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DREAM THEATER

アーティスト概要

技巧派プログレメタルの代名詞として一般リスナーにもその存在を知られるアメリカのバンド。多くのジャズミュージシャンを輩出している名門・バークリー音楽院で結成。当初はMAJESTYと名乗っていたが、89年の1stアルバムリリース時に同名異バンドがいるという理由で改名することになり、リーダーでドラマーのマイク・ポートノイ(現在は脱退)の父の提案で現在の名前に。由来は近所の映画館の名前。ちなみに旧名のほうは、前後をひっくり返して1stアルバム収録のインスト曲のタイトルとして残っている("YTSE Jam")。

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いきなりメジャーのMCAからデビューを飾るも、線の細い初代シンガー(さらに昔もう1人在籍したようですが)のチャーリー・ドミニシがいろいろダメで解雇、マネージメントとの関係も上手くいかないなど、順調に活動できない時期が続く。新シンガーのオーディションの末、カナダのWINTER ROSEにいたジェイムズ・ラブリエを獲得し、ATLANTIC傘下のATCOから2nd「IMAGES AND WORDS」を92年に発表。コテコテフュージョンからPANTERA的へヴィミュージックまでをぬえのように繋いだ多彩な音楽性で、90年代のメタルシーンを揺るがす大名盤となる。

グランジ礼賛ムードもたけなわな94年、7弦ギターを導入しよりへヴィ&オーガニックな音楽性にシフトした3rd「AWAKE」で賛否両論を起こすも、フォロワーの多くはこぞって追随し、やはりプログレメタルシーンの台風の目となる。同年、音楽的方向性の相違などから、独特の揮発するような叙情性を漂わせていたキーボーディストのケヴィン・ムーアが脱退。ケヴィンはその後、自身のプロジェクト・CHROMA KEYを立ち上げるほか、ポートノイとFATES WARNINGのジム・マセオスとのユニット・OSIとしても活動する。

後任にロックスターキャラ(額にサングラス系)のデレク・シェレニアンを迎え、MAJESTY時代から温めていた20分強の大曲"A Change Of Seasons"を遂に録音、カバー集と抱き合わせで95年にリリースする。続いて97年に発表された4th「FALLING INTO INFINITY」では、陰鬱げなうねりで押す野性的&コンパクトな曲が増え、これはどういうことかと評価も揺れる。99年、鍵盤奏者が更にジョーダン・ルーデスに交代。以降はメタル然としたエッジを取り戻したところにより硬質感とシリアスさを強めた作風となり、ほぼ2年に1作のコンスタントなペースで大作を次々と発表していく。

2010年、サイドプロジェクトなどでの活動のためにバンドを少し休業したい意向があったマイク・ポートノイが、他のメンバーの反発に遭いそのまま追い出されてしまう。後任はオーディションの結果、ex.ANNIHILATOR~EXTREMEのマイク・マンジーニ(ジェイムズ・ラブリエのサイドプロジェクトMULLMUZZLERのメンバーでもあった)が加入。名付け親を欠いての再出発作は皮肉にもセルフタイトルだった。低音オリエンテッドなゴリゴリ感を薄めて往年のスタイルに戻り、現在も鋭意活動中。

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DREAM THEATERとプログレメタルブーム

各々のシーンで熟成・研磨されてきたものが結果だけ好き勝手にブッタ切られて組み合わされる傾向が今ほど顕著になる前は、普通に過ごしている人が接触をもつ機会が希薄であろう音楽のまわりには、物理的制約(人脈・地理)を受けながらある程度時間をかけてしか進まない「系譜」がもうちょっとわかりやすくあったものと記憶しています。(その是非は置いておくとして)

「プログレッシヴなメタル」の現在を見ると、ジェントスタイルの拡散と活用で以前とは情勢がすっかり変わってしまって、そもそもちょっとくらい複雑なのが当たり前みたいになってるような。しかしかつては確実にDREAM THEATER一党支配な時代がありました。B!誌の白黒ページに載る西新宿あたりの輸入盤専門店の広告に「Q.ライク/D.シアタータイプハイトーンプログレメタルGood!」みたいな文句が毎月のように躍った時期を覚えている向きも多いかと。DREAM THEATERが90年代のプログレメタル事情をいかに動かし、その前/後はどうだったか、活字と音源だけで追っていた身の体感ベースですが、まとめてみようかと思います。

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80年代のプログレッヴ・メタル

プログレメタルの源流をどこと見るかといえば、「HEMISPHERES」~「SIGNALS」の頃のRUSHでしょう、ということで大なり小なり納得してもらえるかと思います。RUSH自体は全然メタルじゃないですが、カキカキした変則拍子を今日的なポップさとめぐり合わせて、HM/HRに直接転用可能なスタイルを築いたという点で、ジャズやクラシック趣味が混じっていた70年代のプログレオリジン組の試行の一部を一歩推し進めた存在だったと思っています(「クリムゾンの"Red"はメタルだ」等の主張、むろんわかります)。また後のプログレメタラーの多くが、RUSH的なアプローチをそれとわかる形で参照しています。

もうひとつ、大作指向や曲中の急なテンポチェンジなどの要素は、IRON MAIDENからの影響も大きいところ。IRON MAIDEN自身はGENESISがその影響源といっているようです。メイデンの世界観をQUEENSRYCHEやFATES WARNINGが引き継ぎ、そのまた次世代への下地となっています。(断定を避けるのがめんどくさいので度々言い切ります。信じ~あなた次第。)

その他、孤高の突発組として、スケールアウト系フュージョンをスラッシュメタルに持ち込んだWATCHTOWER、その無定形っぷりをもう一回転してRUSH的なスタイルに持ち帰ったドイツのSIEGES EVEN、カナダの脱力不協和音王VOIVODなどなど、カルトスラッシャー達によるインパクトも見逃せません。「めちゃくちゃでもいいんだ」というリミッター外しから数々のクロスオーバーを生んだスラッシュメタルシーンには、その手の突然変異を生み出しやすい土壌があったと思います。

QUEENSRYCHEとFATES WARNING

DREAM THEATERでどよめく前は、プログレッシヴなメタルといえばQUEENSRYCHEだったはずです。とはいえ今聴くとさほど複雑な変拍子にまみれているわけでもなく、精神に来るような暗いコード感と大仰なコンセプト指向で「頭脳派」と認識されていただけのことなのではとも。

その空気感を拝借して、実際に変拍子/変則展開/組曲といったそれらしい要素を突き詰めていったのがアメリカのFATES WARNINGで、DREAM THEATERの初期、特に前身のMAJESTY時代などは、ありありとそこからの影響を見て取れます(メンバー自身公言もしている)。この時点では、「欧州的な湿ったメロディックメタルが、やたらと技巧的に折れ曲がっている」のがプログレメタルの姿でした。

90年代、メタル畑の行き詰まりとDREAM THEATER

89年に「WHEN DREAM AND DAY UNITE」でデビューしたDREAM THEATERは、卓越にもほどがあるテクニックを持ちながらも、音楽的にはFATES WARNINGをもう少しポップな(それこそRUSH的な)方向に開いた程度で、激震を与えるとまではいかない内容でした。

その後シンガー交代やレーベルとのゴタゴタではかばかしい活動ができない間、世の中はミクスチャーブーム(RHCPほか)、グランジブーム、スラッシュメタルのグルーヴオリエンテッド化(ブラックアルバム/PANTERAほか)が次々起こったわけですが、DREAM THEATERはグルーヴメタルの硬質感も拾い、ミクスチャーとは少々違うがDIXIE DREGS的なパカッと明るいフュージョン由来のファンクネスも堂々と使い(ダサフュージョンやホーンセクションを唐突にメタルに導入するのはこの時期軽く流行った)、時代の潮目ならではの飛び級的進化を見せます。そして何よりその統合能力が高くて、あらゆる要素を楽曲のドラマ性の昇降に使いこなしたし、長いものが冗長にならなかった。

どうやってもオルタナティブな風情だけは出せないが格段に垢抜けた新シンガー、ジェイムズ・ラブリエを迎えて世に放たれた2nd「IMAGES AND WORDS」は、正統派も過激派もある程度成熟してしまったメタルシーンにおいて、その新鮮さでファンを喜ばせただけでなく、グランジに追われてもうやっていけないかもしれない、さもなくばヘヴィ化するしかないという空気が漂っていた各国の演者界隈にも新しい可能性を提示。かくして、DREAM THEATERと同じ養分を吸った同期というよりも、彼らに直接触発されたプログレメタルバンドが世界中にゴロゴロ大発生する事態となります。

だがしかし、アイディア勝負ではなく統合力こそがクオリティの鍵であったため、おおかたのバンドは「末端だけDREAM THEATERにそっくりで、到底太刀打ちはできない」といった程度に終わってしまう羽目に。マニアは今度こそ...とショップおすすめの新人を買ってみては、DREAM THEATERに惚れ直すという時期が続いたことかと思います。

「オーガニック」なる新トレンド、フォロワー層の成熟

「IMAGES AND WORDS」から約2年後の94年、DREAM THEATERは前作制作時にあったアイディアを含む3作目「AWAKE」を発表。70年代HRを思わせる歪んだオルガン、美麗なる叙情性に取って代わる(駆逐するほどではない)ペンタトニック、そして7弦ギター導入によるモダン・ヘヴィネス(死語!)をフィーチャーし、きれいなもの好きなメタラーには少々快適でない方向へと進化して波紋を起こします。

が、もともと芯にあった精緻さや技巧性はまったくもって損なわれておらず、安易な重・暗・鬱化ではない、むしろ大充実の内容でした。「こんなに緻密なのにこんなにダイナミック」と演者界隈に再び衝撃が走った結果、このアルバムで聴けるのとソックリなオルガンの音やダウンチューニングがまた蔓延。プログレメタル界のオピニオンリーダー状態に。ちなみに先輩だったはずのFATES WARNINGもこの変化に追随します。

この頃には第一波に触発されたグループも洗練が進んできて、オリジナリティはさておき記憶すべきクオリティを達成するバンドや、垢抜けたシンガーがいてフォロワー以上の存在感を示すバンドもちらほら。また「D・シアター+PANTERAタイプのテクニカルスラッシュ!」といったハイブリッドな売り文句が例のB!誌の白黒ページに躍ったりすることも。(で、最高の名前を2つもくっつけるほどの出来ではなかったりする)

メロハー的なとっつきやすさとメロディセンスの冴えがあったENCHANTは長い間踏ん張っていて最近復活もしたし、ドイツのIVANHOEは故チャック・シュルディナー(DEATH)から別プロジェクト・CONTROL DENIEDのフロントマンとして白羽の矢が立つ力量のシンガーを擁して優れた作品を残しました。その他SANVOISEN(QUEENSRYCHE寄り)、EQUINOX(EL&P的美学とRUSHの融合)などなど、アルバム1~2枚だけで散った良バンドはいろいろいます。

多様化とブームの収束

90年代後半になると、宝塚的メロメロ歌劇感+変態性を持ち込んだSYMPHONY Xが著しい飛躍を見せたり、尖ったヘヴィネスをスペイシーな方向に発展させたデヴィン・タウンゼント関連ユニットや、FAITH NO MORE的振れ幅をより金属質にしたようなPAIN OF SALVATIONなどが、「進歩的なメタル」の新解釈(わざわざそんなキーワードを標榜していたわけではないと思いますが)を提示。

同時に、デスメタルの世界でメロデス/ゴシックが行き着くところまで行き着いてANATHEMAやらOPETHやらがどんどん枠をはみ出し、プログレメタルブームのテンプレートをなぞらずとも面白くて新しいメタルを追求できるアイディアがあちこちで見られるようになったのを受けて、DREAM THEATER似の一派は自然と層が薄くなり離散していったように思います。そのタイミングでMESHUGGAHがブレイクし、(まっとうなフォロワーが出てくるまでに時間がかかったものの)「テクニカル」の定義が覆る事態となり2010年代の今につながると。雑に10年くらいスッ飛ばした分は若い方々にお任せします。

以上、物の本に書いてありそうなことばっかですけども、最近93年来日公演のDVDを観てDREAM THEATERを見直した勢いで書いてみました。これから知るという人はお役立てください。

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