)。しかしデビュー後早くから、創作活動に関われないことに不満があったシンガーのエドウィンが脱退。後任を得て更にアルバム2枚を制作するも、レーベルやマネジメントとの軋轢、メンバーの相次ぐ病気・怪我、アーティスティック路線を突き詰めた結果のセールス不振などが重なり、2003年におこなわれた4時間近くに及ぶキャリア集大成的ライブを最後に活動が止まる。

2012年からライブ活動を再開しsoundcloudで新曲も発表。2016年には代表作となった2ndのリリース20周年として初代シンガーが復帰している。

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ディスクレビュー

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DIG

1993  CAPITOL

古くはUFOやHEART、SURVIVORから、解散までのGUNS N' ROSES全作品なども手がけたマイク・クリンクによるプロデュースで制作された1st。JANE'S ADDICTIONがPOPOL VUH感を出してみたような冒頭の小曲でン?と思うと、続く2トラック目(実質これが1曲目)はPEARL JAMを重々しくしたようなモログランジ。以降、そっちがメインでアルバムは進んでいきますが、しかしやっぱりどこかはみ出したサイケ感もたびたび顔を出し、トレンドに乗り切らない我の強さをこの頃からしっかり発揮していました。

やたらと野生のバイタリティを漂わす16ビートは、形だけでRHCPに続いたミクスチャー便乗組とは一線を画す風格。極度にハスキーで振れ幅の広いヴォーカルも、デビュー作にして堂々たるものです。時にドヨーン、時にゴリゴリとした横揺れグランジテイストと、グレッグ・オールマンの如きジャム風アンサンブルとを連結したものを基調に、大きめのフックをちゃんと設けて分かりやすさもおろそかにせず、ダレがくる寸前まで淀みを溜めたところでコンガ・ボンゴがタカパカと高鳴る高速回転トラックでキメに来るという、非常に大人な押し引きセンス。

「達者なギターソロは無用」という空気のあったグランジブーム期にあっても、このバンドはゆらーっとブルージーなソロをけっこう平気で挟んできます。が80年代のHM/HRのような「A・B・サビ、A・B・サビの後にイチゴとローソクを立てる」という構築美とは無縁で、アンサンブルの末端が自由変形するかのような柔軟さでもってちょろっと弾いて終わりであったり、逆に体よくサビに戻ることなど考えずにだらーっとやったりと色々。70年代までのハードロック(ないし普通のロック)ではよくあったやり方ですが、当時のこの手のバンドで、こういう時間感覚やグループ表現のレンジを持っていた人達はそう多くなかったんではないでしょうか。

今聴いてもハードロック畑なのかオルタナの一味なのか物凄く微妙なラインですが、ハードロックに片足突っ込んだままオルタナにもなれなかったという「不成立ゆえに中途半端」パターンではなく、どちらも包括する懐の深さがあったのだと思います。その点において「カナダのシブ好みDIZZY MIZZ LIZZY」との形容も可能な気がします。

オルタナオルタナメタルグランジ

SCENERY AND FISH

1996  CAPITOL

96年2nd。活動のピークをもたらした作品で、最高傑作と推す向きも多い1枚。例によって冒頭には短い序曲的トラックつきで、今回は高速パーカッション+高速シンバルレガート+何かしらの笛のみによる原始感最大な47秒。I MOTHER EARTHというバンド名にもなんとなくシックリ来る気がしますが、この名前、もともとは「IMEと書いてI Am Me(アイェムミー)と読む」だったのが、I、M、Eを何かの略だということにしようと後からなって、何の意味もなくつけたのだそうです。

さておき内容の続き。前作の淀み感や野生感はおおむねそのままに、SMASHING PUMPKINSばりのキャッチーさ(パッと聴き全然感触が違いますが)が大幅増強。さらにRUSH譲りの端正でコンパクトなプログレセンスもうっすら加味されて、アタマ3曲(CDの2~4トラック目)で最大限の決定力を発揮。あとは曲中に極端なテンポチェンジがあろうと、超ロングソロを含む8分弱の曲があろうと、バンドのポテンシャルを物語る方向でプラスに作用するばかり。すべてにおいて、前作でやりかけていたことをもっと先まで実践しているかのようです。意欲的。

サウンドプロダクションも前作に比べると仕掛けが増えて、へヴィな場面ではSTONE TEMPLE PILOTSよりもエグく、ソフトになるときはジェフ・バックリーの如し。これが時流なりの洗練だけではない、演者の強い意志がにじみ出るもので、バンドとしてのシグネチュア・サウンドを完全に確立した感があります。グランジ時代を宣言した先発有名バンドと同じ重さでは語られないけど、英国プログレでいえば四大(GENESISをカウントすれば五大)バンドに対するGENTLE GIANTくらいの存在といってもよいのでは。

前作で数曲入っていた、高速ラテンパーカッション+ギターの擬似スラップで突っ走るキメ曲が本作ではラスト1曲のみ。じわじわといく曲展開と、はっきり叙情的なメロディ、磨きのかかったファンクネスで、7分が長く感じない文句なしのハイライトです。

表情豊かな歌唱で躁鬱的レパートリーにも余裕でついていくシンガーのエドウィンが、アルバム全編で凄くいい仕事をしてるのですが、残念ながら彼はここで脱退。

オルタナオルタナメタルグランジ

BLUE GREEN ORANGE

1999  UNIVERSAL MUSIC

UNIVERSAL移籍後、99年にリリースされた3rd。オーディションで得たニューファンドランド島出身の新シンガー、ブライアン・バーン加入後初のアルバム。何かしら褐色のがさがさした雰囲気があった過去2作のジャケとは打って変わって、ツルッとしたCGで押し切るカバーアートからして、変化の予感(とポストグランジ期のニオイ)がします。ちなみにアルバムタイトルどおり、絵柄は同じで背景色のみ青・緑・橙の3とおりが存在するマルチカラー展開でした。

ブライアン・バーンの歌唱は、この時点では声質も歌い方も前任者のイメージに非常に忠実。表現の幅も声量感・ピッチなどもまったく不足なしで、バンドのカラーに合った逸材といえます。ウェットに歌い上げることも可能でなお良い。

音楽的な変化の方向としては、いわゆる「攻めのスローダウン」「派手さを捨て、よりディープな方向に」と言われる類のもの。エフェクトや鍵盤によるウワモノ要素が増えてインダストリアル+ダウンビートな描写を入れたり、後期FAITH NO MOREみたいにレトロ感をちょっと滑稽に切り取ってみたり、非人力ビートを入れて突き抜けたポップさに挑んだりと、歪んだギターに固執しないアレンジワークを展開。いっぽう曲の骨子の部分は、単純なフック・わかりやすい感動を作るの拒否するかのごとき、一聴目の地味さ。

曲ごとにやっていることはいろいろで、カラフルさはあるものの、静/動の静の部分が「これで1曲」と認識するに足りないくらいの静まり具合になることしばしば。うーんと思っていると、とびきり漫然と進行するラストの曲がもうPINK FLOYDのようで、なるほどそういう覚悟だったのかと合点がいく。

「らしさ」の所在と境界線を確かめつつ定型からの脱却を図った過程の記録として、この時期の彼らが作ってしかるべき内容であったと思います。

オルタナオルタナメタルグランジ

THE QUICKSILVER MEAT DREAM

2003  UNIVERSAL MUSIC

これのことを伝わるように書きたくて、1~3作目も取り上げました。長かった。カナダのオルタナシーンを先導した(かどうか知りませんけども)I MOTHER EARTHの、活動停止前ラストとなった2003年の4th。

リリース当時、シングルヒット狙いの曲をしつこく要求するレーベルと折り合いがつかず、ほとんどプロモーションがなされないまま世に出たそうで、ワタシもつい最近まで存在すら知りませんでしたが、そんな処遇に終わったのが非常に惜しまれる、充実の傑作に仕上がってます。

前作の流れで更にトゲをなくすかと思いきや、拡張された音響感覚はそのままに、へヴィ度大幅アップ、ムーディ度もちょい増しで、DEFTONES+(最近の)ANATHEMAもしくはCHROMA KEYかという新フォーマットをいきなり体得。ゴリゴリと蹂躙し続けることはなく、むしろ牙を剥く時間は短め。しかしながら、おとなしく一歩引き気味の場面でも「今これだけ場所が空いてるってことは、後でゴァーって来るんだよな...」という示唆による心理的へヴィネスが常に充満していて、アルバム全編やけに緊張感がある。その演出のうまさは過去最高なのでは。プレイヤー冥利を捨てて、楽曲の造形をできるだけソリッドに伝えることに専念している印象です。(奔放に伸びたり緩んだりするところがI MOTHER EARTHらしさでもあったのですが)

2代目シンガーのブライアン・バーンも前任者のカラーから脱却し、ガサッとした力み成分が顕著に後退。太さもありながらソフトでクリーンな本来の声質で、DEFTONESなりTOOLなりの感じに近い躁鬱キャラへと転じています。スゴむ場面のかっこよさにはクラッと来るレベル。器用な人...と思ったら、活動停止中にタトゥーアーティストになったり、最近はラジオのアナウンサー業も始めたり、前任者が復帰してからはSTONE TEMPLE PILOTSの新シンガーの座を狙ったりと、恐ろしく手広い実力者でした。

曲は極端にコマーシャルではないがひとつひとつがデカく、9割方ミッド~スローテンポながら先述の緊張感ゆえかダレ知らず。終盤に差し掛かる8曲目で、ギターの擬似スラップが野生16ビートに乗って炸裂する1stからの伝統芸スタイルがひさびさに復活(前作3rdには1曲もなかった)。ラスト前の10曲目には4部構成で8分に及ぶ組曲もあり、ここは現代版RUSHの面目躍如か。PORCUPINE TREEも青ざめるわと。

サウンドプロダクションの異常な良さも特筆すべき域なので書いておきます。すべての音がテカッと抜けてくる感じは2000年代以降然としたものながら、間違っても生音に音源を重ねたりはしていなさそうなドラムの圧巻の処理、特に4曲目をお聴きください。エンジニアはKING CRIMSONの「THRAK」やDREAM THEATERの「METROPOLICE Pt.II」、そして他ならぬTOOLの「ÆNIMA」~「LATERALUS」を手がけたデイヴィッド・ボットリル。はい、そう言ってしまうとそれで片付いてしまう感じになりそうで言わないようにしてましたが、全体的にTOOLっぽさを志向したのではと思われる形跡がけっこうあります。決して流されちゃってるとは思いませんが!

地元のヒーローだからなのか、プロモーション不足でよほど余らせたのか、今でも全然新品でたやすく入手可能です。気になった人はぜひとも回収に乗り出してください。

オルタナオルタナメタルグランジ